【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

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ラスペラスとの決戦編

第142話 情報過多

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 ラスペラスの女王とのお茶会後、俺達は追っ手から何とか屋敷から逃げ切ることができた。

 ついでに高そうな茶器とかを屋敷からパチっておいた。

 お代としてくさやの干物を置いていったので、ぜひご賞味して欲しい。

 俺も優しいよな。騙されて捕まりそうになったのに、わざわざ代金を置いていくなんて。

 ようやくフォルン領の俺の屋敷に戻り、しばらく休んだ後に執務室に主要メンバーを集めた。

「えー、ラスペラス国との交渉が決裂した。バカ魔力の勘違いBBAみたいな少女のきゃはっ女王でクズ過ぎて、話にならなかった」
「情報量が多すぎるでござる」

 センダイのツッコミに俺も同意するしかない。

 だってあの女王、マジで属性もりもりというか……胸やけ必死というか牛脂を油で揚げたみたいな感じ。

「あの人、おかしいよ……いくらなんでもアレは異常だよ」
「おかしい箇所ばかりで、アレが何をさしてるのかさっぱり分からん」
「魔力だよ! あんなの人が持てる力じゃないよ!」

 カーマの叫びにラークとエフィルンもうなずいた。

 そっちだったか。俺はあのBBA無理すんなみたいな喋り方かと。

 そんなに魔力ヤバかったのか。確かにカーマたちは、女王を前にして過呼吸になっていたな。

「何? ドーピングエフィルンくらい魔力あるのか? あのうわキツ女王」
「……そんな比じゃないよ。ボクらがコップやバケツで魔力を貯めてるとしたら、あの人は池だよ」
「池というより沼じゃね? 汚泥まみれの底なし沼」
「主様、確かにあの女からは醜い性根を感じました。魔法もきっと、醜いと思われます」

 エフィルンが淡々と言葉を述べる。

 そうか、あの女王は人間性を犠牲にして魔力を……。

 あの女王は間違いなく、己の心の闇を発する魔法使いだ。

 腐り切った心ならば無限の闇を出し続けることができるのだ。

 まあ冗談はさておきだ。たぶんその魔力の理由は転生者だからだろうな。

 俺がバカみたいなことを考えていると、センダイが珍しく真面目な顔で酒を飲んでいる。

「しかしラスペラス国との戦争は、かなりキツイものになるでござろうな」
「ほう。いつもみたいに楽勝では無理と?」
「武力も技術力も財力も負けてる相手でござる」

 それって全部負けてるって言わない? 完封負けされてませんかね? 

 もう少し明るい情報を言って欲しい。

「センダイ。レスタンブルクが勝ってるところはないのか?」 
「クズの多さと人間の醜さでは圧勝かと」
「そこは惨敗していて欲しかった……」

 センダイは酒瓶を口に含むと「はっはっは」と笑い始めた。

 くそう、クズが集まったら闇のエネルギーが溜まってなんかできないのか。

 クズ力発電みたいなものがあれば……! 廃棄物発電はゴミを電力にできるって聞くし、クズもできてよいではないか!

 えり好みするなよ。クズもゴミも大して変わらんだろ。

「それともうひとつ。この国は…………」

 センダイは俺を見つめて黙り込んだ。

 なるほど、こいつの言いたいことは簡単だ。

「俺がいるということだな」
「左様。国の奴隷として愚かに馬車馬のごとく働くアトラス殿がいれば、レスタンブルクにも勝機はあるでござる」
「この国、負けるべきでは?」

 ひとりに頼る国ってどうかと思う!

 そんな俺の心の叫びを知ってか知らずか、セバスチャンが号泣している。

「アトラス様がこの国の救世主に……。ごのセバスチャン、嬉しさのあまり金貨にアトラス様の顔を掘ってしまいますぞ!」
「偽金貨作るのやめろ! 貨幣偽造よくない!」

 危うく大罪人になりそうなセバスチャンに釘を刺しておく。

 こいつならマジでやる。やりかねないではない、言ったことは確実にやる。 

「そういうわけで、あまり気乗りしないがレスタンブルクを勝たせる必要がある。あの女王がこの国を占領したら、フォルン領もロクな目に合わない」
「気乗りしてよ!?」
「いやだってさ。本来なら確実に負けて然るべきだし……」

 武力でも技術力でも経済力でも負けてる国だぞ。

 ついでに人間の心の綺麗さでも負けてるんだぞ。滅ぶべきだと言われたら、わりと否定しづらいぞ。

 あの女王が清廉潔白で巨乳だったら、レスタンブルク差し出してたのに……。

 勘違いクソBBAみたいな少女でさえなければ……。

 おっと、それとアレを伝えるのを忘れていたな。

「それとな、レスタンブルクは危機に陥っている。なんかこう柔らかい、封印できて細かく刻めるものの脅威に晒されているんだ」
「アトラス殿、拙者がよく通っている酒飲み御用達の病院を紹介するでござる」
「アトラス様……フォルン領を救うために、とうとう心を犠牲にしてしまったのですぞ……」
「俺はシラフだ! 違う! こいつとうとう……みたいな目で見るのやめろっ!」

 必死に誤解を解こうとしたが、なかなか納得してくれなかった。

 いや確かにさ! コンニャクみたいなのの脅威に晒されているとか意味不明だけど!

