50 / 141
第50話 元パーティーメンバー
しおりを挟む
「…………」
「…………」
ここは冒険者ギルド、その待合室。
時刻は午前一時を過ぎたところ。
俺とアイラはテーブルを隔てて向かい合っている。
お互い無言だ。
カチ、カチ、と時計の針が時を刻む音がやけに大きく聞こえる。
そんな中、アイラはジトっとした目で、俺を睨んでいる。
深夜なので冒険者は俺たちしかいない。
職員もちょうど交代の時間なのか、バックヤードに引っ込んでいる。
気まずい空気だ。
早く帰りたい。
俺はやり場のない視線を、壁の時計に逃がした。
◇
あのあとギルドに冒険者狩りどものを突き出したんだが……
どうやら連中はまだ顔は知られていなかったものの、そこそこの賞金首だったらしい。
所持品を検めたところ、ここ最近行方不明になっていた新米冒険者たちの所持品がゴロゴロ出てきたからな。
連中はそれらの所持品をダンジョンで拾ったなどと言い訳をしていたが、ギルドもバカじゃない。
どの冒険者がどのダンジョンに入ったのか。
いつ帰還し、あるいは帰還しなかったのか。
どんな素材を持ち帰り、いくらで買い取ったのか。
ギルドにはそれらが全て記録されている。
だから、冒険者狩りがギルドに捕縛された以上、誤魔化しは効かない。
ちょっと尋問して、供述した内容とギルドの記録を突き合わせれば、それで終わりだ。
案の定職員たちが連中を誘導尋問したらすぐにボロが出て、あとは芋づる式ってヤツだな。
そんなわけで、退治した俺たちには結構な額の報奨金が出るとのことだった。
で、俺たちはその手続きを待っている最中なのだが……
なぜか俺たちと一緒に、アイラもギルドにとどまっている。
彼女は被害者側だし、ギルドをとおして街の官憲に提出する調書を書き終えれば、ギルドに用はないはずなんだが。
「ねーライノー、このひとだれ?」
「む。ライノ。この金髪少女は誰。説明を求める」
腹もこなれて、退屈なのだろう。
興味津々といった様子で、両脇から俺の袖をくいくいと引っ張ってくる魔王の巫女たち。
この気まずい空気を読もうぜ、二人とも……
とはいえ、俺としてもこのまま無言を貫きとおすのはキツい。
……しかたないか。
「前に、俺がいたパーティーの仲間だよ。名前はアイラ。一応貴族の出だな。見た目はちんちくりんだが、それなりに優秀な治癒術師だ。あと(ゾンビ状態だと)勇者より足が速い」
「ち、ちんちく……!? ちょっとにい……ライノ! その紹介の仕方はなんなのかしら! というか足がサムリよりも速いですって? あれはにいさ……ライノが私をゾンビにしたせいでしょ! 意図的に前提を省かないでくれる!? あの一件のせいで、サムリとクラウスが私のことを影で『全力疾走ゾンビ』なんて二つ名で呼んでることに気づいたときの私の気持ちが分かる? ねえ分かる? ねえさまはねえさまで時々私のお腹あたりを見て『おぷっ』って口を押さえるし……」
今までの沈黙を破り、目を吊り上げたアイラが一気にまくしたててくる。
どうやら俺の紹介の仕方がお気に召さなかったらしい。
ふわふわの金髪が逆立っているし、今にも噛みつかれそうだ。
そうそう。
思い出した。
コイツは見た目は小柄で楚々としたロリっこだが、実際は血の気がかなり多い。
腹黒いというわけではないが、言いたいことはズバズバ言うタイプだ。
ちなみに俺はアイラの実兄ではない。
彼女が勝手に俺のことを「にいさま」と呼んでいただけだ。
たしか、きっかけがあったように覚えているんだが……それが何かは忘れてしまった。
しかし、別に悪いことをいったつもりはないんだが……
ここはひとつ、フォローを入れておこう。
「事実は事実だろ。それに足が速いのはいいことだ」
「女子に向かってその褒め言葉は絶対おかしいわ!」
「お前も女である前に冒険者だろ。ならば俊足は美徳に決まってるだろ。誇るべきだ」
パレルモとビトラも俺の言葉にウンウンと頷いている。
「アイラは足が速いんだね! 私はかけっこ苦手だからうらやましいよー」
「む。ライノの言う通り。俊足は美徳」
「納得いかない! 納得いかないわ!」
さらに目を吊り上げてテーブルをバンバンと叩き抗議してくるが、知ったことではないな。
だいたいアイラも『治癒天使』とか言われてギルドの冒険者連中にはチヤホヤされているのを意識しているのか、儚げでか弱いキャラを作りすぎだ。
そもそも高位の治癒術師の仕事は過酷だからな。
低位の治癒魔術は効果範囲が広めのものが多いから、遠くから放つだけで楽なのだが、高位のものは魔力を一点集中させるせいか、効力を及ぼす範囲が極めて狭い。
つまり高位治癒術を安全に行使するためには、魔物が襲い来る中、負傷した仲間を戦闘領域から速やかに離脱させる必要がある。
もちろん治癒術師自身が、だ。
それはなぜか?
