借金まみれの貴族ですが魔物を使ってチート内政します!

クロン

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逃げ延びた先のレーム村

第5話 レイスへの報酬は身体!?

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「心優しきバルガス卿が我らのために兵を下げてくれた! これは私の真摯な説得とバルガス卿の慈悲だ!」

 交渉から帰って来た村長がそんなことを喧伝している。

 いやあり得ないだろ。あの状況で説得しても普通はバルガスが兵を退くわけがない。

 ペガサスやゴーレムの存在を教えて兵を下げさせるにしても、初対面の村長の言葉をバルガスが信じるとは思えない。

 ましてやペガサスやゴーレムを使役できた人間は、遠い過去の伝説までさかのぼるのだから。

 村長とバルガスの間に元からの繋がりがなければ、言葉だけで説得など不可能だ。

 考えてみて欲しい。明らかに自分より弱い戦力の使者が、こちらには秘密兵器がありますなどと脅してくる。

 誰が信じると言うのだろうか。バルガスからすれば兵を下げさせる嘘としか思えないだろう。

 実際にゴーレムやペガサスの実物を見せてもいないのだから。

 それを信じるということは村長はバルガスと繋がっている。元から信頼関係があったからこそその言葉を信じたのだ。

「逆にライジュールは、自分の安全のためだけに我らを戦わせようとしたのだ! 奴がその身を差し出せば終わるというのに!」

 更に村長が村人たちに向けて叫んでいる。

 戦わなければ全て平穏無事に終わるなんてまやかしだ。占領された領地の民はかなり悲惨な目にあう。

 賠償金も払わされるし重税や圧政も確実。戦死じゃなくて餓死で殺される。

 他にも敵兵による虐殺や強奪なども起きる。

 戦争の敗者は何も言う権利がない。だから領民たちは戦うのだ、占領されて植民地にされないために。

 ……その一方で勝ち目がゼロならば降伏も選択肢かもしれないが。

 逆らって負けるよりは最初から降伏したほうが、いくらかマシな待遇にしてもらえる可能性はある。

 だがうちにはゴーレムが二体もいて、はっきり言って負ける要素がない。

 負けない戦いで降伏する意味はないわけで……つまりこの村長はダメだな。完全にバルガスの駒だ。

 ……戦争は戦う前から始まっている。バルガスも事前に村長を買収して、工作をしていたということだ。

 そして俺の親父はそれを見抜けなかった。その尻ぬぐいが俺に回っている。

「しかしゴーレムがいるなら負けないんじゃないか?」
「俺達にはペガサス様の祝福があるし戦っても勝てるのでは」

 村人たちも村長の言葉に違和感を持っているようだ。

 彼らはいぶかし気な顔をしていた。村人たちもバカではないので、こんな稚拙な説得では無意味だろう。

 老練な村長にしては雑な仕掛けだ……おそらくバルガスから急ぎで村を俺から寝返らせるよう命じられてるのだろう。

 このまま長期戦になれば国が介入してくる可能性もある。

 それで裁判にでもなればバルガスは終わりだ。

 布告もなく攻めてきた上、侵攻に正当な理由もない奴に勝ち目はない。

「諸君! 俺はこの地の領主としてここを守る! ゴーレムにペガサスがいれば、バルガスなど恐れるに足らない! むしろ戦わずに負けを認めるなど愚か者にもほどがある!」
「そうだそうだ! ひっこめ村長!」
「耄碌ジジイめ!」

