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第39話 香辛料屋 後編
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「ごめんねえ、ウチの旦那が」
「いつつ……さっきは取り乱してすまんかったな、兄ちゃん」
店の奥に通された俺たちは、店主である旦那とその奥さんであるおばちゃんに平謝りされるハメになった。
「いや、こっちは別にケガとかしてないからな。別に構わん。それにこの胡椒の実を買い取ってもらいたくて来たんだからな」
俺はそう言って、荷物の口を開き、中一杯に詰め込んだ胡椒の実を二人に見せる。
「なっ……こりゃまたすげえ量だな」
「ほんとだこと……」
旦那とおばちゃんは、唖然とした様子だ。
ちなみに旦那には回復薬を施したものの、まだ痛みが残っているらしい。
応接室の長イスにうつぶせになったままだ。
「なあ兄ちゃん。これはまだどこにも持ち込んでいない。ウチが初めて。そうだな?」
と、旦那が急に真面目な顔になってそんなことを言ってきた。
おっと。
これは商人の顔だな。
長イスに寝そべったままだから、全然締まらないが。
とはいえ、こっちもそれなりに気を引き締めていくべきか。
一応俺だって、商談に来たんだからな。
「ああ。冒険者ギルドにも見せていないぜ」
「商工ギルドには?」
「いいや」
「まさかグレンのとこには行っていないよな!?」
「そのグレンって、『グレン商会』のことか? それならまだ行ってないぞ。街に入ってその足でここまできたからな」
そのグレンだかグレン商会ってのはこことのライバル店か何かだろうか。
たしか、この街で手広く商売をやっている大商人だったかな。
そういえば山賊討伐というかペッコ討伐の前に香辛料を求めて立ち寄った店のカウンターの奥に『グレン商会加盟店』って札が下がっているのを見たことはある。
品薄にかこつけてかなり値段をつり上げていたから、あまりいい印象はないな。
「そうかそうか。ソイツは僥倖だな」
そこで旦那は少しだけ低い声になって、言った。
目つきも鋭い。
ちょっと商人らしいじゃねーか。
「じゃあ、コイツはどこで手に入れた? しかもこんな大量に、だ。もしかして王都にツテでもあるのか?」
ああ、俺がコイツを正規のルート『以外』で持ってきたことを疑っているんだな。
……たとえばどこぞの商隊を襲って手に入れたとか、あるいはライバル店が旦那をハメるつもりで俺を送り込んできた……とか。
もちろんそのどれとも違うわけだが、こっちもこういう場でわざわざネタを明かすようなマネをしてやる義理はない。
「悪いが、それは秘密だな。貴重な品の仕入れ先をバラす商人なんていると思うか?」
俺も旦那を真似て、ドスを効かせた声で言う。
こういう時はちょっとハッタリを効かせてみるのがコツだ。
つーか、まさかビトラが魔術で出しました、とは言えないからな。
「…………そうか。いやまぁ、そりゃそーだよな」
俺の声色に一瞬面食らったような顔になった旦那だったが、すぐにニヤリと笑みを浮かべ、もとの声のトーンに戻った。
「いや、悪りぃ。さっきのは忘れてくれ。あまりにもうまい話だったんで、つい昔の血が騒いじまった」
「気にしてないよ。いきなり冒険者がやってきて、品物を買い取れとか言ってきたら、勘ぐりの一つや二つあってもおかしくないからな」
旦那は昔はブイブイ言わせてたタイプらしい。
今じゃすっかり腰をイワした小太り中年だけどな。
しかし、旦那はずいぶんと名残惜しそうな顔をしているな。
「ずいぶんと食いつくんだな。そんなに珍しいのか? この生胡椒ってのは」
そう言うと、旦那とおばちゃんは互いに顔を見合わせたあと、俺のことを可哀相な子を見るような目つきになった。
なんだ?
俺、変なこと言ったか?
「はあ……。なあ、兄ちゃん。ちょっといいか?」
「お、おう」
「胡椒ってヤツは、どこで採れるものか知ってるか?」
「いや、知らない」
確か、遠いところだったとは聞いたことがあるが。
王都周辺だろうか?
