873 / 903
第十七章
ニャガン沖上空
海岸線上空を通過したところで、僕は後を振り返った。
そこには、夕闇迫るニャガンの町並みが広がっている。
早朝から作戦を開始したが、終了に半日かかってしまったな。
「ここまで来れば、大丈夫ですね」
え? なにが?
それを言った古淵の方を振り向いた。
「いえ、ここまで来ればワームホールからの奇襲を受ける心配はないという事です」
「なぜだ?」
もちろん、ワームホールからの奇襲は、常に警戒しているが……
「ここから先は海ですからね。町中と違って、観測者が隠れる事はできません。町上空を飛行中は、町中に隠れている接続者によって、至近距離にワームホールを開かれる危険がありましたが、もうその心配はないでしょう」
なるほど。ということは……
「ニャガンの町には、接続者がいるのか?」
「ええ。この町には四人の接続者がいることを、観測チームが確認しています」
「人数まで、分かっていたのか?」
「人数どころか、顔も名前も住んでいる家も、勤め先まで分かっていますよ」
うわ! 個人情報全部調べ上げていたのか。
個人情報保護法違反……あ! この惑星に、そんなものはないか。
あったとしても、スパイには関係ないし。
しかし……
「そこまで調べる必要あるのか?」
「そりゃあありますよ。観測チームの目的は、接続者から出ているプシトロンパルスを観測する事ですからね。本人に気づかれないように、至近距離に接近する必要がありますから」
それもそうだな。
「ニャガン基地を作った直後の数日は、その四人の接続者からデータを集めていました」
まあ、手近なところからやった方が効率がいいしな……
「ただ、この人の場合は……」
古淵はカルルを指さす。
カルルは、僕と古淵の間に生じている反重力場で、プカプカと宙に浮いた状態で眠っていた。
「接続者本人とさりげなく会って、こっそり観測するなんて事をやっていたそうですが……」
カルルは僕と違って、コミュ力あるからな。しかし……
「まさかと思うが、秘密基地の場所が敵にばれたのは、それが原因じゃないだろうな?」
「いや、さすがにそれは無いと……思いますが……」
一瞬言葉に詰まった。ないとは言い切れないんだな。
「ちなみに、カルルはどうやったの?」
「ストリートアーティストですよ」
ストリートアーティスト? ああ! 似顔絵描きか。
「接続者の住居や職場の近くの道端で、さりげなく似顔絵描きをやっていたのですよ。隠し持った観測機器で情報を集めながら。その時に接続者本人が、似顔絵を頼みに来たことがありましてね」
その時にさりげなく世間話でもしながら、データを集めていたのか。
「他にも、接続者が経営する商店に買い物に行ったり、風邪を引いたときに接続者の経営する病院へも行ったりしていましたね」
カルルがうなり声を上げたのはその時……
目を覚ましたのか?
まずいな。カルルにも、目隠しをしておくべきだったか……
「カルル、気がついたのか?」
「ああ……その声はカイトか?」
声は? あ! まだ目を開いていない。
「カルル。そのまま目を開かないでくれ」
「なぜだ?」
「今から説明するから、よく聞いてくれ」
「分かった。目を開かない。その前に俺はどこにいるのだ? 宙に浮いているような気分なのだが……」
「宙に浮いているんだ。ここはニャガン沖海面上空五十メートル」
「という事は、俺の身体は九九式機動服の反重力場で浮いているのか。それで、なぜ目を開いてはいけないんだ?」
「カルルの監禁されていた部屋に、ブレインレターがあった」
「なに? 俺は接続者にされてしまったのか? しかしブレインレターは、まだ届いていないと聞いていたが……」
「だが、部屋にあったぞ」
「ううむ……もしかすると、意識を失っている間にやられたのかもしれないな」
「そうか。切腹をした後、しばらくは意識を失っていたのか?」
「切腹? 誰が?」
「いや、おまえが切腹したと聞いたが……」
「はあ? おれが切腹?」
「違うのか? じゃあ、腹の傷はどうしたのだ?」
「これは、隙を見て逃げようとして、切りつけられた傷だが……」
「なに?」
どういう事だ? 話が違うぞ。
そこには、夕闇迫るニャガンの町並みが広がっている。
早朝から作戦を開始したが、終了に半日かかってしまったな。
「ここまで来れば、大丈夫ですね」
え? なにが?
それを言った古淵の方を振り向いた。
「いえ、ここまで来ればワームホールからの奇襲を受ける心配はないという事です」
「なぜだ?」
もちろん、ワームホールからの奇襲は、常に警戒しているが……
「ここから先は海ですからね。町中と違って、観測者が隠れる事はできません。町上空を飛行中は、町中に隠れている接続者によって、至近距離にワームホールを開かれる危険がありましたが、もうその心配はないでしょう」
なるほど。ということは……
「ニャガンの町には、接続者がいるのか?」
「ええ。この町には四人の接続者がいることを、観測チームが確認しています」
「人数まで、分かっていたのか?」
「人数どころか、顔も名前も住んでいる家も、勤め先まで分かっていますよ」
うわ! 個人情報全部調べ上げていたのか。
個人情報保護法違反……あ! この惑星に、そんなものはないか。
あったとしても、スパイには関係ないし。
しかし……
「そこまで調べる必要あるのか?」
「そりゃあありますよ。観測チームの目的は、接続者から出ているプシトロンパルスを観測する事ですからね。本人に気づかれないように、至近距離に接近する必要がありますから」
それもそうだな。
「ニャガン基地を作った直後の数日は、その四人の接続者からデータを集めていました」
まあ、手近なところからやった方が効率がいいしな……
「ただ、この人の場合は……」
古淵はカルルを指さす。
カルルは、僕と古淵の間に生じている反重力場で、プカプカと宙に浮いた状態で眠っていた。
「接続者本人とさりげなく会って、こっそり観測するなんて事をやっていたそうですが……」
カルルは僕と違って、コミュ力あるからな。しかし……
「まさかと思うが、秘密基地の場所が敵にばれたのは、それが原因じゃないだろうな?」
「いや、さすがにそれは無いと……思いますが……」
一瞬言葉に詰まった。ないとは言い切れないんだな。
「ちなみに、カルルはどうやったの?」
「ストリートアーティストですよ」
ストリートアーティスト? ああ! 似顔絵描きか。
「接続者の住居や職場の近くの道端で、さりげなく似顔絵描きをやっていたのですよ。隠し持った観測機器で情報を集めながら。その時に接続者本人が、似顔絵を頼みに来たことがありましてね」
その時にさりげなく世間話でもしながら、データを集めていたのか。
「他にも、接続者が経営する商店に買い物に行ったり、風邪を引いたときに接続者の経営する病院へも行ったりしていましたね」
カルルがうなり声を上げたのはその時……
目を覚ましたのか?
まずいな。カルルにも、目隠しをしておくべきだったか……
「カルル、気がついたのか?」
「ああ……その声はカイトか?」
声は? あ! まだ目を開いていない。
「カルル。そのまま目を開かないでくれ」
「なぜだ?」
「今から説明するから、よく聞いてくれ」
「分かった。目を開かない。その前に俺はどこにいるのだ? 宙に浮いているような気分なのだが……」
「宙に浮いているんだ。ここはニャガン沖海面上空五十メートル」
「という事は、俺の身体は九九式機動服の反重力場で浮いているのか。それで、なぜ目を開いてはいけないんだ?」
「カルルの監禁されていた部屋に、ブレインレターがあった」
「なに? 俺は接続者にされてしまったのか? しかしブレインレターは、まだ届いていないと聞いていたが……」
「だが、部屋にあったぞ」
「ううむ……もしかすると、意識を失っている間にやられたのかもしれないな」
「そうか。切腹をした後、しばらくは意識を失っていたのか?」
「切腹? 誰が?」
「いや、おまえが切腹したと聞いたが……」
「はあ? おれが切腹?」
「違うのか? じゃあ、腹の傷はどうしたのだ?」
「これは、隙を見て逃げようとして、切りつけられた傷だが……」
「なに?」
どういう事だ? 話が違うぞ。
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
新大陸の冒険者支援課 ~新大陸での冒険は全て支援課にお任せ!? 受け入れから排除まであなたの冒険を助けます!~
ネコ軍団
ファンタジー
魅惑の新大陸へようこうそ! 冒険者支援課にお任せください!
二十年前に発見された新大陸ノウリッジでは、未踏の地である大陸の東端を目指して開発が進んでいた。
港町テオドールはノウレッジの南西に位置する新大陸の玄関口だ。魔王の出現により遅れていた、新大陸の開発が本格的に始まってから五年、この町には一攫千金を夢見る冒険者たちが日々たくさん訪れていた。同時に未知の魔物や厳しい自然、罠が張り巡らされた遺跡やダンジョンなどで幾多の冒険者が傷つき命を落としていた。港町は夢と希望を抱く者たちが希望に満ちて旅立つ場所であり、夢破れ新大陸から去っていく者たちを静かに見送る場所でもあった。
冒険者ギルドは冒険者たちの新大陸離れを危惧し、新たに冒険者支援課を設立した。彼らの仕事は道案内から始まり、冒険者が発見した遺物などの研究や運搬の手伝い。他にも支給品の配布や死体回収などの地味な作業から、魔物が巣食う遺跡やダンジョンの休憩所であるセーフルームの確保、さらには大型モンスターの討伐を手助けしたりと様々だ。それに時には有害と判断された冒険者を秘密裏に処理したりするこも……
支援課に所属するグレンはかつて冒険者だった。しかし、五年前に仲間に裏切られ死にかけ、支援員の先輩であるクレアに救われた。クレアはグレンの特異な才能に気づき、彼を引き取り冒険者支援員として育てたのだった。
今日もたくさんの冒険者が新大陸へやって来る。その中にエリィとキティルという二人の少女冒険者がいた。彼女らも他の冒険者と同じく新大陸で一旗揚げることを夢を見ていた。
ある事件をきっかけに二人と親しくなったグレンは、新大陸に存在すると言われる伝説の”白金郷”をめぐる争いへ巻き込まれていくのであった。
※更新は不定期です。小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
※3/15~3/19 は投稿を休みます。