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第16話 戦果で寄せ鍋
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「じゃあ、まずは味見をしていくか。気が進まないが……」
テーブルの上には、先ほど狩ってきた魔物肉の数々を並べてある。
おなじみ大蛇ニーズヘッグの肉。
蜘蛛型魔物の脚から取り出した白い肉。
空を飛べないデカイ鳥のもも肉もある。
人間の顔くらいの大きさの目玉に触手が付いた魔物は、目玉部分が外殻だったので、中身を取り出した。
コイツでかろうじて食えそうなのはキモの部分と触手だな。
これらの全部、あるいは一部を使って料理の献立を考える。
考えると言っても、鍋にするのは決まってはいるがな。
あとは、魔物カズラの触手とダンジョンの中に魔素溜りに生えていた食用キノコと野草だな。
野草はいわゆる薬草とか毒消草と言われるヤツだ。
一応、コイツも臭み消しに使える。
ひとまず、野草とキノコをのぞくすべての食材を水でゆすぎ、軽く塩水で下ゆでしておいた。これで多分、加熱すれば消える毒性や、水に溶け出す臭み成分などは処理できたはずだ。
ちなみに、蟲型は今回はパス。
これは永遠にパスだ。
パレルモが持って帰ると言い張ったからやむを得ず持ち帰ったが。
飢餓感が襲ってきたら最後の手段にしようとさっきは思ったが……いや、どう考えてもナシだな。
蟲型はなんというか、完全に一致するわけじゃないが、いわゆる『海辺の掃除屋さん』っぽい形状だ。サイズは十倍以上ある。
もちろんダンジョンは一定時間で魔物の死骸を吸収してしまうから、完全に同じ生態とは考えにくいが……
とりあえずパレルモを説得して、コイツらだけは別の《ひきだし》に隔離してもらってある。
一応襲ってきたヤツは包丁で仕留めることができた。
だから、食えないことはないのだろう。
想像したくないが……
アレを食おうと思えるのはその生態を知らないパレルモぐらいで十分だ。
もちろん彼女にも食わせたくもない。
料理するの俺だし。
折を見て《ひきだし》から出してもらって、こっそり捨てにいこうと思う。
……よし。
まずは、この蜘蛛の脚肉だ。
見た目はとりあえず普通だな。
匂いは……どちらかというと食欲をそそる感じだな。
正直、大蛇肉を食べた時点で割と吹っ切れている。
毒性はちょっと試してみないと分からないが、スキルで無効化できるはずだから大丈夫だろう。
「それじゃあ、いくか……」
俺は意を決して、肉を口に放り込んだ。
◇
「おーい、パレルモ。メシができたぞー」
「ほーい」
キッチン越しに、隣の自室でくつろぐパレルモに声をかける。
気の抜けた返事が聞こえ、少ししてからダイニングに姿を現す。
「あれ?」
パレルモはダイニングに入ってくるなり、首をかしげた。
「どうした?」
「まだ、途中なの?」
テーブルの真ん中には、料理の入った大きな鍋がデン! と置かれている。
確かにまだ取り皿を持ってきてなかったが、それはわざとだ。
今日の料理は、寄せ鍋だ。
