新任チート魔王のうまうま魔物メシ~勇者パーティーを追放された死霊術師、魔王の力『貪食』と死霊術でらくらく無双&快適メシライフを満喫する~

だいたいねむい

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第124話 街中の戦闘

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「二人とも準備はできているか?」

「だいじょーぶだよー」

「む。こちらも準備万端」

 二人とも用意ができているようだ。
 といっても、二人は小さな鞄くらいしか持ち物らしい持ち物はない。
 ほとんど手ぶらといってもいいだろう。

 だが、もちろん本当に何も持って行かないわけではない。
 急所を守るための防具はきちんと身につけているし、かさばる道具や食料などはパレルモの《ひきだし》内部に収納されている。

 ちなみに俺は二人と違い遠距離から攻撃する手段を持たないのと、あらゆる状況に即応できるよう、武器はもちろんのこと、回復薬や行動食、それに小道具類を収納した鞄を腰のベルトに取り付けてある。

「じゃあ、いくか」

 一応、全員の装備品をチェックしてから、出発する。

 ちなみにコウガイと『ねね』さんは万が一ナンタイがやってきたときのために、今まで通り祭壇の広間で待機してもらうことにした。


 アイラ、イリナたちとの合流地点である街の広場を目指し街を進む。

「む。ライノ」

「ああ。俺の気配探知にも今引っかかった。魔物がいるな」

 数ブロックほど先から、獣のような咆吼と地響き、そして金属を叩くような甲高い音が聞こえてくる。

 個体数は三。気配は大きく、動きは緩慢だ。
 それはつまり大型の魔物であることを意味する。

 建物の影に隠れて姿は分らないが、気配の動きからして、おそらく悪鬼オーガかトロールの類いだろう。

 そしてその個体を取り囲むように素早く動き回る存在が同じく三つ。
 これは冒険者だな。

 数の上では互角だが、AランクやSランクならばともかくとして、そもそも並の冒険者と魔物では戦闘力が全く違う。

 特に大型の魔物相手ならば、数人で連携して一体ずつ仕留めていくのが定石だ。
 今戦闘中のパーティーの動きを見るに、苦戦しているように思える。

「急ぐぞ。俺たちもパーティーの支援に当たる」

「うんっ」

「む、了解」

 俺たちは進む速度を上げて、戦闘現場に到着する。
 そこには――

「おいケリイっ! 回復の準備! またセバスが突っ込んでいったぞ! ったく、近所の子供ガキが逃げ遅れているからって、無茶しやがって……!」

「分ってるって! マルコ、セバスが単眼悪鬼サイクロプスに囲まれないようにフォローお願い! こっちはいつでもどんと来い、だからっ!」

「ああ、了解っ! クソ、ゴロツキ相手じゃ無双もできたが……魔物相手じゃまだまだそうはいかないか」

「愚痴ってる場合じゃないでしょ! ……あっ」

 ――ゴッ。

 重く鈍い音が響き、黒い影が俺たちの足元にズザザッ! とスライディングしてきた。

 横たわっているのは、飲食店でよく見る黒服を身に纏った初老の男だ。
 強固な意志を保っているのか剣を取り落としてはいないが、その顔は苦痛で歪んでいる。

「ガハッ……防具も無しに、少し勇みすぎましたかね……」

「セバスッ、生きてるっ!?」

 白い料理人服を着た少女が慌てた様子で駆け寄ってきた。
 少女――ケリイはこちらに気付く様子もなく初老の男――セバスの側でしゃがみ込む。

 戦闘中に負傷者が出たせいか慌てており、俺たちの存在が目に入っていないらしい。

「だ、大丈夫ですよ、ケリイ。ろ、肋骨を二、三本……持っていかれただけです」

「重傷だよね、それっ!? いいから大人しくしてて! ――《治癒ヒール》っ!」

「……くっ、治癒魔術は滲みますねえ。ですが、少し楽になりました」

 言って、セバスが顔をしかめつつも身体を起こす。
 治癒魔術が効いたらしい。

「ホント、無理しないでよね? もう一線を離れて結構経つんだから」

「それはお互い様ですよ」

 このまま放って置くとこのまま掛け合いを続けそうだったので、そろそろ頃合いか。

「ケリイ、セバス、二人とも久しぶりだな」

「ん……? ライノさん!? それにパレルモちゃんにビトラちゃん!」

「……これは、ライノ殿にお嬢様方。いいところで会いましたな」

 声を掛けると二人はようやくこちらに気付いたようで、同時にこちらを向いた。

「ひさしぶりー」

「む。この前は料理、美味しかった」

 パレルモとビトラも挨拶を交わす。

「ライノっ! いいところにっ! 久しぶりのところ悪いがちょっと助太刀頼まれてくれないかっ!?」

 奥の方でもマルコが俺たちに気付いたらしく、サイクロプスたちの猛攻を凌ぎながらこっちに声をかけてくる。

「もとよりそのつもりだ。マルコ、すぐにそっちに行くから待ってろ!」

