【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

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ラスペラスとの決戦編

第143話 捕虜の扱い

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 俺は玉座の間に呼び出され、王から相談を受けていた。

 これだけ聞くと俺が超有能で信用された家臣に見えるが、実際は面倒ごとを押し付けられているだけに過ぎない。

「アトラス伯爵、捕虜を何とかして欲しい。このままではレスタンブルクの財政を圧迫する」
「なんか働かせないんですか。こう、謎の石を回すみたいな」

 石の周りに木の棒をつけて、奴隷が回す謎のやつのことだ。

 昔ネットで調べたら回転炉とか出てきた。ひき臼か何かで小麦粉でも作ってるだと思う。

「仕事がないのだ。鉱山奴隷にするにしても数が多すぎる……何ならフォルン領のドラゴンの甘噛用でもよいぞ」
「いやぁ……うちのドラゴンはグルメなんで」

 最近のあいつらの好みは松坂牛だ。贅沢な! 

 あいつら曰く人間は基本的に骨と皮が多くてマズイらしい。それといろんな物を食べるから、肉にエグ味があるとのこと。

 ……人間の肉の味なんぞ知りとうなかった。今後も永遠に役に立たない知識であろう。

「このままでは捕虜は全員処刑することになる。そうなれば捕虜を虐殺したと、レスタンブルクの評判は地に落ちる」
「この国の評判って元から天にいましたかね? 地下に埋もれてるイメージなんですが」
「……貧乏なのは否定せぬ。だがまだギリギリ、指一本くらいは地上から浮いてるはずだ」

 もうそれ落ちきったほうがよいと思う。

 しかし捕虜の使い方とは困るな。ラスペラス国に捕虜引き渡しの打診はしたが、音沙汰がないようだ。

 たぶん捕虜が俺達の足手まといになることを分かっていて、わざと返事をしていないのだろう。

 殺すと周辺の国から非難を受けるし、奴隷にするにしても反乱を起こされると困る。

「フォルン領で人はいらぬか? そなたの領地ならどうせ間諜入り放題だし、情報漏洩などは気にしないでよかろう?」
「どうせ漏れてるからもっと漏らしたろ理論やめてください。うちだって優秀だったらよかった暗部が発足したんですよ!」
「……優秀な暗部を雇うべきではないか?」

 王の呟きに対して無言を貫く。

 優秀なの雇っても裏切られたら困るし……メルが百倍くらい優秀だったらよかったのに。

 いや無能ではないし求めてる水準はクリアしてるんだ。でも残念臭が漂いすぎてるというか……。

 結局、フォルン領でも人の使い方考えてみますと告げておいた。

 そうしてフォルン領の屋敷の執務室に戻って、セバスチャンを呼び出す。

「アトラス様、何でしょうか」

 俺が呼び出すといつものように、体当たりで扉を粉砕しながらセバスチャンが部屋に駆け込んできた。

 ……もうこの部屋、扉なくていいんじゃないかな。

「セバスチャン。ラスペラス国の捕虜の使い道を考えている。何かいい案はないか?」
「ありますぞ。実は最近、畑に盗人が入ってくるのです。惨殺……迎撃しておりますが、見回りの人員が足りませぬ」

 セバスチャンは俺の問いに対して、意気揚々と答える。

 すぐに答えてくるあたり、以前から困っていることらしいな。

「なるほど、捕虜に見回りをさせるのか。畑の物なら見回りでも簡単には盗めないしな」
「いえ、畑に突き刺してカカシにします」
「悪魔かお前」

 泥棒が畑に侵入した時、カカシと思ったら地面に突き刺さっていた人間だった。

 そしてその人間は悲鳴の叫びをあげる、タスケテタスケテと。

 ……軽くホラーである。夢に出そう。

「ご安心を、カカシは当番制にしますぞ。一日交代で」
「一日ごとに人間をやめさせるのか……」

 流石にセバスチャンの案は却下だな……カカシにされた元人間が気の毒過ぎる。

 他の者も呼び出して話を聞いてはみたが、人手は欲しいが敵国の捕虜に振れる仕事はないようだ。

 うちの領地、基本的に技術を売りにしていくスタイルだ。

 捕虜は雇ってもいつ解放されるかわからないし、解放されて敵国に帰ったら技術流出になってましまう。

 なので重要な仕事は任せられない。そして単純労働者は足りているのだ。

 結局フォルン領でも仕事はないので、俺は【異世界ショップ】に入店する。

 いつものようにレジカウンターに肘をついているミーレ。

「いらっしゃいー。今日は何をお求めかな?」
「今日は買いに来たんじゃない。提案があってな」
「提案?」
「人身売買、始めてみない?」
「はぁ?」
 
 ミーレが俺の言葉にドン引きしている。

 少し言い方が悪かったか、もう少し物事は正確に伝えなければ。

「すまん、言い直させてくれ。奴隷を鞭うちこき使うだけの簡単なお仕事を始めてみないか」
「なにひとつ変わってない件について。まあ言いたいことはわかるよ。捕虜の扱いに困ってるから、仕事を与えて欲しいってことでしょ」