蜘蛛型魔物の脚を中心に、鳥型魔物の肉と、それに野草とキノコを入れ、さらに臭みを消す調味料などを加えて煮込んである。
ちょっと具材の種類が少ない気がしたが、目玉触手はキモと触手が猛毒だったからな。加熱しても水にさらしてもだめだったし、さすがにそれ以上のことを試す時間はなかった。
大蛇肉は強烈な泥臭さをどうにかしないといけないので今回はパス。
で、自然とこの具材に落ち着いた。
何も獲れなければニーズヘッグの肉と最後の香辛料を使って大皿料理にでもしようとしたんだが、以外と使える食材が揃ったからな。
「もうできるぞ。パレルモ、取り皿とハシ、それとフォークとスプーンを持ってきてくれ。俺とお前の分、両方な。あ、そうそう、そこにあるタレも取ってくれ」
「う、うん」
まだパレルモはよく分からないといった表情で、言われるがままに、キッチンの棚から二人分の食器類やタレを持ってきた。
「じゃあ、それらを俺の言う通りにテーブルに置いてくれ。ここと、ここな」
「わかったー」
首をかしげながらも、言われたとおりに食器をテーブルに置き、席に着くパレルモ。
俺も、席に着く。
それから手前に置かれたふたつの取り皿の一つにタレを注ぐ。
パレルモの取り皿にも同様に注いでやる。
「じゃ、メシにしようか」
「えっ、でもその料理……」
珍しく歯切れが悪いな。
「なんだ?」
俺が問うと、パレルモが困ったような顔で言った。
「まだ、完成してないよ?」
「完成してるぞ。ほら見てみろ。このクモ脚の肉なんて、良い感じに火が通ってる。プリップリだ。ほかの具材も、きちんとできてるぞ」
俺は鍋からおたまで具を取り皿によそい、別の取り皿に入ったタレにつけたあと、口の放り込んだ。
最初にくるのは、タレのさわやかな酸味だ。
次にアツアツの肉を噛みしめると、ふんわりとほどけた肉から、旨味をたっぷりと含んだ汁が口の中に溢れだしてくる。
「はふっ、ほふっ、うめえなコレ!」
クモ肉の味と食感は、ホンモノとは多少違うものの、カニによく似ている。
クセはほとんどないな。
見た目はともかく、当たりの魔物だ。
ちなみに、タレはキッチンにあった黒いソースと魔物カズラの触手を絞った汁を混ぜている。
魔物カズラのヤツ、あんな気色の悪い見た目だったくせに、触手を絞って出てきた体液……もとい樹液は、さわやかな酸味をしている。
そして、キッチンにあった黒いソースと混ぜ合わせることにより、魔物肉のクセを絶妙に消してくれるのだ。
この組み合わせを発見したときは、ちょっと小躍りしたくらいだ。
「でも」
パレルモの言うことは分かる。
彼女の知っている料理とは、挑戦者が特別に作った、彼女のためだけの料理だ。
「お前の言いたいことは分かるぞ。だけど、この料理はこの大鍋に入っている時点でもう完成してるんだ。食べたい量を食べたいだけ、ここから自分で取っていくんだよ」
「そ、そーなの?」
「そうだよ。これは、俺とパレルモで食べる料理だからな。だから別々に分ける必要なんてないだろ? 今日から、俺たちの食事はこのスタイルでやってく。俺はメシを作るから、お前には食器の用意をまかせる」
「……? う、うん?」
パレルモの顔に疑問符が浮かんでいる。
あっ。ヤベえ。
これは全然ピンときてない顔だ!
