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入学試験
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~探検家育成施設≪Heroic Explorers≫ 校門前 ~
「ここ……だったかな? 」
青年は宮廷のような建物の前に立っている。
彼は10年ぶりに戻ってきたのだから土地勘が曖昧なのだ。場所の確認のためもう一度資料を見ることにした。
ここで試験が行われるらしく、石畳の広場中央には舞台が設置されており、様々な種族が集まっていた。資料には次のことが書かれている。
============================
・試験会場(同封されている地図にも記載されてます)
ヴィルグラン王国
王都ヨーミッド 探検家育成施設≪Heroic Explorers≫
・試験
第1試験 魔力検査
第2試験 ???
・合格条件
当日発表
・必要書類・道具
各自暮らしている場所の在籍証明書
防具 ※武器は必要なし
『探究心』
============================
……1つ不明なものがあるが、都内地図でも場所はここで合っているようだ。
ちょうど時間が来たらしく、設置されている舞台に眼帯をした隻眼の剛人族の男性が登る。
口が隠れるほど素晴らしい髭をいじりながら話を始めた。
『皆さん、おはようございます。当施設の責任者、9代目施設長のシルバ・マートンです。本日は……』
長い挨拶が始まったようだ、関係のない内容を30分程話すと―――
『……であります。前置きと世間話はこれくらいにして、そろそろ試験についての話にしましょう。いきなりですが、キミたちにはこちらの用意したダンジョンに入ってもらいます』
その一言に会場がざわめく、いきなり危険な場所に行けと言われたら不安にもなるだろう。
『そのため、まずは第1試験の魔力検査を受けてもらい、合否を判定します。検査の結果で合格者の場合、第2試験を行ってもらいます。第2試験の説明はその時に行いますので』
施設長の近くにゲート状の装置と、導力PCが設置される。
見たことのない魔力機械に彼の心は昂る。
内部構造やプログラムが気になる様だ。
『え~、このゲートは魔力測定器です。潜ってもらうとこの導力PCに数値として表示され、このように私の場合は召喚・変異系の魔力を持っているとわかります』
測定結果が表示された画面を宙に映し出す。
魔力の系統以外にも校長の強さが数値で表されていた。
『ですが、貴方達には合否の判定のみ伝えます。合格者には魔力の系統を伝え第2試験へ、不合格の方には……残念ですがそのままご退場していただきます。たとえ熟練者の方でもね』
その説明に受験者たちからは、
「え……魔力があるだけじゃだめなの? 」
「そもそも、あんな怪しい装置だけで……」
「裏で数値を操作してるんじゃ……実は失敗作?」
等々、不満が聞こえてくる。
『こぉんの無礼者どもがぁっ!!』
突如受験者たちの声をかき消すように小柄な女性が怒鳴る。
キーーンっと不快な音が耳を通り抜けてゆく……
舞台に上がり、シルバからマイクを奪う。
『貴様らこのワシが造った世紀の大発明をなんだと思っておる?ワシはあの大発明家 エルガー・D・ツェータ博士じゃぞ、失敗するわけなかろう!! 大体貴様らは……』
自分は後で思い出したが超が付くほど有名な方です、この人。いやマジで……良い意味でも悪い意味でも。
長い説教が始まった……と思ったが、別の教員がツェータを抱え舞台から引きずりおろす。
『な!? キー坊、貴様! こやつ等にワシの偉大な言葉を聞かせ――――』
「はいはい、エルおばあちゃんは大人しくしててくださいね~」
『ワシはまだ若いわ! む、無理やり降ろすでないっ!』
教員はエルガードを肩に担ぎ、降りて行く。
「ワシに話させろ~!」と声が響くが、会場から消えていった。
数秒沈黙が続いたが、校長は再びマイクを手に取り話し始める。
『ゴホンっ……、そ、それでは始めましょう。教員の方は予定通り1次試験を始めてください』
話が終わると、ゲートまで誘導され次々と潜ってゆく。
しばらく時間が経ち、ついに自分の番が来た。ここまで約半数の人が不合格になっている。
心臓の鼓動が早い……
「番号257 マルスさん、どうぞ」
「……ふぅ、よしっ! 」
軽く深呼吸し、ゲートを潜った。
【測定中……種類判別開始――――照合完了】
「測定終了、結果ですが……」
結果が出るまでの時間が長く感じる、いったいどちらだろうか……
