Heroic Explorers

KUMA

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いざ、ダンジョン探索!

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~魔結晶のダンジョン~

防具、制御の魔結晶、謎の機械が入っている木箱を囲うように、5人の合格者が倒れている。
マルスが目を開けた時、その先に広がるのは先ほどまでいた講義室……ではなく遺跡のような場所だった。
床、壁も石煉瓦でできており、部分的に苔が付いている場所もある。天井はやや高いようだが目視できるくらいだ。

「ここ……は? 」

マルスは辺りを見回す。次第にほかのメンバーも気づいていき、現状を確認しあう。中には先ほど話していたソフィアという子もいた。

「ここって、ダンジョン……だよね? 」
「さっきまで講義室にいたはずだろ、何が起きたんだ? 」
「紫の魔結晶が光ってたよな? 中にダンジョンがあるって……」

一つ一つ確認していく。
あらかじめダンジョンに入るという事を言われていたため、皆わりと落ち着いていた。

「ねぇ、とりあえず自己紹介でもしない? まだ会ったばかりなんだしさ」

あれこれ言っている間に、ソフィアが割り込む。それもそうだ。
一旦話を止め、自己紹介を始める。

「言いだしっぺのあたしから、ソフィア・ベアズクローです。魔力は…… 」

ソフィアから始まり、自分の番までそこまで時間は掛からなかった。
各自紹介に集中していた為、誰も機械が動いていたことに気づいてはいないようだ。

「じゃあ俺の番だな、マル―――」

マルスが始めようとした時、大きな声が響く。

『いつまで喋っとるんじゃ貴様らぁっ!! 』

あまりの大きな声に耳を塞いでしまう。
顔をあげてみると、目の前にはある人物がいた。
いたというよりも誰もいない映像が表示されていた。下の方に金髪の頭がわずかに見える。

『なぜ誰も出ないッ!? 何回も何回も呼び出しても……おかげでこっちから無理やり――――』
「あ、あの~」
『なんじゃッ! 人が話している時にッ! 』
「誰もいないように見えるんですが……頭はかろうじて映ってるみたいですけど」
『なんじゃとッ!? 』

予想通りの反応だった。聞き覚えのある声の主はバタバタと動きまわる。
「台じゃ! 適当な台が必要なんじゃ! ……ええぃ、そのみかん箱で良い!」という声が聞こえる。
準備が整い、今度はしっかりとその姿が映った。
金髪ツインテールの女性であった。どうやら椅子の高さが合っていなかったらしい……。

『―――ゴホンッ、先ほどは見苦しい姿を見せてしまったな。ワシの名はツェータ。エルガー・D・ツェータじゃ。今回のダンジョン探索のサポートをさせてもらうぞ』

皆理解が追いつかないまま話が進む。

『試験と言っておったが実際にダンジョンには危険が付きもの……、未熟者のお前たちをワシ達がサポートをするというわけじゃ。良いか? 死にたくなければワシの言う事をしっかりと聞くのじゃぞ?』

死ぬ可能性がある試験らしい。
しかしそれも当然だろう、ここはダンジョンの中。外よりも狂暴な魔獣が住み、様々な仕組みがある場所だ。
そこで、各チームをサポートする教員や技術者が付いてくれるようだ。
しかし、不安な顔をしているメンバーに気付いた博士は言葉をかけてくれた。

『あ~、まぁ大丈夫じゃ。この試験で使われるダンジョンにはそこまで狂暴なヤツはいない。しかし、油断してると……分っておるな? 5人が協力すれば突破できるじゃろうて。説明を続けるぞ? 』

2次試験の内容はこのダンジョン最奥にある制御の魔結晶を交換してくることのようだ。
そして気になっていた謎の機械についても説明される。
長方形型の機械はTFツェータ・フォンと呼ばれ、彼女が発明した携帯小型通信機と言っていた。映像通信以外にも、必要な道具などもデータ化して収納できるようだ。

「へぇ~、こんなに小さいのにそんなことまで……」
『すごいじゃろ? 使い方は今説明したとおりじゃ。それでは進むが良い! 』

そういうと映像が切れる。ここから本格的なダンジョン探索が始まる。
防具をつけた後、TFを操作すると画面には現在地がわかる地図が表示される。
全員で見るように空中に表示させた。

「さっき説明もあったように、進めば地図も作られていくんだと思う。複雑な構造じゃないって言ってたけど、油断しないで進もう」
「おぉ~、マルスくんリーダーだねぇ? 頼りになるなぁ」

ソフィアが軽くからかう。そこで自己紹介がまだだったことを思い出し、それも含め話を続けてゆく。
あまり上手く話せなかった気がするが、そんな事を考えながら戦闘時の打ち合わせもした。
戦闘時は前衛をマルス、獣人族のノエル、中衛をソフィア、後衛を双子の小人族リトルのセオとマオ、という形になった。

「それじゃ、そんな感じでいくか」

話はまとまると、部屋から延びる通路を進んでいった。
しばらく進み、T字路にあたる。表示も途中までしかない為どちらに行けばよいかは地図でも分らない。
とりあえず右に進んでみると、途中から異臭がしてくる。とにかく不快な臭いだ。
そこでTFに通信が入り、目の前にツェータ博士が表示される。

『おっと、そこから先には魔獣がおるぞ。 この反応からするとゴブリンじゃな、数は3体。戦闘中もサポートはするから、インカムはしっかりつけておくのじゃぞ? 』

流石に戦闘中に映像通信はしないようだ。初めての魔獣との対峙……。
メンバーはインカムを着けて通路を進み部屋へ入る。
部屋の中にはゴブリンがいた。3体ともこちらには気づいていないようだ。
相手の得物は錆びて折れた片手剣、そして木の棍棒が2本だ。

「まだ、気づいてないみたいだな。ノエルさん準備は? 」
「アタイの事はノエルでいいよ。うん、上手く先制を取れれば良いけど……」
「あたしも状況に応じて動くよ 」

3人は武器を形成し、戦闘準備を行う。
しかし、セオが獣石を取り出した時、手を滑らせて落としてしまう。
カランッと乾いた音が響き、前方へ転がってゆく……、彼は慌てて取りに行き、孤立した。

『馬鹿者! 取りに行く――――』

インカムから声が聞こえる、しかし手遅れだった。

「ギャィ? 」
「あ、あわわわわ…… 」
「セオっ!」

ゴブリンがこちらを向く。セオはその場に座り込んでしまい、動けなくなる。
さらにマオの声にも反応し、他2体も気づいてしまう。
3体のゴブリンはセオを囲むように飛び跳ねたりしている。その内の1体が獣石を手に取り、はしゃいでいた。どうやらセオの落とした獣石を宝と勘違いしているようだ。

『マルス! 動かぬか! セオを――――』

声は聞こえていた、だが、突然のことでマルスの頭は真っ白になる。
何をすべきか迷い、動けないでいた。通信もそのまま抜けているようだ。

「リーダー! 早くセオを助けないと!! 」

マオは前に出て、呪文を唱える。
はしゃいでいた1体のゴブリンがそれに気づき武器を上げながら近づいてくる。

「クッ……ファイアーボール! 」

目の前に赤い魔法陣が出現し、1発の火球が放たれる。
しかし、ゴブリンもそのまま当たるほど馬鹿ではない。
自身に迫ってくる火球をジャンプで避け、地面に当たった時の爆風を利用しマオへ飛び掛かかった。
棍棒をそのまま振り下ろそうとした時、マオの後ろから青白い光が放たれる。
それはソフィアの武器から放たれた魔力の矢であり、見事ゴブリンの身体に当たる。
貫通まではいかなかったが、ダメージを与えることができたようだ。
ソフィアはすかさず指示を出す。

「マオ! 今だよ!! 」 
「う、うん! 荒ぶる炎よ……ファイアーボール!!」

今度の火球は命中した。ゴブリンは炎に包まれ、断末魔の叫びを上げる。
生物が焼ける臭いが広がり、味方の叫び声に気づいた奥の2体はこちらへ視線を向ける。
身体を焼かれたゴブリンは力尽き、その場に倒れこみ消えてゆく……
仲間が無残な姿にされたことを怒り、地団駄を踏んでいた。
セオの存在を忘れ、マルス達の元へ駆け出してゆく。

「マルスッ! 早くしないと――――― 」
「あ……ああ! 」

ソフィアは次々と矢を放ちながら言う。
マルスはノエルと、マオに指示を出す。

「お、俺とノエルで正面の2体を叩くぞ! マオは回り込んでセオを、ソフィアはそのまま援護射撃を頼む! 」
「了解、行くよ! 」
「セオ、今行くから! 」
「りょ~かいっ! 」

最初は足が動かなかった。頭が真っ白になってしまい、いつの間にか終わっていた。
ソフィアの一言でやっと動けた。

(情けないな……)

そう思いながら残りの2体を倒していった。
一番最初の戦闘は死んだ者はいなかったが散々な結果に終わってしまった。


                       ※※※


「みんな、ゴメン!」

先ほどの部屋は結局行き止まりで、戻ってもう一方の通路を移動中、マルスは立ち止まり謝る。戦闘で足を引っ張っていた事を引きずっているようだ。

「ど、どうしたのいきなり? 」
「何謝ってんだい? 」

ソフィア、ノエルは不思議そうにこちらを見る。
しかし、マオだけは頬を膨らませ不機嫌そうにしていた。

「さっきの戦闘だったら仕方ないよ。アタイだって固まってたしね……」
「うん。あたしは外の魔獣モンスターだけど何回か戦ったことがあるから大丈夫だったけど、最初はあんな感じだったと思うよ」
「でも下手したらあの時――――」

