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夏季休暇 〜求む!普通〜
しおりを挟むカーミラー……
城にいて、周囲を護衛でしっかり固めて歩くこの名を持つ人は、おそらく…いや、間違いなくこの国の現王太子妃なのだろう。
ホーグワット家当主……実父の少しきつめの印象をそのまま女性にしたような表情は、笑うことで緩和はされているけれど、多分それは表面上だろうと思う。
だってね……単純に考えて、魔力量が豊富というだけで王太子妃にはなれないでしょ。
家柄を考えれば、同じ年代に公爵家にもご令嬢がいたはずだし……。
と……目の前で繰り広げられる男女の攻防を見ながら思う。『これぐらいじゃないと、魔窟と言われる王城では生きていけないんだろうな』なんて思いながら。
「シルヴァ様、以前にもお願いしていた私の護衛隊への入隊、もう一度考えて頂きたいのです」
駆け寄り発した言葉は良くも悪くも、『物語』によくあるようなものだった。今現在、彼女の周囲で何かが起きているのかも知れないが、何も知らない他人から見れば…まぁうん……なんだかワガママな王太子妃かな?
こういうのって妃の一存でできるわけじゃないんだろうし……人目がある場所ではやるべきじゃないんじゃないの?
なんて他人事のように思ってみた。
だってね……きっと彼女から見たら私は他人。
今は……多分、シルヴァが何かをして私を見えないようにしているんだと思う。
けどこの感情はそれ以前からのこと。
覚えている限り彼女は私に会いに来たことは無い。忙しいのだろう……当時はそう思っていたのだけれど、学校に入り漏れ聞こえるご令嬢の話を聞く限り、一度も会えないほど忙しいなんてことはないらしい。
王族にだって休養日はあるし、この国の祭事である年初めの儀は、王族であれ一部の役人以外は数日間の休暇は認められているらしいから。
だから思ったのだ。
彼女は多分、私の存在を無いものと考えているか、本当に存在を知らないかどちらかだろうと。
なんにしろ、前世も今世も家族の縁に恵まれない自分には関係ない話だ。今の新しい家族と新しい環境が揺らがない限りは、このなんでもない日々を送って行きたいと思っている。
まぁ、精霊や魔法使いがいる時点でセレーネが思う“普通”とはだいぶかけ離れている気もするのだけれど…。
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