362 / 893
第十一章
病院(現在)
しおりを挟む
(ここから北村海斗の視点です)
「……だが、この惑星に降りて五年目、カルカ国は核攻撃を受けた。我々はシェルターに避難したが、外部との情報を遮断されてしまった。シェルターから出ても、宇宙との交信手段がなく、《イサナ》の到着をずっと確認できないでいたんだ」
そこまで、話したところで章 白龍は俯いた。
「すまないが、疲れた。少し、眠らしてもらおう」
そのまま彼は、ベッドの上で目を閉じる。
「待って! 白龍君」
ミクがベッドに近寄った。
章 白龍は、再び目を開いた。
「あたし、ふったんじゃないから。白龍君にプロポーズされて、本当は嬉しかったんだから……でも、急に結婚って言われて、びっくりしちゃって……だから、お友達から始めたいって……そういう意味で言ったんだから……」
章 白龍はにっこりと微笑み、ミクの頭を撫でた。
「ありがとう。その言葉をずっと聞きたかった。今から、君と結ばれる事は出来ないが、この惑星に降りてから君との再会をずっと夢見ていた。夢見ていたからこそ、僕はレムと戦い続ける事ができたのだ。ありがとう」
「白龍君……」
章 白龍は再び目を閉じる。
ミクはその手を握りしめて涙を流し嗚咽を漏らしていた。
一瞬、臨終かと思ったが、眠っただけのようだ。
僕は楊 美雨に顔を向けた。
「彼は、なんの病気なのですか?」
「原爆症です」
「原爆……それじゃあ、カルカが核攻撃を受けた時に……」
「ええ。その時に被爆しました。それでもその時はなんともなかったのです。それが、数年前に突然発症しまして……」
気の毒に……
「本当に……彼は助からないのですか?」
「医者が言うには、十分なナノマシンが揃わなかったのです」
「だって……ナノマシンはプリンターで……」
「ええ。ただ、夫に投与するナノマシンの製造を途中で止めて、兵器の製造を始めました。その兵器を作ったために、ナノマシンの製造に必要な数種類のレアメタルが足りなくなったのです」
「レアメタル! それなら、僕の車の中に……」
「申し訳ありません。北村さんが、持って来たレアメタルにも手を付けてしまったのです。鹿取香子さんの許可は、取りましたが……」
「あちゃー」
不意にミクがこっちへ駆け寄る。
「《イサナ》に問い合わせてみて。まだ、レアメタルが残っているかも……」
「綾小路さん。すでに問い合わせました。《イサナ》にもリトル東京にも残っていないそうです」
それじゃあ、章 白龍を助ける事はもうできないのか? レアメタルさえあれば助かると言うのに……
……いや、まだ可能性はある。
(第十一章 終了)
「……だが、この惑星に降りて五年目、カルカ国は核攻撃を受けた。我々はシェルターに避難したが、外部との情報を遮断されてしまった。シェルターから出ても、宇宙との交信手段がなく、《イサナ》の到着をずっと確認できないでいたんだ」
そこまで、話したところで章 白龍は俯いた。
「すまないが、疲れた。少し、眠らしてもらおう」
そのまま彼は、ベッドの上で目を閉じる。
「待って! 白龍君」
ミクがベッドに近寄った。
章 白龍は、再び目を開いた。
「あたし、ふったんじゃないから。白龍君にプロポーズされて、本当は嬉しかったんだから……でも、急に結婚って言われて、びっくりしちゃって……だから、お友達から始めたいって……そういう意味で言ったんだから……」
章 白龍はにっこりと微笑み、ミクの頭を撫でた。
「ありがとう。その言葉をずっと聞きたかった。今から、君と結ばれる事は出来ないが、この惑星に降りてから君との再会をずっと夢見ていた。夢見ていたからこそ、僕はレムと戦い続ける事ができたのだ。ありがとう」
「白龍君……」
章 白龍は再び目を閉じる。
ミクはその手を握りしめて涙を流し嗚咽を漏らしていた。
一瞬、臨終かと思ったが、眠っただけのようだ。
僕は楊 美雨に顔を向けた。
「彼は、なんの病気なのですか?」
「原爆症です」
「原爆……それじゃあ、カルカが核攻撃を受けた時に……」
「ええ。その時に被爆しました。それでもその時はなんともなかったのです。それが、数年前に突然発症しまして……」
気の毒に……
「本当に……彼は助からないのですか?」
「医者が言うには、十分なナノマシンが揃わなかったのです」
「だって……ナノマシンはプリンターで……」
「ええ。ただ、夫に投与するナノマシンの製造を途中で止めて、兵器の製造を始めました。その兵器を作ったために、ナノマシンの製造に必要な数種類のレアメタルが足りなくなったのです」
「レアメタル! それなら、僕の車の中に……」
「申し訳ありません。北村さんが、持って来たレアメタルにも手を付けてしまったのです。鹿取香子さんの許可は、取りましたが……」
「あちゃー」
不意にミクがこっちへ駆け寄る。
「《イサナ》に問い合わせてみて。まだ、レアメタルが残っているかも……」
「綾小路さん。すでに問い合わせました。《イサナ》にもリトル東京にも残っていないそうです」
それじゃあ、章 白龍を助ける事はもうできないのか? レアメタルさえあれば助かると言うのに……
……いや、まだ可能性はある。
(第十一章 終了)
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる