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3 勝ちです
「も、申し訳ございません」
メイドは尻餅をついたまま、私を見上げて謝ってきた。
「レイティア様。当主様方のお言葉を思い出してください」
私の後ろに控えていた騎士が、小声でやんわりと窘めてくる。
別に本気で喉を潰すつもりはなかったんだけれど、それだけ凄みが出ていたということかしら?
泣きべそをかいているタワオ家のメイドを見下ろして、小さく息を吐く。
「あなたが喧嘩を売ってきたから買っただけよ。もう戦意喪失とみなしていいのかしら?」
「は、はい……! 申し訳ございませんでした!」
メイドは首を何度も横に振った後に、また謝ってきた。
「あのね。謝れば良いという問題じゃないのよ? 二度とさっきみたいな舐めた真似をしないでちょうだい。それから、部屋に案内してくれる? まさか、まだ用意していないとは言わないわよね?」
「二度とあんなことはいたしません! そして、もちろんお部屋は用意してございます!」
「それなら良いわ。あと、確認しておきたいんだけれど、あなたの態度の悪さは生まれつき? それとも、誰かからそうするように言われたの?」
腰が抜けていたのか、ゆっくりと立ち上がった彼女に箒を返して尋ねた。
すると、メイドは箒を抱きしめて小声で答える。
「そ、それは……、そのっ、フェアララ様から……」
「フェアララさんねぇ」
リュージ様の愛人のフェアララ・スクブセカは男爵令嬢だ。
調べたところ、リュージ様とは夜会で知り合い、その日から実家であるスクブセカ男爵家には戻っていない。
2人が出会ったのは3年ほど前からで、リュージ様が20歳、フェアララさんが18歳の時だと聞いている。
なぜ、2人が結婚しなかったかというと、隠居している両親が男爵家の娘を嫁にすることを良しとしなかったからだ。
現在、タワオ前公爵夫妻は国王陛下が用意した僻地の別荘で暮らしている。
本人たちは気付いていないようだけれど、国王陛下も含め、貴族たちはタワオ公爵家が大嫌いだった。
彼らがめったに王都に出てこれないように遠く離れた地に、今までのお礼だと言って、余生をそこで過ごすことを条件に、わざわざ隠居用の別荘を用意したらしい。
フェアララさんに会うのも楽しみだけれど、そこまで嫌われている夫妻の息子のリュージ様がどんな最低野郎なのかも楽しみね。
あと、ここに連れてこられた人たちはどこにいるのかしら。
別館があるようだし、そちらのほうにいる?
少しでも早く実権を奪って税の変更もしなくちゃいけないわ。
やらなければいけないことが山積みね。
「あ、あの……」
黙り込んで何も言わなくなった私に不安を覚えたのか、タワオ家のメイドが声を掛けてきた。
「ごめんなさい、考え事をしていたわ。私の部屋まで案内してくれる?」
「はい! ご案内いたします!」
メイドが一人で先に歩き出そうとしたので、慌てて呼び止める。
そして、ナラシール家のメイドが持っている荷物を彼女に持つように言うと、文句も言わずに荷物を持ってくれた。
持ちきれない荷物はタワオ邸に残ってくれる騎士たちに運んでもらうようにお願いして、今日のところはナラシール家のメイドたちには帰ってもらった。
彼女たちがいると、私の行動が全部お父様たちに筒抜けになってしまうからだ。
それに、彼女たちをトラブルに巻き込むわけにはいかないものね。
私の部屋は2階にあるらしい。
メイドの後に付いていくと、2階に上がってすぐにある部屋の前で、メイドは足を止めた。
「こちらになります!」
すっかり低姿勢になったメイドは、部屋の扉を開けてくれて、部屋の明かりをつけてくれた。
中に入ってみると、ベッドと書き物机にチェスト、ドレッサーや本棚など、必要な家具は揃っていた。
ただ、狭い部屋に詰め込まれているせいで、歩くスペースがほとんどない。
「ごちゃごちゃしているわね」
呟いた後は家具と家具の隙間を通って、奥にある窓にたどり着く。
閉められていたカーテンを開けて外を見ると、目の前は木の葉っぱで覆われていて、光がほとんど入ってこない。
「まあ、部屋が用意されていただけ良しとしましょうか」