答えは簡単だ。
前衛は魔物との交戦で忙しいからだ。
そもそも高位の治癒術を施す必要があるレベルの負傷とは、戦闘不能状態を意味する。だがそんな激しい戦闘のさなかに、前衛が負傷者を安全な場所まで退避させるヒマはない。
そんなことをしていたら、あっという間に戦線が崩壊するからな。
で、『戦闘不能状態』というのは、手足がちぎれたり、腹を切り裂かれ臓物が零れ落ちているような瀕死の状態を指す。
治癒術師は、そんな死の淵であえぐ仲間を救うため、そいつの血やら体液やら、場合によっては臓物から溢れ出た汚物にまみれながら魔術を行使する必要があるのだ。
職業柄前衛ほどの戦闘力は要らないが、代わりに前衛職を上回るクソ度胸が必要なのが、治癒術師という職業なのだ。
アイラは小柄な身体に、そいつをこれでもかと詰め込んでいる。
俺も、彼女のクソ度胸には何度も救われたか分からない。
だから俺としては、アイラはもっとタフな女を気取ってもいいと思うんだが……
「だいたい、にいさまこそなんなの? 風のウワサでは、ダンジョンで行方不明になったって聞いたんだけど? それが、どういうわけだか知らないけれど女の子を二人も侍らせて! これじゃ心配した私がバカみたいじゃない……あっ、心配してたのは私だけじゃないから! ねえさまだってすごく心配してたのよ? 本当なんだからね? ね?」
アイラは俺のことを『ライノ』と呼ぶのは諦め、『にいさま』に決めたようだ。
間怠っこしかったらしい。
「お、おう。まあ、俺はこのとおり無事だ」
「それは見れば分かるわ!」
ならば、なぜそんなに不機嫌なのか。
「それよりそこの二人は誰! にいさま、紹介がまだだわ!」
ビシ! とこっちを指さしてくるアイラ。
自分で聞いてきたクセに理不尽な話の持って行き方だな!
だがまあ、俺のことを根掘り葉掘り聞かれてもアレだしな。
それに、まだ二人のことを紹介してなかった。
「ああ、そうだったな。こっちがパレルモ、もう片方がビトラ。二人とも……魔術師だな」
いくら元仲間とはいえ、魔王の力うんぬんの話はしない方がいいだろう。
「パレルモだよ! よろしくだよー」
「む。ビトラという。以後見知りおきを」
「……ええと、こちらがパレルモさん、そちらがビトラさんね。さっきもにいさまから紹介してもらったけど、アイラよ。職業は治癒術師。以後、よろしくねっ!」
といった感じで自己紹介を交わす三人。
アイラはさっきのオーガみたいな形相とうって変わって、可憐な笑顔だ。
これは完全に外向きの顔だな。
つーか今さら愛想よくしても、意味がない気がするが……
条件反射だろう。多分。
「アイラさんはひーらーなの? それってどんなお仕事?」
パレルモはアイラに興味津々らしい。
まあ見た目、歳が近いからな。
「ケガをした仲間を癒やす魔術を使う職業よ。知らない?」
「うーん。わたしもビトラも、すぐにケガ治っちゃうからねー」
「む。そもそも傷を負う事態に直面するほど私たちは弱くない。ライノならもっとそう」
「そ、そうなの? でも治癒魔術はきっと必要よ?」
「む。そんな機会があるとすれば、それはきっと他の魔王と対峙するとき。それも、ライノがいるなら私たちはきっと傷を負うことはない」
「まお……何?」
魔王の巫女ズの無邪気さに、困惑気味な表情になるアイラ。
ビトラが何故かふんすっ! しているが……この話はマズいな。
ボロが出る前に別の話題を振ってしまおう。
それに俺も、アイラに聞きたい事がある。
「つーかアイラ、なんであんな冒険者狩りなんて連中とパーティー組んでたんだ? 勇者様はどうした」
「それ、は…………」
すると彼女は急に口を閉じ、うつむいてしまった。
「アイラ?」
おっと?
