319 / 893
第十一章

戦闘用宇宙機2(天竜過去編)

しおりを挟む
 追い出されるように僕は医務室から出て、指示された部屋へ行った。
 そこにいたのは……

「なんで、楊さんがここにいるのです?」
「私もこの計画のスタッフだからな」
「この計画って、何の計画です?」
「マトリョーシカ号からの戦闘用宇宙機が、こっちへ向っているのは知っているな?」
「ええ。船内ニュースで」
「その迎撃計画だ」
「計画? こういうのは、作戦とか言うのでは?」
「名称などどうでもいい。とにかく《天竜》に敵が迫っている。《天竜》は軍艦ではないし、私達は軍人ではないが、生き延びるためには戦わなければならない。そのために白龍君にも協力してほしい」
「僕は、何をすればいいのですか?」
「戦闘用宇宙機の遠隔操作オペレーター。アーニャの持ってきたデータから出力した機体なのだけどね、BMIが旧式なせいか適合できる人が少ない」
「でも、電脳空間サイバースペースの人たちに操作してもらえれば……」
「それができたら苦労しない。戦闘用宇宙機を操作できる距離は、二万キロが限界。ところが、接近中の宇宙機の中に有効射程五万キロのグレーザー砲を装備している機体があった」
「五万キロ!」
「だから、オペレーターを乗せた宇宙機母船を出力して《天竜》から十万キロ離れたところで迎撃することになった。ただ、その母船のコンピューターでは容量が足りなくて電脳空間サイバースペースの疑似人格は入らない。コンピューターを付け替えている時間もない。だから、生きている人間のオペレーターを乗せる事になった」
「あの、遠隔操作だから、オペレーターには危険はないと聞いたのですけど、それだと母船が狙われるのでは?」
「その可能性は大きい。怖いか?」
「そ……そんな事は……」

 そんなの怖くないわけない。 でも……

「怖いのなら、オペレーターを断ってもいい」

 断りたい……でも……

「《天竜》にいたら、安全なのですか?」
「ん? まあ、迎撃に行くよりは安全だ」
「でも、迎撃に行った人達が負けちゃったら……」
「そうなったら《天竜》には、攻撃を防ぐ手段がない」

 防ぐ手段がない? そうだろうね。こっちの攻撃が届かない遙か遠方から攻撃してくるのだから……

「だから、この計画は絶対に失敗できない。しかし、白龍君は子供だ。断っても誰も非難はしない」

 僕は未来ちゃんの写真を出して眺めた。

 子供か。子供だから、断っても許される。でも……

「僕……行きます」
「いいのか? 怖くないのか?」
「そんなの……怖いに決まっているでしょ! でも、六年後《イサナ》が来て、未来ちゃんと会ったときに、僕がこの時に《天竜》の中でガタガタ震えていたなんて言ったら、嫌われちゃうじゃないですか!」

 楊さんは暫くの間、口をポカーンと開けて僕を見つめていた。

「分かってますよ。僕はふられたと言いたいのでしょ。でも、嫌われたわけじゃない。僕は……」 
「分かった、わかった。皆まで言わんでいい。とにかく、白龍君はオペレーターを引き受けてくれるというのだな」
「そうです。引き受けます」

 後で分かったけど、この時の検査でBMIと適合できた人は僕を含めて三十人いたらしい。でも、そのうち十一人はオペレーターを拒否したそうだ。それも、拒否したのはみんな大人ばかり……
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...