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始まらないと分からない
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「瀬野のやつ、飛ばしてるな」
あれは先輩にもコーチにも良いアピールになっただろう。
それじゃ、こっちも頑張んないと。
目の前のディフェンスは、何年生かは分からないけど、こちらより身長は高い。ガタイもいいし、高校生の中でも体の大きな方だろう。
後ろからくるパスを背負って、味方が上がってくる間を作る、ポストプレーの役割が得意な自分からしたら、正直やりにくそうな相手にみえる。
自分だって踏ん張りの利くフィジカルの強さがウリだ。どこまで通用するかやってみようじゃないか。
それに、今までだって自分より体の大きな相手とも対峙してきた。サッカーは何もフィジカルだけがものを言う世界じゃない。
「ヘイ!」
手を上げてアピールし、ボールを受ける。
ただ、ゴールに背を向けてのタッチになってしまった。すぐ後ろに、ディフェンスが寄ってきているのを感じる。これでは前を向けない。
一度、後ろにパスを戻し、背後のディフェンスに右に体を捻ったフェインかトを一度入れ、左に抜ける。
――遅い。思っていたタイミングでパスがこなかった。
ダイレクトでもう一度受けれるかと思ったけど、ツータッチだと間に合わない。
こちらの走り出しに、ディフェンスが間に合ってきている。
かわすには距離が短過ぎる。サイドに走っている味方に出すにはコースが無い。
シュートは? 距離が微妙。キーパーの位置も嫌なとこだ。
大柄なディフェンスは中のコースを絞りながら、こちらに詰めてくる。
今は左の方に逃げるようにボールを運んでいるけど、スピードはあちらの方が速い。すぐに追いつかれるだろう。仕方ない。
仕掛けるか。
さらに左側へと、ドリブルで突っ込む。敵の右サイドバックはこちらのチームの左サイドアタッカーを気にしつつも、こちらに体を向ける。
味方の左サイドアタッカーに出したいけど、オフサイドだ。
オレは二人を無視して、さらに外を回る選択肢を取る。
左の人、内に走ってくれ、と願いながらもそうはならず、味方の左サイドアタッカーは歩き出してしまった。
敵の右サイドバックは完全にオレに標準を合わせ、詰め寄ってくる。
体のデカイセンターバックは完全に中に戻り、外に追いやるように右サイドバックが寄ってくる。
一応、味方の左サイドアタッカーがパスを受けてくれる動作を見せるがそこに出してもなぁ。
強引に、左サイドを駆け上がり、左足で中にクロスを上げる。
合わない。クソッ!
一気に出てきた額の汗を手の甲で乱暴に拭い、ディフェンスに戻る。
一年ボウズのクセに良い動きするじゃんか。
正直、ここにいるBチームの奴らより上手いんじゃない?
怪我明けの俺やこば(小林)はここの連中相手だと持て余す。
そんな中で、この一年生二人はなかなか面白い。
っと、パスだ。やっべ、周り見えてなかった。
「ヤス、お前まだ怪我引きずってんのか?」
「泰英、集中しろよ。お前は来週までにAに上げないといけないんだから」
「うっす」
分かってますよ、んなこと。で、どうする。
自軍右サイドでトラップが大きくなったことで、無意味に外に開いてしまった。
でも、不幸中の幸いか。追っ手は鈍いし、視野は広い。
「へー」
あの一年、やっぱおもろいわ。
右サイドバックの俺から、左ウイング近い位置で手を上げている一年が目についた。
望月つったっけ。逆サイドの深い位置でのパスを要求してやがる。生意気な奴だ。
自然と頬が緩み、体を捻る。届けてやるよ、しくじっても、まぁ、一回くらいは大目に見てやるか。
バックスピンを掛けたボールを逆サイド前方へ。
うっし、きた。
あの先輩、ボールタッチが滑らかすぎる。あのボールタッチを見るかぎり、たぶんここに出せるだろうと手を上げて呼んでみたのは正解だった。
前方に落ちるボールをファーストタッチで、ドリブルのできる間合いに落とす。
さっきは、闇雲に左サイドを駆けたけど、そもそもドリブルは得意じゃない。そもそも、右利きだし。
だから、こう。
寄ってくるディフェンスに一度、さっきのように縦に抜ける動きを見せる。
今度は背後から、左ウイングが外を回ってオーバーラップするのが見えた。
対峙するディフェンスに体を向け、左ウイングにパスを出すフェイクを入れる。
相手の体勢が崩れる、その瞬間、いや、それよりも早く右のアウトサイドでゴール側を向く、そして。
バゴーン!
