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1章
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「いやーよかった、よかった。始末書がなくなったー」
「いや、よくねーよ!」
「いや、よくないですよ!」
司令部室から退出し、窮屈なところから解放されたことを喜ぶように、両手を組んで、そのまま両手を上に大きく伸ばしてリラックスしていたレヴィンに対し、新人3人は声をシンクロさせて、レヴィンに迫った。
隊に所属して…、仕事をするようになって初めてのボーナスだった3人にとっては死活問題だ。3人は何にお金を使おうとか、どこに行って遊びに行こうなどを密かに考えて、浮かれていたのだ。
その楽しみが無くなったのだ。
「仕方ないだろ。文句ならマルクスに言えよ」
自分達の隊舎に戻るため歩き続けているなかで、文句を次から次へと発言する部下たちを不愉快に見るレヴィンは、スボンの後ろのポケットからクシャクシャになったタバコの箱を取り出しては、中からは、これまたよれよれになったタバコを取り、口に咥えた。反対の左手は前のポケットに入れて、赤い魔法石を装着したリトルウィッチを取り出し、タバコの先に当てる。
タバコに火がつき、一気に吸い込み、タバコの味を味わう。
その間も、新人3人の声は止まらない。いつもは発言が控えめなルークでさえ、恐る恐るレヴィンに文句を述べる。
「うるせーな、お前ら。いい加減にしろ!」
「アホか。お前がいい加減にしろ」
レヴィンが部下を叱ると同時に、3人には聞きなれない声が被さった。
白いアーケードに太陽の日差しが遮られた通路の先から5人に向かって歩いてきた人物は、ズボンのポケットに両手を入れながら、コツコツと硬い靴底と白いコンクリートがぶつかる音を反響させながらゆっくりと近づき、レヴィンの前で脚を止めた。
「うちの隊がお世話になったな」
「いーや、大したことないさ」
猫の耳をした男は、レヴィンに軽く頭を一度下げる。すぐに頭を上げると、男の目には、誰でもわかるような何かを悪いことを企んでいそうな人の笑顔をしたレヴィンが映る。男は眉をしかめるものの、すぐに後ろにいるルークやゴンに視線を逸らす。
「ルーク、久しぶりだな。そして、ゴン師匠もお元気そうで何よりです」
「お久しぶりです」
「お前こそ大隊長が様になってるじゃねーか」
白い髪の毛を風に靡かせて、見た目は新人達と年齢差が無さそうな男は、ルークを見上げるようにして微笑み、新人たちの後ろにいるゴンには深々と頭を下げる。
挨拶されたゴンは3人達よりも前にでると、男の肩をガシッと掴み、豪快に笑う。その笑い方は、親が子の成長を見て喜んでいるかのようだった。
「な?あの白い耳した人は誰だ?」
自分たちは場違いと思ったトビとラウラは少し距離をとり、トビが小さい声でラウラの耳元で質問するとラウラは冷たい視線を送るが、小さくため息をつくと声量を落として答えた。
「あの腕についた花弁が4枚の紋章を見なよ。大隊長の証よ。」
「お、本当だ。…で?」
「でって、あんたね…。獣人猫族のレオン・バーグ二番隊大隊長。一対一なら、大隊長のなかで一番強いって噂よ。同じ獣人でも、大隊長クラスくらい興味を持ちなさいよ」
ラウラは再びため息をついた。トビは困ったように小さく笑う。その間もレオンとレヴィン、ゴン、そしてルークはエアームーブの破損させた話で盛り上がっていた。
ステラ軍の軍服は基本的には皆同じ服を着用している。その中でも、各隊を指揮する5人の大隊長と総隊長にだけに許された4枚の花弁、ステラを象徴する花でもあるオリーブの花が左腕部分に刺繍されている。
レオン・バーグも大隊長の1人であり、獣人だ。獣人とは、動物の血と人間の血が混ざった人種であり、動物の種類によっては、レオンの耳のように、身体の一部に特徴が表れる傾向がある。
そして、獣人のもう一つの特徴として、高い身体能力が有名である。動物の能力を引き継いでいることも一つの要因であるが、体内に流れている微量の魔力を感じ、操ることで身体を強化することを得意としている。これを「獣術」と呼ばれている。もちろん、獣人以外にもこの獣術を使うことはできるが、獣人は体内の魔力をより敏感に感じ取れるため、他の人よりも上達が早いと言われている。
レオンはこの獣術を使いこなし、先の戦いで特務隊が助けた二番隊の大隊長に成り上がったと言われている。
「」レヴィン」
レヴィンの名を呼ぶものの、視線はルーク、そしてトビとラウラへと移る。レヴィンは何かを察したかのように、笑みを溢しながら「ん?」とだけ答える。
「新人3人の時間を近いうちに作ってくれ。うちの隊の奴らが、3人が強かったって言うからさ。俺が実力を試してやるよ」
「…はいよ」
レヴィンは片手をあげて、賛成の意思を示しながら、自分の隊舎の方へと歩き始める。
新人3人は丸くなった交互に目を見合わせる。トビはともかく、ルークとラウラはレオンが獣術の達人であることを知っている。その達人が別の隊の新人達と手合わせしてくれると言ってくれたのだ。2人は次第に喜びへと変わる。
「ぜひ!よろしくお願いします!」
ルークが頭を下げると、ラウラとトビも続けて頭を下げた。3人が頭を上げて、特にルークの目が輝いてる姿を見たゴンは、少し気の毒そうに「頑張れよ…」とだけ言うと、短足を早めに動かして、その場を後にした。
「日程は俺から伝えるな。それと、頑張り次第では、新人3人のボーナスカットは無しにできるように交渉してやるよ?」
レオンがほくそ笑み、新人3人に向かって手を振ると、5人が怒られていた司令部の棟へと姿を消していった。
「いや、よくねーよ!」
「いや、よくないですよ!」
司令部室から退出し、窮屈なところから解放されたことを喜ぶように、両手を組んで、そのまま両手を上に大きく伸ばしてリラックスしていたレヴィンに対し、新人3人は声をシンクロさせて、レヴィンに迫った。
隊に所属して…、仕事をするようになって初めてのボーナスだった3人にとっては死活問題だ。3人は何にお金を使おうとか、どこに行って遊びに行こうなどを密かに考えて、浮かれていたのだ。
その楽しみが無くなったのだ。
「仕方ないだろ。文句ならマルクスに言えよ」
自分達の隊舎に戻るため歩き続けているなかで、文句を次から次へと発言する部下たちを不愉快に見るレヴィンは、スボンの後ろのポケットからクシャクシャになったタバコの箱を取り出しては、中からは、これまたよれよれになったタバコを取り、口に咥えた。反対の左手は前のポケットに入れて、赤い魔法石を装着したリトルウィッチを取り出し、タバコの先に当てる。
タバコに火がつき、一気に吸い込み、タバコの味を味わう。
その間も、新人3人の声は止まらない。いつもは発言が控えめなルークでさえ、恐る恐るレヴィンに文句を述べる。
「うるせーな、お前ら。いい加減にしろ!」
「アホか。お前がいい加減にしろ」
レヴィンが部下を叱ると同時に、3人には聞きなれない声が被さった。
白いアーケードに太陽の日差しが遮られた通路の先から5人に向かって歩いてきた人物は、ズボンのポケットに両手を入れながら、コツコツと硬い靴底と白いコンクリートがぶつかる音を反響させながらゆっくりと近づき、レヴィンの前で脚を止めた。
「うちの隊がお世話になったな」
「いーや、大したことないさ」
猫の耳をした男は、レヴィンに軽く頭を一度下げる。すぐに頭を上げると、男の目には、誰でもわかるような何かを悪いことを企んでいそうな人の笑顔をしたレヴィンが映る。男は眉をしかめるものの、すぐに後ろにいるルークやゴンに視線を逸らす。
「ルーク、久しぶりだな。そして、ゴン師匠もお元気そうで何よりです」
「お久しぶりです」
「お前こそ大隊長が様になってるじゃねーか」
白い髪の毛を風に靡かせて、見た目は新人達と年齢差が無さそうな男は、ルークを見上げるようにして微笑み、新人たちの後ろにいるゴンには深々と頭を下げる。
挨拶されたゴンは3人達よりも前にでると、男の肩をガシッと掴み、豪快に笑う。その笑い方は、親が子の成長を見て喜んでいるかのようだった。
「な?あの白い耳した人は誰だ?」
自分たちは場違いと思ったトビとラウラは少し距離をとり、トビが小さい声でラウラの耳元で質問するとラウラは冷たい視線を送るが、小さくため息をつくと声量を落として答えた。
「あの腕についた花弁が4枚の紋章を見なよ。大隊長の証よ。」
「お、本当だ。…で?」
「でって、あんたね…。獣人猫族のレオン・バーグ二番隊大隊長。一対一なら、大隊長のなかで一番強いって噂よ。同じ獣人でも、大隊長クラスくらい興味を持ちなさいよ」
ラウラは再びため息をついた。トビは困ったように小さく笑う。その間もレオンとレヴィン、ゴン、そしてルークはエアームーブの破損させた話で盛り上がっていた。
ステラ軍の軍服は基本的には皆同じ服を着用している。その中でも、各隊を指揮する5人の大隊長と総隊長にだけに許された4枚の花弁、ステラを象徴する花でもあるオリーブの花が左腕部分に刺繍されている。
レオン・バーグも大隊長の1人であり、獣人だ。獣人とは、動物の血と人間の血が混ざった人種であり、動物の種類によっては、レオンの耳のように、身体の一部に特徴が表れる傾向がある。
そして、獣人のもう一つの特徴として、高い身体能力が有名である。動物の能力を引き継いでいることも一つの要因であるが、体内に流れている微量の魔力を感じ、操ることで身体を強化することを得意としている。これを「獣術」と呼ばれている。もちろん、獣人以外にもこの獣術を使うことはできるが、獣人は体内の魔力をより敏感に感じ取れるため、他の人よりも上達が早いと言われている。
レオンはこの獣術を使いこなし、先の戦いで特務隊が助けた二番隊の大隊長に成り上がったと言われている。
「」レヴィン」
レヴィンの名を呼ぶものの、視線はルーク、そしてトビとラウラへと移る。レヴィンは何かを察したかのように、笑みを溢しながら「ん?」とだけ答える。
「新人3人の時間を近いうちに作ってくれ。うちの隊の奴らが、3人が強かったって言うからさ。俺が実力を試してやるよ」
「…はいよ」
レヴィンは片手をあげて、賛成の意思を示しながら、自分の隊舎の方へと歩き始める。
新人3人は丸くなった交互に目を見合わせる。トビはともかく、ルークとラウラはレオンが獣術の達人であることを知っている。その達人が別の隊の新人達と手合わせしてくれると言ってくれたのだ。2人は次第に喜びへと変わる。
「ぜひ!よろしくお願いします!」
ルークが頭を下げると、ラウラとトビも続けて頭を下げた。3人が頭を上げて、特にルークの目が輝いてる姿を見たゴンは、少し気の毒そうに「頑張れよ…」とだけ言うと、短足を早めに動かして、その場を後にした。
「日程は俺から伝えるな。それと、頑張り次第では、新人3人のボーナスカットは無しにできるように交渉してやるよ?」
レオンがほくそ笑み、新人3人に向かって手を振ると、5人が怒られていた司令部の棟へと姿を消していった。
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