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11 馬鹿な王太子と妹
ルディが言うには陛下は息子可愛さに甘やかしてしまった、と嘆いておられたらしい。
それについては本当にそう思う。
(王太子の立場であれはないでしょう。もし、アル殿下が即位したら、国を出たくなるかもしれないわ。それに一人だけに甘いのも納得いかない)
応接室で私の向かい側のソファに座っているルディを見つめる。
ルディは意地悪なところもあるけれど、アル殿下みたいに何も考えてないわけじゃない。
ルディが認めている第三王子殿下が、ちゃんと育っているのなら、個人の性格の問題だけな気はする。
でも、放置していたことは問題だわ。
「これでアルフレッド殿下と婚約の解消はできそうね」
「と思ってたんだけど、今のところ兄上は嫌がってる」
「どうして嫌がるのよって……、お金のためね」
(陛下が婚約の解消を中々、認められなったのはそのせいもあるかもしれないわね)
「兄上はリナと結婚して、ルーナを側室にするつもりじゃないかな」
「本当に最低な人だわ」
鼻で笑ってから、ルディに尋ねる。
「やはり、ここは動かぬ証拠、言い訳できない現場を押さえないといけないわよね?」
「それはそうかもしれないけど、例えば君はどんなものを考えてるの?」
ルディはお茶を一口飲んで、喉を潤してから尋ねてきた。
「そうね。考えられるとしたら、前みたいにイチャイチャしてるところじゃない?」
「そう上手くはいかないだろ。向こうだって少しは考える頭はあるんじゃない?」
「あるなら、あんなに堂々と浮気するかしら?」
「ルーナはリナから兄上を奪い取る気しかないから、兄上が自分のものになればそれで良いのかもしれないけど、兄上は自分の身が可愛いだろうから」
「とにかく、記録できる魔道具があるなら用意してもらえない? 私たちが言っても証拠がないで終わってしまうのなら、同じことをしても無駄だもの」
ルディは私のお願いに無言で頷いた。
*****
そして、数日後のティータイムの時間。
ルーナと私は、両陛下から招待されて登城していた。
今現在は私とルディ、ルーナとアル殿下の四人でテラスでお茶を飲んでいた。
最初は四人で話をしていたのだけど、ルーナが私に見せつけるようにアル殿下にすり寄りはじめた。
だから、隣に置かれている別テーブルに行くようににお願いした。
私に見せつけたいルーナは嫌がったけれど、アル殿下が彼女を強引に隣のテーブルに連れて行ってくれた。
現在のアル殿下はルーナを自分の膝の上にのせ、二人で同じ飲み物を分け合っている。
周りにいるメイドや騎士はどこか冷めた目で二人を見つめていた。
「私に見せつけたいんでしょうけど、羨ましい気持ちには一切ならないわ」
「というか、本当に二人はバカだよね」
「馬鹿だからやりやすいわ。そういえば、こういう時のリナはどんな反応だったの?」
「そうだな、泣いてたかな」
「……何で泣くのよ。というか、それなら泣き真似したほうが良い?」
「かもしれない」
ルディが頷いたので、うわーん、悲しい、しくしく、とやっていると、ルーナの笑い声が大きくなった。
「うふふふ。やだ、アルフレッド殿下ったらあ」
「本当に可愛いね、ルーナは」
「やだ。どこを触っていらっしゃるの? あ、駄目ですぅ」
何をやっているのかと顔を上げて見てみると、アル殿下がルーナのドレスの中に手を突っ込んでいた。
「うわあ、何あれ?」
「見たくもないものを見せつけようとしてきてるね。本当に迷惑だよ」
「今、陛下を呼んできたら、ちょうどいいんじゃない? 動かぬ証拠じゃない!」
「俺が動いたら気付かれるかも」
「それじゃあ、何か良い方法はないの?」
「あるよ」
ルディがテーブルに身を乗り出したので、私も同じようにして、ルディの顔に自分の顔を近付ける。
(意識してしまうけど、そんな場合じゃない!)
