借金まみれの貴族ですが魔物を使ってチート内政します!

クロン

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都市アルダを復活せよ!

第15話 天才面接官サトリ

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 レーム村の住人に行わせていたペガサスの行商は、かなりの成果をおさめていた。

 蘇ったとはいえ真っ赤な気持ち悪い死の港だった場所からの魚なので、売れないのではと思っていたがそんなことはないらしい。

 大抵の奴は真っ赤だった海も噂で聞いただけなので、蘇ってもふーんとしか思わなかったと。

 そして内陸地で魚など普通にはお目にかかれないので飛ぶように売れると。

 毎日ペガサス七頭が金貨七枚を稼いでくるのだ。もうガッポガッポ過ぎて笑いが止まらない。

 そしてこの商売を見た目ざとい商人たちが、俺へのコンタクトを求めてきた。

 俺はそれを待っていた。アルダ家の御用商人が欲しいのだ。

 俺達はペガサスで儲けているがあくまで商売の素人だ。もしプロの商人ならばもっと儲けられてると思う。

 それに都市アルダが復興するには船による交易なども不可欠。

 なのでその商人たちをこの街に連れてくるように命じている。

 俺は自分の屋敷の応接間でそれを待っていた。

 ちなみにこの屋敷は元々うちの家のものだ。都市アルダが隆盛を誇った時に建てたからムダにデカい。

「ねえねえ。商人さんと上手に交渉できるの?」
「普通にやったら難しいだろうな。相手は海千山千のプロ、対してこちらは素人だ。なので……魔物を使う」
「いつものやつ」

 困った時は魔物。これは俺の家訓である。

 アルダ家の家訓ではないのかって? 俺以外にまともに魔物召喚できるやついないだろうし……この家訓は俺一代で終了だろう。

「古の契約を遵守せよ。我が血と言葉を以て応ぜよ。求めるは心を読む狒々、意識の奥を暴く獣……」

 俺の魔法に答えて魔法陣が床に出現し、そこから人間と同じ身体の大きな猿が現れた。

 猿人と例えるとしっくりくるだろうか、そいつは二足歩行で立ち上がると俺の方を見続ける。

『サルヒトではない。俺、サトリ』

 脳内にそんな抑揚のない声が響く。そう俺が召喚したのは覚《サトリ》という妖怪だ。

 人の心を読んで悪さをしたりしなかったりする奴だ。

「おさるさん?」
『サルではない、我はサトリ』
「サトリさん?」
『そう、私はサトリ』
「サトリさん!」
『俺サトリ』

 サトリよ、すでに一人称がブレブレだぞ。しかも会話になってるか怪しいぞ。

 あれだな、サトリは相手の心理を暴く。だがサーニャは裏表なく言葉を発するので、自分自身と対話みたいになってると。

「よし、サトリ! これから何人か商人が来るから、面接を手伝って欲しい! お前の力で優秀かつ信用のできる商人を探したい!」
『ついでに雇わなくても弱みのある奴は掴んで利用したい。サトリの力なら汚職とかも暴ける』
「ライ……」
「……俺の本音は暴かなくてよろしい」

 サーニャの俺を見る目が少し変わってしまったではないか。

 ま、まあいい。こいつは同席させておけば勝手に相手の思惑を喋るだろ。

「ねえライ、おさるさんを面接に連れて変におもわれない?」
「うちは魔物の街なんでと言っておけば何とかなるだろ」
「なるかなぁ……」

 椅子を用意すると、サトリは体育座りでちょこんと座りだした。

 そんなわけでしばらく待っていると、ペガサスが一人目の商人を連れて来た。

 そいつを応接間に招くと、部屋に入ってきて開口一番。

「サルゥ!?」
『猿がなんでこんなところにいるんだよ!? ここの町長馬鹿だろ!?』
「へっ!? なんだこれ!? 考えてることが頭に響いて……あっ、いえ。そのこれは言葉のアヤと言いますか……」

 商人は必死に体裁を取り繕うとするがもう遅い。

 誰が馬鹿だ、雇い主相手になんという暴言! いや思念!

 うちが魔物の街ってことは、ここに来るまでにレーム村の者が説明しているはず!

 ならば少し考えれば魔物が同席する可能性もあると思いつくはず!

 その発想が出ずに馬鹿と言う時点で機転がきかないのでダメだ。

 俺が彼らの立場なら間違いなく馬鹿だろって言うが、優秀な商人ならちゃんと可能性を考慮しておかないと。

 面接官にサルの魔物がいるかもしれないって。
 
「帰ってどうぞ」
「……はい」

 こうして一人目の商人は瞬殺した。

 しばらく待っていると二人目の商人がやってきて、部屋にノックをして入って来た。

「さ、サル!? なんでこんなところに!?」
『サルがこんなところになんで?』

 とりあえずセーフだな。出来ればサルじゃなくて魔物だと予想して欲しかったが。

「気にしないでくれ。まあ座ってくれ、面談を行おう」

 そうして面談が開始された。商人がどこの街出身だとかうんぬんかんぬん聞いた後。

「ところで魔物についてどう思う?」
「ペガサス様は実に美しく素晴らしいです。あの方を利用すれば、いくらでもお金を儲けることも可能でしょう」
『魔物なんて家畜と同じだろ。でも利用価値があるからとりあえずおべっか言っておくか。でもペガサスだって馬だからもっと鞭で叩くべきだろ』

