【完結】転生して女装男子になった俺は王子様に口説かれてます

紫乃

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 街は思った以上に賑わっていた。カフェのような飲食店や時計屋、服屋などさまざまな店が立ち並んでいる。
 街行く人の中には、可愛くて煌びやかなドレスに身を包んでいる人や、騎士のような服装で腰に剣を指している人までいる。
 まじでどこだよここ。世界観が分からん。
 俺が全く知らないの国や時代の可能性もあるが、それにしても今まで俺がみてきた世界とは明らかに違う気がする。異世界と言われた方がしっくりくる。

(すげえ、ゲームの中に来たみたいな感覚だな)

 辺りを観察していると、ふと気がついたことがある。俺の服装はおかしい。
 いや、死んだ時来ていた服装だから普通のプリントTシャツにパーカー、ジーンズというラフではあるが極一般的な格好なのだが、この世界では明らかに浮いている。
 さっき言った様に、キラキラのドレスや騎士といった人はちらほらといった感じだが、基本的に女性はワンピーススタイルが多いし、男性はスーツのような服装か、シャツにズボンといったシンプルな装いの人ばかりだ。
 少なくともプリントTシャツを着ている人なんて誰一人としていなかった。

(通りで色んな人に見られてるなと思ったわ……)

 まずは服の調達をしよう。店を探しながらこの世界についても見ていけばいいだろう。
 ちなみに、お金については問題ない。持っていた財布の中身が全部見たこともない通貨になっていた。おそらくこの世界の通貨なのだろう。
 ここの物価は分からないが、給料を下ろしたばかりだったし一般的な服くらいは買えるはずだ。多分。

「あ……」

 服屋を探しつつ街をふらふらしていると、とあるショーケースに目を奪われた。
 現代でいうロリータのような、ひらひらとしたフリルやレースがふんだんに使われていて、白を基調とし、グリーンの入ったアシンメトリーになったワンピースだ。丈は膝下くらいだろうか。

(お伽話のお姫様みたいで可愛いなあ……)

 俺は昔から姉の影響で可愛い服やアクセサリーが好きだった。だが、小さい頃ならまだしも、そういったものは歳を重ねるにつれ身に付けづらくなる。特によく老け顔と言われる上に、体格のいい俺には尚更無理だった。
 その為、可愛いものは家の中で楽しむだけに留めていた。

(可愛いけど、さすがに着れないしな……)

 俺は改めて服を求めて店を探しに行こうと目を離そうとしたところで、ふとショーケースにうつる自分と目があった。

(え!? これ誰!!?)

 俺は自他共に認める老け顔だった。大学生だというのによく三十代と間違われたものだ……教師だと勘違いされた時はさすがに凹んだ。
 いや、そんな話はどうでもいい。問題は今映っている俺の姿だ。

(やばい……めちゃくちゃ美少年なんですけど)

 窓に映る俺は、男性でいうところのミディアムヘア、女性でいうとショートくらいの長さのクリーム色の髪に、大きな瞳。心なしか身長も縮んでいる気がする。

 今までショーケースを見ていたのに何故気がつかなかったのか……。
 つい服の方に目を奪われて、それ以外が見えていなかった。馬鹿すぎるだろ俺。
 いや、それにしてもものすごく可愛くないか? 正直女体化したと言われても信じてしまいそうな可愛さだ。
 まあ、それは股にぶら下がっているものがありえないと言っているが……。

(というか、これだったら憧れだった女装も出来るのでは!?)

 そう、先程言った通り俺は可愛いものが大好きなのだ。
 この姿ならばショーケースの中にあるような可愛い服を着ようが、可愛いアクセサリーをつけようが似合うのではないだろうか。
 これはやってみる価値はありそうだ。
 よし、そうと決まればまずは店に入って購入だ!
 そうして俺は意気揚々と店の扉を開いた。



「ありがとうございました~」

 笑顔の定員さんに見送られた俺は、とても可愛いワンピースに身を包み、心躍らせながら街を歩いていた。
 いや、正直いうと少し後悔はしている。何と言っても高かったのだ。家無しである俺は、今日はとりあえず宿でも探そうと思っていたのだが、この残金では厳しい気がする……どうしよう。
 定員さんに言われるままにヘアアクセまで買ってしまったのがいけなかったのかもしれない。可愛さについ目が眩んでしまった。

 そんなことを考えながら歩いていると、少し先に人が集まっているのが目に入った。
 一人の男性が女性に囲まれているようだ。
 男はとても高貴そうな軍服に身を包んでいる。顔が整っているのもあり、まさに漫画とかに出てくる王子様といった感じだ。
 道理で女性たちにキャーキャー言われているわけか。

「レオ様! こんなところにいたのですか」

 周りの女性たちをかき分け、燕尾服を着た執事のような人が男に声をかけた。
 男は燕尾服の人に目を向け、なんだか少し嫌そうな顔をした。

「フランか」
「出ていかれる時は声をかけてくださいといつも言っているでしょう。勝手に出歩かないでください」
「窮屈なんだよ、少しくらいいいだろ」

 二人は困惑気味の周囲の女性たちを放置し、言い合いを始めてしまったようだ。
 まあ俺には関係ないし、変に巻き込まれても困る。こういう時は黙って立ち去るに限るな。

 そう思い立ち去ろうとした時、ふとあの王子様風イケメンと目があった。


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