自分に言い聞かせて、ルディとひそひそ話をしていると、ルナの声がより大きくなる。
「アルフレッド殿下ったらぁ、駄目ですぅ!」
「ああ、可愛いねルーナ。良かったら部屋で続きをしないか」
「やだ、アルフレッド殿下ったら、まだ明るいのに、そんなの駄目です!」
(何するつもりなのよ。というか、やっぱりそういう関係だったのね?)
「リナ、泣き真似を続けて」
「……わかった」
ルディに言われ、テーブルに突っ伏し、顔は見えないようにして泣き真似を続けた。
私の頭の上に何かのった気がしたけど、今は泣き真似に専念する。
「ねえ、アルフレッド殿下ぁ。アルフレッド殿下は私のことが好きですか?」
「ああ、ルーナのことが好きだよ」
「リナお姉さまよりぃ?」
ルーナの声のボリュームがまた大きくなった。
「リナ、いい調子だ。そのまま長引かせて」
どうやら、頭の上にのったのは、ルディの手だったらしい。
ルディが頭から背中に手を移し、優しく撫でてくれた。
うわーん、と大袈裟な泣き声、いや、本当のリナの泣き方を思い出しながら泣き真似をしてみた。
「当たり前だ。リナと結婚するのはお金の為だ。愛なんてない。最近のリナも可愛くはなったけどね」
「アルフレッド殿下、私も大好きぃ」
「ああ、可愛いルーナ。リナの立場が君なら良かったのに」
「私もそう思いますぅ」
ルーナが甘ったるい声を出した、その時だった。
「アルフレッド殿下、どういうことでしょうか。そして、ルーナもだ」
見知らぬ男性の声が聞こえたので、顔を上げて視線を向ける。
そこにいたのは厳しい表情の中年の男性だった。
ダークブラウンの上下のスーツを着た、長身痩躯で眉目秀麗な紳士は、アル殿下たちを睨みつけている。
その横には手と手を取り合って、ショックな表情を浮かべている、王妃陛下と同じ年代の女性。
見知らぬ女性のほうは、リナに雰囲気が似ている気がした。
そして、女性二人の隣には、憤怒の表情を浮かべた国王陛下がいた。
それについては本当にそう思う。
(王太子の立場であれはないでしょう。もし、アル殿下が即位したら、国を出たくなるかもしれないわ。それに一人だけに甘いのも納得いかない)
応接室で私の向かい側のソファに座っているルディを見つめる。
ルディは意地悪なところもあるけれど、アル殿下みたいに何も考えてないわけじゃない。
ルディが認めている第三王子殿下が、ちゃんと育っているのなら、個人の性格の問題だけな気はする。
でも、放置していたことは問題だわ。
「これでアルフレッド殿下と婚約の解消はできそうね」
「と思ってたんだけど、今のところ兄上は嫌がってる」
「どうして嫌がるのよって……、お金のためね」
(陛下が婚約の解消を中々、認められなったのはそのせいもあるかもしれないわね)
「兄上はリナと結婚して、ルーナを側室にするつもりじゃないかな」
「本当に最低な人だわ」
鼻で笑ってから、ルディに尋ねる。
「やはり、ここは動かぬ証拠、言い訳できない現場を押さえないといけないわよね?」
「それはそうかもしれないけど、例えば君はどんなものを考えてるの?」
ルディはお茶を一口飲んで、喉を潤してから尋ねてきた。
「そうね。考えられるとしたら、前みたいにイチャイチャしてるところじゃない?」
「そう上手くはいかないだろ。向こうだって少しは考える頭はあるんじゃない?」
「あるなら、あんなに堂々と浮気するかしら?」
「ルーナはリナから兄上を奪い取る気しかないから、兄上が自分のものになればそれで良いのかもしれないけど、兄上は自分の身が可愛いだろうから」
「とにかく、記録できる魔道具があるなら用意してもらえない? 私たちが言っても証拠がないで終わってしまうのなら、同じことをしても無駄だもの」
ルディは私のお願いに無言で頷いた。
*****
そして、数日後のティータイムの時間。
ルーナと私は、両陛下から招待されて登城していた。
