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人が変わるのは周りから
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現実は想像よりも無味であった。
遅刻はしたものの、担任は寝坊かと聞いてきただけで。
教室に入るときには視線こそ集まったが、授業までに誰かがからかってくることもなかった。
俺も学校じゃそこまで社交的な方ではないが、ここまで反応がないのも寂しい。
せっかく美優があれこれ頑張ってくれたのに。
他人への関心なんてそんなものかな。
自意識過剰だったか。
よくよく考えてみれば、女の子が髪を切っても俺は気づかないし、鈴原が髪型をセットしてきたところでからかうのかと聞かれると、至極どうでもいい。
帰ってからの美優への報告が心苦しいが、そんなことを気にしてられる余裕もなかった。
俺には果たさなければならない義務がある。
女の子に話しかけるのだ。
学校に来たときには、最低一回は会話を成立させる。
それが美優と結んだ約束の一つだ。
昨日と一昨日は、クラスの中でも比較的話しやすい小野崎に、授業に関する質問をした。
隣の席だからな。
他の女の子に話しかけるのはハードルが高すぎてまだ踏み出せない。
できれば山本さんと話をするように美優には言われているが、山本さんは単に高嶺の花というだけでなく、人気者であるがゆえにそもそも会話する隙がないのだ。
話しかけてもらうというのは美優との約束ではカウントされないし。
とはいえ、ずっと小野崎との会話で条件をクリアし続けるというのも、なんか違う。
美優には俺が女の子と会話してるかなんて確かめようがないのだが、だからこそ逆に、その意図を汲み取って忠実に従わなければならないと感じてしまう。
結果的には俺のためになるわけだし。
今朝美優が尽くしてくれたことも含めて、俺は報いなければならない。
「──小野崎って、よく鞄にストラップをつけてるよな」
休み時間の終わり際、生徒が着席してから担当教諭がやってくるまでの数分間。
結局、話す相手は小野崎だったが、今回は授業に関係ない話題を振ってみた。
これは大いなる進歩と言える。
「ん? これ?」
小野崎は鞄に付いていたものと同じストラップを、筆箱の端にぶら下げて見せる。
ゆるい顔をした眼鏡動物シリーズだ。
小野崎も眼鏡をかけているから、きっとシンパシーを感じるのだろう。
「そうそう。最近コンビニでよく見るようになったなって」
「食玩が発売されるようになったからね。元々はインスタントコーヒーのイメージキャラクターなんだけど、まったりカフェシリーズがずいぶん売れたみたい」
小野崎はストラップをつんつんしながら詳細を教えてくれた。
元は地味な販売戦略だったらしいが、いわゆる女子高生効果というやつで爆発的に人気が出たらしい。
「ソトミチくんさ」
今度は小野崎から話を切り出してきた。
さり気なく俺を一瞥して、肩を寄せながら声を小さくする。
「彼女できた?」
おおっ、と心の中でついガッツポーズが出る。
聞かれたくないと思いつつ、どこかで期待していたその言葉を、ようやく聞くことができた。
気づかれてなかったわけではないんだな。
「まだいないけど」
“まだ”なんて言ってしまった。
俺らしくもない。
俺の彼女は、とっくの昔からPCの中にいるはずだったのに。
ともかくこれは喜ばしいことだ。
彼女ができたのかと聞かれたのだから、俺の男らしさが上がったのだと考えてよい。
筋トレの効果はまだまだ自分でもわからないくらいだが、最近はやや猫背気味になりかけていた姿勢を変える意識が芽生えたのも、おそらく無関係ではないはずだ。
「そうなんだ。ふふっ。いい感じだね」
小野崎は耳に髪をかけながら視線だけを送ってくる。
おう、おう、待て、どうした。
モテすぎ、とか考えてる自分がキモい。
これは普通なんだ。
別段変わったことではない。
つけ上がるなよ俺。
この程度で、もしかしたら小野崎が俺のことを気にし始めるかも、とか思うなよ。
絶対にだぞ。
「あ、ありがと」
胸が高鳴った。
こんなに嬉しいことが起こるなんて。
逆に俺が小野崎のこと意識してしまうじゃないか。
チョロい、チョロいぞ俺。
妹以外を愛せない心配はどこへ行ったんだ。
「……ん?」
小野崎との会話が終わり、俺は一人で疑問に向き合う。
妹が好きになったうんぬんは美優に言われただけであって──まあ好きであることは事実なのだが──俺が美優を恋愛対象にしているだとか、まだその段階まで辿り着いたわけではない。
妹でしか抜けないだけ。
それだけでも大問題ではあるけど。
他の女の子が好きになれないってのは単なる思い込みだ。
妹以外で勃たなくなっているのは、自分がそう思わせているに過ぎないんじゃないか。
小野崎か。
胸はないが、こう、そういう空気になったら意外と積極的だった、みたいになりそうなタイプだよな。
眼鏡を外したら、視力が低いから目つきが悪くなって、睨まれながらのエッチになりそうだ。
男っ気とか全然ないけど。
経験豊富って線もあり得るか。
騎乗位になったら自分から腰を振ってくれて。
ああ、想像すると興奮する。
「…………」
くそう、勃たん。
なぜだ。
ピクリとは反応するのに。
横にいるから緊張してるのか。
「はーい静かに。授業を始めるよ。日直、号令」
妄想している内に先生が来てしまった。
これから五十分、数学の授業。
なら、ワークを先回りして終わらせてしまえば残りの時間もまだ妄想に費やせる。
速攻でケリをつけて、エロ世界に再入場しよう。
この興奮が冷める前に、どうにかして美優以外の女の子で勃起するんだ!
