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第十二章

空砲だからいいよね……

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「いい加減にしなさーい!」

 アーニャの怒声に、町長側も、反町長側も恐怖に押し黙る。

「私達は大切な任務の途中、この町が盗賊団に蹂躙されようとしていると知り、貴重な時間を割いて駆けつけてきたのですよ。これ以上私達の貴重な時間を下らない事でつぶさないで下さい」

 下らないと言われたことに反町長派の一人が反論する。

「下らないとはなんだ! 町長の過ちを正すのは、町議会の大切な義務だ」

 ……とは、言っているけど、本音は『町長を辞任に追い込むまたとない好機! この機会に乗じないでどうする!』と言ったところだろうな。

 アーニャはひきつった笑みを浮かべた。しかし、目が笑っていない。

「そうですか。では、私達は引き上げさせていただきます。盗賊団に蹂躙されるまで、好きなだけ政治ごっこでもやっていて下さい」

 アーニャがすっくと立ち上がった。

「北村君。行きましょう」

 え? マジに見捨てるの? 

「待って下さい。アーニャさん」
「なに?」
「ええっと……一応、最高司令官は……僕なのですけど……」
「そうだったわね。私が勝手に決めるわけにはいかないわね。で? 最高司令官殿の判断は? この茶番につき合うのですか?」

 ええっと……

 ミール達の方を向いた。

「みんなの意見はどうかな?」
「あたしも、ちょっとつき合い切れませんわ」

 ミールが立ち上がった。

「私も師匠と同意見だ」

 キラも立ち上がる。

「あたしもつき合ってらんない」

 ミクも立ち上がった。

 芽依ちゃんの方を見ると……

「私は北村さんの指示に従います」

 では、仕方ない。

 僕は町長の方を向き直った。

「町長。僕達は盗賊団と戦うための打ち合わせに来たのです。あなた方の政争に付き合うために来たのではない。これ以上つまらない事を続けるなら、僕達は帰りますがどうします?」

 え? 町長は涙を浮かべて、僕に駆け寄ってきた。

「お願い! 見捨てないで」

 ちょ! 足にしがみつくのは止め!

「今、あなた達にいなくなられては町を守れません」
「だから……町を守るための相談をしようと、僕達はここに来たのですよ。あなた達はやる気あるのですか? 自分で自分を守る気のない人を助けるほど、僕ら暇人ではないので」
「あります! 私には町を守る気はあります! 無いのは、あの男です!」

 町長は、さっき辞任要求をした議員を指さした。

 指を挿された議員は慌てる。

「何を言う! わしだって、町を守る気はあるぞ」
「なるほど」 

 僕は議員の前に進み出た。

「町を守る気はあるのですね? では、なぜ町長に辞任を要求するのですか?」
「なぜって……町議会の義務……」
「それは、この状況下でやるべきことですか?」
「この状況って……」

 僕は拳銃を抜いて、議員に向けた。

「な……なにをする!?」

 ズキューン!

 銃声が鳴り響き、議員は腰を抜かした。

 まあ、空砲だけどね……
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