 ミーレの理解が早いようで何よりだ。

 【異世界ショップ】は基本的に何でも買い取ってくれる。

 なら労働力も買い取ってくれるのではないか、そんな淡い期待だ。

「うちの店、基本的に人は買い取ってないんだけどなぁ」
「やはり人身売買はダメなのか。生きてる者はダメとかそんなのか?」
「いや動物とかはいいよ。でも人だけはダメだね」
「何でだよ。人だって動物だろ。差別反対」
「だってさ……自分たちのことを霊長類、万物の長なんて呼ぶ痛々しいケダモノ欲しい?」

 ミーレの言葉にぐうの音も出ない。

 他の動物視点からしたら、俺達人間は中二病の極みなのだろう。

「知ってる? 君たちが飼ってる動物たち。愛くるしく近づいてくる犬も、可愛く近づいてくる猫も、みんな君たちのことを痛々しく傲慢で愚かな生物って見てるよ」
「もう犬や猫のことを愛せない!」
「まあ冗談だけど」

 ペロリと舌を出すミーレ。

 おのれ、その嘘つきの舌を引っこ抜いてやろうか。

「あ、でも死体は買い取れるよ。捕虜の首を捻ればお金になるよ」
「発想が怖すぎる! それだと捕虜を乱雑に扱ったと、国内外から悪く言われるんだよ」
「面倒だねぇ。じゃあこういうのはどう?」

 ミーレが指を鳴らす。

 すると超巨大な奴隷御用達のなんか石回すやつ――回転炉が店内に出現した。

「労働力は買えない。でも電気は買えるから、奴隷にこの炉を回してもらいなよ。外にこの炉を用意して回せば、【異世界ショップ】に電力が届くようにするから」
「なるほど……わかった。奴隷たちを三食昼寝つきで働かせよう」
「意外とホワイトだね」
「代わりに給与なしだけどな!」
「ごめん真っ黒だった」

 ようはラスペラス国が捕虜を引き取るまで、奴隷たちを食わせられればいいのだ。

 回転炉で電気を作って、【異世界ショップ】で買い取ってもらう。
 
 そしてその金全てで買い取れるものが、奴隷たちのごはんになるというわけだ。

「もしあまり稼げなかったら?」
「彼らの食事が海苔一枚になる」
「悪魔だ……」

 いや俺優しいから。ちゃんと美味しい海苔調べておくから。

「奴隷たちの稼いだ金をそのまま食事代にする。俺には渡さなくていいぞ、面倒だし」
「わかった。でも金額の確認は毎回してね?」

 そんなこんなで回転炉を奴隷たちに回させた結果。

「……マジで? こんなに儲かるの?」

 再び【異世界ショップ】店内。

 俺はミーレから金貨五十枚の入った袋を受け取っていた。なんとこれ、一日の稼ぎである。

 奴隷の数が多いので、人海戦術で稼げてるのもあるがこれは……。

「よかったじゃない。彼らも自分たちが働いた分だけ、美味しいごはんが食べれるって頑張ってたし」
「そうだな。じゃあこの金貨一枚で奴隷たちの食事を頼む」

 俺は袋から金貨を一枚取り出すとミーレに手渡す。

 彼女はそんな俺をジト目で見てくる。

「残りの四十九枚は?」
「いやさ。これって奴隷派遣だと思うんだ。なら手数料が必要だよな?」
「ブラック企業でもそんな中抜きしないと思うけど」
「奴隷に人権はない!」

 だって奴隷五百人くらいで、一日に金貨五十枚だぞ?

 普通に毎食豪華な食事が食えるわっ! 奴隷にはもったいない!

 何なら昼カップ麺の俺よりも豪華だぞ!? 舐めてんのか!?

「そんなわけで今後の奴隷たちの稼ぎは俺が預かる」
「全額食事代にするって話は?」
「記憶にございませんなぁ!」

 いやぁ中抜きで飯がウマい! 今日の晩飯は松坂牛のステーキにしよう!

 奴隷たちものり弁くらいは食えるしでWinWinの関係だな!

 彼らも三色昼寝つきだし奴隷としては破格の待遇だ。誰一人不幸になっていない!

 結局中抜きが奴隷たちにバレて、ボイコットされるだがそれは別の話。
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