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17 自業自得ですわ
現在のリーナはムネラノ王国の公爵と別れた状態で、結婚の際に国籍を変更したため、ムネラノ王国の国籍になっている。そのこともあってリーナがムネラノ王国の王家に土地を売ることは可能であり、支援を受けるために、リーナは土地をノッシュに売った。これでチゴノイ王国の一部の土地がムネラノ王国の管轄となった。
こうすることで、チゴノイ王国側からリーナに土地を返還するように求めることを防いだ。
「チゴノイ王国側は近いうちに自分たちが渡した土地が重要なものだったとすぐに気づくことになるでしょう」
リーナがノッシュにこう話してから10日後の昼過ぎ、リーナは例の場所に来ていた。
日差しは柔らかく、時折吹く風は少しひんやりしていたが、長袖のワンピースドレスにロングブーツ姿のをリーナにはちょうど良い気温だった。リーナの庭と名付けられた土地で、ムネラノ王国の植物の専門家と薬草の育て方などについて話をしていると、塀を作っている作業員のリーダが駆け寄ってきた。
「大変です。チゴノイ王国の王女と名乗る人が、たくさんの兵士と共にやって来ていて、リーナ様に会わせろとおっしゃっています」
「……チゴノイ王国の王女というと、エランナしかいないですね」
平民はチゴノイ王国の王女の名前は知っていても顔は知らない人が多い。
(使いを送ればいいのに、わざわざここまで本人が何をしに来たのかしら。私が平民になって惨めな生活を送っていると思って様子を見に来たとか?)
「嫌な思いをさせてしまってごめんなさい。応対は私がするから作業をしている人たちは休憩しておいてもらえるかしら」
「承知いたしました」
ムネラノ王国には女性が爵位を持てないという法律はない。リーナはムネラノ王国に土地を売り、それと同時に子爵の爵位を授けられた。リーナの庭を自由にできる権利ももらったため、ここで功績を挙げれば伯爵になることも可能だと言われている。
(エランナに邪魔はさせないわ)
そう思いながら、リーナはリーダーの男性にエランナのもとへ案内してもらう。
「お姉様!」
若い男性と馬に乗っていたエランナは、リーナをみた瞬間、彼の腕に抱かれたまま叫ぶ。
「お姉様、お願いよ! クヨキヨクの薬を譲ってほしいの! 倉庫にあったはずの薬がなぜか一つもないの!」
「それはそうよ。私が嫁入りする時に診療所に寄付したんだもの」
「どうしてそんなことをするのよ!?」
「私が作った薬だもの。どうしようが私の勝手でしょう?」
リーナは失笑して尋ねる。
「どうして薬が必要なの? 医者に診てもらって薬を処方してもらったらいいんじゃないの?」
「そ、それは……っ」
エランナは男性に目を向けて口を閉ざした。
(たしか、この男性って、チゴノイ王国のチャッタッヤ公爵家の次男のレイブルね)
レイブルは金色の髪に青い瞳を持つ美青年だ。目は細くて吊り上がり気味で、リーナを見下ろしている表情はとても冷たく見える。
「二人はとても仲良くなったようね。ところでムネラノ王国では、あなたの浮気が話題になっているけれど、チゴノイ王国側では情報が規制されているようね」
エランナの味方をする男性などどうでも良かったが、リーナが親切に教えると、レイブルは驚いた顔をしてエランナを見つめた。
「どういうこですか? 浮気をしたのはあなたなんですか?」
「そ、そんなことよりもお願いよ、お姉様! クヨキヨクが無理でも何か薬はあるでしょう? 痒くて仕方がないの! 薬がないなら作ってよ! お願い!」
「痒くて仕方がない、ね」
この言葉で、リーナは娼館の女性のことを思い出した。
(たしか、彼女も同じことを言っていたわ。素直に医者に話せば、それに合う薬を処方してもらえるでしょうに、自分が浮気したなんて言いたくないから正直に話せないといったところかしら)
