新任チート魔王のうまうま魔物メシ~勇者パーティーを追放された死霊術師、魔王の力『貪食』と死霊術でらくらく無双&快適メシライフを満喫する~

だいたいねむい

文字の大きさ
8 / 141

第8話 腹も減ったし蹂躙する

しおりを挟む
 二体の大蛇が、俺を喰らわんと迫ってくる。
 ずらりと鋭い牙が生えた腔内は、キレイなピンク色をしている。
 その様子は、まるで肉の壁が押し寄せてくるようだ。

 そう。
 これは肉だ。
 美味そうな、肉の塊だ。
 それが、二体。

 喰いたい。
 口のなかに涎が溢れてきた。
 もう腹が減ってたまらない。

 でも、どうやって喰らえばいいんだ?

 さすがに、この大蛇たちを素手でどうこうできるとは思えない。
 じゃあ、どうする?

 幸い、こいつらの動きは鈍い。
 こうして俺がいろいろと考えている間にも、まるでミミズが地を這うような速度でしか迫ってきていない。

 ああ、これが《自動スキル:時間展延》ってやつか。
 あれ……?
 こんなスキル、持ってたっけ?

 それに、この《スキル:解体》ってのはなんだ。
 字面通りならば、この長い胴体バラバラにできそうだが。
 硬く滑らかな鱗に走る光の筋も、ここに刃を入れれば簡単に解体ができそうではある。

 俺は《はい/いいえ》のうち、《はい》に視線を向けてみた。
 すると、

 ビ! と不快な音が頭の中に鳴り響き、

 《スキル:解体……使用不可 武器カテゴリー:斬撃 を装備してください》

 と文字が変化した。

 武器?
 たしかに今、俺は武器を持っていない。
 ダガーは落としてしまったしな。

 斬撃というのは、剣とかそういうものだろうか。
 それとも、斬れるものならなんでもいいのか?

 それじゃあ……あそこに落ちている包丁はどうだろうか。
 まがりなりにも、こんな遺跡で後生大事に祀られていたシロモノだ。
 少しくらいは、切れ味に期待したい。

 《自動スキル:時間展延 残り15秒》

 大蛇たちの顎が、いまや手を伸ばせば触れられるところまで迫っている。
 俺はそれを横目に見ながら、するりとその脇を抜けてゆく。

「あった。……もう持っても火を噴いたりしない、よな?」

 手に取ったそれは、何の変哲もない、ただの調理用の包丁に見える。
 何千年もの間祭壇に鎮座していたにもかかわらず、刃こぼれひとつない。
 切れ味は悪くなさそうだ。

 とりあえず炎は出ないようだな。
 ちょっとホッとする。

 元いた場所を見れば、ちょうど大蛇たちが口を閉じたところだった。
 ま、そこには誰もいないんだがな。

 《自動スキル:時間展延を行使中 残り3……2……1……0秒》

 スキルの効果が切れた。
 同時に、バクン! と湿った音が広間に響く。

 獲物が口の中にいないことに気付き、不思議そうに辺りを見渡す大蛇たち。
 その様子を見ながら、こいつらをどう仕留めるかを考える。

 光の筋は大蛇の首のあたりをぐるっと一周するように巡っている。
 なるほど。
 鮮度を保ったまま仕留めるならば、へたに腹をさばくよりも、さっさとクビを切り落とした方がいいな。

 問題は、こいつらが鎌首をもたげた状態だと、俺の背丈の三倍は高さがあるせいで、まったく手が届かないことだが……

『『シャアアアアアァァァ!』』

 獲物を逃したことに気づいた大蛇たちがこちらに向き直った。

「おっと!?」

 猛烈な速度で迫る尻尾を、身体を低くしてかわす。
 今度は視野の端に捉えていたから、回避できた。

 長い胴体を活かして、死角からの攻撃を試みたようだが……
 戦闘中に、同じ手を二度と喰らうわけないだろ。

 とはいえ、何度も躱し続けるかどうかはまだ自信がない。
 また攻撃を受けた場合に、前回と同じく無傷でいられる保証もない。
 少し距離を取るか。

 そう思って軽くバックステップをしたつもりだったが……

「おおう゛っ!?」

 かなり後ろにあったはずの壁にぶつかって、思わず呻き声が出る。
 ぱらぱらと、砕けた岩の欠片が床に落ちた。

 数歩だけ後退するつもりだったんだが。
 さっきまでいた場所は、壁から数十歩は離れている。
 こんなところまで、一瞬で?
 たしか、勇者サムリのヤツが使うスキル『瞬歩』がこんな感じだったが……

