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23 関係が変わる日 ⑥
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取調室に入る前に、ファリミナの姿を探したメイフだったが、彼女を見つけることはできなかった。そのため、以前、ファリミナと一緒にいたスノウに話しかける。
「ファリミナは今日は出勤していないのか?」
「迷惑行為をしている相手に話す馬鹿がいると思いますか?」
スノウに聞き返されたメイフは、彼女を睨みつける。
「私は侯爵だぞ。生意気な口を叩いていいと思っているのか」
「たとえ侯爵であっても、人を脅す行為はしてはいけませんよ」
メイフの脅しに応えたのは、オルフの顔になったオルフェンだった。先ほど、広場が騒がしかったので気になって確認をしに来たところ、メイフがスノウを脅していたのだ。
「脅しなどしていない。事実を伝えたまでだ」
「罪を犯せば、爵位を降格させられることもありますし、酷ければ剥奪されますよ」
(以前、こいつもファリミナと一緒にいたな)
メイフはオルフェンを睨みつけながら話しかける。
「ファリミナはどこだ。彼女に取り調べをしてもらいたい」
「ファリミナという女性は、ここにいる騎士にはいません。大体、人を選ぶ権利は今の貴方にはないんですよ」
詰所内に入ってしまえば、罪を犯した者、もしくは疑わしい者を取り調べる際には、爵位は関係なく同等の立場になる。取り調べをする騎士を選ぶ権利は被疑者にはない。
「隊長クラスということは、お前も貴族なのか? 社交場で顔を合わせた時には覚えていろよ」
「騎士を脅すということは、それ相応の覚悟をもって言っているんでしょうね?」
にこやかな表情を浮かべていたオルフェンだったが、一瞬にして表情を冷たいものに変えた。射るような視線を受けたメイフは、圧力を感じて口を閉じた。
(隊長クラスともなると、圧がすごいな。くそ。こんな奴に黙らされるなんて)
オルフの顔を社交場で見たことがないメイフにとっては、目の前にいる男は下位貴族の次男くらいにしか思っていない。そんな人間に上に出られない自分が腹立たしかったが、彼の目的はファリミナを探すことだ。
「ファリミナは俺の女だ。探したって別に構わないだろう。彼女なら、俺が悪くないことを証明してくれるはずだから探しているんだ」
「どんな人物であれ、自分は自分のものです。ところであなたが何も悪くないというのはどういうことでしょうか」
「騒がしくしたのはイザベルだ。私は何もしていない」
「オルフ隊長、この人は連れの女性に暴力をふるっていました」
スノウに指摘され、メイフは彼女を忌々しげに睨みつけたが、睨み返されてまた口を閉じた。
(今、この場で逆らえば社交界での印象が悪くなるかもしれない)
すでに悪くなることは確定しているのだが、メイフはそんなことは知らない。オルフェンに促され、メイフは大人しく取調室に入ることにした。
「ねえ、ファリミナさんに会わせてくださいよ! 私は彼女の友人なんです!」
別の部屋に連れて行かれたイザベルがわめいている声が聞こえた。
(どんな理由でもいい。イザベルが王太子殿下を落とし、私のことを良く言ってくれれば、ミインジャーナ侯爵家は危機から脱することができるはずだ)
そう思ったメイフだったが、イザベルがファリミナに会えることはなかった。それだけではなく、イザベルはオルフェンに暴言を吐いていた。
「ちょっと! あんたみたいな男が私に話を聞けると思っているの?」
「あなたは王太子に会いたいと言っていたんですよね?」
「そうよ。だけど、あんたは違うでしょう?」
「うーん。そうだと言っても信じてくれませんよね」
「もし、あんたが王太子だったら裸で街を歩いてやってもいいわよ。それくらいありえないから」
「迷惑だからやめてください」
オルフは笑顔を絶やさずに続ける。
「もし、俺が王太子だったら何でもお願いを叶えてくれますか?」
「は? あなたが? ありえないでしょう!」
「ありえないなら願いを叶えてくれるんですね?」
「いいわよ! 本当の王太子殿下に会わせてくれるならね!」
「承知しました。では、今日はもう帰っていいですよ」
オルフェンはとある理由で騎士団を近々抜けることになっている。その時には仲間たちに自分の正体を明かそうと思っている。彼女に早く教えてあげることが嫌だったオルフェンは、廊下にいた仲間を呼び、イザベルをクックルー伯爵家に送り届けるように命令した。
メイフも罰金を払い、二度と暴力をふるわないと一筆書いてため、すぐに釈放はされた。
