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ベフォメット争乱編
第85話 空襲?
しおりを挟む俺達はベフォメットの王都に向けてヘリコプターで快進撃中だ。
敵軍がいても基本的に上空を素通り、たまに敵軍の物資を強奪しながらすごく順調に進めている。
なにせ敵に対空手段がない。たまに魔法使いが魔法を撃ってくるが、はっきり言ってクソエイムである。
当たる気配がないので仕返しに生卵を落としている。
地面の敵を狙うのに比べて空の敵を狙うのはかなり難しいからな。
「あっ。また変な大きな人いるよ」
「今度は腕だけでかいな……」
たまに敵軍に巨人のなりそこないみたいなのが混ざっているのだ。
頭だけ1メートルあったり、超胴長短足だったりなんか完全に失敗した粘土細工みたいなの。
動きも妙にぎこちなくおかしいとは思っているが、よく分からんし害もないので放置している。
多少でかくても上空からなら特に問題ないし。
そしてヘリコプターで更に進むと巨大な都市が見えてきた。
「あれがベフォメットの王都、オーガスだよ!」
カーマが席から立ち上がり俺の肩にもたれかかってきた。
王都というだけあって巨大な城がある。あそこのどこかにクズ王子がいるはずだ。
「エフィルンがいる」
明るいカーマとは対照的に、ラークが少し緊張した声で告げる。
エフィルンの魔力を感じたのだろう。やはりいるか……唯一の懸念点だ。
彼女は魔法で竜巻を出せる。ヘリコプターに対して有効な攻撃を繰り出せる可能性があるのだ。
今までと違って撃墜される可能性もある。その場合はラークの転移術で逃げればよい話ではあるが。
「エフィルンの魔法でヘリが落とされそうになったら、このヘリを王子目掛けて墜落させる。そして俺達は転移で逃げるぞ」
「あなたってただでは転ばないよね」
何で無料で転んでやる必要があるのだ。
俺が転ぶ時はあのクズ王子の服も引っ張って道連れだ。
「でも一撃でこの空飛ぶゴーレムが粉砕されたらどうするの?」
「エフィルンの魔法は風と木だろ? 風でヘリを墜落させられることはあっても、空中で爆散されるとは思わん。木なんか生やせても空飛んでれば何もできないだろうし」
植物などしょせんは地に根を張らなければ生きられない生物だ。
空の鳥たちに好き放題される運命である。
武器にしてもムダだ、竹槍で飛行機を落とせないことは昔の日本が証明している。
風魔法に関しても大して心配していない。巨大なハリケーンでも起こされれば困るが、王都の上空を飛んでいる限りは被害を考えて出来ないだろう。
「それよりも見ろよあの無駄にでかい城! あんなバカな城建てるあたり、あのクソ王子の醜い性格も映し出してるよな!」
俺は王都にそびえる城を見て叫ぶ。
本当に無駄にでかい城だ。あんなクソ王子の住処など犬小屋で十分だろう。
カーマとラークも俺の意見に同意してくれるはずだ。
「……ボクの住んでたお城も同じくらいの大きさなんだけど」
「やっぱり城は大きいほうがいいよな! あの城は造形が醜悪だ! 王子の醜い性格を!」
正直レスタンブルクの城と造形の違いが分からないのは内緒だ。
何とか叫んで誤魔化すことにした。おのれクソ王子!
まあいい。今からクソ王子を捕らえたらぶちのめしてやろう。
俺はカーマとラークに対して振り向くと。
「さてと。作戦だがまず王都の端でマシュマロを撒く」
「なんで!?」
「そうすればエフィルンが釣れるはずだ。彼女さえ引きはがせば王子はただのクズだ。後は煮るなり焼くなり……いや煮ても焼いても食えなさそうだな」
とりあえずエフィルンを何とかすればよいのだ。
後は王子の場所を突き止めておいて一目散に突撃すればよい。
「我ながら天才的な策だ。あの王子も読めないだろう」
「うん……まあ読めないとは思う」
「くだらなさすぎて」
何を言うか。エフィルンを釣る上でここまでの良案を他に思いつかんぞ。
「カーマ、ラーク。王子を見つけられないか? クズを探す魔法みたいなので」
「そんな魔法ないけど……あそこにいるの王子じゃない?」
カーマが指さした先を見ると、王子が城のベランダに立っていた。
奴もこちらを笑顔で眺めている。そばにはエフィルンもいるが問題ない。
バカな奴め! 飛んで火にいる夏のクズとは奴のことだ!
「……飛んでるのはボクたちじゃない?」
「細かいことは気にするな!」
ただちに予定していたエフィルンおびき寄せのため、王都の端のほうにマシュマロを撒きはじめる。
くっくっく、これでエフィルンはマシュマロに群がる。
そう思っていたのだが……いきなり突風が吹いてマシュマロが全て吹き飛ばされる。
それらは全部がエフィルンのほうへと飛んでいき、彼女がどこからか取り出した大籠に全て入っていく。
まるで運動会の球いれ競争のようだ。マシュマロをいれる大籠を用意されていたということは……。
「バカな!? マシュマロ撒き作戦が読まれただと!? この天才的な策を!?」
「あの王子とあなたって、考え方似てるんじゃない?」
「やめろ鳥肌が立つ!」
俺は気持ち悪さに身震いしながら王子をにらみつける。
エフィルンを引きはがせないならば仕方ない。空から色々と落としてやろう。
あのクズ王子だけならば情け無用とタンカーでも落とすのだが……エフィルンがいるので手加減は必要だ。
操縦桿を握ってヘリを王子たちの頭上につけようとすると。
「あなた! 右に避けて!」
「左!」
「なら前だ!」
カーマとラークがいきなり叫んできた。いやどっちかわからないので前に進む。
ヘリを前に進めると今までいた場所を貫くように……後ろに巨大な竹のような木が出現した。
「……木? いやなにこれ?」
「エフィルンさんの魔法だよ! 地面から巨大な木を生やして攻撃してきたの!」
「そんなのあり?」
ヘリの後ろにそびえたつ大樹は金属のように光り輝き、先端が槍のように尖っている。
…………まるで超巨大な竹やりだ。
「…………逃げるぞ!」
俺は即座に操縦桿を操って、エフィルンから離れるようにヘリを動かす。
すると地面からどんどん超巨大な大樹が生えてきて、ヘリに襲い掛かってくる!
「ちょっ!? ヘリが竹やりみたいなのに落とされるとか冗談じゃないぞ!」
必死にヘリを縦横無尽に操縦して、地面から生えてくる木を回避しまくる。
植物が鳥を叩き落とすなんて自然界のマナーを破りやがって!
だがこのままではいずれ当たる!
「ラーク! 転移! 転移で逃げるぞ!」
ラークは俺の言葉に「わかった」と返事をすると、魔法の詠唱を始める。
「道標、道標、道標」
よしこれで逃げられるはずだ。ってヤバイ!? 木に当たる!?
進行方向に生えてきた木にぶつかるのを避けるため、ヘリを緊急停止させる。
当然ヘリには凄い振動が行き渡るわけで……。
「空高き地から肥沃の土地へ。我らがッ…………」
詠唱が止まる……ラークは舌を噛んでしまったようだ。涙目になりながら口を抑えて、こちらを非難するように見ている。
「…………痛い」
ごめんって。雑な運転なのは悪いけど仕方なかったんだ。
こんな強烈に揺れ動く中、長い詠唱を唱え続けるのに無理があるな!
世界最高峰のジェットコースターで呪文を唱えると考えれば、バカげた話であるとわかるだろう。
「ラーク! 呪文はいい! 逃げるぞ!」
地面から生えてくる植物をヘリで回避しつつ、王都の上空から抜け出すことに成功する。
やれやれ。これで安全……そう思っていた時期が俺にもありました。
いつの間にかジャイランドほどの大きさを誇る巨樹が、王都の外にそびえたっていた。
巨樹は根っこをたこ足のように気持ち悪く動かして、俺達を追いかけてくる!?
しかも無駄に速い! 畜生! まだ逃げないとダメなようだ!
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