ずいぶん暗い顔をしているな。
もしかして、俺みたいにサムリあたりに追放されたとか?
アイラ、一度俺がゾンビ化しているし。
「……にいさま」
「お、おう」
さっきのオーガ顔やパレルモたちに見せた朗らかな表情とはうって変わって思い詰めた顔だ。
やっぱ、追放か? 追放なのか?
と茶化してやりたいが、それが許される雰囲気ではなさそうだった。
「パーティーを抜けたにいさまにお願いするのは筋じゃないのは分かってるわ。でも、もう頼れる人がいないの」
「…………一応、話だけは聞いてやる」
アイラはこくりと浅く頷いて、続けた。
「私がなぜ一人でここまでやってきたかって? あんな胡散臭い連中に頼ってまで」
気がつけば、彼女の目の端には涙が溜まっていた。
「それだけ……切羽詰まってるの。逃げてきたの。ねえさまが逃がしてくれたの。あの悪夢みたいな……ダンジョンの奥から」
涙はすぐに決壊して、アイラの頬を止めどなく伝ってゆく。
「お願い、にいさま。……ねえさまを助けて。お願い」
「…………」
演技では、なさそうだった。
「…………」
ここは冒険者ギルド、その待合室。
時刻は午前一時を過ぎたところ。
俺とアイラはテーブルを隔てて向かい合っている。
お互い無言だ。
カチ、カチ、と時計の針が時を刻む音がやけに大きく聞こえる。
そんな中、アイラはジトっとした目で、俺を睨んでいる。
深夜なので冒険者は俺たちしかいない。
職員もちょうど交代の時間なのか、バックヤードに引っ込んでいる。
気まずい空気だ。
早く帰りたい。
俺はやり場のない視線を、壁の時計に逃がした。
◇
あのあとギルドに冒険者狩りどものを突き出したんだが……
どうやら連中はまだ顔は知られていなかったものの、そこそこの賞金首だったらしい。
所持品を検めたところ、ここ最近行方不明になっていた新米冒険者たちの所持品がゴロゴロ出てきたからな。
連中はそれらの所持品をダンジョンで拾ったなどと言い訳をしていたが、ギルドもバカじゃない。
どの冒険者がどのダンジョンに入ったのか。
いつ帰還し、あるいは帰還しなかったのか。
どんな素材を持ち帰り、いくらで買い取ったのか。
ギルドにはそれらが全て記録されている。
だから、冒険者狩りがギルドに捕縛された以上、誤魔化しは効かない。
ちょっと尋問して、供述した内容とギルドの記録を突き合わせれば、それで終わりだ。
案の定職員たちが連中を誘導尋問したらすぐにボロが出て、あとは芋づる式ってヤツだな。
そんなわけで、退治した俺たちには結構な額の報奨金が出るとのことだった。
で、俺たちはその手続きを待っている最中なのだが……
なぜか俺たちと一緒に、アイラもギルドにとどまっている。
彼女は被害者側だし、ギルドをとおして街の官憲に提出する調書を書き終えれば、ギルドに用はないはずなんだが。
「ねーライノー、このひとだれ?」
「む。ライノ。この金髪少女は誰。説明を求める」
腹もこなれて、退屈なのだろう。
興味津々といった様子で、両脇から俺の袖をくいくいと引っ張ってくる魔王の巫女たち。
この気まずい空気を読もうぜ、二人とも……
とはいえ、俺としてもこのまま無言を貫きとおすのはキツい。
……しかたないか。
「前に、俺がいたパーティーの仲間だよ。名前はアイラ。一応貴族の出だな。見た目はちんちくりんだが、それなりに優秀な治癒術師だ。あと(ゾンビ状態だと)勇者より足が速い」
「ち、ちんちく……!? ちょっとにい……ライノ! その紹介の仕方はなんなのかしら! というか足がサムリよりも速いですって? あれはにいさ……ライノが私をゾンビにしたせいでしょ! 意図的に前提を省かないでくれる!? あの一件のせいで、サムリとクラウスが私のことを影で『全力疾走ゾンビ』なんて二つ名で呼んでることに気づいたときの私の気持ちが分かる? ねえ分かる? ねえさまはねえさまで時々私のお腹あたりを見て『おぷっ』って口を押さえるし……」