「──くそっ……!!」
ダメだ。
結局、最後の授業まで勃ち切らずに終わってしまった。
まあ最後の授業は音楽だったから若干無理があったが。
でも、完全に負けたわけじゃない。
半勃ちくらいまではいったんだ。
いける。
この調子なら、数日後にはクラスメイトでもMAXまで硬くできる。
だからといって美優に女の子を紹介してもらうのをやめたりはしないが。
今日の俺はどこを見ても進歩が目覚ましい。
一日中、見た目のことにもエロいことにも気を使って、すごく疲れた。
なんだかんだ鈴原にも、「女でもできたのかよ」って突っ込まれたしな。
俺が山本さんと日直をやっていたときみたいに激昂したりはしてなかったけど。
あいつは山本さんと他の男が仲良くさえしていなければなんでもいいらしい。
いつからそんなに山本さんのファンになったんだ。
鈴原も二次元信者のはずなんだが。
どうでもいいか。
もう考えるのはやめよう。
体育の授業があったわけでもないのに、俺は音楽室から戻るまでの廊下でヘロヘロになっていた。
朝と昼で摂取したブドウ糖はとっくに消化されて底をついたようだ。
いやしかし、クラスメイトをオカズにひと通り妄想してきたが、美優ならどうなのか。
美優に打ち明けたあの会話の流れ的に、美優をオカズにしてはいけないことは明白だ。
それでも、美優から直々に禁止を言い渡されたわけではない。
最近は美優もよく俺と話してくれるしな。
洋服関係の話ともなるとむしろ積極的なくらいだし。
理由はわからないが、仲良くはなれているはず。
それを考えると、やっぱり、あれだろう。
次に美優の口に出させてもらうときには、してもらえるかもしれない。
お掃除を。
たとえば、何かを頑張ったご褒美としてお願いをしてみるとか。
アレは間違いなく対価を払わずにはいられない人間だ。
最初にオナニーを覗かれたときも、夢精を処理してもらったときも、美優は貸し借りや平等にこだわった。
理由さえあれば、美優の行動には反映されるのだ。
どうせまた無表情で受け止めて。
なんの気なしに舌を出して、ペロッとやるくらいだろうが。
可能性としてはあるよな。
あるいは、元より無理ではなかったのかもしれない。
最初に美優の口に出したとき、俺は勢い余って何も考えずにお願いをしたんだ。
だったら、有無を言わせず唇に触れるくらい差し込んでしまえば、そのまま喉の奥まで許可してくれるのではないか。
美優のことだから、喉の奥でそのまま出しても、黙って飲んでくれそうだよな。
思いっきりドロドロした精液を流し込んでやりたい。
オナ禁して溜めてみようかな。
ああやって黙って受け止められると、どれくらい濃いのを飲ませられるか試したくなる。
「…………」
まずい。
完全に勃った。
授業終わりの廊下で、生徒が溢れてるのに。
さすがにこんなにガチガチだと教科書くらいじゃ隠しきれない。
トイレはさっき知り合いが入っていったし、距離もある。
なにより個室が空いてなかった場合が最悪だ。
幸いにもここは一階。
階段の裏に回れば、非常口が使われない限り誰にも見つからない死角がある。
股間の膨らみを鎮めるくらいならそこがベストなはずだ。
俺は前後のすぐ近くに人影がないことを確認してから、階段まで小走りした。
階段の一部でも見えない部分があれば、俺はそこから急いで二階に上がっていったように見えるだろう。
階段裏に潜伏するのには、その過程を見られてはいけないという厳しい条件があったが、今回はなんとかクリアできた。
「ふぅ……」
ひとまずは深呼吸。
誰にも見られないことを確認すると、肉欲が荒ぶってさらに剛直の角度が深くなった。
美優のせいでエラいことになった。
まさかこんなあっさり完全状態になってしまうとは。
恐ろしい妹だ。
マズいな、めっちゃフェラしてもらいたい。
美優のあのムスッとした顔で咥えられたいんだ俺は。
AVみたいな淫語まみれのうるさいセックスじゃなくて。
まだ出ないの? みたいな顔で呆れられながら淡々とセックスがしたい。
どうしてだろう。
そんな趣味じゃなかったはずだ。
