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とうとう来襲!? 教会(ヤクザ)の元締め!

第24話 潜入捜査に吸血鬼を

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 無事に都市アルダはアダムス教のお墨付きをもらった。

 もう怖い者はいない。錦の旗を得たに等しいのだから。

 アダムス教はこの大陸において最大権力と言っても過言ではない。

 よっぽど悪逆非道な策でも行わない限りは大抵のことは認められるぞ!

 さっそく俺を狙っている公爵に対して、色々と策を行っていくことにした。

 そんなわけで俺は……食堂で必死に肉を食べまくっていた。

「サーニャ、もっと肉を! いやもういっそ魔女に肉を菓子に変換してもらってくれ! そのほうが食いやすいし、体内で消化して栄養になる時に肉であればいい!」
「あまりからだによくないような……」
「大丈夫だ! サプリメントみたいなものだ!」
「サプリメント……?」

 1kgの肉を一枚のクッキーにすれば、圧縮率的にはサプリみたいなもんだろ!

 そんなことよりももっと血肉が必要なのだ。これから体力勝負になっていくのだから!

「それになんでいっぱい食べてるの? ふとるよ?」
「次に召喚する魔物はな! 対価を払うのが大変なんだよ! この身体だと下手したら倒れかねん!」
「ええ……」

 結局魔女を呼んで肉をクッキーなどにしてもらってぱぱっと平らげた。

 たぶん二日分くらいカロリーをとったし、これで栄養補給は万全だろう。

「よし! 対公爵のために魔物を召喚するぞ!」
「いつもの」
「古の契約を遵守せよ。我が血と言葉を以て応ぜよ。求めるは闇の公爵、血を欲する吸血鬼……」

 目の前に魔法陣が発生。そこから豪華なコートを来た色白の青年が現れた。

 その者は犬歯をニヤリと輝かせると俺に恭しく礼をした。

「吾輩はヴァンパイア。さて我が主よ、そなたは吾輩に何を求める?」

 ヴァンパイア、それは知らない者のほうが少ない存在だろう。

 人間の知能と強靭な肉体を合わせ持つ上に変身能力まである怪物。

 さらには特定の方法をとらなければ殺すことは不可能、とチートじみた力を持つ。

 ……まあその特定の方法が広まり過ぎて、なんか案外殺せちゃいそうなんですけどね。

 彼は銀の武器や聖なる物、そしてニンニクなどに弱いのである。

 弱点がそこらの家庭にありそうなものなのが、吸血鬼のイメージを少し弱くしてるよな。

 もっとこうなんかドラゴンフルーツやドドリアとか、手に入れづらいものが弱点ならよかったのに。

「グモブという公爵の脅せそうな材料を探って欲しい。場所などは教えるから屋敷に侵入するとかで」
「かまわない。だがこの吾輩に物を頼むならば対価をよこしてもらおうか、その血を!」
「ひうっ……」

 ヴァンパイアは薄気味悪い笑みを浮かべ、サーニャが少し怖がってしまった。

 俺はすぐに衣服の胸倉をつかんでひらき、自分の首筋をむき出しにする。

「……むぅ、少しくらい葛藤や恐怖は抱かないものかね?」
「すでにレイスに身体を差し出している。それに比べれば何されるか分かるから幾分マシだ!」

 まじでレイスは何して来るか分からんからな!?

 あいつにこないだも五分間身体渡してさ、目覚めたら何してたと思う?

 サーニャに襲い掛かってたんだぞ!? 彼女の服がはだけていて胸の下着が少し見えていたからな。

 あれからしばらく気まずかった……俺は無罪なのに。

「……それは吾輩でも少し引くぞ」
「いやひかないで……それで血はいるのか? いらんのか?」
「無論いただくとも。極上な血のにおいがしているからな」

 ヴァンパイアは俺の首筋に噛みついた。

 痛……くはない。むしろ身体が昂ってくる感じがする。

「実に美味だ。そなたの血液は優秀だ、惜しむべくは処女でないことだが」
「男だから……」

 すごくじゅるじゅると血が吸われていく。

 あー……なんか身体がだるくなってきた。これあれだ、完全に献血とかと同じ感じ。

 更にしばらく吸われた後、ようやくヴァンパイアは俺の首から口を離した。

「よい血であった。ところでそこの処女の血は……」
「ひうっ!?」
「やらんぞ」

 ヴァンパイアがサーニャに狙いを定めたのでくぎを刺しておく。

 こいつも処女厨か……まーたサキュバスと仲が悪そうだ。

 なんで魔物ってどいつもこいつも……。

「ではさっそく仕事にとりかかる」
「わかった。ならグモブ公爵の情報とかを……」
「不要だ。すでに血から知識は得た」

 ヴァンパイアは無数の小さなコウモリに分裂し、どこかへ飛び去……ろうとして窓ガラスにびっしりと張り付いた。

「……開けてくれ。この屋敷、出口がない」
「お、おう……サーニャ、開けてやれ」
「う、うん。わかった」

 サーニャが開いた窓から改めて出ていくコウモリたち。
 
 何とも微妙そうな気はするが……ちゃんと血は払ったので成果を残してくれよ。

 ところで血を吸われてからというものの、サーニャに襲い掛かりたくてたまらないのだが。

 彼女の柔肌に噛みついて血を……やばそうなのでちょっと塩のきいた料理でも食べてくるか。

 そうして三日後、執務室で作業をしているとヴァンパイアが戻ってきた。

 ワラワラと小さなコウモリたちが集まってきて、俺の目の前で再び青白い青年の姿になる。

「グモブ公爵の調査が完了した」
「どうだった? 汚点のひとつやふたつ見つかったか? 弱みにつけこめるようなさ」

 公爵とはいえ弱みは持っているはずだ。

 それをネタに揺すれば俺を諦めさせるのも容易だろう。

 だがヴァンパイアは首を横に振った。

「汚点ならばいくらでもある。むしろ汚点しかない。脱税賄賂は当たり前、横領に謂れなき投獄に……あげればキリがない」
「想像以上に酷いな……」
「だが奴は公爵だ。これら全てを権力で黙らせることができる。奴は汚物の塊だからこそ弱みにはならないのだ。もう悪評なんて気にもしていない、穢れきっているからな」
「無敵の人じゃん……」
 
 グモブ公爵め、王族の親戚だけあって権力は持ってるからな……。

 悪評をバラまかれたくなければって脅すつもりだったのに。

 まあグモブ公爵と言えどもアダムス教会よりは力は下だ。

 なので迂闊に俺に手を出してくることはないとは思うが……。

「わかった、ありがとう。弱みという成果がなかったのは気にしないでくれ。グモブ公爵が酷すぎたのを考えなかった俺のミスだ……ちなみにどうやって調べたんだ?」
「グモブ公爵の血を吸った。小さな蚊に化けてコッソリとな」
「それはもう化けたというか、普通にただの蚊なのでは……」

 血を吸う蚊……うん普通だな!

 潰されたらどうするつもりだったんだろ。ヴァンパイアだから死にはしないか。

 調査の成果がなかったのは残念だが、こればかりはヴァンパイアのせいではない。

 ここは謝礼としてまた血を吸わせておいておこう。

「だが吾輩もヴァンパイアの誇りがある。ちゃんとそなたに有用な情報も仕入れておいた」
「ほう。いったいなんだ?」
「都市アルダの港に落ちたドラゴンだが、グモブ公爵が裏で糸を引いていたぞ」
「……なんだと? 詳しく話せ」
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