今までの沈黙を破り、目を吊り上げたアイラが一気にまくしたててくる。
どうやら俺の紹介の仕方がお気に召さなかったらしい。
ふわふわの金髪が逆立っているし、今にも噛みつかれそうだ。
そうそう。
思い出した。
コイツは見た目は小柄で楚々としたロリっこだが、実際は血の気がかなり多い。
腹黒いというわけではないが、言いたいことはズバズバ言うタイプだ。
ちなみに俺はアイラの実兄ではない。
彼女が勝手に俺のことを「にいさま」と呼んでいただけだ。
たしか、きっかけがあったように覚えているんだが……それが何かは忘れてしまった。
しかし、別に悪いことをいったつもりはないんだが……
ここはひとつ、フォローを入れておこう。
「事実は事実だろ。それに足が速いのはいいことだ」
「女子に向かってその褒め言葉は絶対おかしいわ!」
「お前も女である前に冒険者だろ。ならば俊足は美徳に決まってるだろ。誇るべきだ」
パレルモとビトラも俺の言葉にウンウンと頷いている。
「アイラは足が速いんだね! 私はかけっこ苦手だからうらやましいよー」
「む。ライノの言う通り。俊足は美徳」
「納得いかない! 納得いかないわ!」
さらに目を吊り上げてテーブルをバンバンと叩き抗議してくるが、知ったことではないな。
だいたいアイラも『治癒天使』とか言われてギルドの冒険者連中にはチヤホヤされているのを意識しているのか、儚げでか弱いキャラを作りすぎだ。
そもそも高位の治癒術師の仕事は過酷だからな。
低位の治癒魔術は効果範囲が広めのものが多いから、遠くから放つだけで楽なのだが、高位のものは魔力を一点集中させるせいか、効力を及ぼす範囲が極めて狭い。
つまり高位治癒術を安全に行使するためには、魔物が襲い来る中、負傷した仲間を戦闘領域から速やかに離脱させる必要がある。
もちろん治癒術師自身が、だ。
それはなぜか?
答えは簡単だ。
前衛は魔物との交戦で忙しいからだ。
そもそも高位の治癒術を施す必要があるレベルの負傷とは、戦闘不能状態を意味する。だがそんな激しい戦闘のさなかに、前衛が負傷者を安全な場所まで退避させるヒマはない。
そんなことをしていたら、あっという間に戦線が崩壊するからな。
で、『戦闘不能状態』というのは、手足がちぎれたり、腹を切り裂かれ臓物が零れ落ちているような瀕死の状態を指す。
治癒術師は、そんな死の淵であえぐ仲間を救うため、そいつの血やら体液やら、場合によっては臓物から溢れ出た汚物にまみれながら魔術を行使する必要があるのだ。
職業柄前衛ほどの戦闘力は要らないが、代わりに前衛職を上回るクソ度胸が必要なのが、治癒術師という職業なのだ。
アイラは小柄な身体に、そいつをこれでもかと詰め込んでいる。
俺も、彼女のクソ度胸には何度も救われたか分からない。
だから俺としては、アイラはもっとタフな女を気取ってもいいと思うんだが……
「だいたい、にいさまこそなんなの? 風のウワサでは、ダンジョンで行方不明になったって聞いたんだけど? それが、どういうわけだか知らないけれど女の子を二人も侍らせて! これじゃ心配した私がバカみたいじゃない……あっ、心配してたのは私だけじゃないから! ねえさまだってすごく心配してたのよ? 本当なんだからね? ね?」
アイラは俺のことを『ライノ』と呼ぶのは諦め、『にいさま』に決めたようだ。
間怠っこしかったらしい。
「お、おう。まあ、俺はこのとおり無事だ」
「それは見れば分かるわ!」
ならば、なぜそんなに不機嫌なのか。
「それよりそこの二人は誰! にいさま、紹介がまだだわ!」
ビシ! とこっちを指さしてくるアイラ。
自分で聞いてきたクセに理不尽な話の持って行き方だな!