「早くしてくれよ! もうそろそろ体力の限界だっ!」

 マルコがトロルの一撃をギリギリで躱したあと、大声で返してくる。

 一応強化した両拳でサイクロプスに応戦しているが、残念ながらろくにダメージを与えられていないようだ。
 こちらを見る目にはかなりの焦りが見て取れる。

「よしパレルモ、ビトラ、さくっとカタを付けるぞ」

「あいさーっ! ……それじゃーいっくよー! へあっ!」

 一番手はパレルモだ。
 謎の香ばしいポーズをキメたあと、目をギュっと瞑ったまま両手を突き出す。

 バスッ! ズズン……

 だが、その狙いは正確だったようだ。

 次の瞬間、マルコに襲いかかっていたサイクロプスの身体が上下に分断された。
 何が起こったのか分らないといった顔のまま、巨体が地面に倒れ伏す。

「む。私も負けてはいられない。――《植物生成》《植物操作》」

 今度はビトラの番だな。
 彼女が手をかざしたかと思うと、虚空から夥しい数の蔦が出現した。
 それらがギュルギュルと複雑に絡み合い、人型と化す。

「む、見てて。――秘技、《ごれむんぶらすと》」

 人型が身をかがめ……一瞬で姿がかき消えた。
 そして次の瞬間――

 ――ゴッ! バシュン!

 二体目のトロ-ルが……爆散した。
 つーかなんだその技名。

「……はあぁっ!?」

 ビシャビシャと肉片と体液のシャワーを浴びながら、側にいたマルコが素っ頓狂な声を上げる。

「む……完了」

 爆散したサイクロプスを背景に、ビッと謎のポーズをキメるビトラ。
 パレルモに続き、コイツもか……俺はやらんぞ。

「すご……」

「ほう、あれは『拳法』の一種ですか。凄まじい技の冴えです」

「む。セバスはよく知っている。あれは南方に伝わる対魔物格闘術のひとつ。大地を蹴る反発力と加速度による慣性を腰の回転力で増幅し、その質量のすべてを拳に載せて叩き込む。直撃した相手は……見てのとおり爆散する」

「なんと、素晴らしい技です」

 俺は古代格闘技なぞとんと分からんが、これだけは言える。
 普通の人間のただのパンチで相手は爆散しない。
 つーか『対魔物格闘術』ってなんだ。
 そんなもんあるならマルコに教えてやれ。

 というか単純に蔦を相手に巻き付けて絞め殺した方が効率的なんじゃないか、とかツッコみたい衝動に駆られるが、なんとか抑えこむ。

 彼女には彼女なりの『美学こだわり』があるのだ。
 それを否定する気はさらさらない。

 ……まあ、それはさておき。

「じゃあ、残りは俺だな。――《時間展延》」

 スキルを発動すると同時に世界が色を失い、時間が数千倍に引き延ばされる。
 サイクロプスはこちらに襲いかかろうとしているが、ほとんど彫像も同然だ。

「――《解体》」

 バシュッ――

 サイクロプスの太い首に浮かんだ光の筋に沿って短剣の刃を差し込む。
 刃は何の抵抗も感じることなく首の肉に潜り込んでゆく。
 頸椎のゴリゴリとした感触すらない。
 まるで水を切っているような感触だ。

 スキルを解除。

 ズン、ズズン――

 頭部を先に地面に落としたサイクロプスは、二、三歩たたらを踏んだあと、前のめりに倒れ地響きを上げた。

 静寂が場を支配する。

「……ま、こんなところか」

 他に魔物の気配がないことを確認したあと、短剣の血を払い腰の鞘に納める。

「あ、アンタらいつ見てもとんでもねえ強さだな……」

 マルコがやってきて、そんなことを言ってきた。
 全身が魔物の返り血で染まっているが、大きな怪我はなさそうだ。

 サイクロプスはC、Dランクの冒険者にとってはかなり脅威だが、俺たちにとっては何体で来られようが問題にならない。
 正直オーバーキルもいいところだが、まあよかろう。

 こちらとしても、冒険者ギルドの要請に従ったにすぎないしな。
 とはいえ、感謝に全く応えないのもよろしくない。

「なら、今度食いに行くから一品オマケしてくれ」

「オイオイ、命の礼がそんなのでいいのかよ……まあ、アンタらしいけどな。一品と言わず、酒も付けるぜ。……マジで助かったよ、兄弟」

 呆れたような感謝を滲ませたようななんとも言えない顔で苦笑するマルコ。
 
「で、三人でなにをやっているんだ? メシ屋の制服のままじゃないか」

 ケリイは料理人服姿、マルコとセバスは黒服のままだ。
 どうやら冒険者ギルドの要請に従って魔物と戦っていたわけではなさそうだが……

「ああ、それな」

 言って、マルコが通りの向こうに視線を移す。

「……なるほど」

 視線の先には、壊れかけた建物がある。
 先ほどの戦闘か、あるいはその前にサイクロプスによって襲われたのか、石壁にはヒビが入り、窓枠はひしゃげている。

 そしてその窓枠から、幼い子供たちがキラキラした目でこちらを見ていた。
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