「……合格です、魔力の種類は武器系なのでこちらの列に並んでください」
「――――は、ハイっ! わかりました」
指示された列に並ぶと、綺麗な銀髪をポニーテールしている賢人族が話しかけてくる。顔立ちも含め、誰もが美人だと思うほどの容姿だった。
「フフフ……よかったね、合格できて。それにしても……面白いね? 」
「ん? き、君は? 」
「あたしはソフィア。ソフィア・ベアズクローって言うんだ、よろしくマルス君」
彼女は手を差し出し、握手を求めてきた。
「あ、ああ。 マルス・ヒュルケインだ、よろしく」
最初の言葉に疑問を感じたが、彼女の手を握り返し目を見た時、全てを見透かされているような気分になる。
思わず、ブルッと身体が震えてしまう。辺りを見回すが受験者、教員以外は怪しい人影は見られない。
「どうしたの? 何かあった?」
「い、いや、なんでもないよ。 緊張しすぎてちょっとね 」
「わかるよ~、でも、ワクワクするよね? これからいろんな……… 」
うまく誤魔化せたかわからないが、問い詰めてはこなかった。
話しかけてくる彼女の目はとても輝いていた、まるで外の世界に強い憧れを抱いていたかのように。それから1時間ほど経ち、1次試験が終わる。
次の試験の準備を進めている間、問題が発生する。
不合格だった2人の男がシルバに文句を言っていた。
「あんなポンコツの結果で納得できるかよ! 」
「魔力なんて無くても、この魔法武器(マジックウェポン)があれば楽勝だろ!? 魔物とかチョロイって! 」
体格の良い正人族(ヒューマ)と中肉中背の獣人族(ビースト)がシルバに言う。
その様子を彼は静かに見ていた。2人の文句は続く……
「それによぉ、あの中にインチキした奴がいるかもしれねえだろぉ? 」
合格者への文句を言い始めたとき、シルバは口を開く。
「―――分りました。 それではこうしましょう」
懐から青い石を取り出し、話を続けた。
「先ほどの測定結果から、君たちは力は弱いですが私と同じ系統の魔力、この獣石からでてくる魔獣を倒せたら特別に合格としましょう」
シルバは獣石に魔力を込める。青く輝きだすと手を離れ、地面に落ちる。
次第に青白い光の玉は形を変え、魔獣の姿となる。
出てきたのは、魔獣辞典でも雑魚に分類されているゴブリンだ。
細身で小柄な体格と緑色の皮膚を持つ魔獣でその手には棍棒が握られていた。
目の前の二人を見ると挑発行動をとった。
「――――――ハッ! ゴブリンなんぞ街の外にもたくさんいるじゃねぇか、楽勝だぜ! 」
「いえいえ、これはダンジョン内のゴブリンですので、2人で戦ってください 」
「は、はぁ? 何を言ってやがる! 」
シルバの言葉に疑問を感じた。ダンジョンの外と中で何が違うのか。
よく見ると、ゴブリンの身体には青く光る入墨のようなモノがあった。
「へぇ~、普通の魔獣より魔力の流れが荒いんだ……」
「……?」
ソフィアは何かわかったようだが、彼には違いが判らない。
妙な入墨が入ってるくらいしか……
「2対1で戦いなさいと言ったのです。このゴブリンと。断言しましょう、君達は勝てない」
シルバは落ち着いた口調で言う。
言葉に反応して、ゴブリンも片手で逆立ちをし脚で拍手したりなど、相手への挑発行動を続ける。
「ふ、ふざけやがって……! 」
「野郎ぉぶっ殺してやらぁっ!! 」
見事に挑発に乗る2人。
正人族は剣、獣人族は槍の魔法武器構え、襲い掛かる。
連携をとって攻撃するが小柄な体格には中々当たらない。
「なら、これでどうだ!! 」
獣人族はフェイントを仕掛ける。
見事な二段突きが決まり、槍はゴブリンの身体を貫いた……かのように見えた。
「……? なんだこの感覚は? 」
分厚い金属を突いたような手ごたえだった。
彼は槍の扱いに自信があるようだが、それは一瞬で打ち砕かれる。
突き上げで腹部に命中した槍の刃は刺さっておらず、無傷であった。
むしろ先端に立ってバランスをとり始め、遊んでいた。ゴブリンは楽しそうに笑う。
「ギャ、ギャギャギャっ♪」
見ていた合格者全員が思わず拍手をしてしまう。
シルバも微笑みながら見守る。
「な、何してやがる!? この! 刺されよ!! 」
槍を揺らし、体勢を崩そうとするが片足で器用にバランスを取り続ける。
拍手はさらに大きくなる。
「ま~た始まったのか。アヤツの悪い癖が……」
「まぁ毎年出ますから、イチャモンを付ける人はね。博士の発明品も中々信用されませんね? 」
「う、うるさい! ワシの発明品の素晴らしさは凡人どもに理解できんのだろう!? 」
いつの間にか観客も増えていた。先ほどいた博士も肩車されながら見ていた。
獣人族(ビースト)が振り払えず苦戦していると、正人族は飛び上がり、ゴブリンに向けて剣を振り下ろす。
「グギュッ!? 」
攻撃は当たった。しかし、結果は同じ。
彼らの魔法武器は効いてなかった。
「い、いったいなんだ? このゴブリンは!? 」
「――――言ったでしょう。君たちは勝てないと。さぁ、ゴブマル……遊びは終わりです」
シルバの一言『遊びは終わり』、それを聞いたゴブリンの目の色が変わる。
身体を回転させ、剣と槍の間から脱出し2人の間に着地する。
先ほどまでは無邪気ペットみたいな感じだったが、今は違う……魔獣の目に変わっていた。
「へ、へへへ……何が終わりだ。 たかがゴブリ――――」
「そのゴブリン1体に10分も掛かってどうするんですか。本来彼らは2~5体で行動する魔獣……君たちの動きでは3分も持ちません」
シルバは指を鳴らす。
それを合図にゴブリンも動き出した。
「なっ!?」
一瞬で後ろをとられる正人族……無慈悲な一撃が振り降ろされ、気を失う。
次の獲物を狙うように、獣人族の男を見る。
「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!?」
相方が一瞬でやられた恐怖からか、腰が抜けその場に座り込んでしまう。
それでもゴブリンは襲い掛かかる、男は正面からの攻撃を槍で受ける。
「や、やめろ! やめてくれぇっ! 」
泣きながら叫ぶも、攻撃は止まない。
何度も力任せに棍棒を叩き付けられた槍はついに折れてしまう。
「ギャガァァァッ!! 」
「ヒッ…………!」
もう一度棍棒を振り下ろそうとした時
「モースプ」
シルバが静かに言う。
ゴブリンは武器を振り下ろそうとするが、腕が固定されたように動いていない。
「リターナ」
次は別の呪文を言う。ゴブリンは徐々に青白い光球になってゆき、シルバの手に戻ってきた。
その手には獣石が握られていた。
「もう十分でしょう。君たちは不合格です」
2人に背を向け、シルバはこちらに向かって来る。
「余興はおしまいです。皆さんは準備を進めてください」
教員に指示を出すと、俺達は施設の中に案内された。
施設長を外に残して……
数分後、爆発音が聞こえたが試験の説明は続けられる。
広めの講義室に集められ、各魔力の説明、魔術・武器の出し方、獣石を扱う時の注意点などの説明を受ける。その後は訓練人形を相手に打ち込みを行い、昼過ぎにはダンジョンへ入ることになった。
教員たちが全体のバランスを考え、合格者たちのチームを組んだ。
1チーム5人となり、チームリーダーも決められた。
「お、俺ですか? 」
「総合的な能力と提出されていた資料を基に決まったことです。そのように他のチームも分けてますから」
多くのチームがあるうちの第8チームのリーダーにマルスが指名されていた。
各チームには武器系が3、魔術系が1、変異・召喚系が1と分かれている。
武器系の魔力でも出せる武器は決まっている。マルスでなら剣、ソフィアなら弓と。それは潜在的な力の形が具現化されると説明にもあった。
「それではチームリーダーと他1名は支給品を取りに来てください」
部屋の中央付近には番号分けされた木箱が並べられている。それを受取り、チームの元で開けると中には防具と色違いの結晶が2つ、小さめの長方形の機械とインカムが6つ入っていた。
第2試験の説明始まる。
簡単にまとめると紫色の結晶にはダンジョンが入っており、白色は制御の魔結晶、つまりダンジョン最奥に同じ結晶があるから交換してくる……というのが2次試験であった。
謎の機械の方を聞こうとすると
「それでは、ダンジョンに入ってもらいます。制限時間は今から夕方まで」
「ちょ……この機械の―――」
「ゲート解放! 」
教員が講義台で何かを操作すると、紫の結晶が輝きだし、周囲にいたチームメンバーを吸い込んでいった。
そして次に目を開けた時、マルスたちは遺跡のような場所に立っていた。
「ここ……だったかな? 」
青年は宮廷のような建物の前に立っている。
彼は10年ぶりに戻ってきたのだから土地勘が曖昧なのだ。場所の確認のためもう一度資料を見ることにした。
ここで試験が行われるらしく、石畳の広場中央には舞台が設置されており、様々な種族が集まっていた。資料には次のことが書かれている。
============================
・試験会場(同封されている地図にも記載されてます)
ヴィルグラン王国
王都ヨーミッド 探検家育成施設≪Heroic Explorers≫
・試験
第1試験 魔力検査
第2試験 ???
・合格条件
当日発表
・必要書類・道具
各自暮らしている場所の在籍証明書
防具 ※武器は必要なし
『探究心』
============================
……1つ不明なものがあるが、都内地図でも場所はここで合っているようだ。
ちょうど時間が来たらしく、設置されている舞台に眼帯をした隻眼の剛人族の男性が登る。
口が隠れるほど素晴らしい髭をいじりながら話を始めた。
『皆さん、おはようございます。当施設の責任者、9代目施設長のシルバ・マートンです。本日は……』
長い挨拶が始まったようだ、関係のない内容を30分程話すと―――
『……であります。前置きと世間話はこれくらいにして、そろそろ試験についての話にしましょう。いきなりですが、キミたちにはこちらの用意したダンジョンに入ってもらいます』
その一言に会場がざわめく、いきなり危険な場所に行けと言われたら不安にもなるだろう。
『そのため、まずは第1試験の魔力検査を受けてもらい、合否を判定します。検査の結果で合格者の場合、第2試験を行ってもらいます。第2試験の説明はその時に行いますので』
施設長の近くにゲート状の装置と、導力PCが設置される。
見たことのない魔力機械に彼の心は昂る。
内部構造やプログラムが気になる様だ。
『え~、このゲートは魔力測定器です。潜ってもらうとこの導力PCに数値として表示され、このように私の場合は召喚・変異系の魔力を持っているとわかります』
測定結果が表示された画面を宙に映し出す。
魔力の系統以外にも校長の強さが数値で表されていた。
『ですが、貴方達には合否の判定のみ伝えます。合格者には魔力の系統を伝え第2試験へ、不合格の方には……残念ですがそのままご退場していただきます。たとえ熟練者の方でもね』
その説明に受験者たちからは、
「え……魔力があるだけじゃだめなの? 」
「そもそも、あんな怪しい装置だけで……」
「裏で数値を操作してるんじゃ……実は失敗作?」
等々、不満が聞こえてくる。
『こぉんの無礼者どもがぁっ!!』
突如受験者たちの声をかき消すように小柄な女性が怒鳴る。
キーーンっと不快な音が耳を通り抜けてゆく……
舞台に上がり、シルバからマイクを奪う。
『貴様らこのワシが造った世紀の大発明をなんだと思っておる?ワシはあの大発明家 エルガー・D・ツェータ博士じゃぞ、失敗するわけなかろう!! 大体貴様らは……』
自分は後で思い出したが超が付くほど有名な方です、この人。いやマジで……良い意味でも悪い意味でも。
長い説教が始まった……と思ったが、別の教員がツェータを抱え舞台から引きずりおろす。
『な!? キー坊、貴様! こやつ等にワシの偉大な言葉を聞かせ――――』
「はいはい、エルおばあちゃんは大人しくしててくださいね~」
『ワシはまだ若いわ! む、無理やり降ろすでないっ!』
教員はエルガードを肩に担ぎ、降りて行く。
「ワシに話させろ~!」と声が響くが、会場から消えていった。
数秒沈黙が続いたが、校長は再びマイクを手に取り話し始める。
『ゴホンっ……、そ、それでは始めましょう。教員の方は予定通り1次試験を始めてください』
話が終わると、ゲートまで誘導され次々と潜ってゆく。
しばらく時間が経ち、ついに自分の番が来た。ここまで約半数の人が不合格になっている。
心臓の鼓動が早い……
「番号257 マルスさん、どうぞ」
「……ふぅ、よしっ! 」
軽く深呼吸し、ゲートを潜った。
【測定中……種類判別開始――――照合完了】
「測定終了、結果ですが……」
結果が出るまでの時間が長く感じる、いったいどちらだろうか……
「……合格です、魔力の種類は武器系なのでこちらの列に並んでください」
「――――は、ハイっ! わかりました」
指示された列に並ぶと、綺麗な銀髪をポニーテールしている賢人族が話しかけてくる。顔立ちも含め、誰もが美人だと思うほどの容姿だった。
「フフフ……よかったね、合格できて。それにしても……面白いね? 」
「ん? き、君は? 」
「あたしはソフィア。ソフィア・ベアズクローって言うんだ、よろしくマルス君」