 なんだか、俺の身体がおかしいぞ。

 ……いや、まさか。

 試しに、俺は軽くその場でジャンプしてみた。

 ガン! 「おボっふ!?」

 今度は天井に頭をぶつけた。
 痛みはなかったが、かなりの衝撃だ。
 舌を噛みそうになった。
 危ねー……

 というか、なんだこの身体能力は。

 この広間の天井はかなりの高さがある。
 少なく見積もっても、五階建ての建物を吹き抜けにしたくらいはある。
 それを、軽くジャンプしただけで到達?
 マジで勇者サムリのようだ。
 いや、いくらアイツでもこんな跳躍力はなかった気がする。
 やたら頑丈だし……

 まるでタチの悪い夢か冗談のようだ。
 とはいえ、これだけの身体能力があれば、あんな蛇の形をした肉なんて、一瞬で細切れにできそうだ。

 それにさっきの衝撃で少しだけ冷静になれたが、そろそろ腹の具合も限界だ。

 よし。
 ものは試しだな。

 俺は視界の端に浮かんだままの文字《スキル:解体》の、《はい》に意識を向ける。

 《スキル解体:発動》

 文字が変化した。
 それと同時に、手に持った包丁がまたもや、キイイィィ、と甲高い音を立て始める。
 みるみるうちに、刃の部分が赤熱し始めた。
 が、今度はとくに熱さは感じられない。

 大蛇に目をやると、さきほど浮かび上がっていた光の筋が、さらにハッキリと見えた。
 一撃で仕留めるとなると……やはり首筋が一番か。
 だが、手に持った包丁では、首を両断するには少しばかり長さが足りないな。
 できればロングソードくらいの長さが欲しい。
 そうすれば、一刀両断できるというのに。

 キイイィィィ――

 そう心の中で思った途端、またもや甲高い音が包丁から鳴り響き……刀身が伸び始めた。

 おお。

 赤熱を通り越し、もはや光り輝く刃と化した包丁は、ちょうど俺が頭の中で考えた長さ……ロングソードほどの長さまで成長している。

 まるで俺の意思をくみ取ったかのようだ。
 これなら、十分なサイズだ。

「行くぞ」

 思い切り足を踏みしめてから、一足跳びに大蛇の片方に迫る。
 かなりの距離があったはずなのに、一瞬で肉薄する。

 大蛇どもは全く反応できていない。
 多分、コイツラの目には、俺がその場から消えたように映ったハズだ。
 それほどの速さだった。

「ふんっ」

 そのまま跳躍すると同時に、気合い一閃。
 大蛇の首元から光る包丁で斬り上げた。

 するん。

 刃が、大蛇の首を通り抜けた・・・・・
 そう思ったほど、手応えがない。

「……へっ?」

 思わず声が出てしまう。

 いや、あるにはある。
 ウロコの生えた皮も、強靱なはずの筋肉も、骨の手応えも、確かに感じたのは間違いなかった。

 しかし、それはまるで熟した果物にナイフを入れたような、奇妙な感触だ。
 本当に斬れたのか?
 普段はダガー程度の長さの刃物しか扱ったことがないからな。
 もしかして攻撃が滑って、実は刃が表皮を流れてしまっていたとか……

 俺は内心そう訝りながらも、広間の床に着地する。
 だが、その心配は杞憂だったようだ。

 つぷり

 それと同時に、大蛇の首から血が滲み出て……次の瞬間、それは噴水に変わった。
 そのまま大蛇の頭部がずるりと落ち、もう数瞬遅れて、頭部を失った巨体がどさりと横倒しになる。

 片割れの大蛇はあまりのことに、こちらを呆然と眺めているだけだ。
 俺のことなんて、ただのエサだと思っていたに違いない。
 何が起こったのかすら、分からないのだろう。

 だが、そのエサによって相方は首を切り落とされ、絶命した。

『ジャアァァッ――!』

 我に返ったのか、片割れの大蛇が激昂し、鋭い威嚇音を上げる。
 俺に向かって大きな顎を開き、噛みつこうと迫ってくる。

 遅い。

 ゆっくりと迫る大蛇の顎を、ゆるりと横に躱す。
 というか《スキル:時間展延》を使用する必要もなさそうだ。
 この異常な身体能力を自覚した瞬間から、明らかに反応速度が数十倍は向上している。

 もうちょっと。
 もうちょっと。

 ああ、ここだ。

 俺の目の前に、無防備に首筋を晒す大蛇。
 頭部を切り離すには、ちょうどいい位置、角度だ。

「ふッ」

 俺は首筋に浮かぶ光の筋に沿って、包丁を差し入れる。
 やはり力はいらなかった。
 ほとんど抵抗を感じさせずに、包丁の刃が大蛇の頸部にするすると沈み込んでゆく。
 大蛇は自分がどうなったのか、分からなかっただろう。

 ほどなく、力を失った胴体がすぐに動きを止めた。

 包丁が、元に戻る。
 刀身には、血糊すら付いていなかった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...