別に狭い部屋は嫌いではないし、ここまで色んなものに囲まれて眠ることは今までなかった。
新鮮で良いかもしれないわ。
窓を閉めてメイドのほうに振り返ると、深々と頭を下げてきた。
「あの、申し訳ございません! フェアララ様から奥様に嫌がらせをしろと言われたんです。少しでも早くに離婚してもらえるようにしろと命令を受けたので、先ほどのような無礼をしてしまいました!」
変わり身のはやいメイドだわ。
まあ、こういうタイプのほうが生き残れるのよね。
かといって、そう簡単に許すつもりはない。
「あなたはこの家に長くいるの?」
「は、はい! ですから、この家のことについては詳しいです!」
「そう。なら、リュージ様が今、どこにいるのかはわかるのよね?」
「もちろんです。でも、今頃はきっと……」
「フェアララさんと一緒ということね」
騎士には持ってきてくれていた荷物を部屋の中に入れるだけ入れてもらい、部屋の前で待機してもらうことにした。
私がいない間に他の使用人に勝手に部屋の中に入られても困るからだ。
「あの、私はジーネと申します」
彼女はフェアララさんの機嫌を取ることは諦めて、私に媚びを売ることに決めたようだった。
彼女を信用はできない。
でも、私はこの屋敷についての知識はゼロだから、聞ける人間を作っておくのは悪いことではないかもしれない。
「そう。これからよろしくね。ところでこの屋敷には使用人はあなた以外にいないの?」
「もちろんいますが、そう多くはありません」
「私の部屋の家具を運び入れてくれたのは他のメイド?」
「それは……、そうです」
ジーネは明らかに何か隠している。
目が泳いでいるからすぐにわかった。
もしかして、部屋に家具を運び入れたのは、この家に連れてこられた人たちなのかもしれないわ。
何か手がかりになるようなものを残しておいてくれたら良いのだけど難しいかしら。
とにかく、リュージ様に挨拶に行くことにして、必要な書類を持ち、腰には少し大きめのウエストポーチを巻いて動くことにした。
ポーチの中にはお気に入りの扇が入っている。
リュージ様の執務室や愛の巣などは全て5階にあった。
5階に来てみると、このフロアだけワインレッドのカーペットがまるで新品のように綺麗だということに気が付いた。
掃除も他の階より行き届いているようだから、この階だけ重点的に掃除をさせているのかもしれない。
ジーネは迷いなく進み、突き当たりの部屋の扉をノックした。
しばらく待っても返事は返ってこない。
3度叩いても返事が返ってこなかったので、痺れを切らした私は部屋の前で叫ぶ。
「何だか火をつけたくなってきたわ!」
「火、火をつける!?」
ジーネが細い目を見開き、驚いた様子で聞き返してきた。
「ええ。この部屋の扉なんてよく燃えそうで良くないかしら?」
コンコンとわざと大きめに叩いて、茶色の2枚扉を燃やそうとしていると仄めかしてみた。
すると、部屋の中が騒がしくなり、少ししてから勢い良く扉が開けられた。
「なんて女だ! 家の中に火をつけるだと!? 非常識な女め!」
「リュージ様に出てきてもらうための嘘だったんですが、本当に出てきてくださるだなんて! 思った以上に優しい方ですのね」
まさか、本当にこんな手に引っかかってくれるだなんて思ってなかった。
単純そうだし助かるわ。
私の目の前に現れたリュージ様は、評判通りに顔とスタイルは良かった。
銀色のフリルのついたブラウスに金色のズボンという、珍しい色合いの服を着ている。
金色の長い髪を後ろで一つにまとめ、エメラルドグリーンの瞳はまるで宝石のように綺麗だ。
ジェドは好青年のカッコ良いタイプだけれど、リュージ様はミステリアスな雰囲気の美青年といった感じに見えた。
でも、そのミステリアスという印象は彼が放った言葉のせいで一瞬にして消え去る。
「勝手に嫁にきておいて何だと言うんだ、このブサイクのクソ女が!」
「……ブサイクのクソ女」
あまりの言葉遣いの悪さとボキャブラリーの無さに呆れてしまう。
悪口ならもっと他にもあるでしょうに。
見た目は大人、中身は子供なのかしら。
「おお、お前のことだよ。何だよ、悲しいか? 泣いてみろよ。ブサイクな顔が余計にブサイクになるだけだろうけどな?」
「そんなことを言われたくらいで泣く気は一切ありませんのでご心配なく。それに私はあなたに好かれるために生まれたわけでもございません。まあ、どんな理由であれ、私はあなたの妻になったわけです。ご挨拶させていただきたいのですが」
私よりも頭一つ分背の高いリュージ様は底意地の悪そうな顔で私を見てから首を横に振る。
「お前が俺の妻? 書類上のだろ? 俺の妻はお前じゃない! 俺には彼女がいるんだ!」
「そうよ! リュージ様の妻は私よ!」
ウェーブのかかった水色の腰まである髪を持つ女性が部屋の奥から現れて、リュージ様の腕にしがみついた。
興奮しているのか、耳に響く甲高い声だった。
黒のメイド服を着ているし、発言からして彼女がフェアララさんのようだ。
そう思って見てみれば可愛い顔をしているかとも思った。
でも、すぐに思い直す。
私を睨みつけて歯をむき出しにしている顔は可愛くも何ともなかったからだ。
「わかりましたわ。では、その証言は裁判所で改めてお願いできますか?」
「……は? 裁判所?」
リュージ様が間抜けな顔になって聞き返してきた。
「そうです。そこでお話をいたしましょう? あなた方は自分たちが愛し合っていると言いたいんですわよね?」
「そうだ!」
「そうよ!」
返事を返してきた2人に向かって微笑む。
「書類上とはいえ、私とリュージ様は結婚したのです。ですから、あなた方がやっていることは浮気ですよ? しかも結婚1日目からこんな感じなんですもの。裁判を起こせば絶対に私の勝ちです」
やっていることが噂通りなら裁判なんかでは済まさないけどね?
「嫌よ、私は別れたくない!」
「俺だってそうだ! この性悪女め! 何が目的なんだ!」
私の言葉を聞いた2人は、身を寄せ合って私を睨み付けてきたのだった。
メイドは尻餅をついたまま、私を見上げて謝ってきた。
「レイティア様。当主様方のお言葉を思い出してください」
私の後ろに控えていた騎士が、小声でやんわりと窘めてくる。
別に本気で喉を潰すつもりはなかったんだけれど、それだけ凄みが出ていたということかしら?
泣きべそをかいているタワオ家のメイドを見下ろして、小さく息を吐く。
「あなたが喧嘩を売ってきたから買っただけよ。もう戦意喪失とみなしていいのかしら?」
「は、はい……! 申し訳ございませんでした!」
メイドは首を何度も横に振った後に、また謝ってきた。
「あのね。謝れば良いという問題じゃないのよ? 二度とさっきみたいな舐めた真似をしないでちょうだい。それから、部屋に案内してくれる? まさか、まだ用意していないとは言わないわよね?」
「二度とあんなことはいたしません! そして、もちろんお部屋は用意してございます!」
「それなら良いわ。あと、確認しておきたいんだけれど、あなたの態度の悪さは生まれつき? それとも、誰かからそうするように言われたの?」
腰が抜けていたのか、ゆっくりと立ち上がった彼女に箒を返して尋ねた。
すると、メイドは箒を抱きしめて小声で答える。
「そ、それは……、そのっ、フェアララ様から……」
「フェアララさんねぇ」
リュージ様の愛人のフェアララ・スクブセカは男爵令嬢だ。
調べたところ、リュージ様とは夜会で知り合い、その日から実家であるスクブセカ男爵家には戻っていない。
2人が出会ったのは3年ほど前からで、リュージ様が20歳、フェアララさんが18歳の時だと聞いている。
なぜ、2人が結婚しなかったかというと、隠居している両親が男爵家の娘を嫁にすることを良しとしなかったからだ。
現在、タワオ前公爵夫妻は国王陛下が用意した僻地の別荘で暮らしている。
本人たちは気付いていないようだけれど、国王陛下も含め、貴族たちはタワオ公爵家が大嫌いだった。
彼らがめったに王都に出てこれないように遠く離れた地に、今までのお礼だと言って、余生をそこで過ごすことを条件に、わざわざ隠居用の別荘を用意したらしい。
フェアララさんに会うのも楽しみだけれど、そこまで嫌われている夫妻の息子のリュージ様がどんな最低野郎なのかも楽しみね。
あと、ここに連れてこられた人たちはどこにいるのかしら。
別館があるようだし、そちらのほうにいる?
少しでも早く実権を奪って税の変更もしなくちゃいけないわ。
やらなければいけないことが山積みね。
「あ、あの……」
黙り込んで何も言わなくなった私に不安を覚えたのか、タワオ家のメイドが声を掛けてきた。
「ごめんなさい、考え事をしていたわ。私の部屋まで案内してくれる?」
「はい! ご案内いたします!」
メイドが一人で先に歩き出そうとしたので、慌てて呼び止める。
そして、ナラシール家のメイドが持っている荷物を彼女に持つように言うと、文句も言わずに荷物を持ってくれた。
持ちきれない荷物はタワオ邸に残ってくれる騎士たちに運んでもらうようにお願いして、今日のところはナラシール家のメイドたちには帰ってもらった。
彼女たちがいると、私の行動が全部お父様たちに筒抜けになってしまうからだ。
それに、彼女たちをトラブルに巻き込むわけにはいかないものね。
私の部屋は2階にあるらしい。
メイドの後に付いていくと、2階に上がってすぐにある部屋の前で、メイドは足を止めた。
「こちらになります!」
すっかり低姿勢になったメイドは、部屋の扉を開けてくれて、部屋の明かりをつけてくれた。
中に入ってみると、ベッドと書き物机にチェスト、ドレッサーや本棚など、必要な家具は揃っていた。
ただ、狭い部屋に詰め込まれているせいで、歩くスペースがほとんどない。
「ごちゃごちゃしているわね」
呟いた後は家具と家具の隙間を通って、奥にある窓にたどり着く。
閉められていたカーテンを開けて外を見ると、目の前は木の葉っぱで覆われていて、光がほとんど入ってこない。
「まあ、部屋が用意されていただけ良しとしましょうか」
別に狭い部屋は嫌いではないし、ここまで色んなものに囲まれて眠ることは今までなかった。
新鮮で良いかもしれないわ。
窓を閉めてメイドのほうに振り返ると、深々と頭を下げてきた。
「あの、申し訳ございません! フェアララ様から奥様に嫌がらせをしろと言われたんです。少しでも早くに離婚してもらえるようにしろと命令を受けたので、先ほどのような無礼をしてしまいました!」
変わり身のはやいメイドだわ。
まあ、こういうタイプのほうが生き残れるのよね。
かといって、そう簡単に許すつもりはない。
「あなたはこの家に長くいるの?」
「は、はい! ですから、この家のことについては詳しいです!」
「そう。なら、リュージ様が今、どこにいるのかはわかるのよね?」
「もちろんです。でも、今頃はきっと……」
「フェアララさんと一緒ということね」
騎士には持ってきてくれていた荷物を部屋の中に入れるだけ入れてもらい、部屋の前で待機してもらうことにした。
私がいない間に他の使用人に勝手に部屋の中に入られても困るからだ。
「あの、私はジーネと申します」
彼女はフェアララさんの機嫌を取ることは諦めて、私に媚びを売ることに決めたようだった。
彼女を信用はできない。
でも、私はこの屋敷についての知識はゼロだから、聞ける人間を作っておくのは悪いことではないかもしれない。
「そう。これからよろしくね。ところでこの屋敷には使用人はあなた以外にいないの?」
「もちろんいますが、そう多くはありません」
「私の部屋の家具を運び入れてくれたのは他のメイド?」
「それは……、そうです」
ジーネは明らかに何か隠している。
目が泳いでいるからすぐにわかった。
もしかして、部屋に家具を運び入れたのは、この家に連れてこられた人たちなのかもしれないわ。
何か手がかりになるようなものを残しておいてくれたら良いのだけど難しいかしら。
とにかく、リュージ様に挨拶に行くことにして、必要な書類を持ち、腰には少し大きめのウエストポーチを巻いて動くことにした。
ポーチの中にはお気に入りの扇が入っている。
リュージ様の執務室や愛の巣などは全て5階にあった。
5階に来てみると、このフロアだけワインレッドのカーペットがまるで新品のように綺麗だということに気が付いた。
掃除も他の階より行き届いているようだから、この階だけ重点的に掃除をさせているのかもしれない。
ジーネは迷いなく進み、突き当たりの部屋の扉をノックした。
しばらく待っても返事は返ってこない。
3度叩いても返事が返ってこなかったので、痺れを切らした私は部屋の前で叫ぶ。
「何だか火をつけたくなってきたわ!」
「火、火をつける!?」
ジーネが細い目を見開き、驚いた様子で聞き返してきた。
「ええ。この部屋の扉なんてよく燃えそうで良くないかしら?」
コンコンとわざと大きめに叩いて、茶色の2枚扉を燃やそうとしていると仄めかしてみた。
すると、部屋の中が騒がしくなり、少ししてから勢い良く扉が開けられた。
「なんて女だ! 家の中に火をつけるだと!? 非常識な女め!」
「リュージ様に出てきてもらうための嘘だったんですが、本当に出てきてくださるだなんて! 思った以上に優しい方ですのね」
まさか、本当にこんな手に引っかかってくれるだなんて思ってなかった。
単純そうだし助かるわ。
私の目の前に現れたリュージ様は、評判通りに顔とスタイルは良かった。
銀色のフリルのついたブラウスに金色のズボンという、珍しい色合いの服を着ている。
金色の長い髪を後ろで一つにまとめ、エメラルドグリーンの瞳はまるで宝石のように綺麗だ。
ジェドは好青年のカッコ良いタイプだけれど、リュージ様はミステリアスな雰囲気の美青年といった感じに見えた。
でも、そのミステリアスという印象は彼が放った言葉のせいで一瞬にして消え去る。
「勝手に嫁にきておいて何だと言うんだ、このブサイクのクソ女が!」
「……ブサイクのクソ女」
あまりの言葉遣いの悪さとボキャブラリーの無さに呆れてしまう。
悪口ならもっと他にもあるでしょうに。
見た目は大人、中身は子供なのかしら。
「おお、お前のことだよ。何だよ、悲しいか? 泣いてみろよ。ブサイクな顔が余計にブサイクになるだけだろうけどな?」
「そんなことを言われたくらいで泣く気は一切ありませんのでご心配なく。それに私はあなたに好かれるために生まれたわけでもございません。まあ、どんな理由であれ、私はあなたの妻になったわけです。ご挨拶させていただきたいのですが」
私よりも頭一つ分背の高いリュージ様は底意地の悪そうな顔で私を見てから首を横に振る。
「お前が俺の妻? 書類上のだろ? 俺の妻はお前じゃない! 俺には彼女がいるんだ!」
「そうよ! リュージ様の妻は私よ!」
ウェーブのかかった水色の腰まである髪を持つ女性が部屋の奥から現れて、リュージ様の腕にしがみついた。
興奮しているのか、耳に響く甲高い声だった。
黒のメイド服を着ているし、発言からして彼女がフェアララさんのようだ。
そう思って見てみれば可愛い顔をしているかとも思った。
でも、すぐに思い直す。
私を睨みつけて歯をむき出しにしている顔は可愛くも何ともなかったからだ。
「わかりましたわ。では、その証言は裁判所で改めてお願いできますか?」
「……は? 裁判所?」
リュージ様が間抜けな顔になって聞き返してきた。
「そうです。そこでお話をいたしましょう? あなた方は自分たちが愛し合っていると言いたいんですわよね?」
「そうだ!」
「そうよ!」
返事を返してきた2人に向かって微笑む。
「書類上とはいえ、私とリュージ様は結婚したのです。ですから、あなた方がやっていることは浮気ですよ? しかも結婚1日目からこんな感じなんですもの。裁判を起こせば絶対に私の勝ちです」
やっていることが噂通りなら裁判なんかでは済まさないけどね?
「嫌よ、私は別れたくない!」
「俺だってそうだ! この性悪女め! 何が目的なんだ!」
私の言葉を聞いた2人は、身を寄せ合って私を睨み付けてきたのだった。
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