彼女は手を差し出し、握手を求めてきた。
「あ、ああ。 マルス・ヒュルケインだ、よろしく」
最初の言葉に疑問を感じたが、彼女の手を握り返し目を見た時、全てを見透かされているような気分になる。
思わず、ブルッと身体が震えてしまう。辺りを見回すが受験者、教員以外は怪しい人影は見られない。
「どうしたの? 何かあった?」
「い、いや、なんでもないよ。 緊張しすぎてちょっとね 」
「わかるよ~、でも、ワクワクするよね? これからいろんな……… 」
うまく誤魔化せたかわからないが、問い詰めてはこなかった。
話しかけてくる彼女の目はとても輝いていた、まるで外の世界に強い憧れを抱いていたかのように。それから1時間ほど経ち、1次試験が終わる。
次の試験の準備を進めている間、問題が発生する。
不合格だった2人の男がシルバに文句を言っていた。
「あんなポンコツの結果で納得できるかよ! 」
「魔力なんて無くても、この魔法武器(マジックウェポン)があれば楽勝だろ!? 魔物とかチョロイって! 」
体格の良い正人族(ヒューマ)と中肉中背の獣人族(ビースト)がシルバに言う。
その様子を彼は静かに見ていた。2人の文句は続く……
「それによぉ、あの中にインチキした奴がいるかもしれねえだろぉ? 」
合格者への文句を言い始めたとき、シルバは口を開く。
「―――分りました。 それではこうしましょう」
懐から青い石を取り出し、話を続けた。
「先ほどの測定結果から、君たちは力は弱いですが私と同じ系統の魔力、この獣石からでてくる魔獣を倒せたら特別に合格としましょう」
シルバは獣石に魔力を込める。青く輝きだすと手を離れ、地面に落ちる。
次第に青白い光の玉は形を変え、魔獣の姿となる。
出てきたのは、魔獣辞典でも雑魚に分類されているゴブリンだ。
細身で小柄な体格と緑色の皮膚を持つ魔獣でその手には棍棒が握られていた。
目の前の二人を見ると挑発行動をとった。
「――――――ハッ! ゴブリンなんぞ街の外にもたくさんいるじゃねぇか、楽勝だぜ! 」
「いえいえ、これはダンジョン内のゴブリンですので、2人で戦ってください 」
「は、はぁ? 何を言ってやがる! 」
シルバの言葉に疑問を感じた。ダンジョンの外と中で何が違うのか。
よく見ると、ゴブリンの身体には青く光る入墨のようなモノがあった。
「へぇ~、普通の魔獣より魔力の流れが荒いんだ……」
「……?」
ソフィアは何かわかったようだが、彼には違いが判らない。
妙な入墨が入ってるくらいしか……
「2対1で戦いなさいと言ったのです。このゴブリンと。断言しましょう、君達は勝てない」
シルバは落ち着いた口調で言う。
言葉に反応して、ゴブリンも片手で逆立ちをし脚で拍手したりなど、相手への挑発行動を続ける。
「ふ、ふざけやがって……! 」
「野郎ぉぶっ殺してやらぁっ!! 」
見事に挑発に乗る2人。
正人族は剣、獣人族は槍の魔法武器構え、襲い掛かる。
連携をとって攻撃するが小柄な体格には中々当たらない。
「なら、これでどうだ!! 」
獣人族はフェイントを仕掛ける。
見事な二段突きが決まり、槍はゴブリンの身体を貫いた……かのように見えた。
「……? なんだこの感覚は? 」
分厚い金属を突いたような手ごたえだった。
彼は槍の扱いに自信があるようだが、それは一瞬で打ち砕かれる。
突き上げで腹部に命中した槍の刃は刺さっておらず、無傷であった。
むしろ先端に立ってバランスをとり始め、遊んでいた。ゴブリンは楽しそうに笑う。
「ギャ、ギャギャギャっ♪」
見ていた合格者全員が思わず拍手をしてしまう。
シルバも微笑みながら見守る。
「な、何してやがる!? この! 刺されよ!! 」
槍を揺らし、体勢を崩そうとするが片足で器用にバランスを取り続ける。
拍手はさらに大きくなる。
「ま~た始まったのか。アヤツの悪い癖が……」
「まぁ毎年出ますから、イチャモンを付ける人はね。博士の発明品も中々信用されませんね? 」
「う、うるさい! ワシの発明品の素晴らしさは凡人どもに理解できんのだろう!? 」
いつの間にか観客も増えていた。先ほどいた博士も肩車されながら見ていた。
