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12 王太子との婚約破棄
「アルフレッド、貴様は一体何をしているんだ!」
国王陛下は隣の男性と同じく眉目秀麗ではあるけれど、どこか気難しそうな顔をしているし、がっしりとした体型だ。
見知らぬ男性は細身で華奢な感じだけど、陛下は服の上からでもわかるくらいに筋肉がついている。
国王陛下の貫禄なのか、眼光は鋭く、威圧感が半端ない。
「ち、父上!」
「きゃん!」
アル殿下が膝に乗せていたルーナを押し退けようとした。
でも、ドレスに突っ込んでいた手が簡単に抜けず、ルーナのガーターベルトが見えるハプニングまで起きてしまった。
でも、当人たちはそれどころではない。
もっと二人の様子をはっきりと見たくて、体を起こした。
すると、私の肩に黄色い手のひらサイズの鳥が止まった。
驚きながらも手を差し出すと、指にチョコンと乗って、黄色の羽を広げてピピ、と鳴いた。
鳥が気にはなるけど、アル殿下たちに視線を戻す。
陛下は、アル殿下の胸ぐらを片手で掴んで叱責していた。
「お前の婚約者はルーナじゃない! リナだ! こんなことをしていれば、リナが婚約を解消したがるに決まっている!」
「父上! 俺とルーナは愛し合っているんです! でも、リナのことも最近は嫌いではありません!」
「ふざけたことを言うな!」
陛下はアル殿下を突き飛ばし、拳を作ると、よろめいているアル殿下の胸ぐらを再度掴んで引き寄せると、彼の頬を殴った。
激しい音と共に、アル殿下は椅子と一緒にひっくり返る。
黄色い鳥はびくりと体を震わせた。
「う、ううっ。そんな、殴らなくてもいいじゃないですか……!」
アル殿下は倒れ込んだまま、頬を押さえて泣き始めた。
ルーナはというと、そんなアルフレッド殿下を放って、中年の男性に向かって必死に言い訳をしていた。
「違うんです! アルフレッド殿下と仲良くするように、リナお姉様から強要されたんです!」
ルーナが私を指差して叫んだ。
(もしかして、私が知らない二人はグルーラ公爵夫妻なの?)
困惑していると、指に止まっていた鳥がルーナに向かって飛んでいく。
そして、彼女の頭や顔をつつきはじめた。
「痛い! なんなの!」
「ロディ、悪さをしちゃ駄目だ。おいで」
痛がるルーナを見たルディが鳥に向かって言うと、鳥はルディの元へと飛んでいき、大人しく彼の肩に止まった。
「ひどいわ、お姉さま」
「私は何もしてないでしょ」
(公爵夫妻は私のことはルディから聞いて知ってるのよね)
言い返してから、すぐにそのことを思い出した。
(私はリナ本人じゃないから、ルーナの味方になるなんてことはないわよね? リナとルーナ、そしてアンソニーの両親だから、あまり期待しちゃ駄目かしら)
そう考えいると、ルーナが叫ぶ。
「リナお姉さま! 何を言ってらっしゃるの!? お姉さまはルディ殿下が好きなんでしょう!? だから、私にアルフレッド殿下を押し付けようとしたんでしょう!?」
(え? そうなの? そう言われてみれば、リナはルディが好きなのかもしれない。鏡を通して何度か話すうちにそう思ったことはあった)
「……ルディ、そうだったの?」
「俺に聞くなよ。君はどうなんだ」
(君はどうなんだって、どっちに聞いてるのよ!?)
ルディに目で訴えていると、グルーラ公爵が口を開く。
「リナはルディ殿下に惹かれていた可能性はあるが、だからといって、ルーナに押し付けようとはしていないはずだ」
「そ、そうよ! でも、そうなってしまったのは、ルーナと嬉しそうにしているアルフレッド殿下を見てしまったからなの! ルーナもアルフレッド殿下もお互いが好きなんでしょう? 妹の好きな人を奪うような姉にはなりたくないのよ!」
ゆっくりルーナに近づいていき、呆然とした顔をして私を見つめている彼女の両手をそっと私の両手で包む。
「私からも一緒にお父さまと陛下にお願いするわ」
ルーナの両手を掴んだまま、陛下とグレール公爵のほうに顔を向ける。
「お父さま、私とアルフレッド殿下の婚約を破棄していただき、ルナをアルフレッド殿下の婚約者にしてあげたいのです」
「どうして、婚約破棄なんだ?」
「アルフレッド殿下が私との婚約の解消を認めてくださらないからです」
「……わかった。王太子殿下に対して婚約破棄ということは、あまりしたくないが、アルフレッド殿下にはルーナに対する責任を取ってもらわなければならない。公爵令嬢の純潔を奪ったのだからね」
「違いますわ、お父さま! お互い合意の上でございます!」
私が何か言う前に、ルーナが衝撃の発言をした。
(純血を奪ったということに関しては、普通に認めてるんだけど、それはわかってるのかしら? それに、この国の貴族の女性は、結婚前に性行為をすることは良しとされていないはずよ)
「ルーナ、合意の上でも駄目だ。それよりもお前はもっと反省したらどうだ。姉の婚約者を奪ったんだぞ!」
「だって、お父さま!」
「何が、だってだ! お前の言い訳は屋敷に帰ってから聞こう」
そうルーナに厳しい口調で言ってから、お父さまは黙って私たちの様子を見守っていた陛下に頭を下げる。
「お見苦しいところをお見せてしまい申し訳ございません」
「気にするな。それよりもうちのバカ息子がリナを傷付け、ルーナにまで手を出したようで申し訳ない」
「リナにも悪いところがあり、ルーナに至っては、自分からアルフレッド殿下にすり寄っていったようです。ただ、リナとアルフレッド殿下の婚約の件に関してなのですが」
「ああ。わかっている。この目で見てしまった以上、反対はしない。今この場で宣言しよう」
陛下は倒れ込んだままのアル殿下を含め、この場にいる人間をぐるりと見回した後に、口を開く。
「アルフレッドとリナの婚約を破棄し、新たにアルフレッドとルーナの婚約を結ぶ」
(やったわ!)