イチャイチャラブラブして、互いに愛を囁きながら体を重ねるのが理想だったはず。
五年以上、エロゲに情熱を入れ込んで、そういう関係に憧れてきた。
なのに今は美優に怒られることすら興奮する。
ダメだ、いけない。
これ以上エロいことは考えるな。
夕礼前の休み時間は比較的長いとはいえ、この調子じゃ射精でもしない限り収まりがつかなくなる。
他の子で勃たせようとして、知らずのうちに性欲を蓄積していたのがよくなかった。
ムラムラが爆発している。
こんなときに美優がいたら、すぐ出してそれで終わりだったのにな。
「悪い子みーつけた」
ゾクッ、と背筋に悪寒が走って、慌てふためく俺の背中に、柔らかい体温が当たる。
その妙に甘ったるい声音は、最近になって聞き慣れたものだった。
「や、山本さん……!?」
長い髪から女の子の香りが広がって、俺の鼻孔にフェロモンを塗りたくる。
背中の弾力といい、この匂いの色気といい、間違いない。
一番見つかっちゃいけない人に見つかった。
「何をしてるのかな?」
山本さんは耳たぶに噛み付くぐらいの距離で訊いてきた。
今の俺には刺激が強すぎる。
股間の膨らみは小さくなるどころか、更にもう一段階ポンプアップしてしまった。
背後からではあるけど、この雰囲気じゃ、絶対にバレてるよな。
「その、男の子特有のアレが……」
事実、エロい気分じゃなくてもアソコが大きくなることはある。
山本さんがそれを知っているかはわからないが、これぐらいは事故として十分にありうるのだ。
「ん? アレってなに? 男の子にも生理がくるのかな?」
山本さんの手が、腰から前に伸びてくる。
おっ、おっ、おっ、これ、は、何が、起こってるんだ。
あの山本さんに、俺の股間が触れられている。
服越しに、わずかに接触しているのがわかるくらいに、擦られている……!
「ソトミチくんさ、今日はなんだかずいぶんと女の子たちに色気を振りまいてたよね。みんな雰囲気が違うって言ってたよ? 例の悩みってやつがうまくいったのかな」
指先で、盛り上がったイチモツの裏筋をなぞられる。
なんで山本さんが俺にこんなことを。
これもイメチェンのおかげだっていうのか。
いやいくらなんでも効果が出すぎだろう。
「ねぇ、ソトミチくん。誰のこと考えてこんなに大きくしてるの?」
本当に耳朶を甘噛みされたんじゃないかってくらい、唇を近づけて山本さんが声を響かせてくる。
いつもの山本さんじゃない。
膀胱のあたりがざわついて、お腹が引き攣るみたいにビクビクする。
「それは、言えない……」
言えるわけがない。
実の妹のことを考えてたら勃起が収まらなくなって避難してるなんて。
「私じゃないんだよね。ソトミチくん、私のことあんまり意識してないみたいだし。同じクラスの子? もしかして、他の学年かな? へー。私を外目にして、こんなになっちゃうような子がいるんだ」
山本さんはもぞもぞと俺のズボンをまさぐると、チャックに手をかけてゆっくりと下ろしていく。
それから張り詰めたトランクスの前開きのボタンに指をかけるまではすぐだった。
「なに、して……!」
待て、待て、待て待て待て。
どうしてこうなっている。
なんで俺は下半身を脱がされているんだ。
「誰なの?」
トランクスの布を捲り、両手の指で器用にボタンを外すと、山本さんは俺の肉棒を外部に露出させた。
反り上がったモノが外気に晒されて、羞恥心と一緒に浮遊感にも似た快感が体を包んだ。
「だから、言えないんだって……」
「ふーん」
山本さんは露出部に直接手を触れることはなく、局部を脱がせてからは内ももをさすってきた。
こんな風にべったり女の子とスキンシップを取ったのは人生で初めてだ。
こんなに暖かくて柔らかいのか。
自分以外の手が触れるのって、こんなにも気持ちいいものなのか。
直接性器を触られているわけでもないのにむくむくと性欲が湧き上がってくる。
「そっか。ならしょうがないな」
山本さんはまた俺のズボンのチャックに手をかけた。
そして、引き出を摘むと、肉棒をパンツにしまわずにチャックを上にあげてしまう。
「えっ」
なに?