カットインからの利き足(右足)でのシュート。オレが一番得意とするプレーだ。
渾身のシュートはクロスバーに直撃、ただ、キーパーは微動だにしていなかった。
クソ、枠捉えてたら入ってたか。もうちょい低めだった。
「ナーイス」
「うるせえよ」
近くを通った瀬野が茶化すように、こちらを見て笑い親指を立ててきた。
どうやら、今日はダメな日なようだ。
「ナイシュー」
「すんません」
パスを出してくれた、右サイドバックの先輩が拍手してくれている。
それに、頭を下げて応えた。
あれは先輩にもコーチにも良いアピールになっただろう。
それじゃ、こっちも頑張んないと。
目の前のディフェンスは、何年生かは分からないけど、こちらより身長は高い。ガタイもいいし、高校生の中でも体の大きな方だろう。
後ろからくるパスを背負って、味方が上がってくる間を作る、ポストプレーの役割が得意な自分からしたら、正直やりにくそうな相手にみえる。
自分だって踏ん張りの利くフィジカルの強さがウリだ。どこまで通用するかやってみようじゃないか。
それに、今までだって自分より体の大きな相手とも対峙してきた。サッカーは何もフィジカルだけがものを言う世界じゃない。
「ヘイ!」
手を上げてアピールし、ボールを受ける。
ただ、ゴールに背を向けてのタッチになってしまった。すぐ後ろに、ディフェンスが寄ってきているのを感じる。これでは前を向けない。
一度、後ろにパスを戻し、背後のディフェンスに右に体を捻ったフェインかトを一度入れ、左に抜ける。
――遅い。思っていたタイミングでパスがこなかった。
ダイレクトでもう一度受けれるかと思ったけど、ツータッチだと間に合わない。
こちらの走り出しに、ディフェンスが間に合ってきている。
かわすには距離が短過ぎる。サイドに走っている味方に出すにはコースが無い。
シュートは? 距離が微妙。キーパーの位置も嫌なとこだ。
大柄なディフェンスは中のコースを絞りながら、こちらに詰めてくる。
今は左の方に逃げるようにボールを運んでいるけど、スピードはあちらの方が速い。すぐに追いつかれるだろう。仕方ない。
仕掛けるか。
さらに左側へと、ドリブルで突っ込む。敵の右サイドバックはこちらのチームの左サイドアタッカーを気にしつつも、こちらに体を向ける。
味方の左サイドアタッカーに出したいけど、オフサイドだ。
オレは二人を無視して、さらに外を回る選択肢を取る。
左の人、内に走ってくれ、と願いながらもそうはならず、味方の左サイドアタッカーは歩き出してしまった。
敵の右サイドバックは完全にオレに標準を合わせ、詰め寄ってくる。
体のデカイセンターバックは完全に中に戻り、外に追いやるように右サイドバックが寄ってくる。
一応、味方の左サイドアタッカーがパスを受けてくれる動作を見せるがそこに出してもなぁ。
強引に、左サイドを駆け上がり、左足で中にクロスを上げる。
合わない。クソッ!
一気に出てきた額の汗を手の甲で乱暴に拭い、ディフェンスに戻る。
一年ボウズのクセに良い動きするじゃんか。
正直、ここにいるBチームの奴らより上手いんじゃない?
怪我明けの俺やこば(小林)はここの連中相手だと持て余す。
そんな中で、この一年生二人はなかなか面白い。
っと、パスだ。やっべ、周り見えてなかった。
「ヤス、お前まだ怪我引きずってんのか?」
「泰英、集中しろよ。お前は来週までにAに上げないといけないんだから」
「うっす」
分かってますよ、んなこと。で、どうする。
自軍右サイドでトラップが大きくなったことで、無意味に外に開いてしまった。
でも、不幸中の幸いか。追っ手は鈍いし、視野は広い。
「へー」
あの一年、やっぱおもろいわ。
右サイドバックの俺から、左ウイング近い位置で手を上げている一年が目についた。
望月つったっけ。逆サイドの深い位置でのパスを要求してやがる。生意気な奴だ。
自然と頬が緩み、体を捻る。届けてやるよ、しくじっても、まぁ、一回くらいは大目に見てやるか。
バックスピンを掛けたボールを逆サイド前方へ。
うっし、きた。
あの先輩、ボールタッチが滑らかすぎる。あのボールタッチを見るかぎり、たぶんここに出せるだろうと手を上げて呼んでみたのは正解だった。
前方に落ちるボールをファーストタッチで、ドリブルのできる間合いに落とす。
さっきは、闇雲に左サイドを駆けたけど、そもそもドリブルは得意じゃない。そもそも、右利きだし。
だから、こう。
寄ってくるディフェンスに一度、さっきのように縦に抜ける動きを見せる。
今度は背後から、左ウイングが外を回ってオーバーラップするのが見えた。
対峙するディフェンスに体を向け、左ウイングにパスを出すフェイクを入れる。
相手の体勢が崩れる、その瞬間、いや、それよりも早く右のアウトサイドでゴール側を向く、そして。
バゴーン!
カットインからの利き足(右足)でのシュート。オレが一番得意とするプレーだ。
渾身のシュートはクロスバーに直撃、ただ、キーパーは微動だにしていなかった。
クソ、枠捉えてたら入ってたか。もうちょい低めだった。
「ナーイス」
「うるせえよ」
近くを通った瀬野が茶化すように、こちらを見て笑い親指を立ててきた。
どうやら、今日はダメな日なようだ。
「ナイシュー」
「すんません」
パスを出してくれた、右サイドバックの先輩が拍手してくれている。
それに、頭を下げて応えた。
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