200 / 220
イレイザー最終決戦編
第188話 イレイザーの詳細
しおりを挟む「なんでジャイランドが殺せるんだい!? 意味が分からない! どうやったんだ!? あいつは魔法も効きづらいし物理攻撃にも耐性がある! そんじょそこらの兵器じゃ歯が立たないんだぞ!?」
「空から超大型艦船を落として潰しました」
「……は? 飛行機じゃなくて? いやでも空を飛べる質量の物が落ちて来ても、ジャイランドを殺すのは無理……」
「どう考えても飛べないの重量の超大型艦船を、ジャイランドの頭上から落として潰しました」
「???」
いかんスズキさんの筐体から煙が出始めた。
彼からすれば何を言っているのか分からないのだろう。
彼の混乱も当然だ。
【異世界ショップ】の力を知らなければ、実際理解不能なことを行ったからな。
大型タンカーを空から落とすなんて夢物語にもほどがある。
スズキさんはぶっ壊れたように、くるくるとその場を回転し続けた後。
「な、なにを言ってるのかわからない……だがその爪は間違いなくジャイランドの物……本当に殺してしまったのか……」
「あ、はい……なんかすみません」
「……この世界の破壊者め! 君のせいでこの世界の人類が滅ぶんだぞ!? なんてことをしてくれたんだ!」
顔真っ赤になって怒るスズキさん。
更に怒り心頭な彼は俺に暴言を吐き続ける。
「なんであんな可愛いジャイランドを殺すことができるんだ!? この鬼! 悪魔! インキンタムシの水虫マシマシ!」
……流石に腹立ってきた。
そもそも俺だって好きでジャイランドと戦ったんじゃないぞ!
「……はぁ!? そもそもジャイランドが目覚めてこちらを襲って来たんだ! どう考えても正当防衛だろうが! おたくがちゃんとイレイザーしか襲わないようにしておけば!」
「何を言う! 亜空間に繋げる能力を持った者が近くに来ない限り、ジャイランドは絶対に目覚めない!」
「イレイザー以外にもその力を持つ奴が誕生することを想定しろ!」
「できるか!」
スズキさんとの醜い争いはなおも繰り広げられる。
俺は(そんなに)悪くない!
ジャイランドを殺したのだって、襲い掛かってきてどうしようもなかったからだ!
彼の言い分に従ってジャイランドを殺さなかったら、俺が殺されていたってことだぞ!?
「……二人とも落ち着くのサッ! 殺ってしまったものは仕方ない。それよりも肝心なのは未来サッ!」
「「……」」
俺とスズキさんの間に入って、前髪を手でかきあげるセサル。
……せ、セサルにまともな注意を受けるとは……っ!
スズキさんもセサルの変人オーラに圧倒されたのか、少し落ち着いたようだ。
「ふぅ……本当にジャイランドを殺してしまったんだね?」
「はい。それはもうペシャンコに」
「……そうなるとイレイザーを封印するのはもう無理だ。ジャイランドがいれば、イレイザーは問題なかったんだよ」
「なんで問題なかったのか具体的に教えて欲しいサッ!」
セサルがスズキさんに問う。
確かにジャイランドがいればイレイザーは大丈夫、とは聞いたがそれ以外はあまり知らないな。
それに今、封印って言ったな?
