12 / 20
11 私と調理見習い
「許せないわ、主人をさしおいて、主人の好きな男性とイチャイチャするだなんて!」
「イチャイチャはしておりません…」
結局、食事が途中の状態だったけど、ヴァージニア様を部屋に送り届ける為に部屋を出て、今は彼女の部屋にいる。
それにしても、あれはイチャイチャと言うんだろうか?
わからない。
でも、私が他の人のあんな状況を見たら、イチャイチャと思ってしまうかもしれない。
となると、このまま、優柔不断な態度をとっていてはいけないわよね。
というか、私ははっきりと断っているんだけど伝わらないというか…。
「ちょっと、ブス! 聞いてるの!?」
「もちろん聞いております。イチャイチャはしておりませんと、先程、お伝えしましたが…」
「二人であんなに顔を近付けていたのに!?」
「あれは殿下が近付いてきただけです」
「信じられないわ! 本当に許せない!」
そう言って、化粧台の椅子に座っていたヴァージニア様は、私に化粧台の上に置いてあったアクセサリーケースを投げつけてきた。
顔をめがけて投げてきたので、慌てて腕でふさいだけれど、ケースの蓋についていた飾りの先が手の甲に当たって、少しだけ血が滲んだ。
「鈍臭いわね! それくらい避けなさいよ!」
「申し訳ございません」
「何よ、本当に気分が悪い! 私は悪くないからね! 今日はもう終わっていいわよ! その代わり、誰かメイドを連れてきて!」
「承知いたしました」
ため息をつきたくなるのを我慢して、床に落ちたアクセサリーをケースの中に戻し、元の位置に置いてから、ヴァージニア様の部屋を出て、メイド達が控えている部屋に行ってバトンタッチする。
相変わらず、彼女達は怯えた様子だけれど、素直に交代してくれた。
食事が途中だったので、さっきの食事がまだ置いてあるだろうかと思って見にいってみたけど、やはりさげられていて、しょうがないので厨房へと向かった。
「こんばんは」
厨房の中を覗くと、知り合いの料理見習いであるホークがいて、驚いた顔でこちらに振り返った。
「ルルアさん。どうしたんすか?」
「食事を食べそこねちゃって…。何か食べ物ある?」
ホークは子爵家の次男で、たしか今は17歳。
1年ほど前からここで働き始めた。
言葉遣いが荒いので、いつも料理長達からは怒られているみたいだけど、私はあまり気にしていないので、素で話してくれて良いと許可している。
まあ、私も子爵家の令嬢になったから、身分的には同等なんだけど。
彼はツーブロックにした薄い茶色の髪を持ち、あどけない可愛らしい顔立ちをしているので、メイド達にも人気がある。
「なんか簡単なもの作りますよ」
「いいの?」
「残り物しかないですけど」
「助かるわ」
作ってくれているのを待っていると、ホークが話しかけてくる。
「こっちでの侍女の仕事はどうなんすか?」
「大変っちゃ大変ね」
「あ、ルルアさん怪我してるじゃないっすか」
手の甲を指さされて、さっき怪我をした事を思い出した。
「大した事ないから大丈夫よ」
「無理しないようにして下さいね」
「ありがとう。ただ、ヴァージニア様を殿下が気にいるようには思えないのよね…」
「…ルルアさんは、アーク殿下をどう思ってるんすか?」
「それがわからないのよね…。今は王妃が嫌のほうが勝ってるというか…。でもそんな理由だと、殿下は中々諦めてくれないし…」
ふぅ、と小さくため息を吐くと、ホークが笑いながら言う。
「なら、俺と付き合いません?」
「は!?」
「さすがの殿下もルルアさんに恋人がいるって言ったら諦めるんじゃないすか?」
「いや、そんな事したら、ホークに命の危険が…」
「それって恋人候補を排除しようとしてるだけだと思いますよ。相手が恋人だったら、さすがに手を出せないんじゃないっすか?」
「…そんなものかしら」
「だって好きな女性の恋人を殺したりしたら、その女性に嫌われるのわかるでしょ、普通は」
あの人は普通じゃないからなぁ…。
そんな事を考えていると、私の晩御飯が出来上がったようで、トレイに一式をのせてくれると、ホークが言った。
「考えておいて下さいよ」
笑顔でそう言われて、その時の私はすぐに答えを返せなかった。
「イチャイチャはしておりません…」
結局、食事が途中の状態だったけど、ヴァージニア様を部屋に送り届ける為に部屋を出て、今は彼女の部屋にいる。
それにしても、あれはイチャイチャと言うんだろうか?