助かったと思っていたメイフだったが、後日、彼の元には王家からの命令を逆らったとして『罰金を払うか罰を受けるか、どちらかを選んで連絡するように』と書かれた書面が届いたのだった。
「ファリミナは今日は出勤していないのか?」
「迷惑行為をしている相手に話す馬鹿がいると思いますか?」
スノウに聞き返されたメイフは、彼女を睨みつける。
「私は侯爵だぞ。生意気な口を叩いていいと思っているのか」
「たとえ侯爵であっても、人を脅す行為はしてはいけませんよ」
メイフの脅しに応えたのは、オルフの顔になったオルフェンだった。先ほど、広場が騒がしかったので気になって確認をしに来たところ、メイフがスノウを脅していたのだ。
「脅しなどしていない。事実を伝えたまでだ」
「罪を犯せば、爵位を降格させられることもありますし、酷ければ剥奪されますよ」
(以前、こいつもファリミナと一緒にいたな)
メイフはオルフェンを睨みつけながら話しかける。
「ファリミナはどこだ。彼女に取り調べをしてもらいたい」
「ファリミナという女性は、ここにいる騎士にはいません。大体、人を選ぶ権利は今の貴方にはないんですよ」
詰所内に入ってしまえば、罪を犯した者、もしくは疑わしい者を取り調べる際には、爵位は関係なく同等の立場になる。取り調べをする騎士を選ぶ権利は被疑者にはない。
「隊長クラスということは、お前も貴族なのか? 社交場で顔を合わせた時には覚えていろよ」
「騎士を脅すということは、それ相応の覚悟をもって言っているんでしょうね?」
にこやかな表情を浮かべていたオルフェンだったが、一瞬にして表情を冷たいものに変えた。射るような視線を受けたメイフは、圧力を感じて口を閉じた。
(隊長クラスともなると、圧がすごいな。くそ。こんな奴に黙らされるなんて)
オルフの顔を社交場で見たことがないメイフにとっては、目の前にいる男は下位貴族の次男くらいにしか思っていない。そんな人間に上に出られない自分が腹立たしかったが、彼の目的はファリミナを探すことだ。
「ファリミナは俺の女だ。探したって別に構わないだろう。彼女なら、俺が悪くないことを証明してくれるはずだから探しているんだ」
「どんな人物であれ、自分は自分のものです。ところであなたが何も悪くないというのはどういうことでしょうか」
「騒がしくしたのはイザベルだ。私は何もしていない」
「オルフ隊長、この人は連れの女性に暴力をふるっていました」
スノウに指摘され、メイフは彼女を忌々しげに睨みつけたが、睨み返されてまた口を閉じた。
(今、この場で逆らえば社交界での印象が悪くなるかもしれない)
すでに悪くなることは確定しているのだが、メイフはそんなことは知らない。オルフェンに促され、メイフは大人しく取調室に入ることにした。
「ねえ、ファリミナさんに会わせてくださいよ! 私は彼女の友人なんです!」
別の部屋に連れて行かれたイザベルがわめいている声が聞こえた。
(どんな理由でもいい。イザベルが王太子殿下を落とし、私のことを良く言ってくれれば、ミインジャーナ侯爵家は危機から脱することができるはずだ)
そう思ったメイフだったが、イザベルがファリミナに会えることはなかった。それだけではなく、イザベルはオルフェンに暴言を吐いていた。
「ちょっと! あんたみたいな男が私に話を聞けると思っているの?」
「あなたは王太子に会いたいと言っていたんですよね?」
「そうよ。だけど、あんたは違うでしょう?」
「うーん。そうだと言っても信じてくれませんよね」
「もし、あんたが王太子だったら裸で街を歩いてやってもいいわよ。それくらいありえないから」
「迷惑だからやめてください」
オルフは笑顔を絶やさずに続ける。
「もし、俺が王太子だったら何でもお願いを叶えてくれますか?」
「は? あなたが? ありえないでしょう!」
「ありえないなら願いを叶えてくれるんですね?」
「いいわよ! 本当の王太子殿下に会わせてくれるならね!」
「承知しました。では、今日はもう帰っていいですよ」
オルフェンはとある理由で騎士団を近々抜けることになっている。その時には仲間たちに自分の正体を明かそうと思っている。彼女に早く教えてあげることが嫌だったオルフェンは、廊下にいた仲間を呼び、イザベルをクックルー伯爵家に送り届けるように命令した。
メイフも罰金を払い、二度と暴力をふるわないと一筆書いてため、すぐに釈放はされた。
助かったと思っていたメイフだったが、後日、彼の元には王家からの命令を逆らったとして『罰金を払うか罰を受けるか、どちらかを選んで連絡するように』と書かれた書面が届いたのだった。
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