 サトリによってこの場の空気が完全に凍り付いた。

「い、いやだなぁ。こんなこと思ってませんよぉ。たかがサルの言うこと信じてもらったら困ります」

 商人は必死に愛想笑いを浮かべるが、仮にサトリが間違っていても最後の言葉が論外だ。

「なるほど、サトリをサルと……お前は二度とこの街の敷居をまたぐな! デュラハン、つまみ出せ!」
「ひ、ひいっ!? 許してぇ!?」

 死ぬほど無礼な商人は、デュラハンに服の襟首掴まれて追い出されていった。

「全く……魔物を嫌いな人間が、魔物の街の御用商人なんてなれるわけないだろ!」
『必ずどこかで魔物に不敬な態度をとる。この街で商売する資格なしだ』

 サトリは俺の思ってることを見事に言葉にしてくれる。

 なのでサトリが間違っていることもない。

 そうして三人目がやって来て、同じようにサルに驚いたが問題なかった。

 そして魔物嫌いでもなさそうなのでクリア。面接をしてみても性格などに問題はない、後は最終問題さえOKなら御用商人にできる。

「是非、私をこの都市の御用商人にしてください! 必ずかつての都市アルダの栄光を取り戻して見せます!」
「実に心強い。では最後に尋ねたいことがあるのだが。実はうちでは少しだけ変わった政令を発布していてね」
「政令ですか。街ごとにルールはありますからね。私も変わったルールの街を知ってますよ。焼いた肉を売ったらダメとか、朝方は馬車使用禁止とか。ここではどんな政令を?」
「人類蔑みの令」

 俺がそう呟いた瞬間、商人の顔が固まった。

 だが何とか持ち直したようで、必死に張り付いた笑みを浮かべる。

「そ、それは随分と個性的な令で……」
『魔物のほうが人間より上ってことか!? ペガサス様はともかく他の魔物も!? おかしくないか!?』

 ……残念だ。人類蔑みの令を心の底から許容してくれれば、こいつを御用商人にしてもよかったのに。

「あなたは御用商人にはできませんが、うちの街で商売しませんか? これからうちは発展しますので儲かると思います」
「ははっ……ありがとうございます。か、考えさせてもらいますね」

 そうして部屋から出ていく商人。

 本当に残念だ。好青年だったし後は最後の問題さえOKなら……。

 そんなことを考えていると、俺の横に控えていたサーニャが口を開く。

「人類蔑みの令をドン引きしない人っているの……?」
「そんな人物でもないと、うちの御用商人は務まらない。うちの街にやって来て商売する者じゃないんだ、うちの代表になるんだから魔物に心から忠誠を誓わないと……」
 
 そうして更に三人がやって来たが……みんな人類蔑みの令でアウトだった。

 俺は悲しみのあまり机に突っ伏してしまう。

「くっ! なんでみんな最終問題をクリアできないんだ!? あとこれだけなのに! 魔物に魂を売り渡すだけで解決なのにっ!」
「それができる人、そうそういないと思うなぁ」
『人類蔑みの令のインパクトが強すぎるなぁ』

 サーニャから率直に答えが返ってくる。

 とりあえず今日はもう無理だろう。明日は御用商人決まるといいなぁ……。

「あのー……ライジュール様、商人を連れて来たんですけど」

 部屋の外から男の声が聞こえる。そういえば今まで来た商人は六人、対してペガサスは七頭。

 もう一人来てもおかしくないか……「入ってもらえ」と伝えるとゆっくりと扉が開かれた。

「ふっふっふ。どーも私、オベンドーという商人でさね。どちらのお方がアルダ様でございますかね?」

 青髭生やしたうさんくさい男が、揉み手しながら俺とサトリを見てそう告げてくる。

 ……この男、俺とサトリを見比べてどちらが街長か迷う……だと……?

 もし本心からそう思っているならヤバイ…………うちの御用商人として申し分ないぞ!

『普通に考えれば人間が街長ね。でもここは亜人の街ね、魔物が街長やってもおかしくないね? むしろ人間に魔物が化けてるとかね? アッハッハ』

 サトリの言葉が俺の考えに太鼓判を押してくれた。

 こいつは俺の求めていた人材……魔物を差別しない男だっ!

 そうして座らせて面接を開始するのだが、アルダ家の御用商人になりたいという気持ちがビシビシ伝わってくる。

「ペガサス様、うまく使えば儲かるよね。そのためなら蹄でも舐めるよね」
『人の足も魔物の足も変わらないね。儲けさせてくれるなら素晴らしいお客様。いらないお客は人でも魔物でもポイね』
「素晴らしい考えだ! 君という人材を探していた!」

 この男、まさにうちで御用商人をやるために生まれてきた男だ!

 後は最終試練だけだ! 頼む、お前ならばクリアできるはずだっ!

「実に心強い。では最後に尋ねたいことがあるのだが。実はうちでは少しだけ変わった政令を発布していてね」
「政令? 魔物の街の政令ならだいぶ変わっていそうね。どんなのね?」
「人類蔑みの令」

 オベンドーはしばらく考えた後、ポンと手を叩くと。

「なるほど。実に合理的な政策ね。魔物の街ならではで面白いね」
『魔物のほうが人よりも儲けそうだね、なら養ってくれる者に頭を下げるのは当たり前ね』

 サトリがそう告げてきた瞬間、俺はオベンドーの両手を握っていた

「…………っ、合格! うちの御用商人は君だっ!」
「ありがとうね、頑張るね」

 こうしてうちの御用商人が決まった。

 優秀かどうかはわからないが、この場合は能力よりも魔物への心構えを重視だ。

 はっきり言ってうちの魔物を使えば多少無能でも大儲けできる。

 なら魔物とトラブルを起こさずに円滑に商売を行える人間を雇うべきだ。

 ちなみにアウトだった商人のうち、二人は弱みを握ったのでそれとなく利用しようと思う。
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