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しおりを挟む何の力もない俺は黙ってみているしかできなくて…病院に来てから一時間程、黙って友部と友部の親父さんの祈願の儀式を見ている。大粒の汗をかきながら儀式を行う二人に対して、本当に見ているしかできない自分に、無力感を感じている……。
そこからまた一時間。
儀式はそろそろ大詰めのようで、祝詞が読まれている。
これで二人とも…及川さんと猫のサクラ…どちらも助かって欲しい…そう思うのは欲張りなんだろうか。
もやもやとしている内に、儀式が終わり友部の親父さんがこちらを見る。
「明日の目覚めを持って結果が出るかと思う。確かな結果を出せなくて申し訳ないが…」
そう言って、友部親子は帰って行った。
明日の朝…友部の親父さんからそう聞いたので、会社には明日休むことを伝え、今晩はここで付き添いをして朝を迎えようと思い、ナースステーションに連絡する。
叔父さんにはなぜか渋られたが……明日の朝、目覚めるかも知れない事を言ったら許可をくれた。
もちろん…息はしているのにピクリとも動かない三毛猫のサクラも一緒だ。
●○●○
『先輩?先輩?ここは…病院?』
気が付くとなんだか変な空間にいた……っていうのが一番適切な表現のような気がする。
先輩とお話し(タブレットで)していた後から何だか記憶が朧気で…ようやく意識がはっきりしたのが今なんだけど、これって今どんな状態なんだろう?
多分ここは病院なんだろうとは思う。
だって、『私』そこに寝てるし、三毛猫の『サクラ』もそこに…『私』の胸の上に寝せられている。
だからきっと、何かがあって先輩と『サクラ』と友部親子がここにいるんだろう…けど……何があったの?
そんな自問自答をしていた時、病室の入り口が開く…けど、先輩も反応しないのならば開いたように見えただけなのだろうと思う。
だってそこには、神様の御遣いがいたから。
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