全然分からんな。
俺が肩をすくめて見せる。
それを見た旦那は大きくため息を吐いて、話を続けた。
「いいか、胡椒の生産地は、王都のずっと先だ。
王都はただの物流拠点だからな。
で、胡椒ってのは山脈を越えて、砂漠を越え何週間、何ヶ月も……要するに、生のままじゃカビが生えるか、腐っちまう距離を渡って王都に、そしてこの街まで運ばれてくるわけだ。
それを、お前さんは生のままここに持ってきた。この意味が分かるか?」
「ま、まあ」
「『ま、まあ』じゃねーよ! このヘズヴィンどころか、王都でだって、こんなもの絶対に手に入らないんだぞ!価格だって、一粒が同じ大きさの金と変わらんはずだ!
これを知ったら、貴族どころか王様だって押しかけてくるぞ!
あんたが持ち込んだ生胡椒の実ってのは、そーいう類いのシロモノだ」
「お、おう」
旦那のあまりの剣幕に、ちょっと引き気味になる俺。
なるほど。
そういうことなら、旦那の白熱ぶりも理解できるってわけだ。
しかしこの旦那、商人にしてはずいぶんといい人間だな。
普通、そんな貴重な品を知らずに持っていたら、おもいっきり安く買い叩いたって誰も文句は言わねーぞ。
そもそも商売ってのは、基本「騙されるヤツが悪い」だからな。
そういう意味では、この店に生胡椒を持ち込んで正解だったようだ。
つーか、俺からしてみればちょっと心配になるほどのお人好しっぷりだ。
まあ、流通が滞って品物が高騰しているときに据え置き価格で営業していた時点で、そうだとは思っていたが……
「ねえねえライノー、胡椒のお話聞いてたらお腹すいたー」
「む。胡椒は肉によく合う。今宵は屋台の串焼きを所望する」
「二人はちょっと静かにしててくれ」
パレルモとビトラにはちょっと難しい話だったみたいだ。
確かに俺も腹が減ってはいるが。
「あらあら、そっちのお嬢ちゃんたちはお金の話より食い気の方が勝っているみたいだねえ」
まるで自分の娘を見るように、目を細めるおばちゃん。
いや、コイツら二人ともおばちゃんのウン十倍は生きてるからね?
……まあいい。
「要するに、とんでもなく貴重ってことだろ。よーく分かったよ」
「分かりゃ、いい。で、ものは相談なんだが……」
旦那がえらい悪い笑顔で俺に迫ってきた。
ていうか揉手しつつ、器用に長イスごとすごいスピードで移動してきやがった!
あと脂ぎった笑顔もキモい!
この旦那、マジで人間なんだろうか……
商売人怖えな!
……と、そんな感じで生胡椒の商談は順調に(?)進んでいくのだった。
◇
香辛料屋を出ると、もう日が傾きかけていた。
ただ生胡椒の実を見てもらうだけのハズだったが、ずいぶんと時間を食ってしまった。
まあ、そのほとんどの時間は旦那の香辛料談義に付き合ってのことだったが……
やっぱ本職は好きなことをしゃべり出すと止まらないんだな。
まあ、俺もダンジョンと死霊術のことなら、三日三晩喋り倒しても足りないからな。
似たようなもんだろう。
「しかし、すげえ高値で売れたな」
俺は手に持った革袋の重みを確かめる。
中には、金貨だけがずっしりと詰まっている。
これだけで、俺たち三人が一年は遊んで暮らせるだろう。
香辛料の代金としては、破格すぎる額だ。
さらに、これから当分お互いに取引をするからということで商人であることを証明する証文を書いて貰った。
もちろんこれは形式的なものだが、それでも取引をする以上、必要なものなのだそうだ。
旦那、なんだかんだでキッチリしている。
「む。私のお手柄。ライノ、褒めて。私をいっぱい褒めて」
「おう。ビトラ、よくやったな」
「あー! ビトラずるい! ライノーわたしも撫でてー!」
「はいはい」
ビトラがダイニングを胡椒の草で埋め尽くしたときはどうしようかと途方に暮れたものだが、これはまさに『ケガの功名』というヤツだ。
俺はビトラの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
ついでに同じ事をせがむパレルモも撫でてやった。
今回のことで何もしてない気がするが、まあノリだ。