わからない。
でも、私が他の人のあんな状況を見たら、イチャイチャと思ってしまうかもしれない。
となると、このまま、優柔不断な態度をとっていてはいけないわよね。
というか、私ははっきりと断っているんだけど伝わらないというか…。
「ちょっと、ブス! 聞いてるの!?」
「もちろん聞いております。イチャイチャはしておりませんと、先程、お伝えしましたが…」
「二人であんなに顔を近付けていたのに!?」
「あれは殿下が近付いてきただけです」
「信じられないわ! 本当に許せない!」
そう言って、化粧台の椅子に座っていたヴァージニア様は、私に化粧台の上に置いてあったアクセサリーケースを投げつけてきた。
顔をめがけて投げてきたので、慌てて腕でふさいだけれど、ケースの蓋についていた飾りの先が手の甲に当たって、少しだけ血が滲んだ。
「鈍臭いわね! それくらい避けなさいよ!」
「申し訳ございません」
「何よ、本当に気分が悪い! 私は悪くないからね! 今日はもう終わっていいわよ! その代わり、誰かメイドを連れてきて!」
「承知いたしました」
ため息をつきたくなるのを我慢して、床に落ちたアクセサリーをケースの中に戻し、元の位置に置いてから、ヴァージニア様の部屋を出て、メイド達が控えている部屋に行ってバトンタッチする。
相変わらず、彼女達は怯えた様子だけれど、素直に交代してくれた。
食事が途中だったので、さっきの食事がまだ置いてあるだろうかと思って見にいってみたけど、やはりさげられていて、しょうがないので厨房へと向かった。
「こんばんは」
厨房の中を覗くと、知り合いの料理見習いであるホークがいて、驚いた顔でこちらに振り返った。
「ルルアさん。どうしたんすか?」
「食事を食べそこねちゃって…。何か食べ物ある?」
ホークは子爵家の次男で、たしか今は17歳。
1年ほど前からここで働き始めた。
言葉遣いが荒いので、いつも料理長達からは怒られているみたいだけど、私はあまり気にしていないので、素で話してくれて良いと許可している。
まあ、私も子爵家の令嬢になったから、身分的には同等なんだけど。
彼はツーブロックにした薄い茶色の髪を持ち、あどけない可愛らしい顔立ちをしているので、メイド達にも人気がある。
「なんか簡単なもの作りますよ」
「いいの?」
「残り物しかないですけど」
「助かるわ」
作ってくれているのを待っていると、ホークが話しかけてくる。
「こっちでの侍女の仕事はどうなんすか?」
「大変っちゃ大変ね」
「あ、ルルアさん怪我してるじゃないっすか」
手の甲を指さされて、さっき怪我をした事を思い出した。
「大した事ないから大丈夫よ」
「無理しないようにして下さいね」
「ありがとう。ただ、ヴァージニア様を殿下が気にいるようには思えないのよね…」
「…ルルアさんは、アーク殿下をどう思ってるんすか?」
「それがわからないのよね…。今は王妃が嫌のほうが勝ってるというか…。でもそんな理由だと、殿下は中々諦めてくれないし…」
ふぅ、と小さくため息を吐くと、ホークが笑いながら言う。
「なら、俺と付き合いません?」
「は!?」
「さすがの殿下もルルアさんに恋人がいるって言ったら諦めるんじゃないすか?」
「いや、そんな事したら、ホークに命の危険が…」
「それって恋人候補を排除しようとしてるだけだと思いますよ。相手が恋人だったら、さすがに手を出せないんじゃないっすか?」
「…そんなものかしら」
「だって好きな女性の恋人を殺したりしたら、その女性に嫌われるのわかるでしょ、普通は」
あの人は普通じゃないからなぁ…。
そんな事を考えていると、私の晩御飯が出来上がったようで、トレイに一式をのせてくれると、ホークが言った。
「考えておいて下さいよ」
笑顔でそう言われて、その時の私はすぐに答えを返せなかった。
あなたにおすすめの小説
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
役立たずのお飾り令嬢だと婚約破棄されましたが、田舎で幼馴染領主様を支えて幸せに暮らします
水都 ミナト
恋愛
伯爵令嬢であるクリスティーナは、婚約者であるフィリップに「役立たずなお飾り令嬢」と蔑まれ、婚約破棄されてしまう。
事業が波に乗り調子付いていたフィリップにうんざりしていたクリスティーヌは快く婚約解消を受け入れ、幼い頃に頻繁に遊びに行っていた田舎のリアス領を訪れることにする。
かつては緑溢れ、自然豊かなリアスの地は、土地が乾いてすっかり寂れた様子だった。
そこで再会したのは幼馴染のアルベルト。彼はリアスの領主となり、リアスのために奔走していた。
クリスティーナは、彼の力になるべくリアスの地に残ることにするのだが…
★全7話★
※なろう様、カクヨム様でも公開中です。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
【完結】一途すぎる公爵様は眠り姫を溺愛している
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
リュシエンヌ・ソワイエは16歳の子爵令嬢。皆が憧れるマルセル・クレイン伯爵令息に婚約を申し込まれたばかりで幸せいっぱいだ。
しかしある日を境にリュシエンヌは眠りから覚めなくなった。本人は自覚が無いまま12年の月日が過ぎ、目覚めた時には父母は亡くなり兄は結婚して子供がおり、さらにマルセルはリュシエンヌの親友アラベルと結婚していた。
突然のことに狼狽えるリュシエンヌ。しかも兄嫁はリュシエンヌを厄介者扱いしていて実家にはいられそうもない。
そんな彼女に手を差し伸べたのは、若きヴォルテーヌ公爵レオンだった……。
『残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました』『結婚前日に友人と入れ替わってしまった……!』に出てくる魔法大臣ゼインシリーズです。
表紙は「簡単表紙メーカー2」で作成しました。
侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい
花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。
ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。
あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…?
ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの??
そして婚約破棄はどうなるの???
ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。
2度目の結婚は貴方と
朧霧
恋愛
前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか?
魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。
重複投稿作品です。(小説家になろう)
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。