 結局この会議の宿題として、レスタンブルクを勝たせる方法とコンニャク(仮)の正体を出しておいた。

 たぶんハーバード大学に入るよりも難しい難問である。

 ……ラスペラスとのお茶の成果、コンニャク(仮)とズッ友女王しかいないの割と辛い。

 ちなみに宿題の回答は誰一人用意してこなかった。天才は変人って聞くし、なら変人も天才じゃないかなぁって期待したのに。

「そんなわけで、レスタンブルクを勝たせる方法とコンニャク(仮)の正体を教えてくれ」
「無茶ぶりやめて欲しいんだけど!?」

 俺は【異世界ショップ】に入店し、ミーレに今後のことを相談していた。

 こいつも言うほど役に立つかは怪しいが、なんか知ってる感じだから情報は聞き出しておかねば。

「少なくともコンニャク(仮)は知ってるだろ? このセサル秘蔵自画像をやるから教えろ」
「いらない……何でセサルさんの秘蔵のもの持ってるのさ」
「押し付けられて……断るならお前に更に押し付けるぞ!」
「そ、それはいやぁ! 言うから! 言うからその絵をしまって!」

 セサルの裸絵に怯えるミーレ。

 流石はセサルの作品だ。女の子をキャーキャー言わせるだけの力がある。

 呪いの写真として凄まじい力だ。本人はお守りとか言ってたけど。

 俺が絵をミーレから見えないようにすると、彼女はホッと息をした後。

「アレのヒントだけどね。天に届くほど大きくてうごめくよ!」
「すごく大きくてうごめくコンニャク……」
「コンニャクから離れよう! それ想像したらかなり気持ち悪いよ!?」

 それな。天高くそびえるコンニャクの壁を想像してしまった。

 そしてやはりこいつはコンニャク(仮)の正体を知っているな!

「ミーレ、知ってることを全て話して欲しい」
「無理と言ったら?」
「お前の姿は俺の想像で変わる。なので体細胞をコンニャクにしてやる!」
「ひいっ!?」

 ガチの悲鳴をあげるミーレ。流石にコンニャクは嫌なようだ。

 このまま責め立てればいけるか!?

「安心しろ。見た目はカーマたちのままだ。ほらスライム娘ってあるじゃん? あれのコンニャク版と考えれば可愛いかも」
「なにひとつ安心できないんだけど!? 無理があるよ!?」
「嫌ならコンニャク(仮)の正体を話せ」
「それは無理なんだって! ここで私が言っちゃうと……レスタンブルクが滅ぶよ!?」
「それがどうし……いや待て。ちょっと時間をくれ」

 ……それがどうした! と言いそうになってしまった。

 いやレスタンブルクが滅んだらフォルン領も巻き添えだ。フォルン領は大事だから……。

 つまりレスタンブルクも大切な国なんだ。そうすごく大事なんだ。

「レスタンブルク大事、レスタンブルク大切、レスタンブルク重要……」
「怖いよ!? 呪詛みたいに唱えださないでよ!」
「うるさい! 今必死に自分を洗脳してるんだ! 自分に言い聞かせなければ、滅んでもいいかなって思ってしまうだろっ!」
「そこまでなのっ!?」
  
 レスタンブルクに愛着なんてないからなぁ。

 むしろクズの本懐だし、世界のためなら滅んだほうがいい説もある。

 カーマたちがいなければとっくの昔に見捨ててたし。

「よし。何とかレスタンブルクが滅んだらダメと思えるようになってきた。滅ぶのはまずいから話を聞くのはやめておく」
「酷い……」

 むしろそう思えた俺を褒めて欲しいのに。

「それとあの女王、転生者って聞いたけど。あいつの魔力が多いのって転生特典だろ」
「そうだね、あの女王の力は転生特典だよ」
「あのBBA無理すんなも転生特典か?」
「転生特典だね」
「まじかよ……転生わりと世知辛いな」

 俺、アトラスに転生してよかったかも…………。
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