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もふもふさんこんにちは 1

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「夏樹さんを僕に下さい」



テンプレですがやって来ましたよ。
ストレートかつシンプルに。


ここに来る前に、ばあちゃんにはどこまで話すか、夏樹と相談をした。
ばあちゃんが言い触らすような事はないだろうけど、あまり嘘はつきたくない。
なので、移住先を曖昧にする程度にした。
オレが受験取り止めの際に、学校に言った理由位がちょうど良さそうだ。

挨拶は滞りなく終わり、夏樹のアパートも解約する旨を伝えた。


「夏樹ちゃんよかったね。カイくんとホントの家族になれるね」


と...ばあちゃんが寂しそうに笑った。
昔、ばあちゃんと話をした時、ポツリと言葉を漏らしたのを思い出した。


「私じゃ本当の家族になれないみたいで...」


ばあちゃんも寂しかったのだろう。
周りに人がいっぱいいても、1人になっちゃう時はなっちゃうのよ...と、泣きそうな顔で笑ってた。
あんな寂しそうな顔は、後にも先にもそれっきりだったので、よく憶えてる。
夏樹にはあんな顔をさせたくないな…なんて思いながら、帰り際渡された箱に目を移す。


母さんに渡して欲しいと。
メモも入っているから渡せば解るから…と。


「なんだろうね。私も見たこと無いかも」


きっとずっと昔から大事にしてたであろう、アンティークの宝石箱……。
夏樹も見たことが無いと言っているから、滅多には出さない物なんだろうけど…。
なんだろう、この感じ。
宝石箱を持っている手がジリジリする。
高そうな物を持ってしまい落ち着かない……というわけではない。
例えるなら、手に熱が集まる感じ。

夏樹と食事でも...と思っていたのだけれど、早々に母さんに渡してしまった方がいいかもしれない。胸騒ぎがする。


「夏樹ごめん。食事はまた今度でいいか?」



夏樹もその方が良いと言ってくれたので、早々に帰路につく。


母さん達は帰ってるだろうか?
いてくれると助かるなぁ…。

なんとなくだけど...これは持っていてはいけない物のような気がする。
今までにない危険信号が、自分の中で鳴り響く。


「ごめん、夏樹。ヤバい気がするから、走るわ。夜電話するから」

そう言い残し猛ダッシュ。
慌てて鍵を開け滑り込む。







よかった...こんなの誰かに見られたら終わる...というか終われる。簡単に……。



そう思いながらみた鏡には…立派に耳が生えた...オ・レ。





なにこれ。オーマイガーー!!ですよ。
ケモ耳が可愛いって誰が言ったんだよ。
全然可愛くないじゃないかぁっ!

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