ちなみにこれでも生胡椒の実のほんの一部を買い取って貰っただけにすぎない。
旦那が店の有り金をかき集めていたが、それでも俺の持ち込んだその全部を買い取るのはムリだったらしい。
『今から知り合いの金貸しんとこで借りれるだけ借りてくるから、そのまま動くんじゃねーぞ!』と旦那が店を飛び出そうとして、おばちゃんに思いっきり張り倒されてたな。
とはいえ、それだけ高値で買い取っても、取引先に生胡椒を卸すだけで莫大な利益を上げることができるとホクホク顔で言っていた。
つーかそんな情報売り主の前でそんなこと言っていよかったのだろうか。
自分から弱点をさらけ出しているようなものだぞ。
俺としてはコイツがいくばくかででも売れるならそれで構わんが、旦那は商人だからな。
いくら舞い上がっていてももうちょっと自重した方がいい気がする。
まあ、旦那もおばちゃんもそれだけ善人だということなんだろう。
ちょっと心配になるレベルだが……
もっとも、しばらくは専属でウチに卸してくれと懇願されたので、それは受けてしまった。
その辺は抜け目がないようだ。
俺としても、それ自体は別に構わないが……
しかし、こっちが香辛料を買い付ける立場でのつきあいを考えていたんだが、図らずとも逆の立場になってしまったな。
まあ、ビトラにはこれからもいろんな香辛料を覚えてもらう予定だし、足りないモノは買い付けにいくことは間違いない。
今後とも良い取引先になって貰えるなら、ありがたい。
で、そうなると問題になってくるのが遺跡の最奥部から街までの道程だ。
祭壇の間から遺跡第一階層までは転移魔法陣で一気に上がってくることができる。
その上のテオナ洞窟も最奥部から入り口までは数時間程度だ。
支洞に迷い込んだりしなければ、特に問題となる障害もない。
しかし、そこからヘズヴィンの街までは丸一日ほどかかる。
となると、祭壇の間から街までは都合二日かかる計算になる。
往復だと四日だ。
取引自体は四日に一度でもなんら問題はないだろうが、それだと俺はひたすら遺跡と街を往復するだけになってしまう。
できれば、街のどこかに転移魔法陣を敷設したいところなんだが……
この前見た魔導書には、条件さえ合えば遺跡以外の場所にも敷設可能だということだったからな。
よし、決めた。
この街のどこかに転移魔法陣を敷ける場所を見つけよう。
そうと決まれば、善は急げだな。
「いつつ……さっきは取り乱してすまんかったな、兄ちゃん」
店の奥に通された俺たちは、店主である旦那とその奥さんであるおばちゃんに平謝りされるハメになった。
「いや、こっちは別にケガとかしてないからな。別に構わん。それにこの胡椒の実を買い取ってもらいたくて来たんだからな」
俺はそう言って、荷物の口を開き、中一杯に詰め込んだ胡椒の実を二人に見せる。
「なっ……こりゃまたすげえ量だな」
「ほんとだこと……」
旦那とおばちゃんは、唖然とした様子だ。
ちなみに旦那には回復薬を施したものの、まだ痛みが残っているらしい。
応接室の長イスにうつぶせになったままだ。
「なあ兄ちゃん。これはまだどこにも持ち込んでいない。ウチが初めて。そうだな?」
と、旦那が急に真面目な顔になってそんなことを言ってきた。
おっと。
これは商人の顔だな。
長イスに寝そべったままだから、全然締まらないが。
とはいえ、こっちもそれなりに気を引き締めていくべきか。
一応俺だって、商談に来たんだからな。
「ああ。冒険者ギルドにも見せていないぜ」
「商工ギルドには?」
「いいや」
「まさかグレンのとこには行っていないよな!?」
「そのグレンって、『グレン商会』のことか? それならまだ行ってないぞ。街に入ってその足でここまできたからな」
そのグレンだかグレン商会ってのはこことのライバル店か何かだろうか。
たしか、この街で手広く商売をやっている大商人だったかな。
そういえば山賊討伐というかペッコ討伐の前に香辛料を求めて立ち寄った店のカウンターの奥に『グレン商会加盟店』って札が下がっているのを見たことはある。
品薄にかこつけてかなり値段をつり上げていたから、あまりいい印象はないな。
