新任チート魔王のうまうま魔物メシ~勇者パーティーを追放された死霊術師、魔王の力『貪食』と死霊術でらくらく無双&快適メシライフを満喫する~

だいたいねむい

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第105話 賞金首

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 食事のあと、俺はアーロンにダンジョンで起こったことを報告した。

 ダンジョンで武器の使用限界を超えた運用により、死霊術により操る魔物がさらに魔物化を起こしたことや、帰りに武器を工房に返すついでに、技術について詳しく聞こうとしたが門外不出のため断られたこと、などなど。

「……ふむ」

 話をしている間、アーロンは腕組みをしながら険しい顔つきで聞いていたのだが、俺が話し終わってからも、ずっとこの表情だ。
 普通の冒険者なら、その威圧感に身を縮こませたことだろう。

 もっとも、彼の手元には食べ終わった後のカリーの皿(アーロンが急遽職員に食堂から持ってこさせた)が放置されているせいで全くサマになっていないが。

 まあ、こっちはこっちで満腹になったパレルモとビトラが執務室にも関わらず幸せそうな顔で船をこいでいるから、お互い様ではあるが……

 しばらく間を置いて、アーロンが口を開いた。

「……お前が帰ってくる前にイリナとアイラからも報告があった」

 それはまだ聞いていないな。

「で、どうだったんだ?」

「……薬売りは流しの行商人だった。すでにヘズヴィンを出てしまっていたから、身元を割るまでには至らなかった。だが、薬の出もとは分かったぜ。アイラが懇意にしている薬師連中に当たってみたら、一発だったそうだ」

「ずいぶんとあっさりだな?」

「どうやら薬の露天販売には連中も困っていたらしくてな。ちょっと話題に出したらすぐに愚痴りだしたらしいぞ」

 まあ、人間を魔物化する薬なんかが出回りだしたら、真面目に商売をやっている連中からすれば営業妨害も甚だしいからな。

「で、結局のところ一連の事件の犯人は誰か分かったのか?」

「ほう。一連の事件の犯人・・・・・・・・、とな?」

 俺が問うと、アーロンがニヤリと笑った。

「お前はこの事件の裏で誰か・・が糸を引いていると、そう考えているんだな? もしかして心当たりがあるのか、ライノ?」

 ……チッ。
 さすがに今のは失言だったか。

 さすがはギルド長、抜け目のない男だ。
 俺にもカマをかけてさらに情報を引き出そうとしている。
 というか、まだ俺が何かを隠していることを察しているようだ。

 さっきまで陶酔したような顔で行動食をカリーに浸けては囓りを繰り返していた男とは思えん。

「茶番はよしてくれ、ギルド長殿。『人間の魔物化』なんて事象が同時多発的に偶然起きました、なんてことがあってたまるか。おまけにその原因が武器や薬だ。原因となる人物やら組織がいてしかるべきだろう」

 俺はそう言って肩をすくめてみせた。

 もちろん、心当たりはある。
 十中八九、一連の事件の中心人物はコウガイが話していたナンタイという男の仕業だろう。コウガイの話では、どうやらナンタイは魔剣やら妖刀を造る能力があるらしいからな。

 ただ俺は、一連の事件がナンタイの単独による犯行だとは考えていない。
 事件の規模と依頼元の属性から考えて、どこかしらの商人が一枚噛んでいるのは間違いないだろう。

 とはいえ、その商人が誰かまでは分からないのは本当だ。
 もちろん、やりそうな商人が思い浮かばないわけではないのだが、決めつけはよくない。

「だいたいあんたほどの者が絡んでるんだ。どうせもう黒幕の目星も付いているんだろう?」

「ふむ。まあ、ここで勿体ぶっていても仕方ないからな。例の武器に関する技術の供給元は、グレン商会だ。多くの店舗を構える大商人だし、お前も名前くらいは聞いたことがあるだろう。で、技術の提供先は、傘下の商店だ。裏も取ってあるぞ」

 アーロンはあっさりと黒幕の名前を口にした。

 やはりグレン商会か。
 意外性がなさすぎて逆に意外ではあるが……
 まあ、なんとなくそんな気はしていた。

 知れ渡った悪名もさることながら、実際に俺は尾行されたり立ち寄った飲食店で暴漢に襲われたりと実害があったからな。

「で、どうするんだ? グレン商会が商店や工房に技術提供していたことが事実だとしても、実際に武器や薬を製造したのはあくまで個々の店だ。グレン商会に責任があるかどうか追求するのは容易ではないだろう」

「そこがまさに、頭の痛いところなんだよな……」

 アーロンが困り顔で首を振った。

「確かに裏は取った。だがそれは、あくまで『グレン商会から個々の工房や商店への技術供与がある』という一点だけだ。ウチが直接出張るにしても、さすがに大義名分が足りねえ。一応、冒険者が直接被害に遭った訳だから、商工ギルドやグレン商会本体に厳重抗議をするくらいのことはできる。やりようによっちゃ賠償金もふんだくれるだろう。だが、それだけだ。『武器を売るな』とまでは言えん」

 アーロンはそこで肩をすくめてから、さらに話を続けた。

「冒険者ギルドと商工ギルドは対等な立場にある。持ちつ持たれつ、というヤツだ。しかもアレは短期的には売れ筋商品になるだろうから、なおさらだ。お前も実感しただろうが、使い方を間違えなければ武器モノ自体は悪くないからな。それに、冒険者ギルド側で例の武器の使用を禁じても、リスク上等でこっそり使うヤツは必ず出てくる。どのみちダンジョン探索なんぞを生業にしていれば、いつかはそうせざるを得ない事態に直面するだろうからな」

「要するに、大人の事情により打つ手なし、ということか」

「端的に言えば、そうだ」
 
 アーロンががっくりと肩を落とす。

 まあ、今回に限っては敵が強大すぎる。
 ダンジョンの魔物ならばいくら強くても倒せばそれで終わりの関係だが、人間同士となればそうはいかない。力を持つ商人ともなればなおさらだ。
 彼らの売る武器や防具がなければ、普通の冒険者ならばダンジョンの第1階層をうろつくことすら不可能だからな。

 あとは、できることと言えば、どうにかしてナンタイに直接コンタクトを取り、技術供与を止めさせることだが……

 アーロンの話から、ヤツがグレン商会と行動を共にしていることは判明した。
 となれば、この街にいる可能性が高い。

 ならば、コウガイに一度コンタクトを取り、事情を話すべきか。
 彼ならば、ナンタイについてもう少し詳しい話が聞けるはずだ。
 場合によっては、コウガイをアーロンに直接会わせてもいいかもしれない。
 うん、それがいいな。

 たしか、コウガイの宿泊する宿を記したメモ書きは『彷徨える黒猫亭』で保管していたはずだ。一度戻って確認しよう。

 そう考え席を立とうとした、そのとき。

 ――コンコン。

「あの、ギルド長。お話中すいませんが、少しよろしいでしょうか」

 軽いノックの後にガチャリと扉が開き、女性職員が遠慮がちに顔を出した。
 あの子は……確かリラと言ったかな。
 アーロンの補佐か秘書みたいな役回りをしている職員だ。

「なんだリラ。今、大事な話をしている。後にしろ」

「すいません。ですが、至急案件でして」

「……分かった。廊下で聞く。そこで待ってろ。ライノ、少し外すがいいな?」

「俺は構わんぞ」

「すまん。少し待っていてくれ」

 アーロンが執務室を出て言った。
 リラと廊下で何やら立ち話をしている。
 話の内容までは分からないが、リラは何やら深刻そうな声のトーンだ。

「待たせたな」

 打ち合わせが済んだのか、アーロンが部屋に戻ってきた。
 なぜかリラも一緒だ。依頼書のような書類を抱えている。
 アーロンは渋い顔で、リラは困惑したよう表情をしている。

「どうしたんだ? ずいぶんと妙な顔つきだが」

「いや、な」

 アーロンはしかめっ面のままリラから書類を受け取ると、テーブルの上に広げた。文章とともに、似顔絵が描いてある。依頼書らしい。

「どういう風の吹き回しか知らんが……グレン商会から直接の依頼が来た」

 そこにはこう書かれていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ダンジョン探索依頼及び賞金首の設定』

《概   要》
 左記似顔絵の者『コウガイ=フドー』は当商会本部に許可無く立ち入り金品その他の物品を盗んだため一時拘束したが、使用人数名に傷を負わせ逃亡した。

 ただし今のところ『コウガイ=フドー』は当商会敷地から出ておらず、潜伏先は地図に示す当商会敷地内で発見された未踏破ダンジョン(種別:遺跡型)と推定されるが、本ダンジョンはかなりの深度(推定三十~四十階層)があり内部構造も複雑なため、当商会の捜索隊のみでは探索が不可能である。

 このため、貴ギルドへダンジョン探索の依頼するとともに『コウガイ=フドー』に懸賞金を設定する。生死は問わない。

《希望ランク》
 A~C程度を希望。
 ただし、当商会が別途支給する新型武器や薬剤を使用する者であればDランク程度も可。

《報   酬》
 ダンジョン探索における報酬は各パーティーへ銀貨十枚を支払う。
 さらにコウガイ=フドー討伐または捕縛時の賞金としてダンジョン探索報酬とは別に金貨百枚を支払う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ……マジか。

 ここに書かれている『コウガイ=フドー』というのはあのコウガイだよな。
 似顔絵もアイツだし。

 ということは、コウガイもナンタイの居場所を突き止めたということか。
 しかし、目的は遂げることができずに逃げることになったようだ。

 というか、グレン商会の敷地内に未踏破ダンジョンだと?
 商会って、確か街の中心部にあったはずだよな。

 ちょっとまてよ。

 いやいや、まさか……

「どうしたライノ、顔色が悪いぞ? まさかメシを食い過ぎたのか?」

「あ、ああ。少し食べ過ぎたかもしれん」

 アーロンが心配そうに聞いてくるが、さすがに本当のことは言えない。
 これって、もしかしなくても……



 ウチの屋敷の下にある『嫉妬』の遺跡だろコレ。
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