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第十七章
昆虫型ドローン
地下道の床面に横たわる二人の若い男達は、まるで生きているように見えた。
しかし、その生命活動は完全に停止している。
さっき銃火を交わした敵であるとはいえ、この二人はプシトロンパルスによってレム神に接続され、自由意思を奪われた接続者。
接続さえ断ってやれれば、普通の人間として生きていけたというのに残念だ。
「すまない。彼らを診察するときに、口の中も見たのだが、飴でも含んでいるのかと思って見過ごしてしまっていた」
医者は僕に向かって詫びているが、彼のせいではない。
最初に僕が、医者に言っておくべきだったのだ。
接続者は、自決用毒薬カプセルを口に含んでいる恐れがあることを……
僕らにとっては当たり前の情報だったが、彼がそれを知らなかったのは仕方のないことだ。
僕達は二人の兵士を横たえると、軽く黙祷した。
「隊長。ドローンが地下室の入り口に着きました」
古淵がそう言ったのは、帰って行くお届けにゃんを見送った後のこと……
振り向くと古淵は、タブレットを操作している。
「どれどれ」
古淵のところへ行き、タブレットを覗き込む。
重そうな鉄の扉が映っていた。
その扉の前に、机を横倒しにしただけの簡易バリケードがあり、その内側で一人の兵士が見張りに立っている。
「奇襲は難しそうだな」
「ええ。離れた場所から、この兵士を狙撃したとしても、確実に一撃で仕留めないと地下室内の敵に気づかれます」
そうなると、僕達は扉を開いた途端にカルル・エステスの頭に銃を突きつけている敵兵と対面することになる。
一番避けたい状況だな。
医者の方を振り向く。
「地下室にいる兵士は六人で、指揮官は女性だと聞いていましたが間違いないですね?」
「人間の記憶は曖昧なものだからあまり当てにしないて欲しいが、大体五~六人だったよ」
僕はタブレットにイリーナの映像を出した。
「指揮官は、この女でしたか?」
「どれどれ」
医者はタブレットを覗き込む。
「ふむ。彼女だ。たしかミハルコフ中尉と名乗っていたな」
イリーナのフルネームは……ヤバい。
この前、聞いておいたのに覚えていない。
「芽衣ちゃん……」
芽衣ちゃんに聞こうとしたのだが……
「イリーナさんのフルネームなら、イリーナ・ミハルコフに間違えありませんよ。北村さん」
「な……なんで、僕がそれを聞こうとしていると分かった?」
「北村さんの部下ですから」
部下として長い付き合いだから、僕が帝国人の長い名前を覚えるのが苦手だと分かっているという事だな。
まあ、それはいいとして……
僕は床に横たわっている兵士の遺体を指さす。
「地下室に、彼らはいましたか?」
「いたよ。私は双子だと思っていたが……君達の話を聞いていると、どうも違うようだな?」
正しくはクローンなのだが、今それを説明している時間はない。
「今『双子だと、思っていた』と言いましたね? では、同じ顔の人間は、他にはいなかったのですね?」
「もし、いたとしたら覚えているよ。確かに二人しかいなかった」
地下室にいたレム・ベルキナのクローンは二人だけ。
ならば接続者も二人だけか? 今の地下室には、接続者はいないのか?