終わったのか……?
「ふふっ。期待した?」
山本さんの体が離れて、俺は過剰な体の熱から解放される。
「えっと、山本さん……?」
一体何がしたかったのだろうか。
その答えが聞けることもなく。
山本さんは俺と距離を取る。
「ちょっとからかってみただけ。ソトミチくんはお腹が痛くて夕礼に出られないって言っておくから、安心して」
それだけ言うと、山本さんは笑顔をひとつ残して去って行った。
学校一の美少女が、さして仲良くもない男子の肉棒をからかいで摘み出すか?
今日一日、何が起こっているのかさっぱりわからない。
「はぁ」
脱力しつつ、意識とは無関係に負荷がかけられている陰部に辟易しながら、俺は心を落ち着けるように努めた。
「いつかは教えてね!」
「ぬぉぁ!?」
最後に山本さんが不意打ちで俺の背中に抱きついてきて、またすぐさま走り去ってしまった。
「なんなんだよ、全く」
俺に対する変態行為もそうだが。
なんで山本さんが俺の好きな人のことなんて気にするのか。
今日の午後はずっとそのことで頭がいっぱいだった。
遅刻はしたものの、担任は寝坊かと聞いてきただけで。
教室に入るときには視線こそ集まったが、授業までに誰かがからかってくることもなかった。
俺も学校じゃそこまで社交的な方ではないが、ここまで反応がないのも寂しい。
せっかく美優があれこれ頑張ってくれたのに。
他人への関心なんてそんなものかな。
自意識過剰だったか。
よくよく考えてみれば、女の子が髪を切っても俺は気づかないし、鈴原が髪型をセットしてきたところでからかうのかと聞かれると、至極どうでもいい。
帰ってからの美優への報告が心苦しいが、そんなことを気にしてられる余裕もなかった。
俺には果たさなければならない義務がある。
女の子に話しかけるのだ。
学校に来たときには、最低一回は会話を成立させる。
それが美優と結んだ約束の一つだ。
昨日と一昨日は、クラスの中でも比較的話しやすい小野崎に、授業に関する質問をした。
隣の席だからな。
他の女の子に話しかけるのはハードルが高すぎてまだ踏み出せない。
できれば山本さんと話をするように美優には言われているが、山本さんは単に高嶺の花というだけでなく、人気者であるがゆえにそもそも会話する隙がないのだ。
話しかけてもらうというのは美優との約束ではカウントされないし。
とはいえ、ずっと小野崎との会話で条件をクリアし続けるというのも、なんか違う。
美優には俺が女の子と会話してるかなんて確かめようがないのだが、だからこそ逆に、その意図を汲み取って忠実に従わなければならないと感じてしまう。
結果的には俺のためになるわけだし。
今朝美優が尽くしてくれたことも含めて、俺は報いなければならない。
「──小野崎って、よく鞄にストラップをつけてるよな」
休み時間の終わり際、生徒が着席してから担当教諭がやってくるまでの数分間。
結局、話す相手は小野崎だったが、今回は授業に関係ない話題を振ってみた。
これは大いなる進歩と言える。
「ん? これ?」
小野崎は鞄に付いていたものと同じストラップを、筆箱の端にぶら下げて見せる。
ゆるい顔をした眼鏡動物シリーズだ。
小野崎も眼鏡をかけているから、きっとシンパシーを感じるのだろう。
「そうそう。最近コンビニでよく見るようになったなって」
「食玩が発売されるようになったからね。元々はインスタントコーヒーのイメージキャラクターなんだけど、まったりカフェシリーズがずいぶん売れたみたい」
小野崎はストラップをつんつんしながら詳細を教えてくれた。
元は地味な販売戦略だったらしいが、いわゆる女子高生効果というやつで爆発的に人気が出たらしい。
「ソトミチくんさ」
今度は小野崎から話を切り出してきた。
さり気なく俺を一瞥して、肩を寄せながら声を小さくする。
「彼女できた?」
おおっ、と心の中でついガッツポーズが出る。
聞かれたくないと思いつつ、どこかで期待していたその言葉を、ようやく聞くことができた。
気づかれてなかったわけではないんだな。
「まだいないけど」
“まだ”なんて言ってしまった。
俺らしくもない。
俺の彼女は、とっくの昔からPCの中にいるはずだったのに。
ともかくこれは喜ばしいことだ。
彼女ができたのかと聞かれたのだから、俺の男らしさが上がったのだと考えてよい。
筋トレの効果はまだまだ自分でもわからないくらいだが、最近はやや猫背気味になりかけていた姿勢を変える意識が芽生えたのも、おそらく無関係ではないはずだ。
「そうなんだ。ふふっ。いい感じだね」
小野崎は耳に髪をかけながら視線だけを送ってくる。
おう、おう、待て、どうした。
モテすぎ、とか考えてる自分がキモい。
これは普通なんだ。
別段変わったことではない。
つけ上がるなよ俺。
この程度で、もしかしたら小野崎が俺のことを気にし始めるかも、とか思うなよ。
絶対にだぞ。
「あ、ありがと」
胸が高鳴った。
こんなに嬉しいことが起こるなんて。
逆に俺が小野崎のこと意識してしまうじゃないか。
チョロい、チョロいぞ俺。
妹以外を愛せない心配はどこへ行ったんだ。
「……ん?」
小野崎との会話が終わり、俺は一人で疑問に向き合う。
妹が好きになったうんぬんは美優に言われただけであって──まあ好きであることは事実なのだが──俺が美優を恋愛対象にしているだとか、まだその段階まで辿り着いたわけではない。
妹でしか抜けないだけ。
それだけでも大問題ではあるけど。
他の女の子が好きになれないってのは単なる思い込みだ。
妹以外で勃たなくなっているのは、自分がそう思わせているに過ぎないんじゃないか。
小野崎か。
胸はないが、こう、そういう空気になったら意外と積極的だった、みたいになりそうなタイプだよな。
眼鏡を外したら、視力が低いから目つきが悪くなって、睨まれながらのエッチになりそうだ。
男っ気とか全然ないけど。
経験豊富って線もあり得るか。
騎乗位になったら自分から腰を振ってくれて。
ああ、想像すると興奮する。
「…………」
くそう、勃たん。
なぜだ。
ピクリとは反応するのに。
横にいるから緊張してるのか。
「はーい静かに。授業を始めるよ。日直、号令」
妄想している内に先生が来てしまった。
これから五十分、数学の授業。
なら、ワークを先回りして終わらせてしまえば残りの時間もまだ妄想に費やせる。
速攻でケリをつけて、エロ世界に再入場しよう。
この興奮が冷める前に、どうにかして美優以外の女の子で勃起するんだ!
「──くそっ……!!」
ダメだ。
結局、最後の授業まで勃ち切らずに終わってしまった。
まあ最後の授業は音楽だったから若干無理があったが。
でも、完全に負けたわけじゃない。
半勃ちくらいまではいったんだ。
いける。
この調子なら、数日後にはクラスメイトでもMAXまで硬くできる。
だからといって美優に女の子を紹介してもらうのをやめたりはしないが。
今日の俺はどこを見ても進歩が目覚ましい。
一日中、見た目のことにもエロいことにも気を使って、すごく疲れた。
なんだかんだ鈴原にも、「女でもできたのかよ」って突っ込まれたしな。
俺が山本さんと日直をやっていたときみたいに激昂したりはしてなかったけど。
あいつは山本さんと他の男が仲良くさえしていなければなんでもいいらしい。
いつからそんなに山本さんのファンになったんだ。
鈴原も二次元信者のはずなんだが。
どうでもいいか。
もう考えるのはやめよう。
体育の授業があったわけでもないのに、俺は音楽室から戻るまでの廊下でヘロヘロになっていた。
朝と昼で摂取したブドウ糖はとっくに消化されて底をついたようだ。
いやしかし、クラスメイトをオカズにひと通り妄想してきたが、美優ならどうなのか。
美優に打ち明けたあの会話の流れ的に、美優をオカズにしてはいけないことは明白だ。
それでも、美優から直々に禁止を言い渡されたわけではない。
最近は美優もよく俺と話してくれるしな。
洋服関係の話ともなるとむしろ積極的なくらいだし。
理由はわからないが、仲良くはなれているはず。
それを考えると、やっぱり、あれだろう。
次に美優の口に出させてもらうときには、してもらえるかもしれない。
お掃除を。
たとえば、何かを頑張ったご褒美としてお願いをしてみるとか。
アレは間違いなく対価を払わずにはいられない人間だ。
最初にオナニーを覗かれたときも、夢精を処理してもらったときも、美優は貸し借りや平等にこだわった。
理由さえあれば、美優の行動には反映されるのだ。
どうせまた無表情で受け止めて。
なんの気なしに舌を出して、ペロッとやるくらいだろうが。
可能性としてはあるよな。
あるいは、元より無理ではなかったのかもしれない。
最初に美優の口に出したとき、俺は勢い余って何も考えずにお願いをしたんだ。
だったら、有無を言わせず唇に触れるくらい差し込んでしまえば、そのまま喉の奥まで許可してくれるのではないか。
美優のことだから、喉の奥でそのまま出しても、黙って飲んでくれそうだよな。
思いっきりドロドロした精液を流し込んでやりたい。
オナ禁して溜めてみようかな。
ああやって黙って受け止められると、どれくらい濃いのを飲ませられるか試したくなる。
「…………」
まずい。
完全に勃った。
授業終わりの廊下で、生徒が溢れてるのに。
さすがにこんなにガチガチだと教科書くらいじゃ隠しきれない。
トイレはさっき知り合いが入っていったし、距離もある。
なにより個室が空いてなかった場合が最悪だ。
幸いにもここは一階。
階段の裏に回れば、非常口が使われない限り誰にも見つからない死角がある。
股間の膨らみを鎮めるくらいならそこがベストなはずだ。
俺は前後のすぐ近くに人影がないことを確認してから、階段まで小走りした。
階段の一部でも見えない部分があれば、俺はそこから急いで二階に上がっていったように見えるだろう。
階段裏に潜伏するのには、その過程を見られてはいけないという厳しい条件があったが、今回はなんとかクリアできた。
「ふぅ……」
ひとまずは深呼吸。
誰にも見られないことを確認すると、肉欲が荒ぶってさらに剛直の角度が深くなった。
美優のせいでエラいことになった。
まさかこんなあっさり完全状態になってしまうとは。
恐ろしい妹だ。
マズいな、めっちゃフェラしてもらいたい。
美優のあのムスッとした顔で咥えられたいんだ俺は。
AVみたいな淫語まみれのうるさいセックスじゃなくて。
まだ出ないの? みたいな顔で呆れられながら淡々とセックスがしたい。
どうしてだろう。
そんな趣味じゃなかったはずだ。
イチャイチャラブラブして、互いに愛を囁きながら体を重ねるのが理想だったはず。
五年以上、エロゲに情熱を入れ込んで、そういう関係に憧れてきた。
なのに今は美優に怒られることすら興奮する。
ダメだ、いけない。
これ以上エロいことは考えるな。
夕礼前の休み時間は比較的長いとはいえ、この調子じゃ射精でもしない限り収まりがつかなくなる。
他の子で勃たせようとして、知らずのうちに性欲を蓄積していたのがよくなかった。
ムラムラが爆発している。
こんなときに美優がいたら、すぐ出してそれで終わりだったのにな。
「悪い子みーつけた」
ゾクッ、と背筋に悪寒が走って、慌てふためく俺の背中に、柔らかい体温が当たる。
その妙に甘ったるい声音は、最近になって聞き慣れたものだった。
「や、山本さん……!?」
長い髪から女の子の香りが広がって、俺の鼻孔にフェロモンを塗りたくる。
背中の弾力といい、この匂いの色気といい、間違いない。
一番見つかっちゃいけない人に見つかった。
「何をしてるのかな?」
山本さんは耳たぶに噛み付くぐらいの距離で訊いてきた。
今の俺には刺激が強すぎる。
股間の膨らみは小さくなるどころか、更にもう一段階ポンプアップしてしまった。
背後からではあるけど、この雰囲気じゃ、絶対にバレてるよな。
「その、男の子特有のアレが……」
事実、エロい気分じゃなくてもアソコが大きくなることはある。
山本さんがそれを知っているかはわからないが、これぐらいは事故として十分にありうるのだ。
「ん? アレってなに? 男の子にも生理がくるのかな?」
山本さんの手が、腰から前に伸びてくる。
おっ、おっ、おっ、これ、は、何が、起こってるんだ。
あの山本さんに、俺の股間が触れられている。
服越しに、わずかに接触しているのがわかるくらいに、擦られている……!
