【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

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イレイザー最終決戦編

閑話 レザイ領民鎮圧

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「これより暴徒と化したレザイ領民を鎮圧する! 見せしめとして捕縛した者で特に酷い奴の財産を全没収するぞ!」

 俺はフォルン領軍といつもの主要メンバーを連れて、レザイ領を封じていたゴミクズの壁のそばにやってきていた。

 イレイザー討伐の報酬に不満を抱いて、一揆を起こし始めた奴らを鎮圧するためだ。

 でもレザイ領は壁で囲まれているので放っておいても……そう思っていた時期が俺にもありました。

「まさか……壁を壊せる魔法使いが出てくるとはっ……!」
「執念って恐ろしいよね」
「念だけで力を得られるなんて魔法使いじゃなくて超能力者だろ……念力じゃん」

 レザイ領民に突然変異が現れて、うわきつBBAの作った壁に穴を開けてしまったのだ。

 その穴から漏れ出るようにクズがどこどこと……そのせいで討伐、じゃなくて鎮圧を行わなければならなくなった。

 いっそ討伐した方が今後平和になりそうなのだが、流石にするわけにもいかないのがつらいところだ。

「彼らはイレイザーの影響を色濃く受けていたサッ。その中でも特に選ばれし者ならば、親元のイレイザーが死んで何かに目覚めてもおかしくはないサッ」

 セサルが恐ろしいことを口にした。

 いやイレイザー死んだんだしむしろクズでなくなれよ……なんでパワーアップするんだよ……。

「やめろよ。クズの中のクズであるあいつらの中から選ばれたクズとか想像したくないんだけど。どれだけ選りすぐりのクズなんだよそれは」
「伝説の職人の至高の作品、美術館に飾られるくらいかな?」
「そんな美術館行きたくない」

 そんなことを考えていると壁に穴を開けられた場所についた。

 その穴にはレザイ領民が陣取っていて、修理など絶対させないと武器を構えている。

「来たなフォルン領主! 我らの要望を聞いてもらおうか!」

 クズAが何かを叫んでいる。

 正直全くもって聞きたくないのだが……ここで耳にいれないと話が進まない。

「さっさと言え……」
「いいだろう! 俺はかの世界を破壊する悪魔を倒した一員! ならばそれに応じた報酬が必要だ! 金貨五枚では安すぎる! 金貨千枚だ! 命をかけて世界を救ったのだから安いものだろう!」

 そう、俺はレザイ領民に奮発して金貨五枚を出したのだ。

 日本円に換算すると五十万~百万円くらいだろうか。

 戦闘に費やした時間は三日くらいなこと考えると破格も破格だろ。

 しかも言っておくがレザイ領の天文学的な借金も何とかした上でだぞ!?

 実質的には一人当たりに金貨、十枚以上払ってるんだぞ!

「次は俺だ! 俺もかのイレイザーを倒した一員! 金貨千枚だ!」
「次は俺! 世界を救ったのだから金貨千枚だ!」

 レザイ領民どもは口々に戯言を口にする。

 ちなみにレザイ領民は八千人くらいはいたはずなので、こいつらの要求通りに払ったら金貨八百万枚になる。

 バカかな? 国家予算どころか世界予算に近いのでは?

 こいつらのロジックは自分達は世界を救った勇者。ならばそれ相応の額がなどと言いたいのだろう。

 まだこいつらが勇者として冒険して、魔王を倒したとかならわかる。

 だが自動車専用船の中で吐いてただけだろうがお前ら。

「よーし、要望は却下だ。こいつら全員気絶させて檻の中に戻すぞ」
「結局そうなるんだね……」
「知ってた」
「承知しました」

 カーマとラークとエフィルンが前に出る。

 レザイ領民相手にフォルン領兵を使うのは愚策。

 奴らは鎧をはぎ取ったりして金になりそうな物は奪うからだ。

 盗賊キャラってゲームでもウザいので魔法で遠距離から叩くに限る。

「チッ! そううまくいくと思うなよ! やっちゃってください、先生!」
「仕方ねぇなぁ!」

 レザイ領民の群れをかき分けて、ひとりの男が姿を現した。

 神官のようなローブを着ていて錫杖まで持っている。

 そいつは俺に対して杖を向けてきた。

「アトラス様、ここは俺らの要求も考慮すべきでは? 交渉ごとは互いの要求の中間点を取るべきです」

 こいつ本当にレザイ領民か? 溢れ出るクズオーラが感じ取れないんだが……。

 言っていることはそこまで間違っていない。

 ただしそれはまともに交渉が通じる相手に限る。

「魔力は感じないね」

 カーマが俺に教えてくれた。なら魔法使いでもないのか。

「それだとひとりにつき金貨五百枚になるんだが?」
「互いの要求に開きがあるなら、やはり中間をとるべきでしょう! ちなみに俺は金貨二千枚を要求!」

 ダメだ、やはり話が通じない!

 あれだな、進化したレザイ領民というのは本当みたいだ。

 とうとう一見に対しての常人擬態能力を身に着けやがった。

「もうやっちゃってくれ」
「あ、うん……」

 呆れながらカーマたちが魔法の詠唱を行い、炎の矢や氷の剣が男に向かって行く。

 すると男は杖を勢いよく地面に叩きつけた後。

「金よ、銀よ、銅よ。我に力を与えたまえ! 覇ぁっ!」

 そう勢いよく叫ぶと同時に、カーマたちの魔法がかき消えた。

「「……え?」」

 驚きの声をあげるカーマとラーク。

 それに対して男は更に杖をカーマたちのほうに向けると。

「まだですよ! はぁっ!」

 今度はカーマたちの服の一部が、まるで剣で斬られたかのように破れる。

 だが真に残念なことにお腹やスカートの膝部分である。もう少し上を狙えよ……。

「えっえっ?」
「ふっふっふ。私は選ばれたのです! レザイ領民を代表して戦う! 今のは警告です、次は大怪我させますよ」
「ざまぁ見やがれ!」
「さっさと金貨千枚払えや!」

 勝ち誇った顔をしている男とレザイ領民たち。

 なるほど……本当に超能力を身に着けたのか……サイコキネシスとかそんなやつだろこれ。

 とうとうレザイ領民のクズパワーが物理的になってしまったようだ……かろうじてこの世界のクズパワーは弟の国を揺るがす煽動力とかで収まってたのに。

 この魔法の世界で念力とは厄介な……仕方がない。

 少し痛い出費だがカーマたちがケガしても困るし、切り札を使わせてもらおう。

 対レザイ領民の切り札なのでこいつ相手でも通用するだろう。

「お前の力がすごいのはわかった」
「ふふふ。さあ金を払いなさい! さもなくばお前も切り裂くぞ!」

 男は俺に杖を向けた。確かにこいつは厄介だ。

 だがこいつはレザイ領民である。例え腐っても超能力を得ても……レザイ領民なのである。

「いいだろう、金貨二千枚払ってやる」
「しゃあっ!」
「これから毎日遊び放題だ!」
「女だ、女! それにギャンブル!」

 俺の言葉に喜び出すクズども。だが……そんなうまい話は存在しない!

「ただし条件がある。その超能力でこれからずっと、レザイ領民を脱走させるな! その報酬に金貨二千枚だ!」
「「「はぁ!? ふざけんな!」」」

 ふざけてなどいない。

 こいつら全員に金貨千枚払うほうがふざけている。

 そして……肝心の男はニヤリと下卑た笑みを浮かべると。

「全員戻りやがれぇ! 覇ぁ!」

 何の気がねもなく元仲間たちをぶっ飛ばし、見事に全員を壁の中へと押し戻した。

「アトラス様、今後は私が責任をもってこのクズどもを管理いたします。金貨二千枚お願いします」

 そう俺に頭を下げて壁の中に戻っていく男。

 結局どれだけ力を得てもレザイ領民でクズ、仲間がどうなろうが自分さえよければいいのだ。

「ひ、ひどい……」
「いいんだよ。元々ここは蟲毒なんだから。互いに食い合って勝手にやっててくれ」

 こうしてレザイ領民脱走事件は幕を閉じた。

 だがこの時の俺は知らなかった。

 これは東レード山林地帯の再来……蟲毒によってドラゴンすら最弱にされる環境を作り出すことと同等の行いだったのだと……。

 金を求めるクズどもの怨念が強化され続けた結果……。

 これから何度も超能力バトルが勃発されるのだがそれはまた別の話。


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