しまった。
完全に滑った。
こういうの、苦手なんだよ。
「……! おいしっ! なにこれライノ! このクモ! このクモおいしー! ……でも、でかい鳥肉はいまいちー」
……でも、まあいいか。
パレルモは鍋の具を自分の取り皿によそって食べ始めた。
今後は俺の食べさしを欲しがることはないだろう。
でもパレルモさんや、鍋の具に対して『クモ』って連呼するのやめてくれ。
あの禍々しい姿とおぞましい巣の惨状を思い出しちゃうからな。
◇
「ふー、食った食った」
俺は食事の後片付けをしながら、今日獲得したスキルを振り返る。
目玉触手からは《暴露+》《麻痺無効》
魔物カズラからは《腐食耐性+++》
蜘蛛型魔物と鳥型魔物はとくに獲得スキルなし。
という結果だった。
蜘蛛型と鳥型は、もしかしたらニーズヘッグのスキルと被っていたか、下位互換だったのかも知れないな。
《麻痺無効》も《腐食耐性+++》もダンジョン探索や戦闘時に威力を発揮する便利なスキルだ。非常にありがたい。
しかし、俺の攻撃力を底上げしてくれるものがないのが残念だ。
もともと盗賊職も死霊術師も前衛で魔物とバチバチ戦う職種じゃないからな。
両方とも完全に後方支援というわけではないし、こと戦闘という状況においては、どっちつかずなところがある。
確かに手に入れた包丁の攻撃力も魔王の力による身体能力の増加もスゴイが、一対少数かつ対生物という縛りがある。
たとえば数十体のゴーレムが押し寄せるような状況だと、俺一人が生き残ることは可能かも知れないが、パレルモを守り切ることは難しいと言わざるをえない。
毎回、ゾンビ化した魔物を使役できるとも限らないわけだしな。
初戦で手に負えない強敵に遭遇したらアウトだ。
というわけで、強力な攻撃手段があるパレルモは早めに鍛えておく必要があるな。
それには、彼女の現在の状況を把握しておく必要があるのだが……
そこで目玉触手から得たスキル、《暴露+》だ。
実はこいつ、倒すときに少々手こずった相手だった。
なぜかというと、こっちの動きを先読みしてくるのだ。
まるでこちらの挙動を把握しているかのように。
まあ、こっちの速度がはるかに上なので、苦戦するほどではなかったが。
「――《暴露》」
俺が声を出すと、ブン! と音がして、光の文字が視界に浮かび上がってきた。
これは、自分の視界に入れた対象の情報を解析するスキルらしい。
以前の貪食がどうだ、とかと違い、圧倒的な情報量がある。
ためしに、寄せ鍋の鍋そのものを三杯もおかわりしたせいで、そこで動けなくなっているパレルモに視線を向けてみる。
しんどそうな目で「んー?」とこっちを見ているがスルーだ。
名 前:パレルモ
種 族:ヒト(****)
性 別:女
年 齢:3215歳
生命力:47974/47974
魔 力:*3***8**/**4****2
魔 術:亜空間生成 時空断裂
空間転移 ****
スキル:自動治癒+++ 即死無効
熱源感知 猛毒耐性+++
物理攻撃耐性 魔法防御耐性
生命力増加 魔力増加
麻痺耐性+++ 腐食耐性++
状 態:満腹
と表示された。
これに加えて、パレルモの幻影が、ゆらゆらと彼女の身体の周囲を漂っている。
動きを予測するような漂い方だから、これが目玉触手が使用していた先読みの能力なんだろう。
正直、この速度だと俺にはあまり使えん。
魔術はスキルと別カテゴリらしい。
種族や魔力など、ところどころ文字が潰れていて見えない箇所があるな。
能力の限界なのか、封印でもされているのか。
よくわからんな。
年齢については、大体申告通りだ。
性別は、まあ見たまんまだな。
生命力とか魔力は……これはスゴいのか?
自分自身のことはこのスキルで分からないし、そもそも基準が分からないからあまり意味がない。
一般女性の生命力が五万台の可能性もあるわけだしな。
まあ、それはいい。
問題はスキルの取得状況だが、《自動治癒+++》《即死無効》は彼女がすでに持っていたスキルだな。確かにこれらがあれば長生きできそうな気がする。
そして、新しく取得したスキルだが……これらは、どうやら俺の取得したものの下位互換のスキルになるらしい。
とはいえ、取得しないよりはマシだから、それは別に構わないけどな。
肝心の猛毒耐性がどの程度なのかが気になるところだ。
お、パレルモが動き出したぞ。
まだ満腹感が残っているのか、のろのろとゾンビみたいな動きだ。
「ライノー」
こっちにやってくる。
なんだ?
じっと見ていたから、気になったのか?
皿洗いがまだ残っているから、ここから動けないな。
パレルモがキッチンに入ってくる。
「ライノー、お腹減った。食べるものないー?」
そのふくれた腹で、まだ食うつもりかよ……
三千年以上絶食状態だったせいだろうか。
何か、解いてはいけない封印を解いてしまった気がする。
テーブルの上には、先ほど狩ってきた魔物肉の数々を並べてある。
おなじみ大蛇ニーズヘッグの肉。
蜘蛛型魔物の脚から取り出した白い肉。
空を飛べないデカイ鳥のもも肉もある。
人間の顔くらいの大きさの目玉に触手が付いた魔物は、目玉部分が外殻だったので、中身を取り出した。
コイツでかろうじて食えそうなのはキモの部分と触手だな。
これらの全部、あるいは一部を使って料理の献立を考える。
考えると言っても、鍋にするのは決まってはいるがな。
あとは、魔物カズラの触手とダンジョンの中に魔素溜りに生えていた食用キノコと野草だな。
野草はいわゆる薬草とか毒消草と言われるヤツだ。
一応、コイツも臭み消しに使える。
ひとまず、野草とキノコをのぞくすべての食材を水でゆすぎ、軽く塩水で下ゆでしておいた。これで多分、加熱すれば消える毒性や、水に溶け出す臭み成分などは処理できたはずだ。
ちなみに、蟲型は今回はパス。
これは永遠にパスだ。
パレルモが持って帰ると言い張ったからやむを得ず持ち帰ったが。
飢餓感が襲ってきたら最後の手段にしようとさっきは思ったが……いや、どう考えてもナシだな。
蟲型はなんというか、完全に一致するわけじゃないが、いわゆる『海辺の掃除屋さん』っぽい形状だ。サイズは十倍以上ある。
もちろんダンジョンは一定時間で魔物の死骸を吸収してしまうから、完全に同じ生態とは考えにくいが……
とりあえずパレルモを説得して、コイツらだけは別の《ひきだし》に隔離してもらってある。
一応襲ってきたヤツは包丁で仕留めることができた。
だから、食えないことはないのだろう。
想像したくないが……
アレを食おうと思えるのはその生態を知らないパレルモぐらいで十分だ。
もちろん彼女にも食わせたくもない。
料理するの俺だし。
折を見て《ひきだし》から出してもらって、こっそり捨てにいこうと思う。
……よし。
まずは、この蜘蛛の脚肉だ。
見た目はとりあえず普通だな。
匂いは……どちらかというと食欲をそそる感じだな。
正直、大蛇肉を食べた時点で割と吹っ切れている。
毒性はちょっと試してみないと分からないが、スキルで無効化できるはずだから大丈夫だろう。
「それじゃあ、いくか……」
俺は意を決して、肉を口に放り込んだ。
◇
「おーい、パレルモ。メシができたぞー」
「ほーい」
キッチン越しに、隣の自室でくつろぐパレルモに声をかける。
気の抜けた返事が聞こえ、少ししてからダイニングに姿を現す。
「あれ?」
パレルモはダイニングに入ってくるなり、首をかしげた。
「どうした?」
「まだ、途中なの?」
テーブルの真ん中には、料理の入った大きな鍋がデン! と置かれている。
確かにまだ取り皿を持ってきてなかったが、それはわざとだ。
今日の料理は、寄せ鍋だ。
蜘蛛型魔物の脚を中心に、鳥型魔物の肉と、それに野草とキノコを入れ、さらに臭みを消す調味料などを加えて煮込んである。
ちょっと具材の種類が少ない気がしたが、目玉触手はキモと触手が猛毒だったからな。加熱しても水にさらしてもだめだったし、さすがにそれ以上のことを試す時間はなかった。
大蛇肉は強烈な泥臭さをどうにかしないといけないので今回はパス。
で、自然とこの具材に落ち着いた。
何も獲れなければニーズヘッグの肉と最後の香辛料を使って大皿料理にでもしようとしたんだが、以外と使える食材が揃ったからな。
「もうできるぞ。パレルモ、取り皿とハシ、それとフォークとスプーンを持ってきてくれ。俺とお前の分、両方な。あ、そうそう、そこにあるタレも取ってくれ」
「う、うん」
まだパレルモはよく分からないといった表情で、言われるがままに、キッチンの棚から二人分の食器類やタレを持ってきた。
「じゃあ、それらを俺の言う通りにテーブルに置いてくれ。ここと、ここな」
「わかったー」
首をかしげながらも、言われたとおりに食器をテーブルに置き、席に着くパレルモ。
俺も、席に着く。
それから手前に置かれたふたつの取り皿の一つにタレを注ぐ。
パレルモの取り皿にも同様に注いでやる。
「じゃ、メシにしようか」
「えっ、でもその料理……」
珍しく歯切れが悪いな。
「なんだ?」
俺が問うと、パレルモが困ったような顔で言った。
「まだ、完成してないよ?」
「完成してるぞ。ほら見てみろ。このクモ脚の肉なんて、良い感じに火が通ってる。プリップリだ。ほかの具材も、きちんとできてるぞ」
俺は鍋からおたまで具を取り皿によそい、別の取り皿に入ったタレにつけたあと、口の放り込んだ。
最初にくるのは、タレのさわやかな酸味だ。
次にアツアツの肉を噛みしめると、ふんわりとほどけた肉から、旨味をたっぷりと含んだ汁が口の中に溢れだしてくる。
「はふっ、ほふっ、うめえなコレ!」
クモ肉の味と食感は、ホンモノとは多少違うものの、カニによく似ている。
クセはほとんどないな。
見た目はともかく、当たりの魔物だ。
ちなみに、タレはキッチンにあった黒いソースと魔物カズラの触手を絞った汁を混ぜている。
魔物カズラのヤツ、あんな気色の悪い見た目だったくせに、触手を絞って出てきた体液……もとい樹液は、さわやかな酸味をしている。
そして、キッチンにあった黒いソースと混ぜ合わせることにより、魔物肉のクセを絶妙に消してくれるのだ。
この組み合わせを発見したときは、ちょっと小躍りしたくらいだ。
「でも」
パレルモの言うことは分かる。
彼女の知っている料理とは、挑戦者が特別に作った、彼女のためだけの料理だ。
「お前の言いたいことは分かるぞ。だけど、この料理はこの大鍋に入っている時点でもう完成してるんだ。食べたい量を食べたいだけ、ここから自分で取っていくんだよ」
「そ、そーなの?」
「そうだよ。これは、俺とパレルモで食べる料理だからな。だから別々に分ける必要なんてないだろ? 今日から、俺たちの食事はこのスタイルでやってく。俺はメシを作るから、お前には食器の用意をまかせる」
「……? う、うん?」
パレルモの顔に疑問符が浮かんでいる。
あっ。ヤベえ。
これは全然ピンときてない顔だ!