ならば、情報は伝わっていないのかも……
いやいや……接続者は何もクローンだけじゃない。楽観的な予測は捨てるべき。
「古淵。ドローンを室内に潜入させる隙はありそうかい?」
「ええ。先ほど扉が開いて、兵士に差し入れを渡していました。次に扉が開けば潜入は容易かと……」
「ドローンを地下室内に潜入させた場合、光学迷彩を敵に見破られる危険はどのくらい?」
「かなり大きいと言えますね。できれば……」
そう言って、古淵は一つの箱を指さす。
「これを使った方がよろしいかと」
箱に入っているのは、さっきお届けにゃんが持ってきてくれた超小型偵察ドローン。
一見すると、この惑星によくいる昆虫の姿をしている。
「確かに、この方が確実だね」
数分後、昆虫に擬態した超小型偵察ドローンが、地下室へ向かって飛び立って行った。
しかし、その生命活動は完全に停止している。
さっき銃火を交わした敵であるとはいえ、この二人はプシトロンパルスによってレム神に接続され、自由意思を奪われた接続者。
接続さえ断ってやれれば、普通の人間として生きていけたというのに残念だ。
「すまない。彼らを診察するときに、口の中も見たのだが、飴でも含んでいるのかと思って見過ごしてしまっていた」
医者は僕に向かって詫びているが、彼のせいではない。
最初に僕が、医者に言っておくべきだったのだ。
接続者は、自決用毒薬カプセルを口に含んでいる恐れがあることを……
僕らにとっては当たり前の情報だったが、彼がそれを知らなかったのは仕方のないことだ。
僕達は二人の兵士を横たえると、軽く黙祷した。
「隊長。ドローンが地下室の入り口に着きました」
古淵がそう言ったのは、帰って行くお届けにゃんを見送った後のこと……
振り向くと古淵は、タブレットを操作している。
「どれどれ」
古淵のところへ行き、タブレットを覗き込む。
重そうな鉄の扉が映っていた。
その扉の前に、机を横倒しにしただけの簡易バリケードがあり、その内側で一人の兵士が見張りに立っている。
「奇襲は難しそうだな」
「ええ。離れた場所から、この兵士を狙撃したとしても、確実に一撃で仕留めないと地下室内の敵に気づかれます」
そうなると、僕達は扉を開いた途端にカルル・エステスの頭に銃を突きつけている敵兵と対面することになる。
一番避けたい状況だな。
医者の方を振り向く。
「地下室にいる兵士は六人で、指揮官は女性だと聞いていましたが間違いないですね?」
「人間の記憶は曖昧なものだからあまり当てにしないて欲しいが、大体五~六人だったよ」
僕はタブレットにイリーナの映像を出した。
「指揮官は、この女でしたか?」
「どれどれ」
医者はタブレットを覗き込む。
「ふむ。彼女だ。たしかミハルコフ中尉と名乗っていたな」
イリーナのフルネームは……ヤバい。
この前、聞いておいたのに覚えていない。
「芽衣ちゃん……」
芽衣ちゃんに聞こうとしたのだが……
「イリーナさんのフルネームなら、イリーナ・ミハルコフに間違えありませんよ。北村さん」
「な……なんで、僕がそれを聞こうとしていると分かった?」
「北村さんの部下ですから」
部下として長い付き合いだから、僕が帝国人の長い名前を覚えるのが苦手だと分かっているという事だな。
まあ、それはいいとして……
僕は床に横たわっている兵士の遺体を指さす。
「地下室に、彼らはいましたか?」
「いたよ。私は双子だと思っていたが……君達の話を聞いていると、どうも違うようだな?」
正しくはクローンなのだが、今それを説明している時間はない。
「今『双子だと、思っていた』と言いましたね? では、同じ顔の人間は、他にはいなかったのですね?」
「もし、いたとしたら覚えているよ。確かに二人しかいなかった」
地下室にいたレム・ベルキナのクローンは二人だけ。
ならば接続者も二人だけか? 今の地下室には、接続者はいないのか?
ならば、情報は伝わっていないのかも……
いやいや……接続者は何もクローンだけじゃない。楽観的な予測は捨てるべき。
「古淵。ドローンを室内に潜入させる隙はありそうかい?」
「ええ。先ほど扉が開いて、兵士に差し入れを渡していました。次に扉が開けば潜入は容易かと……」
「ドローンを地下室内に潜入させた場合、光学迷彩を敵に見破られる危険はどのくらい?」
「かなり大きいと言えますね。できれば……」
そう言って、古淵は一つの箱を指さす。
「これを使った方がよろしいかと」
箱に入っているのは、さっきお届けにゃんが持ってきてくれた超小型偵察ドローン。
一見すると、この惑星によくいる昆虫の姿をしている。
「確かに、この方が確実だね」
数分後、昆虫に擬態した超小型偵察ドローンが、地下室へ向かって飛び立って行った。
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※3/15~3/19 は投稿を休みます。