マルスが言おうとした時、マオが口を開く。

「そんなこと言っても今更遅いよ! もしかしたらセオが死んでたかもしれないんだよ!? ソフィアがすぐに動いてくれたからまだいいけど、あんたは何なの? リーダーでしょ!?」
「あ、あのさマオ、僕も悪かったんだし、ちょっと落ち着――――」
「あんたは黙ってて!! 」

セオがなだめようとするが無駄のようだ。
彼女の怒りは収まらず、マルスに暴言を吐き続ける。
ソフィアも止めに入るが聞く耳を持たない。マルスの次はノエルにも飛び火がゆく。

「あんたも同じよ! 2人して固まっちゃって……」
「何だと? この――」
『黙らんか!』

ツェータ博士の映像通信が入り、マオとノエルの言葉を遮る。

『黙って聞いておればいい気になりおって……今回の戦闘は貴様にも非があるぞ? 獣石を落とした双子の片割れにホイホイ釣られて勝手に前に出て行ったのは誰じゃ?その結果、魔獣モンスターへ攻撃を外し、無防備状態をソフィアに救われたのは? 全て貴様じゃろう! 』
「そ、それは―――」
『確かに! 判断できなかったマルスやノエルにも非はある。じゃが、自分と弟の事を棚に上げて相手だけを責めるのは間違いではないか? 』
「クッ……」

マオはそのまま黙り込んでしまう。博士はそのまま話を続けた。

『初の戦闘は褒められるような内容ではなかった。だが、死者が出なかっただけでも良かったであろう? 次に同じ過ちを犯さぬようにすればよい。皆少し頭を冷やすのだ。冷静さを欠いてしまってはダンジョンに喰われてしまうぞ? 』
「……はい」

マオの代わりにセオが返事をする。彼女は歯を食いしばったままうつむいている。

『うむ、ではまずは軽傷のようだが癒すべきだ。 TFを操作し、アイテム欄に癒しの粉という――― 』

博士の説明通りに操作すると、TFから小さな袋が瞬時に出てくる。
中を見ると、薄い緑色の粉が詰まっていた。
使用方法はシンプルに地面に投げつける、すると粉が広がり全員の傷を癒してくれた。

『よし、傷は癒えたようじゃな。時間にはまだ余裕があるから、考えがまとまったら進むのじゃぞ? 』

そういうと映像が切れた。
マルスは軽く深呼吸し、今後の事を話し合った。
しかし、マオだけは「私は悪くないから!」と言って、一人参加しなかった。


                       ※※※


話し合いの後、マルスたちは残りの部屋を探索すべく道を進んでゆく。
もう一方の部屋や通路上にもゴブリンがいたが、各自フォローしつつ、何とか対処することができた。途中に博士のアドバイスもあり、確実にミスは少なくなっていた。

通路の先にあった部屋には鍵のかかった木箱が置かれていた。
ダンジョンにはこのように木箱や宝箱が存在する。
中身はそれぞれ違うが、中身は大体各色の魔結晶の欠片、過去の探検家の所有していた金貨(ゴールド)、武器や防具等々。時折、この世界に存在していたと言われる天使・悪魔に関する書物も入っている事もある。

「この木箱……何か入ってるみたいだけど、鍵がかかってるな 」
「ん~、ちょっとアタイにもわからないね、ソフィアはどうだい? 」
「あたしも鍵開けは専門外かな……、開けないでほっとく? 」

先ほどまで険悪だった雰囲気はほとんど感じられなかった。しかし、マオだけは不機嫌そうにしている。3人は木箱の前で相談している所にセオが話しかける。

「あ、あの簡単な鍵だったら開けられるよ。罠の有無まではまだわからないけどマオなら…… 」

そう言ってマオをチラっと見る。それに気付いたのか彼女は背を向ける。

「でもあの調子じゃ……、罠の識別・解除の方は見よう見まねだけど僕が試してみるよ」

セオはピッキングツールを取り出す。
ちゃんと手入れしているからか、新品のように見える。
彼ら小人族は感覚が鋭く手先が器用であり、部屋、宝の罠解除等に優れているのだ。
まずは錠前を調べ、罠と連動していない事を確認する。シンプルな作りで解除には時間がかからなかった。
次に木箱を開けようとするが、妙な手ごたえを感じ、動きを止める。

「……多分罠があるよ。ちょっと待ってね 」

そう言ってゆっくりと自分の腕が入るくらい開ける。
探っていると何かわかったようだ。

「少し大きめの皿?……と引き金かな? うん、これくらいなら」

すると糸を取りだし、木箱の中に通す。
糸の両端をピンと張り、覆いかぶさるように移動させる。
すると、カキンッと何かが外れるような音がした。

「……できた、開けてみるね」
「ちょっとセオ、あぶ――――」

開けようとするセオに声をかけるマオだったが、そのまま開いてしまう。
彼女は身を屈めたが、何も起こらなかった。
木箱の中には、小型の射出機と金貨袋、文字の書かれた手記が入っている。

「よかった、ちゃんと解除できたみたい」
「へぇ~、これが罠? 石やら木片が入ってるね、当たったら痛いだろうなぁ……」
「ん? 金貨袋は良いけど、こっちの紙はなんだ? 見たことのない文字だけど…… 」

マルスが不思議そうに紙を見ていると、通信が入る。

『何か見つけたようじゃな……、金貨は皆で分けても良いが、そっちは…………ハァッ!? 』

博士が前のめりになっていた。説明によると、古代文字で7人の天使とそれを束ねる天使長、そして『神器』に関することが書かれており、マルス達はかなり重要な物を見つけたようだ

『か、解析を進めるからその紙をTFで転送してくれ! 中に入れれば勝手にワシが操作する!』

指示通りに操作をするとその手記は博士のもとに送られ、再度映像通信を見た時には彼女の手に映っていた。

『よし、これはワシに任せるがよい! この情報はサービスじゃ。此処から進んだ先がこのダンジョンの最奥、つまり制御の魔結晶を交換する場所じゃ。最後まで気を抜く出ないぞ? ……フフフフ、これでまた楽しみが増えるわい』

そういうと通信が切れた。博士はこれから解析作業に移るのだろうか?
マルス達は気を引き締め、部屋から延びる通路を歩いて行った。


奥に進むと何かが暴れるような揺れ、叩き付けるような音、そしてゴブリンの悲鳴らしきものが聞こえてくる。
ゴブリンではここまでの揺れと音は出せないだろう、ソフィアも何度か通信を入れてみるがノイズが酷く役に立たない。

「ん……やっぱダメみたい、どうしようマルス? 」
「ここを脱出する方法もないし、進むしかないだろ。いつでも戦えるようにしとこう 」

あらかじめ武器を形成しておき、警戒しながら進んでいく方向で決まった。
マルスとノエルで3人を挟むように進み、後方からの襲撃にも備えた。
しばらく進み最奥の部屋が見えてきた頃、ダンジョンの雰囲気が変わる。
先ほどまで感じられなかったプレッシャーが前方から伝わってくる……

「なんか明らかにヤバそうだな」
「奥に何かいるよ、魔獣……だよね? 」

静かに全員が部屋に入ると突然大きな揺れが起こる、後ろには石煉瓦の壁が出現し通路を塞ぐ。閉ざされた部屋に明かりは少ない為、視界が少し悪い。
部屋をよく見ると、辺りにはなぜか消滅していないゴブリンの亡骸がある。
血で汚れ、うす暗い部屋の奥には人工的に作られた台座があり、マルス達の持っている魔結晶と同じものが設置されていた。その近くで、巨大な影が動く……

「なんだあのデカいのは? 」

マルス達にはハッキリと見えていなかった。ただ暗闇で赤く発光する入墨が確認できる。

「マルス……あいつ危険だよ、構えて」

ソフィアは何か感じたらしく、戦闘態勢に入っていた。
そこで、やっと通信が繋がる。

『お主ら無事か!? 先ほどから気中の魔力に乱れが生じて―――!』
「博士? いったい何が……」

少し間を開けて博士がつぶやく

『なぜじゃ……なぜコヤツがこんなところに? しかも暴走状態じゃと!? 』

マルスはその声から異常事態なのがすぐにわかった。巨大な影はゆっくりとこちらに向かってくる。
ある程度近づいてくると、ゴブリンの血で汚れた魔獣の姿を見ることができた。

『ここには出現しないはずの魔獣じゃ! お主らではまだ勝てぬ、早く逃げろ!! 』
「つ、通路が塞がれて僕たちも戻れないんです! どうしたら―――」
『なにぃ!? ……仕方ない、退路はこちらで何とかしてみる! それまで何とか時間を稼いでくれ! 良いか、そやつの攻撃には当たるでないぞ!? 』

博士はダンジョン解析の作業を始める、それと同時に魔獣はマルス達に気づき、雄叫びを上げながら襲い掛かってきた……

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