【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

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ラスペラスとの決戦編

第164話 準備は終えた

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「ねえあなた、少しは魔法の修行しないの? ラスペラス軍との決戦ももうすぐなのに」
「練習すべき」

 執務室でいつものように漫画を読んでいると、カーマたちがそんなことを言い出した。

 確かに彼女たちの言うことは一理ある。

 練習したほうがよいと凡人は思うだろう。だがそこは俺だ、練習しなくても一流よ。

「ふっ。俺ほどにもなれば特訓なんて不要なんだよ……」

 恰好つけながら紅茶を口にふくむ……ふくんだけど飲み込めない。

 カーマたちがめちゃくちゃこっち見てきて飲めない。やめろよ、そんな俺がサボってるみたいなのやめろよ。

「冗談だ。下手に練習すると本番で弱体化するんだよ……俺は力使うのに金かかるから」
「あっ……そうだったね」
「不便」
「ほんとにな。魔法だったら回復するからいいよな。金は勝手に回復してくれないから」

 地面に金を植えたら生えてこないかなぁ……それならいくらでも練習するんだけどなぁー!

 そういうわけで俺はあまり普段は練習してない。ここぞで弱体化したら元も子もないからな。

「だが安心しろ。どこかの誰かを起こす時にいつも戦闘してるから、戦闘経験値はかなり持ってるんだがな!?」

 俺がイヤミったらしく言うと、ラークは首をかしげて。

「誰のこと?」
「「お前(姉さま)だよ」」

 こいつ……さては寝ぼけてるからあまり記憶ないな!?

 俺が日夜、氷の腕をバットで必死に打ちのめしてるのに!

「まあそういうわけだから。特訓なら二人でやってくれ」
「ちょっと思ったんだけど。あなたの国って紙のお金があるんだよね?」
「ん? ああそうだな。紙幣って言ってな、紙のくせに何百枚程度で純金より価値を持つんだ」
「じゃあそれを作ったら、いくらでも打ち放題じゃない?」
「カーマさん、それ以上いけない」

 カーマのとち狂った発想を急いで否定する。

 それは完全に偽札の類だろ!? やったらダメだって!?

 だがカーマは更に俺に対して、指を立てながら告げてくる。

「確かに偽金はよくないよ? 掴まされた人がすごく困っちゃうし。でも魔法使うのになら、誰も困らないんじゃないの? ……なんてね?」

 笑いながら舌を出すカーマ……だが俺は彼女の言葉を否定できなかった。

 確かにそうだ、誰も困らない。それに玩具のお金は普通に【異世界ショップ】でも売っている。

 金を偽造するのが悪いのではなくて、それが流通することで誰かが困るから問題なのである。

 ……あれ? フォルン領で公式の紙幣作ってさ、それで【異世界ショップ】の商品買えばいいんじゃね!?

 昔の日本でも藩札とかあったし、王家に言えば作るのは許可もらえるはずだ。

 その紙幣は【異世界ショップ】でしか使わないようにすれば、いくら消費したって俺に損はない……あれ? もしかして金の永久機関爆誕してしまう!?

『ちょっ!? それはズルいでしょ!? そんなの人道的にどうかと思う!』

 頭にミーレの声が響く。だが彼女はズルいとは言っても、無理とは言わない。

 あれ? マジでこれ可能なの? 真の意味でチートになっちゃわない?

 物凄く規模の大きいおままごとみたいに……一億万円無双!?

「……いややめておこう。なんか一回くらいなら許してもらえそうだけど、ここで使うべきではない」

 俺は切り札は最後まで取っておく主義だ。

 うわきつ女王はチート魔力で極めて厄介な相手だが、イレイザーという敵も控えている。

 せっかく謎に得た切り札だ。ここで使ってしまってはもったいない。

「そっか。あなたが言うなら仕方ないね」
「諦める」
「そうしてくれ。それとうわきつ女王を倒すにあたって俺なりに考えたんだが、合体魔法とか発明できないか?」
「「合体魔法?」」

 カーマとラークは不思議そうな顔をする。

 合体魔法、それはロマンだ。二人の魔法が融合し、1+1=2ではなく更に大きく3や4になる。

 うわきつ女王は単体でチートならば、こちらは合体してやればいいのだ!

「ようは二人以上の魔法を組み合わせて、より強力な魔法にするんだ。例えばエフィルンの大樹に、カーマの炎を組み合わせれば強そうだろ? ジャイアントファイアツリーみたいな」
「すぐ燃え尽きちゃいそう」

 現実は非情である。いやまあそれにしたって、一時的に強くなれそうじゃん?

 文字通り命を燃やすので、短いロウソクだけど。

「それにボクと姉さまじゃ、互いに魔法を食い合っちゃうよ」
「氷と炎、相性最悪」
「……なんで双子なのにそこの相性ダメなんだろうなぁ。まあそれはわかってる、だからエフィルンの魔法を緩衝材にする」

 カーマとラークの魔法の組み合わせは無理だ。

 そこでエフィルンの魔法を借りればよいのだ。彼女の木は氷とも炎とも、組み合わせられる。

「えっと……あまりイメージがつかないんだけど」
「例えば、巨木の巨人をエフィルンに出してもらう。それで右手には巨大な氷の剣を、左手には巨大な炎の剣を持たせるんだ。そうすればうわきつ女王は、同時に二種の相反する属性を相手にする必要がある」

 俺の案はなかなかいい線いってると思う。

 結構かっこうよいと思うんだよ。右手に炎の剣、左手に氷の剣の二刀流。

 カーマたちも少し考え込んだ後。

「まあできなくはないかも。強いかはやってみないと分からないけど」
「試してみる」
「頼んだぞ! 俺達の切り札になりえる力だからな!」

 後はカーマたちに丸投げだ。俺は魔法の素人だから、実際にできるかは彼女ら次第。

 こういうので素人が口を出すとろくなことないからな。

 ……これでやれることは全てやった。ああやったとも。

 石けんで金は稼いだし、チョコで金を稼いだ。ドラゴンたちにも戦闘代金を支払ったし、ライナさんに助っ人代渡したし……金関係ばっかりじゃねぇか!?

 ……まあ仕方ない。俺の力は徹頭徹尾、金だからな……。

 ラスペラスのうわきつ女王よ。首を洗って待っていろ。

 その魔力チートを、【異世界ショップ】が粉砕してやる!
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