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57、王城にて
しおりを挟む王城での仕事も終わり、今日はこの後王太子殿下との約束があるそうで別行動になった。
(まぁ、公爵だし騎士団の副団長だし……そりゃ王族との謁見くらいあるわよね)
持ち帰る書類を手持ちのバッグに持ち、今日はこのまま一人で公爵邸に帰る予定だ。
ただ……最近はジュリの周りで不快なことが起こることもあり、大事な書類はマジックバッグに入っているし、何かあった時の為の最小限の対策はしている。
登城するようになりかなり日が経つけれど、あの不快な視線が無くなることは無い。もし、この視線の主が手を出して来るようになれば、どうしても影響はノートル公爵家へ行く。最悪、依頼中止という事で途中で終了にしてもらうことも検討しなければいけないかもしれない。
ちなみに視線の主は判明していて……その中の数名は、私を見てきゃあきゃあと騒いでいたご令嬢の婚約者達だった。そして……。
(ドリスデン伯爵令嬢か……ロイス様も面識はないと言っていたし……私、なんかしたかしら?)
登城初日にあんな鋭い視線を向けられる理由も思い出せず、今のところは放置しっぱなしなんだけれど…ここ最近の嫌がらせは正直、人としてどうなのかと思うようなことも多い。
(はぁ……何だか色々面倒くさい。ホントなんでこんなネチネチネチネチしてるのかしら……)
ジュリとて恋愛小説も読むし好きだ。
『婚約破棄』とか『ざまあ』とか『国外追放』だとか……恋愛を進める為のスパイスはそこそこあった方がいいとは思う。そう……いいとは思う。でもそれはあくまでも物語の中でのみだ。物語ではスパイスとなっているモノも、いざ自分に降りかかると面倒臭いことこの上ない。
そしてここが一番大事なところだ。
ドレスデン伯爵令嬢も私も、ロイス様の婚約者でも恋人でもないのだ。
私に嫌がらせをする前に、ロイス様にお見合いを申し込むなり交際を持ちかけるのが先ではないの?
と…………そんな風に思うわけだ。
(まぁ……そんなことはどうでもいいや。今日はもう自由時間でいいって言われたし…………そうだ、どうせなら王都の図書館にでも行ってみようかな……もしかしたら新しい魔法のヒントがあるかも♪)
ひとしきり考えた後、面倒になって思考をシャットアウトした。それより今は久々の読書してまったりするべく、早々に王城を出た。
ジュリの後ろ姿を見て悪態をつく魔術師をおいて……
『くそっ……なんで魔術が効かない!今日こそはアイツを魔物がいる森に飛ばすチャンスだったのにっ!上手くいけばお嬢様に取り立てて貰えたのにっ』
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