獣人族(ビースト)が振り払えず苦戦していると、正人族は飛び上がり、ゴブリンに向けて剣を振り下ろす。
「グギュッ!? 」
攻撃は当たった。しかし、結果は同じ。
彼らの魔法武器は効いてなかった。
「い、いったいなんだ? このゴブリンは!? 」
「――――言ったでしょう。君たちは勝てないと。さぁ、ゴブマル……遊びは終わりです」
シルバの一言『遊びは終わり』、それを聞いたゴブリンの目の色が変わる。
身体を回転させ、剣と槍の間から脱出し2人の間に着地する。
先ほどまでは無邪気ペットみたいな感じだったが、今は違う……魔獣の目に変わっていた。
「へ、へへへ……何が終わりだ。 たかがゴブリ――――」
「そのゴブリン1体に10分も掛かってどうするんですか。本来彼らは2~5体で行動する魔獣……君たちの動きでは3分も持ちません」
シルバは指を鳴らす。
それを合図にゴブリンも動き出した。
「なっ!?」
一瞬で後ろをとられる正人族……無慈悲な一撃が振り降ろされ、気を失う。
次の獲物を狙うように、獣人族の男を見る。
「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!?」
相方が一瞬でやられた恐怖からか、腰が抜けその場に座り込んでしまう。
それでもゴブリンは襲い掛かかる、男は正面からの攻撃を槍で受ける。
「や、やめろ! やめてくれぇっ! 」
泣きながら叫ぶも、攻撃は止まない。
何度も力任せに棍棒を叩き付けられた槍はついに折れてしまう。
「ギャガァァァッ!! 」
「ヒッ…………!」
もう一度棍棒を振り下ろそうとした時
「モースプ」
シルバが静かに言う。
ゴブリンは武器を振り下ろそうとするが、腕が固定されたように動いていない。
「リターナ」
次は別の呪文を言う。ゴブリンは徐々に青白い光球になってゆき、シルバの手に戻ってきた。
その手には獣石が握られていた。
「もう十分でしょう。君たちは不合格です」
2人に背を向け、シルバはこちらに向かって来る。
「余興はおしまいです。皆さんは準備を進めてください」
教員に指示を出すと、俺達は施設の中に案内された。
施設長を外に残して……
数分後、爆発音が聞こえたが試験の説明は続けられる。
広めの講義室に集められ、各魔力の説明、魔術・武器の出し方、獣石を扱う時の注意点などの説明を受ける。その後は訓練人形を相手に打ち込みを行い、昼過ぎにはダンジョンへ入ることになった。
教員たちが全体のバランスを考え、合格者たちのチームを組んだ。
1チーム5人となり、チームリーダーも決められた。
「お、俺ですか? 」
「総合的な能力と提出されていた資料を基に決まったことです。そのように他のチームも分けてますから」
多くのチームがあるうちの第8チームのリーダーにマルスが指名されていた。
各チームには武器系が3、魔術系が1、変異・召喚系が1と分かれている。
武器系の魔力でも出せる武器は決まっている。マルスでなら剣、ソフィアなら弓と。それは潜在的な力の形が具現化されると説明にもあった。
「それではチームリーダーと他1名は支給品を取りに来てください」
部屋の中央付近には番号分けされた木箱が並べられている。それを受取り、チームの元で開けると中には防具と色違いの結晶が2つ、小さめの長方形の機械とインカムが6つ入っていた。
第2試験の説明始まる。
簡単にまとめると紫色の結晶にはダンジョンが入っており、白色は制御の魔結晶、つまりダンジョン最奥に同じ結晶があるから交換してくる……というのが2次試験であった。
謎の機械の方を聞こうとすると
「それでは、ダンジョンに入ってもらいます。制限時間は今から夕方まで」
「ちょ……この機械の―――」
「ゲート解放! 」
教員が講義台で何かを操作すると、紫の結晶が輝きだし、周囲にいたチームメンバーを吸い込んでいった。
そして次に目を開けた時、マルスたちは遺跡のような場所に立っていた。
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