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第十二章
乗合竜車
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なんで、こんなところにこいつが……?
車の一番後ろで、エラは胡座をかいて座っており、その隣には帝国人と思われる女がいた。年の頃は二十代後半、紫に染めたロングヘアーの美女が片膝をついて座っている。
その二人の周囲に客はいない。
ナーモ族の客達は、その二人を遠巻きにしていたのだ。
エラは車に乗り込んできた僕とミールをギロっと睨む。
気づかれたか? 奴にホロマスクを見破れるとは思えないが……
「ちっ」
エラは舌打ちをすると、帝国語で何かをつぶやいた。
気が付いたわけではないようだ。
連れの美女がエラを窘めるように何か言っている。
そのまま二人は口論になった。
何を言っているのか気になるな。
不意に、ミールが僕の袖を引っ張る。
ミールは空いている床の一カ所を指さしている。『ここに座りましょう』と無言で言っているのだ。
エラから少しでも離れた位置に、僕とミールは腰を下ろす。
周囲から見えないように、翻訳ディバイスを操作した。
エラ達が喋った言葉は自動的に録音されている。
立体映像に隠れている僕本来の耳に装着してあるイヤホンから、先ほどのエラ達の会話が日本語に翻訳されて再生された。
『ちっ』
この舌打ちはエラの……
『なんだおっさんか』
おっさんって、僕の事か? 僕の顔を覆っている立体映像は三十代のナーモ族男性だが、四十過ぎているエラにおっさん呼ばわりされる言われは……
『どうせなら、半ズボンの美少年が乗ってくればいいのに』
相変わらず変態だな。
『アレンスキー大尉』
咎めるようなこの声は、エラの隣にいる女性のようだ。
『くれぐれも、ここで騒ぎを起こさないで下さいよ』
『分かっている、分かっている。男の子が乗ってきても、半ズボンから出ている生足を鑑賞するだけだ』
『鑑賞も止めて下さい』
『それぐらいさせろ。本当なら、捕まえて電撃でヒイヒイ言わせてやりたいところを我慢しているのだ』
『されてたまりますか! だいたい、なんであなたが軍から脱走するはめになったと思っているのですか?』
脱走したのか? こいつ……
『少年兵虐待が問題なって、軍法会議にかけられそうになったからでしょ』
『そういうおまえは何で脱走した? いい加減事情を言ったらどうだ』
『言いたくありません』
『ふん! まあいいさ』
この二人、どういう関係だ?
車の一番後ろで、エラは胡座をかいて座っており、その隣には帝国人と思われる女がいた。年の頃は二十代後半、紫に染めたロングヘアーの美女が片膝をついて座っている。
その二人の周囲に客はいない。
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エラは車に乗り込んできた僕とミールをギロっと睨む。
気づかれたか? 奴にホロマスクを見破れるとは思えないが……
「ちっ」
エラは舌打ちをすると、帝国語で何かをつぶやいた。
気が付いたわけではないようだ。
連れの美女がエラを窘めるように何か言っている。
そのまま二人は口論になった。
何を言っているのか気になるな。
不意に、ミールが僕の袖を引っ張る。
ミールは空いている床の一カ所を指さしている。『ここに座りましょう』と無言で言っているのだ。
エラから少しでも離れた位置に、僕とミールは腰を下ろす。
周囲から見えないように、翻訳ディバイスを操作した。
エラ達が喋った言葉は自動的に録音されている。
立体映像に隠れている僕本来の耳に装着してあるイヤホンから、先ほどのエラ達の会話が日本語に翻訳されて再生された。
『ちっ』
この舌打ちはエラの……
『なんだおっさんか』
おっさんって、僕の事か? 僕の顔を覆っている立体映像は三十代のナーモ族男性だが、四十過ぎているエラにおっさん呼ばわりされる言われは……
『どうせなら、半ズボンの美少年が乗ってくればいいのに』
相変わらず変態だな。
『アレンスキー大尉』
咎めるようなこの声は、エラの隣にいる女性のようだ。
『くれぐれも、ここで騒ぎを起こさないで下さいよ』
『分かっている、分かっている。男の子が乗ってきても、半ズボンから出ている生足を鑑賞するだけだ』
『鑑賞も止めて下さい』
『それぐらいさせろ。本当なら、捕まえて電撃でヒイヒイ言わせてやりたいところを我慢しているのだ』
『されてたまりますか! だいたい、なんであなたが軍から脱走するはめになったと思っているのですか?』
脱走したのか? こいつ……
『少年兵虐待が問題なって、軍法会議にかけられそうになったからでしょ』
『そういうおまえは何で脱走した? いい加減事情を言ったらどうだ』
『言いたくありません』
『ふん! まあいいさ』
この二人、どういう関係だ?
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