やはりジャイランドはイレイザーを殺すのではなくて、封印するってことか。
殺せるなら岩にイレイザーが封印されてなどいないだろうし。
「わかった。ジャイランドがいないのだし、本来持っていた役割を説明しよう。それとイレイザーの情報も含めてね」
スズキさんはつらつらと説明を話し始めた。
「まずイレイザーについて説明しよう。奴は魔法生命体、魔力が集まって固体化して人型になった存在だよ」
魔力が集まって固体化した魔法生命体……なんか強そう。人型なのは初めて聞いた気がするな。
「そして奴は手で触れた人間を亜空間へと飛ばす。ここまでなら何とかなりそうなんだが……恐るべき進化速度を誇るんだ」
「恐るべき進化速度?」
「そうだ。私たちは最初、イレイザーを魔法攻撃で倒そうとしていた。最初は効果的なダメージを与えていたのだが……やつは魔法の対策として魔法に対する障壁を身体に纏った。その障壁のせいで魔法は効き目が薄い。全く効かないわけではないようだが」
スズキさんは悔しそうに声を絞り出した。
魔法が効かないのは知っていたが、最初から持ち合わせていた能力ではないのか。
「他にもだ。イレイザーは元々、動きが凄く遅かったんだ。でも徐々に動きがよくなり我々の魔法を回避し始めたり……私たちの攻撃に合わせて、身体を進化させて対策を取って来る」
……それが本当ならヤバいぞ。
有効だった攻撃がいきなり無効化される……そんなことされたらどうしようもない。
ゲームで同じ攻撃続けるとダメージ無効みたいなボスいるけど……現実でされたらクソゲー以外の何者でもない。
「そして他には……イレイザーは岩で封印されているが、あれを壊しても岩の場所で蘇るとは限らない。奴は近場の人間の多い場所で復活する。そして人間の多い場所に向かって行く習性がある」
「……えっ」
今の言葉は聞き捨てならない。
もしイレイザーが人間の多い場所で復活するなら……人的被害を出さずに倒すのは不可能ではないか。
明らかに図体のでかい巨人相手だ。怪獣相手に戦うと考えれば、近くに民間人がいたら……。
「な、何で人間の近くに……」
「奴にとって人間は亜空間に送る対象であると同時に燃料なんだよ。正確に言うと近くにいる人間の思念を吸収しているようだが……なので最初から動けないと困るので、人間の近くに移動してから固体化するんだ。人間の近くにいれば永遠に動ける。まったくよくできた生物だよ」
スズキさんは忌々しそうな声を出す。
「人間の思念を吸収なぁ……吸収された人間はどうなるんだ? 抜け殻にでなるのか?」
「性格が悪くなり、自分勝手なカス人間になる」
なるほど。完全にレザイ領民だな! あいつら思念吸われて搾りカスになってたんだな!
……イレイザーの真相が明らかになってきたのは嬉しい。
だがその情報が基本的に悪すぎる。全く事態が好転していない。
「……スズキさん。あなた方はどうやってイレイザーを封印したんだい? ジャイランドが活躍したのかい?」
セサルが真面目な顔でスズキさんに問いかけた。
確かにそうだ。今までの話を聞く限り、イレイザーは無敵のような怪物ではないか。
その問いに対してスズキさんは淡々と答えてくる。
「ジャイランドが作られたのはイレイザー封印後だ。我々が奴を封じたのは動力切れを起こさせて、動けなくしてから魔法で封印したんだ。奴はあくまで魔法生命体、動力が尽きればまともに動けない。力も発揮できなくなる。故に奴の周囲から戦闘要員以外の人間を全て取り除いた」
「なるほど……そうか。近くの人を全員避難させて、時間を稼いだのか」
動力切れを狙えるならば勝てそうだ。
イレイザーの近くにいる人間を全員避難させて、徹底的に攻撃を続けて足を止めれば……。
理屈的には単純だが言うほど簡単ではないなこれ?
魔法の効果がないなら戦車や飛行機でひたすら爆撃して……いけるか?
ただ厄介なのは復活する場所が分からないところか。
岩を破壊した地点から奴が蘇るなら、そこに完全包囲網を作るのだが……。
イレイザーの詳しい情報は得たが、色々と考えることも増えたな……。
まあでも勝ち方は見えたし後はどこで戦うかを決めれば……決めれば……。
「……これいったいどこでイレイザーの封印解けばいいんだ? 人が大勢いる場所で封印解く必要があるし、そこで大暴れされかねないわけで」
「……かなり厄介な問題だね」
ぜ、前途多難だ……とりあえずイレイザーの情報が増えたので、ラスペラス国と話し合わないと……。
「ちなみにジャイランドでどうイレイザーを押さえるつもりだったんだい?」
「イレイザーを背負い投げとかでぶっ飛ばして、人のいないところに運んでから内蔵封印術をね」
「なんだその肉体的ゴリ押し……」
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる