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88、デビューに向けて

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「来月の王太子殿下主催の舞踏会でジュリのお披露目と社交界デビューをしようと思うんだが……」


朝食の席、なんだかいつもよりソワソワしているなぁなんて思っていたら、いきなりの予想外のことだった。
そういえばなんだかんだ言いつつ、私の社交界デビューはできずに来てしまったなぁ…とか、婚姻するには簡単にでもデビューをしてからの方がいいらしいって誰かが言っていたなぁ…とか思いながら、来月のいつぐらいかを聞いたら……。


「約二週間後だな」


と事も無げに話すロイス様に思わず言ってしまった。


「できればお決めになる前に一言頂けていたら考える時間もあったのですけど……」


一般に……社交界デビューの時に着るドレスとデビュー後の夜会などで着るドレスは見た目できっちり違うことが分かる。まぁ、周囲の誰から見ても『今日がデビューなんですよ~よろしくおねがいしま~す』的なものもあるし、『お手柔らかにお願いします』的な意味合いもある。


社交とは読んで字の如く、貴族間の交流の場なのである。
そこに新人をぶっこむわけだから、周囲と同列に扱ってしまうと厳しい洗礼を受けかねないからなんだけど……。


「あぁ、ドレスの心配はいらない。採寸は婚約式のドレスの時に一度しているだろ?それを元に、シュタイン侯爵殿が準備をしていてくれたらしくてな、昨日手元に届いたんだよ『妹をよろしく』とな。近日中にドレスに合わせて髪飾りや靴を揃える予定でいるのだが、ジュリの予定は?」


私の考えを先読みするかのようにずんずん話は進む。
ドレス……もまぁ問題ではあった……確かに髪飾りや靴もね…華美じゃない程度にドレスに合わせないといけないしね……まぁでもそれは既製品で何とかなるしね……うんうん。


でもね……ロイス様。
私の一番の問題はではないのですよ……。
その辺りの問題は、ホントに間際でない限りは何とかなると思うんです。
春にデビューをするご令嬢方が多いせいか、今の時期……秋も終わりの時期はデビューも少ないし、冬に向けての社交用ドレスを作るのもひと段落ついているだろうし…………。
けどね……デビューと言ったらは欠かせないだろうことが一番の問題として残っている。
それもあと二週間なんてムリっ!!
でもっ…でもっ……。


「ロイス様……まことに言いにくいお願いがあるのですが……至急、ダンスの先生の手配をお願いしたいのです。正直な話を申しますと、ダンスはとても苦手な分野でして……学院での授業以降、ダンスなど踊っていませんでしたので。至急……なるべく早くお願いします」




運動音痴な上に運動不足……そんな私に強大な試練が今、目の前にっ!!
……立ちはだかった朝だった。




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