私も異世界に転生してみたい ~令嬢やめて冒険者になります~

こひな

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56、公爵と王太子

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ボードウィルの予想が的中し、王城に出入りする者達に、密かに人気を得るようになったジュリを護るように歩くロイス。最早どっちが主人だか分からなくなってきている気もするけれど、彼にとってはそんなのは問題にもならなかった。


『ロイス殿、あのような者どうやって今まで隠していたのだ?』

『ロイス殿が執着するぐらい優秀なのだろ?一度私にもめあわせてもらえぬかの?』

『さすがノートル公爵家、美しい者には目がないらしい』


そんなことをここ数日の内に何度も言われた。自分にでさえこうなのだから、ジュリにはもっと言ってくる輩がいるだろうと思い、聞いてみると……


『大丈夫です、気にしないで下さい。お陰様で、ロイス様のは実行できているので』


にっこりと……そう…あの殿下がよく見せるあの目の奥が笑っていない笑顔で言われた。


(こりゃ不味いか……ジュリの周りでは何が起こっている?俺がこうして傍にいない間の様子が分かれば……)


今日は公爵になり初めて王太子殿下との懇談だ。以前はしょっちゅう会っていたのだけれど、第二王子殿下が廃嫡され、殿下が立太子され、自分が公爵位へと付き……お互い時間がなく、中々会う機会がなかった。


「ようロイ。久しぶりだな」


前触れがあり、頭を下げ待っていると扉を開けてすぐに声が掛かる。立太子以前から近くに控えさせていただく事が多かったが、この方は立太子されたあとでも変わらないらしい。


「ご無沙汰しております。殿下におかれましては……」

「おいおいおい、止めてくれ。お前にそれをやられると王太子以前の俺がいなくなったような気がして悲しくなる。今は人払いしてある。いつも通りで頼むよ」


笑いながら手をヒラヒラと振り、いつもの場所に座る。私も許しを得て椅子に座る。


「で……?その髭と髪はどうした?伸ばしてた方がご令嬢方の目を誤魔化せるるんじゃなかったのか?」


口調でからかわれていることは分かったけれど、どう言ったらいいのか分からず、思わず口篭る。


「まさかあんな風に化けるとはな?違う輩にでも目をつけられたか?」


侍従として付いているジュリの事だろう……殿下のクチから出る言葉が、全部疑問形で正直鬱陶しい。全部分かっておられるはずなのに……。


「殿下こそ……相変わらずを装っている時とはだいぶ御人が変わるようだ。何か気に障る事がございましたでしょうか?」


なかなか時間が取れずストレスが溜まっているだろう殿下に、ささやかな反撃にならない反撃をしてみた。


一緒に冒険者をした仲だ。
これぐらいは許されるだろう。
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