【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

文字の大きさ
199 / 220
イレイザー最終決戦編

第187話 スズキさん再起動

しおりを挟む

 俺はスズキさん回収部隊を引き連れて、元レード山林地帯のスズキさんの眠る部屋へとたどり着いた。

 そしてセサルが例の脱衣麻雀筐体を確認して、持ち帰ることは可能と判断。

 筐体を地上に持ち運んでドラゴンで運び、フォルン領へと持っていった。

 今はセサルの第二研究所に運び終えたところだ。

 なお第二研究所は先日作り終えた地下室で、フォルン領でも一部の者しか知らない。

 第一研究所はラスペラス国の研究者が場所を把握しているため、内密にイレイザーを研究できる場所を用意したというわけだ。

 第二研究所は【異世界ショップ】で購入したので、コンクリの壁で覆われていていかにも研究所感が出ている。

 第一研究所はセサルが作ったから木造建築で、外観が七色に光ってたからな……。

「ふむ……カーマ嬢、ラーク嬢。この筐体に炎魔法と氷魔法をぶちこんでくれたまえ」

 しばらく筐体をいじっていたセサルが、そんな末恐ろしいことを言い出した。

「セサル、俺はスズキさんを蘇らせろと言ったんだ。トドメをさせとは言ってない」
「もちろんサッ。スズキさんとやらを蘇らせるなら、少し衝撃が必要でね」
「この脳筋手加減無用姉妹に少しを求めるな。やらせるなら殲滅のみだ」

 俺の言葉にムッとしているカーマとラーク。

 だが俺の言っていることに間違いはない! 彼女らに手加減させたらダメだ!

 根本的に彼女らの思想は大は小を兼ねる、だからな!

「ふっ、大丈夫サッ! この筐体は超特殊な魔法合金で作られていて、彼女らが本気で魔法を撃っても壊れない……かもしれない」
「まじか……」

 つまり脱衣麻雀ゲーの筐体に、わざわざムダすぎる丈夫な合金を使ったと……。

 流石はスズキさん、脱衣麻雀への業が深すぎる。

「えーっと……つまり全力で撃っていいってこと?」
「ぶっ壊す気持ちでやっていい?」
「あー……少しは手加減して欲しいサッ!」

 カーマたちがやる気満々過ぎて、流石に少し物おじするセサル。

 言ったろ、そいつら手加減苦手だって。全力で撃っていいなんて言ったら、嬉々として打ち込むから。

 基本的にカーマたちに指示するなら、指定した威力の二割引きくらいで要求しろ。

 六割の力で撃って欲しいなら四割と言っておけ。そしたら三割~五割程度で撃ってくれるはずだ。

 根本的に力の制御が雑なので誤差が広すぎるのは諦めろ。

 ド級大砲に繊細な破壊を求めるほうが愚かだ。

「え、えーっと……これくらい?」

 カーマたちが頑張って力を押さえて、スズキさんの筐体に炎と氷の魔法を撃ち込んだ。

 すると筐体に当たった瞬間、炎と氷は吸収されたかのように掻き消えた。

 そして筐体のモニターが光り輝き始めて、スピーカーからノイズが鳴り始めた。

「……グッモーニング! やあ未来の先祖! 私はスズキ・サトウだ! この映像を見て……あれ? 君はアスタロ君では?」
「誰がアスタロだ。アトラスだ」
「……ふむ? おかしいな。私はスリープモードに入り、修理されないと再起動不可のはずだったのだが? まさか君たち程度の粗末な文明レベルで私が直せるとは……」

 いきなり物凄くディスってくるスズキさん。

 モニターにうつる彼の顔も困惑した表情を浮かべている。

「ふっ。ミーにかかればこの程度、わけはないサッ!」

 キメ顔で前髪をかきあげるセサル。

 それに対して筐体から光が発せられて、セサルをスキャンした後。

 スズキさんの顔がグルグル目になっていた。

「理解不能……身に着けてる物の文明レベルに対して、個人の知能指数がオーバーフロー……? 彼個人で五百年先の技術を持っている……? だが精神波が異常過ぎる……? 正常な数値を測れていない可能性あり?」

 ひたすらに困惑するスズキさん。

 どうやらセサルは機械でも測れない精神構造をしているようだ。

 奴が性格に目をつぶれば有能なのは分かり切っているのでどうでもよい。

「スズキさん、その変人のことは気にしないでくれ。それよりも俺は、あんたにもう一度会ったら言いたいことがあったんだ」
「……ほう? なんだね?」

 俺が真剣なのを感じてか、スズキさんも真面目な顔になる。

 このスズキさんに出会った時、俺には成し遂げられないことがあった。

 それは今でも明確な心残りになっている。どれだけ嘆いたことか。

 だが彼が復活した今ならば頼みこめるはずだ! 今、万感の思いを込めて!