だがまあ、俺のことを根掘り葉掘り聞かれてもアレだしな。
それに、まだ二人のことを紹介してなかった。
「ああ、そうだったな。こっちがパレルモ、もう片方がビトラ。二人とも……魔術師だな」
いくら元仲間とはいえ、魔王の力うんぬんの話はしない方がいいだろう。
「パレルモだよ! よろしくだよー」
「む。ビトラという。以後見知りおきを」
「……ええと、こちらがパレルモさん、そちらがビトラさんね。さっきもにいさまから紹介してもらったけど、アイラよ。職業は治癒術師。以後、よろしくねっ!」
といった感じで自己紹介を交わす三人。
アイラはさっきのオーガみたいな形相とうって変わって、可憐な笑顔だ。
これは完全に外向きの顔だな。
つーか今さら愛想よくしても、意味がない気がするが……
条件反射だろう。多分。
「アイラさんはひーらーなの? それってどんなお仕事?」
パレルモはアイラに興味津々らしい。
まあ見た目、歳が近いからな。
「ケガをした仲間を癒やす魔術を使う職業よ。知らない?」
「うーん。わたしもビトラも、すぐにケガ治っちゃうからねー」
「む。そもそも傷を負う事態に直面するほど私たちは弱くない。ライノならもっとそう」
「そ、そうなの? でも治癒魔術はきっと必要よ?」
「む。そんな機会があるとすれば、それはきっと他の魔王と対峙するとき。それも、ライノがいるなら私たちはきっと傷を負うことはない」
「まお……何?」
魔王の巫女ズの無邪気さに、困惑気味な表情になるアイラ。
ビトラが何故かふんすっ! しているが……この話はマズいな。
ボロが出る前に別の話題を振ってしまおう。
それに俺も、アイラに聞きたい事がある。
「つーかアイラ、なんであんな冒険者狩りなんて連中とパーティー組んでたんだ? 勇者様はどうした」
「それ、は…………」
すると彼女は急に口を閉じ、うつむいてしまった。
「アイラ?」
おっと?
ずいぶん暗い顔をしているな。
もしかして、俺みたいにサムリあたりに追放されたとか?
アイラ、一度俺がゾンビ化しているし。
「……にいさま」
「お、おう」
さっきのオーガ顔やパレルモたちに見せた朗らかな表情とはうって変わって思い詰めた顔だ。
やっぱ、追放か? 追放なのか?
と茶化してやりたいが、それが許される雰囲気ではなさそうだった。
「パーティーを抜けたにいさまにお願いするのは筋じゃないのは分かってるわ。でも、もう頼れる人がいないの」
「…………一応、話だけは聞いてやる」
アイラはこくりと浅く頷いて、続けた。
「私がなぜ一人でここまでやってきたかって? あんな胡散臭い連中に頼ってまで」
気がつけば、彼女の目の端には涙が溜まっていた。
「それだけ……切羽詰まってるの。逃げてきたの。ねえさまが逃がしてくれたの。あの悪夢みたいな……ダンジョンの奥から」
涙はすぐに決壊して、アイラの頬を止めどなく伝ってゆく。
「お願い、にいさま。……ねえさまを助けて。お願い」
「…………」
演技では、なさそうだった。
0
あなたにおすすめの小説
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる