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第十一章

夢の中の少女2 (天竜過去編)

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 星? いや、人工物だ。

 光は次第に近づいてきた。程なくして、それが作業用宇宙機と分かる。機体には『天竜』のロゴが入っているから、天竜号から発進した物だと分かるけど、そのマニピュレーターは円筒形の物体を掴んでいた。

「楊さん。なんだろ? あれ」
「あれは、脱出カプセル? 誰かが飛び出したのかな?」

 この時、僕達は知らなかった。
 僕達が眠っている間に《天竜》は救難信号をキャッチしたのだ。しかも、それは地球で昔から使われているモールス信号によるSOS。
 こんなところに、なぜ地球人が? と、みんな疑問に思ったらしい。
 タウ・セチ恒星系には、これまで無人宇宙機は何度も送られたが、有人船は《天竜》が最初だったはず。
 本当なら《イサナ》のはずだったのだけど、途中で追い抜いてしまったので《天竜》が一番乗りになったのだ。
 僕達より先に来ている地球人はいないと思っていたのに……

「マトリョーシカ号かもしれない」

 無重力の通路を進みながら、楊さんは呟くように言った。

「マトリョーシカ号? なんですか? それ」

 楊さんの手に掴まりながら、僕は聞いた。

「三十年ぐらい前に消息不明になった船。《天竜》や《イサナ》と同じように、そのコンピューターの電脳空間サイバースペースにも多くの人間のデータを入っていたけど、生きている人間は乗っていなかった。だから、消息不明になってもすぐに忘れ去られてしまった。恒星間空間で遭難したと言われているけど、もしそうでなかったとしたら、タウ・セチに着いているはず」
「その船が、マトリョーシカ号?」
「あるいは、私達が到着する前に、タウ・セチにつながるワームホールが開いてしまったか」
「でも、いくらやっても、タウ・セチにつながるワームホールが開かないので、亜光速船を出すことになったのでしょ?」
「まあ、なんにせよ。会ってみれば分かるさ」
「でも、楊さん。勝手に宇宙機用のエアロックに行って怒られないかな」
「白龍君。怖いのかい?」
「べ……別に怖くなんかないよ」

 怖いけど……

 そうしているうちに、僕達はエアロックの前に着いた。
 来てみると、僕達の他に野次馬が数人集まっている。
 その中の一人の男性が僕達の方を振り返った。

「君達、良いときに来たな。これから、内扉が開くところなんだ」

 そう言っている男性の後で、内扉がゆっくりと開く。
 
「どいて下さい。通り道を開けて下さい」

 救急隊員が無重力ストレッチャーを押してエアロックから出てきた。

 そのストレッチャーには、一人の白人の女の子が横たわっている。

 この顔は!?

 夢の中で会った女の子?
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