上 下
3 / 6

-3日目-

しおりを挟む
ヴーーッヴーーッヴーーッ

「ん…、んん……?」

音の正体はスマホのようだ。

「んー…、あ、あーーー!!!」

昨夜スマホをバイブモードにしたまま、アラームの音が鳴らなかったのである。
起きたのはいつも出発する10分前。
文字通り飛び起き、歯を磨き、顔を洗った。

もう化粧はベースと眉毛だけでいいっ!

なんとか間に合いそうだ。
服も適当に選び、自室を飛び出した。


すると階段の下に怜さんがいた。

「おっ、おはようございます!」

ドタバタと階段を降りる私に驚いている様子。
隣を追い越し玄関に向かった。

「おはよ…。
    あ…、襟…。」

そう怜さんは言って、私の襟元を指さす。

「え!?」
「襟…、折れてますけど。」
「襟!?」

襟つきのシャツを着ていたので襟元を触ってみると、たしかにピョンと折れて襟が立っていた。

「ほんとだ!ありがとうございます!!」
「うん…、それで大丈夫。
    じゃ、行ってらっしゃい。」
「行ってきます!!」


私は急いで玄関を飛び出し、駅まで走った。


なんとかいつもの電車に乗れた…。
ゼェハァ言う呼吸を整える。
そして、玄関でのことを思い返す。
私がすごく急いでるのを見て、怜さんびっくりしてたな…。
恥ずかしい…。
しかも敬語やめようと思ってたのに出ちゃったな…。


会社に到着。
デスクに着くと、隣に座っている同僚のレイナが私の顔を見て、

「寝坊したな?」

ギクッ

「なんでわかるの…。」
「化粧が薄い。」

そんな一瞬見ただけでわかるの!?

「なんで寝坊したのかな~?
    同居人となんかしてたのかな~?」

レイナはニヤニヤしながらそう言った。

「は!?そんな訳ないでしょ!
    昨日で2日目だよ!?」
「くくくっ、冗談だよ~。
    ほれ、メイク道具貸してあげるから顔仕上げてきな。」
「神様、仏様、レイナ様!」

レイナは私と同期で、会社では数少ないなんでも話せる仲。
もちろん突然男性と同居することも相談していたし、怜さんが来たことも報告していた。
…レイナはいつもおもしろそうに聞いてるけど。
他人事だと思って…。
でもそんな風でも、実はちゃんと気にかけてくれる良いやつなのだ。



・・・



18:00
少し残業だった。
朝から余裕なくて疲れたな…。
今日の夜ご飯はお弁当でも買って帰ろう。


家に到着。
玄関で靴を脱いでいると、怜さんが自室への階段を登ろうとしていたところだった。

「あ…おかえり。
    もう風呂入ったからいつでもどうぞ。」

まだ19:00だけど早いなぁと怜さんのことを見ると、目の下のクマがすごい。

「えっ、なんか目の下のクマすごいね…?
    大丈夫…?」
「え…、そう?
    昨日仕事忙しくて、徹夜だったから…。
    だからもう寝るわ。
    おやすみ。」

怜さんはそう言いながら、目をショボショボと瞬きをしていた。
相当眠そうだ。
昨夜私と寝る挨拶をした後もお仕事してたんだ…。
今朝は遅刻したことでテンパり、全然怜さんのクマに気づかなかった。

「お疲れ様。
    ゆっくり寝てね。」

怜さんの疲れが取れますように。
今夜は静かにしてなきゃ。

怜さんは突然労われたからか、少し驚いたような顔をして、

「うん…、ありがと。」

少し目線をズラしてそう言った。
照れてる…?

その後、怜さんは自室へ、私はそのままリビングでお弁当を食べた。

この歳で徹夜ってもうなかなかしないなぁ。
というかもう出来ないかも…
怜さんすごいなぁ。

お弁当を片付けて、風呂に入り、私もすぐに寝た。
今日は寝坊したのにまだまだ寝れる。
不思議なもんだなと思いながら。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

降りかかる災い

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

恋物語Ⅰ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

思う事。

MSY
エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

こちらからお断りです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:12

断罪裁判は蜜の味

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:46

萌えよ剣~新選組☆恋風録~

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

東京の空の下 ~猫と狐と天狗~

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...