夢見るネコの私とあなた

こひな

文字の大きさ
上 下
15 / 39

15

しおりを挟む

ほわほわ暖かいなぁ……。
私、あのまま死んじゃったのかなぁ。
短い間に二回もお亡くなりって、だいぶ運が悪かったんだなと思う。


次はどうなるんだろう…。
……もう一人は嫌だなぁ………。
なんて贅沢な願いかな。



それにしても…はぁ…すっごくいい匂いがする。おなかすいたなぁ……


⚫〇⚫〇


「……さん……こさん起きて…起きて。ネコさん起きて!」


唐突にゆさゆさと揺さぶられた気がして、ビックリ飛び起きて見れば、そこはどう見ても死後の世界ではなく、現世日本の普通の家だった。


「ネコさんハイ」

4、5歳くらいの男の子がずいっとサクラの前にミルクを押し出すと、男の子の背後から男性の声がする。


『ちゃんと猫用だから大丈夫だぞ。物足んないかもしれんけど、からだに合ったもの食べないと大変だぞ』


どこにいるのか、サクラからは見えない位置にいるだろう男性の声は、なんとなくだけれど、サクラの事情を見通しているような感じだった。


「ネコさん、食べないとお姉ちゃんも死んじゃうよ?」

男の子が言った内容にビックリして、思わず自分のネコの身体を見る。
 お姉ちゃんも死んじゃうって……?


どういうことか判らず、考え込みそうになった時、またあの声が聞こえてきた。


『魂の繋がりが消えかけているぞ。とりあえず飲め。話はそれからだ』


そう言われて、男の子に勧められたミルクを飲む。ほんのり温かいミルクが身体に染み込んで、ジワジワと身体全体を満たしていく感覚に、思わず涙が出た。



-生きてて良かった……-

しおりを挟む

処理中です...