 俺の煽動に村人たちが追随し、村長は苦虫をかみつぶしたような顔をしている。

 もう村を寝返らせるなど不可能だ。民意は完全に俺についた。

「ぐっ……くそっ!」

 村長はこれ以上立場が悪くなるのを避けるためか、尻尾を撒いて逃げて行った。

 残念だ、このまま村長を処刑する流れに持っていきたかったのに。

 やはり老練なだけあって一筋縄で縛り首は無理か。

「…………」

 全てが終わったのを見計らったように、俺の服の裾をサーニャが引っ張って来た。

 心配そうな顔で俺を見つめてくれて少し癒される。

 やはり目にいれるのは美少女だ。あんな色んな意味で死ぬ間際のジジイより。

 …………サーニャも喋れるようにしてやりたいなぁ。事が片付いたらペガサスに治せないか聞いてみよう。

 俺はサーニャの手を引っ張って、掘っ立て小屋に向かった。

 周囲に誰もいないことを確認してから、外をゴーレムに見張らせて中に入る。

「さてサーニャ。ここから村長が何を狙ってくるかわかるか?」
「…………?」
 
 サーニャはわからないと首をかしげた。

 彼女は優しいからな。腐った大人のクソみたいな権謀は考えつかない。

 だが俺は残念ながらあのジジイの次の手が簡単に読める。

「次にあいつがやってくるのは俺の暗殺……もしくは捕縛だ。俺さえいなくなれば全部終わるんだから」
「…………!」

 サーニャは大きく目を見開いた後、俺の腕にぷるぷると震えながらしがみついてくる。

 心配してくれているのだろう。だがそれは無用だ。

 俺は最適なボディーガードを召喚するのだから。

 いつものように地面に手をかざして光の魔法陣が発生させる。

「古の契約を遵守せよ。我が血と言葉を以て応ぜよ。求めるは魍魎の魂、安らぎを拒む死霊……」

 魔法陣が輝いた後、そこには宙に浮かぶ透き通った骸骨がいた。

 これがレイス。死んで成仏できなかった魂――死霊と呼ばれる魔物だ。

 こいつは日の光が苦手という弱点こそあるが、睡眠も不要で姿を消すことも可能。

 なので夜に寝込みを襲われないようにレイスに護衛を任せたい。

 昼はゴーレムを傍に置いておく予定だし、いざとなれば魔物をその場で召喚すればよい。

「そういうわけでレイス。これから護衛を頼んだぞ」
「ケケケ」

 レイスは歯をガチガチと鳴らして返事をしてくる。

 ……幽霊系の魔物って怖いなー。でも夜でも護衛は必要だし背に腹は代えられない。
 
 それにレイスは実体化さえしなければ昼でも追跡任務などはこなせる。

 うまく利用して村長を追い落としてやろうと思っている。

「…………」

 そんなことを考えているとサーニャが俺の顔を覗きこんできた。

 またアイコンタクトか……『レイスは何を食べるの?』か。

 俺が魔物を呼んだら面倒を見る義務が生まれるので、レイスが何を糧とするか心配しているのだろう。

「いい質問だ。レイスは霊体だから食べ物はいらない。じゃあ何を対価にするのかというと……人間の身体だ」
「!?」
「しばらくは俺の身体を報酬にしようと思う」
「!?!?!?」

 サーニャは俺の肩を両手で揺すって来る。

 かわいいけど揺れるからやめて欲しい。俺はわりと貧弱なのだ。

「落ち着け。レイスは人間の身体に憑依して栄養を吸い取る。だから毎日五分だけ俺の身体に憑依して渡すんだ。短い時間だから身体に不調も起こらない」

 そう説明するとサーニャは疑い深い顔をしている。いや若干ドン引きしてる感じもある。

 なので今日の晩まで待って、離れ小屋の中で実践を見せることなった。

「レイス、俺の身体に憑依しろ。ただし五分だけな!」

 そう告げるとレイスが俺の身体に入り込んで意識が……。





------------------------------------



 目を開くとサーニャが真っ赤な顔をして、俺から顔をそむけていた。

「……サーニャ?」
「…………」
 
 なおもサーニャはこちらを見てくれない。

 おかしいなと思いながら自分の身体を見ると……裸になっている。そこらには服が脱ぎ散らかされていた。

 いやそればかりか…………これ以上は想像にお任せしたい。

 レイスは今後面倒な注文をしてくる。

 やれ催した状態で憑依させろとか、憑依した状態で飯を食わせろとか……。

 霊体ではできない生理現象にはまってしまったようだ……。
 
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