ガッツポーズしそうになるのを何とかこらえて、無言で頭を下げた。
すると、陛下が声を掛けてくる。
「リナ、お前には悲しい思いをさせてすまなかった」
「いいえ。私がもっと訴えるべきだったのです。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
国王陛下に対して「はい、そうですね」なんて言えるはずがない。
「詫びとして一つ、なんでも望みを叶えてやる。今すぐでなくても良い。何をしてほしいか決まったら私に伝えに来なさい」
「……ありがとうございます」
(今、考えられる望みは、公爵夫妻には大きな責任を取らせることもなく、リナやリナに協力した人たちだけ罪に問いたい。犯罪に手を染めてしまうくらいの思いなら、公爵夫妻に訴えることなんて怖くなかったはずだもの。今の感じだと、もっと強く訴えていれば動いてくれていたはずだわ)
「陛下! わたしはアルフレッド殿下と結婚したくありません!」
ルーナが陛下に向かって叫んだ。
けれど、陛下はルーナを一睨みして黙らせた。
「リナ! リナ!」
アル殿下が私の名を呼ぶので視線を向けると、彼はとんでもないことを言った。
「俺とルーナとの婚約祝いに、君の財産をくれないか!」
「「「「ふざけるな!」」」」
私だけじゃなく、ルディやグレール公爵、陛下の声までもが見事に揃った。
国王陛下は隣の男性と同じく眉目秀麗ではあるけれど、どこか気難しそうな顔をしているし、がっしりとした体型だ。
見知らぬ男性は細身で華奢な感じだけど、陛下は服の上からでもわかるくらいに筋肉がついている。
国王陛下の貫禄なのか、眼光は鋭く、威圧感が半端ない。
「ち、父上!」
「きゃん!」
アル殿下が膝に乗せていたルーナを押し退けようとした。
でも、ドレスに突っ込んでいた手が簡単に抜けず、ルーナのガーターベルトが見えるハプニングまで起きてしまった。
でも、当人たちはそれどころではない。
もっと二人の様子をはっきりと見たくて、体を起こした。
すると、私の肩に黄色い手のひらサイズの鳥が止まった。
驚きながらも手を差し出すと、指にチョコンと乗って、黄色の羽を広げてピピ、と鳴いた。
鳥が気にはなるけど、アル殿下たちに視線を戻す。
陛下は、アル殿下の胸ぐらを片手で掴んで叱責していた。
「お前の婚約者はルーナじゃない! リナだ! こんなことをしていれば、リナが婚約を解消したがるに決まっている!」
「父上! 俺とルーナは愛し合っているんです! でも、リナのことも最近は嫌いではありません!」
「ふざけたことを言うな!」
陛下はアル殿下を突き飛ばし、拳を作ると、よろめいているアル殿下の胸ぐらを再度掴んで引き寄せると、彼の頬を殴った。
激しい音と共に、アル殿下は椅子と一緒にひっくり返る。
黄色い鳥はびくりと体を震わせた。
「う、ううっ。そんな、殴らなくてもいいじゃないですか……!」
アル殿下は倒れ込んだまま、頬を押さえて泣き始めた。
ルーナはというと、そんなアルフレッド殿下を放って、中年の男性に向かって必死に言い訳をしていた。
「違うんです! アルフレッド殿下と仲良くするように、リナお姉様から強要されたんです!」
ルーナが私を指差して叫んだ。
(もしかして、私が知らない二人はグルーラ公爵夫妻なの?)