「ソトミチくんさ、今日はなんだかずいぶんと女の子たちに色気を振りまいてたよね。みんな雰囲気が違うって言ってたよ? 例の悩みってやつがうまくいったのかな」
指先で、盛り上がったイチモツの裏筋をなぞられる。
なんで山本さんが俺にこんなことを。
これもイメチェンのおかげだっていうのか。
いやいくらなんでも効果が出すぎだろう。
「ねぇ、ソトミチくん。誰のこと考えてこんなに大きくしてるの?」
本当に耳朶を甘噛みされたんじゃないかってくらい、唇を近づけて山本さんが声を響かせてくる。
いつもの山本さんじゃない。
膀胱のあたりがざわついて、お腹が引き攣るみたいにビクビクする。
「それは、言えない……」
言えるわけがない。
実の妹のことを考えてたら勃起が収まらなくなって避難してるなんて。
「私じゃないんだよね。ソトミチくん、私のことあんまり意識してないみたいだし。同じクラスの子? もしかして、他の学年かな? へー。私を外目にして、こんなになっちゃうような子がいるんだ」
山本さんはもぞもぞと俺のズボンをまさぐると、チャックに手をかけてゆっくりと下ろしていく。
それから張り詰めたトランクスの前開きのボタンに指をかけるまではすぐだった。
「なに、して……!」
待て、待て、待て待て待て。
どうしてこうなっている。
なんで俺は下半身を脱がされているんだ。
「誰なの?」
トランクスの布を捲り、両手の指で器用にボタンを外すと、山本さんは俺の肉棒を外部に露出させた。
反り上がったモノが外気に晒されて、羞恥心と一緒に浮遊感にも似た快感が体を包んだ。
「だから、言えないんだって……」
「ふーん」
山本さんは露出部に直接手を触れることはなく、局部を脱がせてからは内ももをさすってきた。
こんな風にべったり女の子とスキンシップを取ったのは人生で初めてだ。
こんなに暖かくて柔らかいのか。
自分以外の手が触れるのって、こんなにも気持ちいいものなのか。
直接性器を触られているわけでもないのにむくむくと性欲が湧き上がってくる。
「そっか。ならしょうがないな」
山本さんはまた俺のズボンのチャックに手をかけた。
そして、引き出を摘むと、肉棒をパンツにしまわずにチャックを上にあげてしまう。
「えっ」
なに?
終わったのか……?
「ふふっ。期待した?」
山本さんの体が離れて、俺は過剰な体の熱から解放される。
「えっと、山本さん……?」
一体何がしたかったのだろうか。
その答えが聞けることもなく。
山本さんは俺と距離を取る。
「ちょっとからかってみただけ。ソトミチくんはお腹が痛くて夕礼に出られないって言っておくから、安心して」
それだけ言うと、山本さんは笑顔をひとつ残して去って行った。
学校一の美少女が、さして仲良くもない男子の肉棒をからかいで摘み出すか?
今日一日、何が起こっているのかさっぱりわからない。
「はぁ」
脱力しつつ、意識とは無関係に負荷がかけられている陰部に辟易しながら、俺は心を落ち着けるように努めた。
「いつかは教えてね!」
「ぬぉぁ!?」
最後に山本さんが不意打ちで俺の背中に抱きついてきて、またすぐさま走り去ってしまった。
「なんなんだよ、全く」
俺に対する変態行為もそうだが。
なんで山本さんが俺の好きな人のことなんて気にするのか。
今日の午後はずっとそのことで頭がいっぱいだった。
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結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
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侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
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