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14 耳を疑いました
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門前払いしてやろうと思いましたが、一人で来ているという事もあり、この屋敷を建てる事ができた、ある意味出資者でもありますので、一応、会ってあげる事にしました。
まあ、門前払いしようものなら何を言い出すかわかりませんし、穏便に済ませたいというのもありますが…。
「いい家だね」
私の顔を見た後、開口一番がそれで、穏便に済ませたいだなんて、呑気な事を考えた自分を殴りたくなりましたが、ここはこらえます。
だって、悪いのは私ですから。
ディーンは私が気に入っているパッチワークソファーにふんぞり返って座っているだけで、私が現れても立ち上がろうともしません。
まあ、婚約者がいるにも関わらず、恋人を作るような男性なのですから礼儀も何もないのでしょう。
私が彼の向かい側に座ると、いつもならメイドが出してくれるはずのお茶をソラが持ってきてくれましたが、ディーンの前にはカップを置かないのでディーンがソラに叫びます。
「おい、俺のお茶はないのか?」
「あなたはお客様ではありませんので」
「なんだと!」
冷たくソラは言い放ったあと、彼に見えないように顔をこちらに向けて、声は発さずに口だけ動かしました。
彼が私に伝えたかったのは「本音が出た。悪い」という言葉で、私が首を縦に振ると、彼は一礼して扉の方に歩いていきましたが、部屋から出て行く事はせず、扉の横に立ちました。
ソラとはお互いに物心付く前から一緒に過ごしたので、今更、丁寧な言葉を使われても落ち着かないという事もあり、屋敷で働く人物の前以外では敬語なしを許可しているため、私に対する言葉遣いに関しては良いのですが、お茶を出さないのは、また何を言われるかわかりませんので、私の前に出されたお茶をディーンの方に押し出そうとして気が付いた。
中に入っているお茶は出がらしで入れたような薄いお茶で、私がディーンに渡す事を見越していたようです。
私に出したお茶なのですから、ディーンに薄いお茶を差し出しても、彼に出したわけではないですから良いですよね。
まあ、お茶の味もわからないでしょうけれど。
「カンタス伯爵、よろしければこちらをどうぞ」
そっとソーサーごとカップを彼に押し出すと、満足したようにディーンは笑い、カップを手に取ると、中に入っているお茶を勢いよく飲み干した。
この人、一応、貴族なんですよね?
もう少し綺麗な飲み方はできないんでしょうか。
偉そうにしていればいいとでも思っている?
がちゃんと音をたててカップをソーサーに戻すと、ディーンは真剣な表情で私を見つめてくる。
「リノアはいつの間にクラーク辺境伯とお近づきになったんだ?」
「私から近付いた覚えはありません。ラルフ様が私にお声をかけてくださったのです」
「嘘だろう? だって彼は俺と一緒に戦場に出ていたんだぞ?」
信じられないと言わんばかりに、彼は首を横に振って続ける。
「何より、彼が君を選ぶなんてありえないじゃないか」
「それは私も思いました」
「どんな手を使ったんだ?」
「知りません。私は何もしてませんから」
その答えは私が一番知りたいところなのです。
「そんな事よりカンタス伯爵、こんな所にいても大丈夫なのですか? 昔の婚約者に会いに来るなんて、今の婚約者の方に怒られるのでは?」
「まあ、彼女とは意見の違いも多々あるけど仲良くやっているよ。あと、今日、俺が君の所に行くことはヴィアラにも伝えてあるから大丈夫だ。話の内容は伝えていないけどね」
「一体、何の話です?」
少しでも早く帰っていただきたいですし、さっさと本題に入ってもらう事にしましょう。
「勝手な言い分だとはわかってはいるんだが」
「婚約破棄をしておいて何をいまさら」
「その事なんだが」
「は?」
「リノア、もう一度やり直す気はないか?」
「は?」
ディーンに聞き返した私の声のトーンは今まで生きてきた中で一番低い声だったと自信を持って言えます。
というか、聞き間違いですかね?
そんな訳ないですよね。
あれ?
想定以上の馬鹿だったって事ですか?
まあ、門前払いしようものなら何を言い出すかわかりませんし、穏便に済ませたいというのもありますが…。
「いい家だね」
私の顔を見た後、開口一番がそれで、穏便に済ませたいだなんて、呑気な事を考えた自分を殴りたくなりましたが、ここはこらえます。
だって、悪いのは私ですから。
ディーンは私が気に入っているパッチワークソファーにふんぞり返って座っているだけで、私が現れても立ち上がろうともしません。
まあ、婚約者がいるにも関わらず、恋人を作るような男性なのですから礼儀も何もないのでしょう。
私が彼の向かい側に座ると、いつもならメイドが出してくれるはずのお茶をソラが持ってきてくれましたが、ディーンの前にはカップを置かないのでディーンがソラに叫びます。
「おい、俺のお茶はないのか?」
「あなたはお客様ではありませんので」
「なんだと!」
冷たくソラは言い放ったあと、彼に見えないように顔をこちらに向けて、声は発さずに口だけ動かしました。
彼が私に伝えたかったのは「本音が出た。悪い」という言葉で、私が首を縦に振ると、彼は一礼して扉の方に歩いていきましたが、部屋から出て行く事はせず、扉の横に立ちました。
ソラとはお互いに物心付く前から一緒に過ごしたので、今更、丁寧な言葉を使われても落ち着かないという事もあり、屋敷で働く人物の前以外では敬語なしを許可しているため、私に対する言葉遣いに関しては良いのですが、お茶を出さないのは、また何を言われるかわかりませんので、私の前に出されたお茶をディーンの方に押し出そうとして気が付いた。
中に入っているお茶は出がらしで入れたような薄いお茶で、私がディーンに渡す事を見越していたようです。
私に出したお茶なのですから、ディーンに薄いお茶を差し出しても、彼に出したわけではないですから良いですよね。
まあ、お茶の味もわからないでしょうけれど。
「カンタス伯爵、よろしければこちらをどうぞ」
そっとソーサーごとカップを彼に押し出すと、満足したようにディーンは笑い、カップを手に取ると、中に入っているお茶を勢いよく飲み干した。
この人、一応、貴族なんですよね?
もう少し綺麗な飲み方はできないんでしょうか。
偉そうにしていればいいとでも思っている?
がちゃんと音をたててカップをソーサーに戻すと、ディーンは真剣な表情で私を見つめてくる。
「リノアはいつの間にクラーク辺境伯とお近づきになったんだ?」
「私から近付いた覚えはありません。ラルフ様が私にお声をかけてくださったのです」
「嘘だろう? だって彼は俺と一緒に戦場に出ていたんだぞ?」
信じられないと言わんばかりに、彼は首を横に振って続ける。
「何より、彼が君を選ぶなんてありえないじゃないか」
「それは私も思いました」
「どんな手を使ったんだ?」
「知りません。私は何もしてませんから」
その答えは私が一番知りたいところなのです。
「そんな事よりカンタス伯爵、こんな所にいても大丈夫なのですか? 昔の婚約者に会いに来るなんて、今の婚約者の方に怒られるのでは?」
「まあ、彼女とは意見の違いも多々あるけど仲良くやっているよ。あと、今日、俺が君の所に行くことはヴィアラにも伝えてあるから大丈夫だ。話の内容は伝えていないけどね」
「一体、何の話です?」
少しでも早く帰っていただきたいですし、さっさと本題に入ってもらう事にしましょう。
「勝手な言い分だとはわかってはいるんだが」
「婚約破棄をしておいて何をいまさら」
「その事なんだが」
「は?」
「リノア、もう一度やり直す気はないか?」
「は?」
ディーンに聞き返した私の声のトーンは今まで生きてきた中で一番低い声だったと自信を持って言えます。
というか、聞き間違いですかね?
そんな訳ないですよね。
あれ?
想定以上の馬鹿だったって事ですか?
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