【完結】どうしていつまでも愛してくれるなんて思えるの?

風見ゆうみ

文字の大きさ
19 / 32

17  自業自得ですわ

 現在のリーナはムネラノ王国の公爵と別れた状態で、結婚の際に国籍を変更したため、ムネラノ王国の国籍になっている。そのこともあってリーナがムネラノ王国の王家に土地を売ることは可能であり、支援を受けるために、リーナは土地をノッシュに売った。これでチゴノイ王国の一部の土地がムネラノ王国の管轄となった。
 こうすることで、チゴノイ王国側からリーナに土地を返還するように求めることを防いだ。

「チゴノイ王国側は近いうちに自分たちが渡した土地が重要なものだったとすぐに気づくことになるでしょう」
 
 リーナがノッシュにこう話してから10日後の昼過ぎ、リーナは例の場所に来ていた。
 日差しは柔らかく、時折吹く風は少しひんやりしていたが、長袖のワンピースドレスにロングブーツ姿のをリーナにはちょうど良い気温だった。リーナの庭と名付けられた土地で、ムネラノ王国の植物の専門家と薬草の育て方などについて話をしていると、塀を作っている作業員のリーダが駆け寄ってきた。

「大変です。チゴノイ王国の王女と名乗る人が、たくさんの兵士と共にやって来ていて、リーナ様に会わせろとおっしゃっています」
「……チゴノイ王国の王女というと、エランナしかいないですね」

 平民はチゴノイ王国の王女の名前は知っていても顔は知らない人が多い。

(使いを送ればいいのに、わざわざここまで本人が何をしに来たのかしら。私が平民になって惨めな生活を送っていると思って様子を見に来たとか?)

「嫌な思いをさせてしまってごめんなさい。応対は私がするから作業をしている人たちは休憩しておいてもらえるかしら」
「承知いたしました」

 ムネラノ王国には女性が爵位を持てないという法律はない。リーナはムネラノ王国に土地を売り、それと同時に子爵の爵位を授けられた。リーナの庭を自由にできる権利ももらったため、ここで功績を挙げれば伯爵になることも可能だと言われている。

(エランナに邪魔はさせないわ)

 そう思いながら、リーナはリーダーの男性にエランナのもとへ案内してもらう。

「お姉様!」
 
 若い男性と馬に乗っていたエランナは、リーナをみた瞬間、彼の腕に抱かれたまま叫ぶ。

「お姉様、お願いよ! クヨキヨクの薬を譲ってほしいの! 倉庫にあったはずの薬がなぜか一つもないの!」
「それはそうよ。私が嫁入りする時に診療所に寄付したんだもの」
「どうしてそんなことをするのよ!?」
「私が作った薬だもの。どうしようが私の勝手でしょう?」

 リーナは失笑して尋ねる。

「どうして薬が必要なの? 医者に診てもらって薬を処方してもらったらいいんじゃないの?」
「そ、それは……っ」

 エランナは男性に目を向けて口を閉ざした。

(たしか、この男性って、チゴノイ王国のチャッタッヤ公爵家の次男のレイブルね)

 レイブルは金色の髪に青い瞳を持つ美青年だ。目は細くて吊り上がり気味で、リーナを見下ろしている表情はとても冷たく見える。

「二人はとても仲良くなったようね。ところでムネラノ王国では、あなたの浮気が話題になっているけれど、チゴノイ王国側では情報が規制されているようね」

 エランナの味方をする男性などどうでも良かったが、リーナが親切に教えると、レイブルは驚いた顔をしてエランナを見つめた。

「どういうこですか? 浮気をしたのはあなたなんですか?」
「そ、そんなことよりもお願いよ、お姉様! クヨキヨクが無理でも何か薬はあるでしょう? 痒くて仕方がないの! 薬がないなら作ってよ! お願い!」
「痒くて仕方がない、ね」

 この言葉で、リーナは娼館の女性のことを思い出した。

(たしか、彼女も同じことを言っていたわ。素直に医者に話せば、それに合う薬を処方してもらえるでしょうに、自分が浮気したなんて言いたくないから正直に話せないといったところかしら)

「あなたは彼女の姉なのでしょう。妹が助けを求めているのに無視するつもりですか」
 
 エランナの病気のことなど何も知らないレイブルは、リーナを睨む。そんな彼に、リーナは答える。

「エランナの病気は自業自得ですわ。あんなことをしなければ感染しなかったのですから」
「感染?」
「そうですわ。エランナは私の元夫と関係を持って、そこで病気をもらったようです」

 不思議そうにするレイブルに、リーナが真実を伝えると、レイブルだけでなく、周りにいた兵士たちも驚愕の表情を浮かべた。

感想 63

あなたにおすすめの小説

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜
恋愛
 令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。  ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。 ※連載

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。