「あなたは彼女の姉なのでしょう。妹が助けを求めているのに無視するつもりですか」
エランナの病気のことなど何も知らないレイブルは、リーナを睨む。そんな彼に、リーナは答える。
「エランナの病気は自業自得ですわ。あんなことをしなければ感染しなかったのですから」
「感染?」
「そうですわ。エランナは私の元夫と関係を持って、そこで病気をもらったようです」
不思議そうにするレイブルに、リーナが真実を伝えると、レイブルだけでなく、周りにいた兵士たちも驚愕の表情を浮かべた。
こうすることで、チゴノイ王国側からリーナに土地を返還するように求めることを防いだ。
「チゴノイ王国側は近いうちに自分たちが渡した土地が重要なものだったとすぐに気づくことになるでしょう」
リーナがノッシュにこう話してから10日後の昼過ぎ、リーナは例の場所に来ていた。
日差しは柔らかく、時折吹く風は少しひんやりしていたが、長袖のワンピースドレスにロングブーツ姿のをリーナにはちょうど良い気温だった。リーナの庭と名付けられた土地で、ムネラノ王国の植物の専門家と薬草の育て方などについて話をしていると、塀を作っている作業員のリーダが駆け寄ってきた。
「大変です。チゴノイ王国の王女と名乗る人が、たくさんの兵士と共にやって来ていて、リーナ様に会わせろとおっしゃっています」
「……チゴノイ王国の王女というと、エランナしかいないですね」
平民はチゴノイ王国の王女の名前は知っていても顔は知らない人が多い。
(使いを送ればいいのに、わざわざここまで本人が何をしに来たのかしら。私が平民になって惨めな生活を送っていると思って様子を見に来たとか?)
「嫌な思いをさせてしまってごめんなさい。応対は私がするから作業をしている人たちは休憩しておいてもらえるかしら」
「承知いたしました」
ムネラノ王国には女性が爵位を持てないという法律はない。リーナはムネラノ王国に土地を売り、それと同時に子爵の爵位を授けられた。リーナの庭を自由にできる権利ももらったため、ここで功績を挙げれば伯爵になることも可能だと言われている。
(エランナに邪魔はさせないわ)
そう思いながら、リーナはリーダーの男性にエランナのもとへ案内してもらう。
「お姉様!」
若い男性と馬に乗っていたエランナは、リーナをみた瞬間、彼の腕に抱かれたまま叫ぶ。
「お姉様、お願いよ! クヨキヨクの薬を譲ってほしいの! 倉庫にあったはずの薬がなぜか一つもないの!」
「それはそうよ。私が嫁入りする時に診療所に寄付したんだもの」
「どうしてそんなことをするのよ!?」
「私が作った薬だもの。どうしようが私の勝手でしょう?」
リーナは失笑して尋ねる。
「どうして薬が必要なの? 医者に診てもらって薬を処方してもらったらいいんじゃないの?」
「そ、それは……っ」
エランナは男性に目を向けて口を閉ざした。
(たしか、この男性って、チゴノイ王国のチャッタッヤ公爵家の次男のレイブルね)
レイブルは金色の髪に青い瞳を持つ美青年だ。目は細くて吊り上がり気味で、リーナを見下ろしている表情はとても冷たく見える。
「二人はとても仲良くなったようね。ところでムネラノ王国では、あなたの浮気が話題になっているけれど、チゴノイ王国側では情報が規制されているようね」
エランナの味方をする男性などどうでも良かったが、リーナが親切に教えると、レイブルは驚いた顔をしてエランナを見つめた。
「どういうこですか? 浮気をしたのはあなたなんですか?」
「そ、そんなことよりもお願いよ、お姉様! クヨキヨクが無理でも何か薬はあるでしょう? 痒くて仕方がないの! 薬がないなら作ってよ! お願い!」
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