ちょっと嫌な話 ~奇妙短篇集~

黒猫文二

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平成31年5月12日まで有効

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 何か事件でもあったのか検問が行われていた。

「すいません免許証見せてもらえませんか?」

 財布から免許証を取り出した時に「しまった」と思った。
 免許証には「平成31年5月12日まで有効」と書いてある。
 発行された時には既に平成が終わっているなんてわからなかっただろうから平成表記だ。
 そんなことはどうでもいい、困ったことに今は令和元年5月13日だ。
 免許証の更新連絡書は来ていたので更新しなきゃとは思っていたけども、この所信じられないくらい忙しくて忘れてしまっていたのだ。
 これは面倒なことになるなと思ったが警察官は何事もなかったかのように通してくれた。
 警察官も忙しくて日付が過ぎていることを見逃してしまったのだろうか、一日違いだったし。
 とはいえ、今の自分が無免許になっていることには変わりはないので重い気持ちのまま帰宅した。

 帰宅してからスマホで時間を確認した時に何か違和感があった。
 違和感の正体は日付だ。
 5月11日になっている。
 どういうことだ?と思った。
 TVをつけるとニュースでは数日前の俺が観たはずのものとは違う、初めて見る内容の事件について報じられていた。
 TV番組の編成もなにか違う。
 嫌な予感がしてネットで平成や令和について検索をしてみたが、年号が変わったという話題が一切なかった。
 とりあえずその日はすぐに寝て、翌朝急いで免許の更新に行った。

 試験場でいつも通りに講習を受けて来た。
 出来上がった免許証を見るとやはり「平成36年5月12日まで有効」と書いてあった。
 どうやら自分は平成が続いている世界に迷い込んでしまったようだ。
 と言っても、平成が続いているだけで自分の生活が大きく一変したわけでもないので危機感のようなものはなかった。
 普通に過ごしている内に「令和」の世界のことも忘れてしまいそうだ。
 なので、このことは文章で残しておこう。
 スマホとPCだけではなく念の為に日記に手書きでも書き残しておいておこう。




 行方不明になった男の部屋に残されていた日記にはこのようなことが書いてあった。
 彼が本当に平成が続いている世界へと迷い込んでしまったのか、それとも妄想なのか?
 その後も彼の行方はわからず仕舞いである。
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感想 1

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