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要らない子
しおりを挟む今の私や家族の状態は、もしかしてコミュニケーション能力不足?なんてことを思いながら、食事も終盤に差し掛かったところで、父が徐ろにクチを開いた。
緊張で思わずスプーンを落としそうになってしまったが、どうにか落とさずに済んだ。
「セレーネ……お前は父をどう思っているのだ?」
緊張のわりにふわっとした質問が来た。
私が父様を?
(なんだそれ)
こう思ってしまうのもしょうがないことだと思うんだけどね。だって今まで散々放って置いたじゃない?手紙の返事もくれなかったし、誕生日でさえ姉様優先。
『要らない子』
そう思ってもおかしくないくらい放って置かれている。
私が……セレーネが生まれて4年。
私が年相応の考えをする、前世の記憶がないセレーネであれば、こんな冷静に父様の話など聞いていないだろう。今の私だからここにいられるんだ。
父様の言葉にカッとなり思わず暴言を吐きそうになったけれど、手元にある水を飲んで気持ちを落ち着ける。この水はシルフィ(仮)があの場所から汲んできてくれた水だ。気のせいか飲むと心のモヤモヤが落ち着くのだ。
「どうとは……難しいですね。それは本音を言ってもいいと言うことでしょうか?」
幼児らしからぬ言葉使いになってしまうけれど、しょうがない。だって今、目の前にいる父子に対してどんな態度をとっていいのか分からないんだから。
「そうですね。生まれてすぐの記憶がないので、私自身が何をしたのか分からないのですが、特に療養が必要な身体ではないのに、家族とは別に…使用人のみに囲まれ、これまでいました。姉様が王族の方と婚約されてお忙しいとは聞いておりますが、この数年片手で数えられる程の来訪しかなく、これまで養育しては頂きましたが……」
『父と感じたことはない』そう言いかけた時、兄様がいきなり割り込んできた。
「セレーネ、それは本当にセレーネが思っていることかい?誰かに言わされていたりとかではないのか?」
そう言い切られてショックを受ける。
確かに今の私は幼児らしからぬ言動をしているけれど……。
誰かって誰?そう思って兄様を見た時、視界の端に青を通り越して真っ白な顔色をしたミーヤが見えた。
(え?何?どういうこと?もしかしてミーヤが私に何かを吹き込んでいると思われているの?)
行き着いた答えに視界が歪む。
どうして?どうしてそう思ったの?
ミーヤは…ミーヤはただただ私と一緒にいてくれただけなのに。どうして私を放って置いた貴方達がミーヤを……この屋敷の使用人を疑うの?どうして?どうして?
ドウシテ?
頭を埋め尽くす疑問の言葉で、周囲の声が聞こえない。
ナゼ?ドウシテ?
アァ……アア………ヤッパリココにもイバショはナカッタのか。
冷静になろう、落ち着こう……そうしようとしても、心のコントロールがうまくできない。
脳内に繰り返し響く『ナゼ?ドウシテ?』という言葉が頭の中を埋め尽くす。
そしてそのそれを最後に、その日の私の記憶はプッツリと途切れた。
「なんだ…やっぱり私は要らない子なのね……」
という一言を呟いて……。
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