ちょっと嫌な話 ~奇妙短篇集~

黒猫文二

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ソーシャルゲーム廃人の俺がやりこんでいたゲームの世界に転生したのだが

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 今日もスマホでソーシャルゲームをプレイする。
 家に帰ったらPCでもソーシャルゲームをプレイする。
 イベント期間中はプレイするというより、もはや機械的に
 残業が続いても、嫌、だからこそクソな日常に意味を持たせたくて毎日走り続けていた。

 ある日、無理がたたったのか俺は突然血を吐いて倒れた。
 気に入っていたスマホを汚してしまったな……。
 しかもゲーム中だったし。

 ……気がつくと草原で寝ていた。
 しかも、見たことあるような格好で見たことあるような女の子たちに囲まれていた。
 ――これはもしかして「異世界転生」というやつか?
 そう思っていると突然お腹あたりに四角い枠が出てきた。
 何やら文字が書いてある。

(あ、これ。俺が散々やってたゲームのシナリオじゃないか)

 しかも、俺の体は文章に合わせて勝手に動く。
 どうやら俺は主人公のグリオの役を演じているようだ。
 回りにいる女の子たちも似たような状態だ。
 女の子たちの方は俺と違ってボイス付きだけど。
 自分の思うがままに冒険できないのは残念だけど、物語の主人公を演じ続けるのも悪くはないかもしれない。

 チュートリアル戦闘が終わった後、しばらく世界が真っ暗になっていた。
 プレイヤーが一休みしているのだろうか?
 明るくなったらまた演じたり、延々と戦闘を続けたりしては、しばらく真っ暗になったりを繰り返していた。


 ……最近は人間だったころの記憶が思い出せなくなっている。
 自分の名前が何だっかも。
 それはいいとしても問題は真っ暗になっている時間が多くなってきたことだ。
 もし、プレイヤーがゲームに飽きてやめたら俺はこのままずっと真っ暗闇の中で過ごすのだろうか?
 今の俺にはそうならないことを祈ることしか出来なかった……。
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