「スズキさん。その筐体の脱衣麻雀ゲーの画像CGを頂けませんか!」
「は? いや脱衣麻雀ゲーの画像を、麻雀せずに見るだと……? ふざけるな! それは脱衣麻雀ゲーに対する冒涜だ!」
「じゃあ筐体の中身をくり抜くのは冒涜ではないんですか!?」
「うっ……だがダメだ! 脱衣麻雀から脱衣をとったら何も残らないだろうがっ!」

 どうやらスズキさんの説得は不可能なようだ……でも脱衣麻雀から脱衣とっても麻雀は残ると思う。

 仕方がない。脱衣麻雀ゲーは諦めよう。

 いつかカーマたちと本物をやれるように頑張ろう。

 俺は後方からの責めるような視線をごまかすように、改めて咳払いをすると。

「では本題だ。スズキさん、イレイザーについてなんだが」
「むっ? 以前も話したけどイレイザーなら心配は不要だよ。ジャイランドがいる以上、イレイザーが目覚めてもまた自動で封印されるはずだ。あれは私たちが恐ろしいほど頑張って作った最高傑作だよ。ジャイランドを破壊できるわけがないからね」

 自信満々に告げるスズキさん。

 うん、そうだね。ジャイランドが存在してたら、俺もあんたを蘇らせな……いや脱衣麻雀の件で直してたか。

「いやその……実はそのジャイランドなんですが……不慮の事故で死んだりとか……」
「はははっ。何を言っているのかな? そんなわけないだろう? ジャイランドを殺すなど、それこそ衛星兵器でも使わないと無理だよ。この世界にそんな技術はあるまいて。あれは無敵さ! 私たちの血と汗と涙と命の結晶!」

 爆笑するスズキさん。俺の話を冗談としか思えないようだ。

 いや本当に冗談ならよかったんだけどね……。

「仮にジャイランドを殺すなら……それこそ宇宙から大質量落とすとかじゃないと無理だよ。あの強靭な外皮を粉砕するなら、純粋な物理力で押しつぶすしかない。だがジャイランドは動くし、ピンポイントで狙い撃つなど不可能……どうしたんだい君たち?」

 気持ちよくしゃべっていたスズキさんは、俺達の暗い表情を見て問いかけてくる。

「ね、ねぇ……言ってあげてよ……」
「後になるほどつらくなる」
「同じ技術者として、傑作が潰れたのを伝えるのは辛い」

 カーマ、ラーク、セサルが俺に宣告するのを強要してくる。

 ……ものすごく気まずい。いやね、スズキさんがジャイランドの自慢してる時、物凄く気分よさそうなんだよな。

 僕らのスーパーヒーローが負けるわけない! みたいな感じで……。

 だが言うしかない。事実を言わないと……話が進まない!

「スズキさん、真面目に聞いて頂きたいのですが」
「なんだね?」
「ジャイランド……死にました」
「ははは。何を言ってるんだい? そんなわけが……」

 俺の宣告を笑い飛ばそうとしたスズキさん。だが俺達全員が神妙な面持ちをしていることに気づき、喋るのを途中でやめた。

 彼の笑顔が徐々に引きつり始める。だがやはり信じられないようで、渇いた笑い声を出すと。

「いや待て。君たちがジャイランドと何か他の物を勘違いしたんだよ。だってジャイランドを殺せるはずが……」
「あのこれ……」

 俺はスズキさんに対して、布でくるんだブツを見せた。

「むっ? なんだいこれは?」
「ジャイランドの爪の一部です……死骸の」

 その時、時間が停止した。

 スズキさんの顔の動きが完全に制止し、周囲が静まり返る。

 そして……。

「ビー、ガビー。理解不能理解不能。これは現実ではないと 判断。これより自爆を決行。この腐った世界にサヨナラ」
「セサル止めろ! ぶん殴ってでも止めろ!」
「下手したら壊れる可能性が」
「元々半分壊れてるようなもんだ!」



しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...