結婚初日、夫から「兄の妻を愛している」と打ち明けられました

風見ゆうみ

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9   三人で観劇しましょうね

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「側近のことについてもおかしいとは思っていた」

 ラゲクはため息を吐いて、彼らを雇った経緯をミアーナに話してくれた。単純なもので、全員が前妻の親戚や知り合いであり、前妻の紹介で雇ったとのことだった。皆、悪い人間ではないが、ラゲクに忠誠を誓っているわけではないらしい。

(まあ、雇用主と労働者の関係性と思えば、忠誠心は必要ないかもしれないわね)

 仕事を誠実にこなすことは、人として当たり前のことだとミアーナは考えている。現在のラゲク側近たちは、雇い主に伝えなければいけない事柄を、意図的に伝えていないという不誠実な行動をしている。この点はミアーナにとって許せないことだった。

「帰ったら徹底的に追及するつもりだ。新たに人を探さないと駄目だろうな」

 ラゲクはこめかみを押さえて言ったあと、ミアーナに頼む。

「君がここに来たことは、私たちが帰るまで黙っていてもらえないだろうか」
「かまいませんが、何か問題でもあるのですか?」
「側近たちに私に打ち明けるチャンスをやろうと思っている。もちろん、ロコッドとルイティーの件は別だ。彼らにチャンスなどない」
「お義父様が帰るとわかった時点で、自分のしたことを自ら話して反省するようなら許して差し上げるということでしょうか?」
「甘いと思うか?」

 ラゲクに見つめられたミアーナは、表情を和らげて答える。

「いいえ。更生するチャンスを与えても良い人はいるでしょう。一度間違えたら人生が終わりでは可哀想です」

 ミアーナにとっては、ロコッドたちは止めたにも関わらず不倫を続けているので論外だ。

「ロコッドたちの件だが、戻るまでに証拠を押さえたい。協力してもらえるかな」

 今度はマーベリックに尋ねられたミアーナはにっこりと微笑んだ。慰謝料についての話は、マーベリックたちが帰ってから一緒に話すことに決まった。二時間ほど話をして、ミアーナはマーベリックたちと別れ、今日は近くの宿屋に泊まった。

 ラゲクとマーベリックはあと三十日程で家に帰ることができるらしい。ヨーカやロコッド、ルイティーたちには五日前に、その他の人たちは十日前に伝えることになっている。

 本当ならば二人に会ったことを日記に書こうとしていたミアーナだったが、内緒にしてくれと言われたので、この日から、絵日記に変更することにした。
 
「上手く描けたわ!」

 ミアーナは一時間かけて今日の話し合いの場面の絵を描き上げた。

「どんな絵か見せていただいても良いですか?」
「下手くそだけど許してね」

 あまり似ていると、相手が誰だかわかってしまうのではと心配したメイドたちが頼むと、ミアーナは恥ずかしそうにしながら、彼女たちに日記帳を手渡した。

 タイトルは「旅先で出会った素敵な方々」だったが、そこに描かれてあるものは、メイドたちにとっては素敵な方々ではなかった。

「えっと、これはなんでしょう?」

 二つの液体のようなものを指差してメイドが尋ねると、ミアーナは胸を張って答える。

「お義父様とお義兄様よ。それから、これが私」

 ミアーナが指差したのは、一本の棒の先に葉っぱのようなものが生えている。

「……当主様とマーベリック様はアメーバだったかしら」
「それを言ったらミアーナ様はただの枝よ」
「し、失礼ね! わかりにくいように書いたのよ!」

 メイドの話を聞いたミアーナは、顔を真っ赤にして言った。すると、メイドたちが優しい笑みを浮かべる。

「ミアーナ様、とても素敵な絵だと思います。これなら、ロコッド様たちもわかりません」
「とても素晴らしいです!」
「そ、そう? それなら良かったわ!」

 ミアーナは無邪気に喜ぶと、メイドたちの生温かい視線には気がつかないふりをした。

 こうして、ミアーナは無事に目的を果たし、一緒に来てくれた兵士や御者、メイドたちと共に残りの旅行を楽しみ、無事に公爵邸に帰り着いた。使用人は快く出迎えてくれたが、ロコッドたちは残念そうな顔で、ミアーナの前に現れた。

「ロコッド様、本当に楽しい旅をありがとうございました。いくつか、予定を変更しましたが、どこに行ったかわかりますように日記をつけておきました。社交界で話を聞かれるようなことがありましたら、これを参考にしてくださいませ」

 ミアーナは絵日記と共に演劇のパンフレットを手渡した。

「あらすじに惹かれて観に行ったのですが、それは興味深いお話でしたわ。もう一度観ても良いと思ったくらいでしたので、ぜひ、ロコッド様とルイティー様、私の三人で観劇しましょうね」
「あ、ありがとう」

 ロコッドはまずパンフレットをぱらぱらとめくり、あらすじの部分に目を通してみた。

 あらすじには不倫した二人が本当のパートナーたちの手によって、不倫したことを後悔するくらい、酷い目にあわされるストーリーと書かれていた。

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