どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ

文字の大きさ
5 / 29

4 新居にも訪ねてこられました

しおりを挟む
「ブルーミング嬢、会えて良かった」

 数日後の朝早く、新しい屋敷へ初めてのお客様がいらっしゃいましたが、それはまさかのクラーク辺境伯でした。

 普段は冷たい表情をされている方なのだそうですが、私を見た瞬間、柔らかな笑みを浮かべてくださり、普段とのギャップに戸惑ってしまいましたが、これは罠かもしれない、と自分自身に言い聞かせて、笑顔を作って応対する。

「ごきげんよう、お会いできて嬉しいですわ。けれど、なにぶん、引っ越したばかりでして屋敷内が片付いておりませんの。ですから、大変失礼な申し出になるのですけれど、日を改めて…」
「気にしなくて良い。俺は君の顔を見に来たのだから」
「は、はあ…」

 女性の中でも小柄な方の私と、男性でも大柄な方のクラーク辺境伯は立っていると、身長差をより感じるし、座っている時よりも威圧感を感じて、作った笑みが崩れてしまいそうになる。

「えーと、あの、お手紙は届いたのですよね?」

 どうしても家の中には入れたくなくて、扉の前で話をしていると、クラーク辺境伯は少し不機嫌そうな表情になったあと、首を縦に振られました。

「届きはした。けれど、納得していない」
「な、何がですか?」
「俺との結婚は嫌だ、と?」
「嫌とは言ってません! 私なんかがクラーク辺境伯様に嫁ぐだなんて恐れ多いと」
「ラルフでいい」
「はい?」

 また変な声で聞き返してしまう。

「ラルフと呼んでくれ。あなたの事は、そうだな。リノアと呼んでもいいかな」
「は、はい?」

 照れたように視線を斜め下に向けながら、クラーク辺境伯がおっしゃられたので、また間抜けな声で聞き返すと、彼は私の両手を取り、視線を合わせると、はっきりと言葉を口にされました。

「断る」
「な、何がです?」
「結婚は出来ないと手紙に書いていたな?」
「は、はい」
「その断りを断る」
「は、はあ?」

 クラーク辺境伯が何をおっしゃっているのかわからず、大声を上げてしまった。

「私の意思を汲み取ってはいただけないのでしょうか?」
「俺にとって問題ない事をあなたが言うからだ」
「いえいえ、問題ないわけないのです!」

 人様の前では気を付けていた口癖が興奮したせいで出てしまい、思わず口をおさえると、辺境伯は不思議そうに首を傾げて私に問いかけてきます。

「どうかしたのか?」
「あ、いえ」

 口癖が出てしまったからとは言えず、首を横に振ってから、改めて言葉を発する。

「問題なんてないだなんて、そんな訳ありません。クラーク辺境伯様にはもっと素敵なお方が」
「ラルフだ」
「はい?」
「ラルフと呼んでくれと言ったろう?」

 優しく微笑んで命令されました。

 ああ。
 彼は怒っているんでしょうか。
 嫌がらせでこんな事を?
 だって、噂の彼はこんな人ではないはずです。

 大体、どうしてここがわかったんでしょう。
 家族や使用人の一部にしか知られてないのに…。

「リノア?」
「えっ! あ、申し訳ございません」 
「謝らなくて良い。今日は急すぎたな。日を改める」
「えっ! いや、あのっ!」

 私の呼び止める声は彼には届かず、簡素な門を通り抜け、彼はぐるりと屋敷を囲んでいる塀の外に消えていかれました。

 せっかくこの地でのんびりしようと思っていたのに、このままでは、のんびりどころか、逆に神経をすり減らす生活になってしまいそう!

 まずは、彼がどうして私と結婚をしたがっているのかを調べなくては。
 私を嫁にしたいだなんて、何か裏があるに決まっていますから!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。

夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!

佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。 「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」 冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。 さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。 優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

【完結】六歳下の幼馴染に溺れた夫。白い結婚を理由に離縁を申し立てたら、義弟(溺愛)に全力で求婚されました

恋せよ恋
恋愛
夫が愛でるのは、守ってあげたくなるような「可憐な少女」。 夫が疎むのは、正論で自分を追い詰める「完璧な妻」。 「シンシア、君はしっかりしているから、大丈夫だろう?」 六歳年下の幼馴染ジェニファー子爵令嬢を気遣う貴方。 私たちは、新婚初夜さえ済ませていないのよ? 完璧な家政、完璧な社交。私が支えてきたこの家から、 ニコラス、貴方って私がいなくなったらどうなるか……。 考えたこともないのかしら? 義弟シモンは、学生時代の先輩でもあるシンシアを慕い 兄ニコラスの態度と、幼馴染ジェニファーを嫌悪する。 泣いて縋るあざとい少女と、救世主気取りの愚かな夫。 そして、義姉であるシンシアを慕うシモン。 これは、誇り高き伯爵夫人、シンシアの物語である。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲

恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。 完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。 婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。 家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、 家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。 理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

処理中です...