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第十二章

ベジドラゴン達の事情

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 マオ川の川岸には緑地帯がある。
 数日前から、ベジドラゴンの群はそこで野営していたのだ。
 なぜそんなところにいるかというと、渡りの季節になったから……
 ただ、いつもなら帝国領を通って北方の繁殖地へ向かっていたのだが、子供達が帝国軍に拉致される事件があった事から、帝国領通過は危険と判断してマオ川を北上するコースを取ることにしたそうだ。
 だが、マオ川に行くと帝国艦隊に遭遇した。
 仕方なく、ベジドラゴン達は森の中に身を潜めていたのだ。

 ところが、急に帝国艦隊の姿がなくなったので、エシャーはロットとルッコラを連れて偵察に出て来た。そうしたら、潜水艦の上で食事中の僕達を見つけた。

 と、いった事情を、エシャーは片言の日本語で語ってくれた。
 
「ジャア、帝国艦隊ハ、カイトガ、ヤッツケテクレタノ?」
「僕一人じゃないよ」

 と言っておかないと、また誤解してフェイクニュースを広めかねない。

「ここにいる皆と、カルカの人達と力を合わせてやったんだ。僕一人じゃとてもできない」
「デモ、嬉シイ。コレデ、北ヘ行ケル。ミンナ喜ブ」

 そうか。このままだと、ベジドラゴンの群は北へ向かってしまうのだな。その前に、頼んでおかないと……

「エシャー。北へ向かう前に、僕の頼みを聞いてもらっていいかな?」
「ナアニ?」
「ここから北の方にロータスという町があるんだ。僕をそこに運んでほしい。そして、できれば僕が脱出するまで、ロータスに待機していたほしいんだが」
「イイワヨ。カイトノ頼ミナラ喜ンデ」
「ああ、でもエシャーが勝手に決めてはいけないだろ。長老の許可をもらわないと」
「長老ナラ、キット許可シテクレル。勇者カイトノ頼ミナラ」

 勇者カイトか……そんな風に言われると背中がこそばゆいな。

 とりあえず、長老の許可をもらうために、エシャー達は、群が待機している森に引き返していった。

 エシャー達を見送った後、僕はみんなの方を振り向いた。

「ドローンを使うのは止めて、僕がベジドラゴンに乗って偵察に行こうと思う。どうかな?」

 みんな考えこんだ。

 最初に口を開いたのは芽衣ちゃん。

「いいと思います。ベジドラゴンなら、発見されても怪しまれません」
「私もそれがいいと思うね」

 レイホーも賛成してくれた。

「ミールは?」
「カイトさん。あたしはそれもいいと思いますが、一つ提案があります」
「なに?」
「私の魔法でベジドラゴンの分身を作って、先行させるというのはどうでしょう? 分身が飛んで安全なコースを飛ぶのです。エラはともかく、帝国軍にベジドラゴンが見つかったら、捕えられるかもしれません」
「なるほど。よし、それで行こう」
「じゃあ、分身をコントロールするために、あたしも同行する必要がありますね」
「ああ……そうだね」
「それではカイトさんはエシャーに乗って、あたしはルッコラに乗りますね」

 そこへPちゃんが口を挟む。

「ミールさん。まさかと思いますが、ご主人様と二人切りになってハメをはずそうという魂胆じゃないでしょうね?」
「そんな事はありません」

 また始まった……

「本当でしょうね?」
「Pちゃん。ナーモ族は嘘をつきません」
「今、「嘘を付かない」という嘘を付きました」

 もう止めさせないと……

「Pちゃん。君は反対なのか?」
「いいえ、ご主人様。ベジドラゴンに乗せてもらって偵察に行くのはいいと思います。ただ、私はミールさんに釘を刺しているだけです」
「じゃあPちゃんも賛成という事でいいんだな」
 
 だが、一人だけ異を唱える者がいた。
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