「そうかそうか。ソイツは僥倖だな」
そこで旦那は少しだけ低い声になって、言った。
目つきも鋭い。
ちょっと商人らしいじゃねーか。
「じゃあ、コイツはどこで手に入れた? しかもこんな大量に、だ。もしかして王都にツテでもあるのか?」
ああ、俺がコイツを正規のルート『以外』で持ってきたことを疑っているんだな。
……たとえばどこぞの商隊を襲って手に入れたとか、あるいはライバル店が旦那をハメるつもりで俺を送り込んできた……とか。
もちろんそのどれとも違うわけだが、こっちもこういう場でわざわざネタを明かすようなマネをしてやる義理はない。
「悪いが、それは秘密だな。貴重な品の仕入れ先をバラす商人なんていると思うか?」
俺も旦那を真似て、ドスを効かせた声で言う。
こういう時はちょっとハッタリを効かせてみるのがコツだ。
つーか、まさかビトラが魔術で出しました、とは言えないからな。
「…………そうか。いやまぁ、そりゃそーだよな」
俺の声色に一瞬面食らったような顔になった旦那だったが、すぐにニヤリと笑みを浮かべ、もとの声のトーンに戻った。
「いや、悪りぃ。さっきのは忘れてくれ。あまりにもうまい話だったんで、つい昔の血が騒いじまった」
「気にしてないよ。いきなり冒険者がやってきて、品物を買い取れとか言ってきたら、勘ぐりの一つや二つあってもおかしくないからな」
旦那は昔はブイブイ言わせてたタイプらしい。
今じゃすっかり腰をイワした小太り中年だけどな。
しかし、旦那はずいぶんと名残惜しそうな顔をしているな。
「ずいぶんと食いつくんだな。そんなに珍しいのか? この生胡椒ってのは」
そう言うと、旦那とおばちゃんは互いに顔を見合わせたあと、俺のことを可哀相な子を見るような目つきになった。
なんだ?
俺、変なこと言ったか?
「はあ……。なあ、兄ちゃん。ちょっといいか?」
「お、おう」
「胡椒ってヤツは、どこで採れるものか知ってるか?」
「いや、知らない」
確か、遠いところだったとは聞いたことがあるが。
王都周辺だろうか?
全然分からんな。
俺が肩をすくめて見せる。
それを見た旦那は大きくため息を吐いて、話を続けた。
「いいか、胡椒の生産地は、王都のずっと先だ。
王都はただの物流拠点だからな。
で、胡椒ってのは山脈を越えて、砂漠を越え何週間、何ヶ月も……要するに、生のままじゃカビが生えるか、腐っちまう距離を渡って王都に、そしてこの街まで運ばれてくるわけだ。
それを、お前さんは生のままここに持ってきた。この意味が分かるか?」
「ま、まあ」
「『ま、まあ』じゃねーよ! このヘズヴィンどころか、王都でだって、こんなもの絶対に手に入らないんだぞ!価格だって、一粒が同じ大きさの金と変わらんはずだ!
これを知ったら、貴族どころか王様だって押しかけてくるぞ!
あんたが持ち込んだ生胡椒の実ってのは、そーいう類いのシロモノだ」
「お、おう」
旦那のあまりの剣幕に、ちょっと引き気味になる俺。
なるほど。
そういうことなら、旦那の白熱ぶりも理解できるってわけだ。
しかしこの旦那、商人にしてはずいぶんといい人間だな。
普通、そんな貴重な品を知らずに持っていたら、おもいっきり安く買い叩いたって誰も文句は言わねーぞ。
そもそも商売ってのは、基本「騙されるヤツが悪い」だからな。
そういう意味では、この店に生胡椒を持ち込んで正解だったようだ。
つーか、俺からしてみればちょっと心配になるほどのお人好しっぷりだ。
まあ、流通が滞って品物が高騰しているときに据え置き価格で営業していた時点で、そうだとは思っていたが……
「ねえねえライノー、胡椒のお話聞いてたらお腹すいたー」
「む。胡椒は肉によく合う。今宵は屋台の串焼きを所望する」
「二人はちょっと静かにしててくれ」
パレルモとビトラにはちょっと難しい話だったみたいだ。
確かに俺も腹が減ってはいるが。
「あらあら、そっちのお嬢ちゃんたちはお金の話より食い気の方が勝っているみたいだねえ」
まるで自分の娘を見るように、目を細めるおばちゃん。
いや、コイツら二人ともおばちゃんのウン十倍は生きてるからね?