今現在は私とルディ、ルーナとアル殿下の四人でテラスでお茶を飲んでいた。
最初は四人で話をしていたのだけど、ルーナが私に見せつけるようにアル殿下にすり寄りはじめた。
だから、隣に置かれている別テーブルに行くようににお願いした。
私に見せつけたいルーナは嫌がったけれど、アル殿下が彼女を強引に隣のテーブルに連れて行ってくれた。
現在のアル殿下はルーナを自分の膝の上にのせ、二人で同じ飲み物を分け合っている。
周りにいるメイドや騎士はどこか冷めた目で二人を見つめていた。
「私に見せつけたいんでしょうけど、羨ましい気持ちには一切ならないわ」
「というか、本当に二人はバカだよね」
「馬鹿だからやりやすいわ。そういえば、こういう時のリナはどんな反応だったの?」
「そうだな、泣いてたかな」
「……何で泣くのよ。というか、それなら泣き真似したほうが良い?」
「かもしれない」
ルディが頷いたので、うわーん、悲しい、しくしく、とやっていると、ルーナの笑い声が大きくなった。
「うふふふ。やだ、アルフレッド殿下ったらあ」
「本当に可愛いね、ルーナは」
「やだ。どこを触っていらっしゃるの? あ、駄目ですぅ」
何をやっているのかと顔を上げて見てみると、アル殿下がルーナのドレスの中に手を突っ込んでいた。
「うわあ、何あれ?」
「見たくもないものを見せつけようとしてきてるね。本当に迷惑だよ」
「今、陛下を呼んできたら、ちょうどいいんじゃない? 動かぬ証拠じゃない!」
「俺が動いたら気付かれるかも」
「それじゃあ、何か良い方法はないの?」
「あるよ」
ルディがテーブルに身を乗り出したので、私も同じようにして、ルディの顔に自分の顔を近付ける。
(意識してしまうけど、そんな場合じゃない!)
自分に言い聞かせて、ルディとひそひそ話をしていると、ルナの声がより大きくなる。
「アルフレッド殿下ったらぁ、駄目ですぅ!」
「ああ、可愛いねルーナ。良かったら部屋で続きをしないか」
「やだ、アルフレッド殿下ったら、まだ明るいのに、そんなの駄目です!」
(何するつもりなのよ。というか、やっぱりそういう関係だったのね?)
「リナ、泣き真似を続けて」
「……わかった」
ルディに言われ、テーブルに突っ伏し、顔は見えないようにして泣き真似を続けた。
私の頭の上に何かのった気がしたけど、今は泣き真似に専念する。
「ねえ、アルフレッド殿下ぁ。アルフレッド殿下は私のことが好きですか?」
「ああ、ルーナのことが好きだよ」
「リナお姉さまよりぃ?」
ルーナの声のボリュームがまた大きくなった。
「リナ、いい調子だ。そのまま長引かせて」
どうやら、頭の上にのったのは、ルディの手だったらしい。
ルディが頭から背中に手を移し、優しく撫でてくれた。
うわーん、と大袈裟な泣き声、いや、本当のリナの泣き方を思い出しながら泣き真似をしてみた。
「当たり前だ。リナと結婚するのはお金の為だ。愛なんてない。最近のリナも可愛くはなったけどね」
「アルフレッド殿下、私も大好きぃ」
「ああ、可愛いルーナ。リナの立場が君なら良かったのに」
「私もそう思いますぅ」
ルーナが甘ったるい声を出した、その時だった。
「アルフレッド殿下、どういうことでしょうか。そして、ルーナもだ」
見知らぬ男性の声が聞こえたので、顔を上げて視線を向ける。
そこにいたのは厳しい表情の中年の男性だった。
ダークブラウンの上下のスーツを着た、長身痩躯で眉目秀麗な紳士は、アル殿下たちを睨みつけている。
その横には手と手を取り合って、ショックな表情を浮かべている、王妃陛下と同じ年代の女性。
見知らぬ女性のほうは、リナに雰囲気が似ている気がした。
そして、女性二人の隣には、憤怒の表情を浮かべた国王陛下がいた。
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