困惑していると、指に止まっていた鳥がルーナに向かって飛んでいく。
そして、彼女の頭や顔をつつきはじめた。
「痛い! なんなの!」
「ロディ、悪さをしちゃ駄目だ。おいで」
痛がるルーナを見たルディが鳥に向かって言うと、鳥はルディの元へと飛んでいき、大人しく彼の肩に止まった。
「ひどいわ、お姉さま」
「私は何もしてないでしょ」
(公爵夫妻は私のことはルディから聞いて知ってるのよね)
言い返してから、すぐにそのことを思い出した。
(私はリナ本人じゃないから、ルーナの味方になるなんてことはないわよね? リナとルーナ、そしてアンソニーの両親だから、あまり期待しちゃ駄目かしら)
そう考えいると、ルーナが叫ぶ。
「リナお姉さま! 何を言ってらっしゃるの!? お姉さまはルディ殿下が好きなんでしょう!? だから、私にアルフレッド殿下を押し付けようとしたんでしょう!?」
(え? そうなの? そう言われてみれば、リナはルディが好きなのかもしれない。鏡を通して何度か話すうちにそう思ったことはあった)
「……ルディ、そうだったの?」
「俺に聞くなよ。君はどうなんだ」
(君はどうなんだって、どっちに聞いてるのよ!?)
ルディに目で訴えていると、グルーラ公爵が口を開く。
「リナはルディ殿下に惹かれていた可能性はあるが、だからといって、ルーナに押し付けようとはしていないはずだ」
「そ、そうよ! でも、そうなってしまったのは、ルーナと嬉しそうにしているアルフレッド殿下を見てしまったからなの! ルーナもアルフレッド殿下もお互いが好きなんでしょう? 妹の好きな人を奪うような姉にはなりたくないのよ!」
ゆっくりルーナに近づいていき、呆然とした顔をして私を見つめている彼女の両手をそっと私の両手で包む。
「私からも一緒にお父さまと陛下にお願いするわ」
ルーナの両手を掴んだまま、陛下とグレール公爵のほうに顔を向ける。
「お父さま、私とアルフレッド殿下の婚約を破棄していただき、ルナをアルフレッド殿下の婚約者にしてあげたいのです」
「どうして、婚約破棄なんだ?」
「アルフレッド殿下が私との婚約の解消を認めてくださらないからです」
「……わかった。王太子殿下に対して婚約破棄ということは、あまりしたくないが、アルフレッド殿下にはルーナに対する責任を取ってもらわなければならない。公爵令嬢の純潔を奪ったのだからね」
「違いますわ、お父さま! お互い合意の上でございます!」
私が何か言う前に、ルーナが衝撃の発言をした。
(純血を奪ったということに関しては、普通に認めてるんだけど、それはわかってるのかしら? それに、この国の貴族の女性は、結婚前に性行為をすることは良しとされていないはずよ)
「ルーナ、合意の上でも駄目だ。それよりもお前はもっと反省したらどうだ。姉の婚約者を奪ったんだぞ!」
「だって、お父さま!」
「何が、だってだ! お前の言い訳は屋敷に帰ってから聞こう」
そうルーナに厳しい口調で言ってから、お父さまは黙って私たちの様子を見守っていた陛下に頭を下げる。
「お見苦しいところをお見せてしまい申し訳ございません」
「気にするな。それよりもうちのバカ息子がリナを傷付け、ルーナにまで手を出したようで申し訳ない」
「リナにも悪いところがあり、ルーナに至っては、自分からアルフレッド殿下にすり寄っていったようです。ただ、リナとアルフレッド殿下の婚約の件に関してなのですが」
「ああ。わかっている。この目で見てしまった以上、反対はしない。今この場で宣言しよう」
陛下は倒れ込んだままのアル殿下を含め、この場にいる人間をぐるりと見回した後に、口を開く。
「アルフレッドとリナの婚約を破棄し、新たにアルフレッドとルーナの婚約を結ぶ」
(やったわ!)
ガッツポーズしそうになるのを何とかこらえて、無言で頭を下げた。
すると、陛下が声を掛けてくる。
「リナ、お前には悲しい思いをさせてすまなかった」
「いいえ。私がもっと訴えるべきだったのです。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
国王陛下に対して「はい、そうですね」なんて言えるはずがない。
「詫びとして一つ、なんでも望みを叶えてやる。今すぐでなくても良い。何をしてほしいか決まったら私に伝えに来なさい」
「……ありがとうございます」
(今、考えられる望みは、公爵夫妻には大きな責任を取らせることもなく、リナやリナに協力した人たちだけ罪に問いたい。犯罪に手を染めてしまうくらいの思いなら、公爵夫妻に訴えることなんて怖くなかったはずだもの。今の感じだと、もっと強く訴えていれば動いてくれていたはずだわ)
「陛下! わたしはアルフレッド殿下と結婚したくありません!」
ルーナが陛下に向かって叫んだ。
けれど、陛下はルーナを一睨みして黙らせた。
「リナ! リナ!」
アル殿下が私の名を呼ぶので視線を向けると、彼はとんでもないことを言った。
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