……まあいい。
「要するに、とんでもなく貴重ってことだろ。よーく分かったよ」
「分かりゃ、いい。で、ものは相談なんだが……」
旦那がえらい悪い笑顔で俺に迫ってきた。
ていうか揉手しつつ、器用に長イスごとすごいスピードで移動してきやがった!
あと脂ぎった笑顔もキモい!
この旦那、マジで人間なんだろうか……
商売人怖えな!
……と、そんな感じで生胡椒の商談は順調に(?)進んでいくのだった。
◇
香辛料屋を出ると、もう日が傾きかけていた。
ただ生胡椒の実を見てもらうだけのハズだったが、ずいぶんと時間を食ってしまった。
まあ、そのほとんどの時間は旦那の香辛料談義に付き合ってのことだったが……
やっぱ本職は好きなことをしゃべり出すと止まらないんだな。
まあ、俺もダンジョンと死霊術のことなら、三日三晩喋り倒しても足りないからな。
似たようなもんだろう。
「しかし、すげえ高値で売れたな」
俺は手に持った革袋の重みを確かめる。
中には、金貨だけがずっしりと詰まっている。
これだけで、俺たち三人が一年は遊んで暮らせるだろう。
香辛料の代金としては、破格すぎる額だ。
さらに、これから当分お互いに取引をするからということで商人であることを証明する証文を書いて貰った。
もちろんこれは形式的なものだが、それでも取引をする以上、必要なものなのだそうだ。
旦那、なんだかんだでキッチリしている。
「む。私のお手柄。ライノ、褒めて。私をいっぱい褒めて」
「おう。ビトラ、よくやったな」
「あー! ビトラずるい! ライノーわたしも撫でてー!」
「はいはい」
ビトラがダイニングを胡椒の草で埋め尽くしたときはどうしようかと途方に暮れたものだが、これはまさに『ケガの功名』というヤツだ。
俺はビトラの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
ついでに同じ事をせがむパレルモも撫でてやった。
今回のことで何もしてない気がするが、まあノリだ。
ちなみにこれでも生胡椒の実のほんの一部を買い取って貰っただけにすぎない。
旦那が店の有り金をかき集めていたが、それでも俺の持ち込んだその全部を買い取るのはムリだったらしい。
『今から知り合いの金貸しんとこで借りれるだけ借りてくるから、そのまま動くんじゃねーぞ!』と旦那が店を飛び出そうとして、おばちゃんに思いっきり張り倒されてたな。
とはいえ、それだけ高値で買い取っても、取引先に生胡椒を卸すだけで莫大な利益を上げることができるとホクホク顔で言っていた。
つーかそんな情報売り主の前でそんなこと言っていよかったのだろうか。
自分から弱点をさらけ出しているようなものだぞ。
俺としてはコイツがいくばくかででも売れるならそれで構わんが、旦那は商人だからな。
いくら舞い上がっていてももうちょっと自重した方がいい気がする。
まあ、旦那もおばちゃんもそれだけ善人だということなんだろう。
ちょっと心配になるレベルだが……
もっとも、しばらくは専属でウチに卸してくれと懇願されたので、それは受けてしまった。
その辺は抜け目がないようだ。
俺としても、それ自体は別に構わないが……
しかし、こっちが香辛料を買い付ける立場でのつきあいを考えていたんだが、図らずとも逆の立場になってしまったな。
まあ、ビトラにはこれからもいろんな香辛料を覚えてもらう予定だし、足りないモノは買い付けにいくことは間違いない。
今後とも良い取引先になって貰えるなら、ありがたい。
で、そうなると問題になってくるのが遺跡の最奥部から街までの道程だ。
祭壇の間から遺跡第一階層までは転移魔法陣で一気に上がってくることができる。
その上のテオナ洞窟も最奥部から入り口までは数時間程度だ。
支洞に迷い込んだりしなければ、特に問題となる障害もない。
しかし、そこからヘズヴィンの街までは丸一日ほどかかる。
となると、祭壇の間から街までは都合二日かかる計算になる。
往復だと四日だ。
取引自体は四日に一度でもなんら問題はないだろうが、それだと俺はひたすら遺跡と街を往復するだけになってしまう。
できれば、街のどこかに転移魔法陣を敷設したいところなんだが……
この前見た魔導書には、条件さえ合えば遺跡以外の場所にも敷設可能だということだったからな。
よし、決めた。
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そうと決まれば、善は急げだな。
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