しまった。
完全に滑った。
こういうの、苦手なんだよ。
「……! おいしっ! なにこれライノ! このクモ! このクモおいしー! ……でも、でかい鳥肉はいまいちー」
……でも、まあいいか。
パレルモは鍋の具を自分の取り皿によそって食べ始めた。
今後は俺の食べさしを欲しがることはないだろう。
でもパレルモさんや、鍋の具に対して『クモ』って連呼するのやめてくれ。
あの禍々しい姿とおぞましい巣の惨状を思い出しちゃうからな。
◇
「ふー、食った食った」
俺は食事の後片付けをしながら、今日獲得したスキルを振り返る。
目玉触手からは《暴露+》《麻痺無効》
魔物カズラからは《腐食耐性+++》
蜘蛛型魔物と鳥型魔物はとくに獲得スキルなし。
という結果だった。
蜘蛛型と鳥型は、もしかしたらニーズヘッグのスキルと被っていたか、下位互換だったのかも知れないな。
《麻痺無効》も《腐食耐性+++》もダンジョン探索や戦闘時に威力を発揮する便利なスキルだ。非常にありがたい。
しかし、俺の攻撃力を底上げしてくれるものがないのが残念だ。
もともと盗賊職も死霊術師も前衛で魔物とバチバチ戦う職種じゃないからな。
両方とも完全に後方支援というわけではないし、こと戦闘という状況においては、どっちつかずなところがある。
確かに手に入れた包丁の攻撃力も魔王の力による身体能力の増加もスゴイが、一対少数かつ対生物という縛りがある。
たとえば数十体のゴーレムが押し寄せるような状況だと、俺一人が生き残ることは可能かも知れないが、パレルモを守り切ることは難しいと言わざるをえない。
毎回、ゾンビ化した魔物を使役できるとも限らないわけだしな。
初戦で手に負えない強敵に遭遇したらアウトだ。
というわけで、強力な攻撃手段があるパレルモは早めに鍛えておく必要があるな。
それには、彼女の現在の状況を把握しておく必要があるのだが……
そこで目玉触手から得たスキル、《暴露+》だ。
実はこいつ、倒すときに少々手こずった相手だった。
なぜかというと、こっちの動きを先読みしてくるのだ。
まるでこちらの挙動を把握しているかのように。
まあ、こっちの速度がはるかに上なので、苦戦するほどではなかったが。
「――《暴露》」
俺が声を出すと、ブン! と音がして、光の文字が視界に浮かび上がってきた。
これは、自分の視界に入れた対象の情報を解析するスキルらしい。
以前の貪食がどうだ、とかと違い、圧倒的な情報量がある。
ためしに、寄せ鍋の鍋そのものを三杯もおかわりしたせいで、そこで動けなくなっているパレルモに視線を向けてみる。
しんどそうな目で「んー?」とこっちを見ているがスルーだ。
名 前:パレルモ
種 族:ヒト(****)
性 別:女
年 齢:3215歳
生命力:47974/47974
魔 力:*3***8**/**4****2
魔 術:亜空間生成 時空断裂
空間転移 ****
スキル:自動治癒+++ 即死無効
熱源感知 猛毒耐性+++
物理攻撃耐性 魔法防御耐性
生命力増加 魔力増加
麻痺耐性+++ 腐食耐性++
状 態:満腹
と表示された。
これに加えて、パレルモの幻影が、ゆらゆらと彼女の身体の周囲を漂っている。
動きを予測するような漂い方だから、これが目玉触手が使用していた先読みの能力なんだろう。
正直、この速度だと俺にはあまり使えん。
魔術はスキルと別カテゴリらしい。
種族や魔力など、ところどころ文字が潰れていて見えない箇所があるな。
能力の限界なのか、封印でもされているのか。
よくわからんな。
年齢については、大体申告通りだ。
性別は、まあ見たまんまだな。
生命力とか魔力は……これはスゴいのか?
自分自身のことはこのスキルで分からないし、そもそも基準が分からないからあまり意味がない。
一般女性の生命力が五万台の可能性もあるわけだしな。
まあ、それはいい。
問題はスキルの取得状況だが、《自動治癒+++》《即死無効》は彼女がすでに持っていたスキルだな。確かにこれらがあれば長生きできそうな気がする。
そして、新しく取得したスキルだが……これらは、どうやら俺の取得したものの下位互換のスキルになるらしい。
とはいえ、取得しないよりはマシだから、それは別に構わないけどな。
肝心の猛毒耐性がどの程度なのかが気になるところだ。
お、パレルモが動き出したぞ。
まだ満腹感が残っているのか、のろのろとゾンビみたいな動きだ。
「ライノー」
こっちにやってくる。
なんだ?
じっと見ていたから、気になったのか?
皿洗いがまだ残っているから、ここから動けないな。
パレルモがキッチンに入ってくる。
「ライノー、お腹減った。食べるものないー?」
そのふくれた腹で、まだ食うつもりかよ……
三千年以上絶食状態だったせいだろうか。
何か、解いてはいけない封印を解いてしまった気がする。
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この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
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